高額医療費はいくらから申請できる?自己負担限度額の計算方法を徹底解説

高額医療費制度は便利ですが、自己負担限度額が分かりづらいのでいくらから申請できるか曖昧ですよね。そこで、この記事では高額医療費制度はいくらから申請できるのか自己負担限度額の計算方法をわかりやすく解説し、更にいくら戻るのか様々な場合をシミュレーションで解説します。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

高額療養費制度はいくらから申請できる?申請対象となるのはどんな時?



長期の入院や手術の費用、家族みんなの医療費など、健康保険が適用されたとしても、医療費が高額になってしまうと悩みますよね。


一気に大きなお金がなくなるとそのあとの生活や今後の病気に関しても不安が出てきます。


そういった負担を支えるためにあるのが高額療養費制度です。この制度を利用することで医療費の一部が戻ってくるのですがいくらから利用できるのかご存でしょうか。


実際自分が申請できるのかどうか、いくらから申請できるのかわからない方もいるでしょう。医療費は人によって全然違うので、友人にも聞きづらいですよね。


そこで、この記事では「高額医療費の申請」について

  • 高額医療費を申請する条件や対象となる方
  • 自己負担限度額の計算方法
  • ケースごとの具体的なシミュレーション
  • 高額療養費制度の対象にならないもの
  • 窓口での一時的な自己負担額を減らす方法
  • 高額医療費についての申請先

を中心に解説していきます。


この記事は、高額医療費はいくらから高額療養費として申請できるのか、また申請したいと思っているけれど申請となる対象や時期が分からないという方のお役に立てるかと思います。 


 ぜひ最後までご覧ください。

高額養療費制度とは|申請の条件・対象者など

手術や入院によって高額医療費がかかった場合に、公的医療保険がかかった医療費の一部を負担してくれる制度を「高額療養費制度」といいます。

しかし、実際いくらから医療費が申請できるのかが分からない方も多いのではないでしょうか。

高額療養費制度をいくらから申請できるのかについては年齢や所得によって少し違いがあります。

大きくは、70歳以上の方と70歳未満の方で分けられています。

対象者は国民健康保険健康保険組合全国健康保険協会(協会けんぽ)など、健康保険に加入していることが絶対条件となります。 

高額養療費制度の自己負担限度額の計算方法をわかりやすく解説

高額医療費の計算は1回の治療や入院に対してではなく、とある月の1日~末日までの1カ月の間にかかった医療費について行います。そのため入院が長引いて月をまたいだ場合でも、1カ月ごとに計算をしてください。

年齢や所得ごとの高額医療費の自己負担限度額がいくらから申請できるのかについて厚生労働省のホームページを参考に以下の表にまとめました。 

70歳未満の方の場合
所得区分自己負担限度額
年収約1,160万円~
健保:標報83万円以上
国保:旧ただし書き所得901万円超
252,600円+
(医療費-842,000円)×1%
〈多数回該当:140,100円〉
年収約770万~1,160万円
健保:標報53万~83万円
国保:旧ただし書き所得600万~901万円
167,400円+
(医療費-558,000円)×1%
〈多数回該当:93,000円〉
年収約370万~770万円
健保:標報28万~53万円
国保:旧ただし書き所得210万~600万円
80,100円+
(医療費-267,000円)×1%
〈多数回該当:44,400円〉
年収~約370万円
健保:標報28万円以下
国保:旧ただし書き所得210万円以下
57,600円
〈多数回該当:44,400円〉
住民税非課税者35,400円
〈多数回該当:24,600円〉
旧ただし書き所得とは、総所得金額から基礎控除を除いたものです。以下で具体例をご紹介します。

  • 42歳で年収約400万円の会社員の方が、手術と入院のために1カ月の自己負担額が18万円となった場合

自己負担額は3割負担になっていますので、実際にかかった医療費は60万円で計算します。上記の表に該当する計算式を使うと、

80,100円+ (600,000円-267,000円)×1%=83,430円

自己負担額の上限は83,430円、高額療養費制度からの給付額は

180,000円-83,430円=96,570円

となります。 

69歳以下の方でいくらから申請できるのか知りたい方は、上記の表に当てはめて確認してみてください。

70歳以上の方の自己負担限度額の計算方法

70歳以上の方からは、所得により健康保険が適用となる医療費の自己負担額が1~3割となります。高額医療費の自己負担限度額について、厚生労働省のホームページを参考に以下の表にまとめました。
所得区分外来(個人単位)外来+入院(世帯単位)

年収約1,160万円~

標報83万円以上/課税所得690万円以上

252,600円+(医療費-842,000円)×1%252,600円+(医療費-842,000円)×1%
年収約770万円~約1,160万円
標報53万円以上/課税所得380万円以上
167,400円+(医療費-558,000円)×1%167,400円+(医療費-558,000円)×1%
年収約370万円~約770万円
標報28万円以上/課税所得145万円以上
80,100円+(医療費-267,000円)×1%80,100円+(医療費-267,000円)×1%
年収約156万円~約370万円
標報26万円以下/課税所得145万円未満等
18,000円
(年間144,000円)
57,600円
住民税非課税世帯Ⅱ8,000円24,600円
住民税非課税世帯Ⅰ
(年金収入80万円以下など、対象家族全員の所得が0円の場合)
8,000円15,000円
以下で具体例をご紹介します。
  • 73歳で年収約300万円の独身一人暮らしの方が、手術と入院のために1カ月の自己負担額が9万円となった場合
自己負担額は2割であるため、実際にかかった医療費は45万円です。自己負担限度額は57,600円、高額療養費制度からの給付額は、

90,000円-57,600円=32,400円

となります。

70歳以上の方でいくらから申請できるのか知りたい方は、上記の表に当てはめて確認してみてください。

年内に4回以上高額養療費制度に該当する場合は自己負担限度額が引き下げられる

入院が長引いたり、年に数回入退院を繰り返したりする場合は、医療費が高額になり家計を負担する可能性がありますよね。


高額療養費制度を年内(1月1日~12月31日までの1年間)に3回利用し、4回目も高額療養費制度に該当した場合、4回目以降は自己負担限度額が引き下げられます。いくらから適用されるのかについては、先述した高額医療費の自己負担限度額の表に記載している多数回該当の額で確認できます。


70歳以上の方の場合も、4回目住民税非課税者以外は70歳未満の方と同額です。70歳以上で住民税非課税者の場合には多数回該当が適用されません


例えば、72歳で年収約200万円の方が1月1日~6月30日までの半年間入院し、すべての月が高額療養制度に該当した場合は、4月~6月の3カ月分の自己負担額の上限が44,400円となります。


しかし、年内に退職や転職をして加入している健康保険に変更があった場合は、1年間であっても申請回数を通算することはできないので注意が必要です。 

高額養療費制度の自己負担限度額は世帯で合算することができる

高額療養費制度は自分1人がいくつもの病院で医療を受けたり、同じ病院で入退院を繰り返したときだけに利用できるものだと思っている方も多いでしょう。


同じ月に家族が病気やケガなどで医療を受けた場合(同じ健康保険の方のみ)は、世帯でかかった医療費を合算して高額医療費を申請することが可能です。  


ただし、夫婦が共働きで別々の健康保険にそれぞれ加入している場合は、たとえ夫婦であっても医療費を合算することはできません。
 


また、70歳以上75歳未満の方は金額の条件は特にありませんが、70歳未満の場合は自己負担が21,000円以上のものに限られています。さらに、75歳以上の家族がいる世帯では、75歳未満の方がかかった医療費と75歳以上のかかった医療費も合算することはできないと決められています。
 


どうして年齢によって医療費が合算できないのかというと、75歳以上の方は後期高齢者医療制度という国民健康保険や健康保険組合などの一般の健康保険とは別に、公的医療保険に入っているからです。


具体的にいくらから高額医療費が適用されるのかについては、このあとご説明していきます。 

シミュレーションで解説|高額養療費制度でいくら戻るのか

高額療養費制度でいくら戻るのかについては、年齢や所得、それぞれの世帯の構成などによって違いがあるため、自分の高額医療費の場合はどのように計算すればいいのかわからない方も多いでしょう。


ここで、様々なケースについていくらから高額医療費が適用されるのかをシミュレーションし、高額療養費制度でいくら戻るのかを解説していきます。自分と近いケースを参考にしてみてください。

自己負担限度額を超え、高額療養費制度が適用される場合

医療費の自己負担限度額は、上記の表から自分の該当する所得区分で確認しましょう。ここで、具体的な数字を出していくらから高額医療費が適用されるのかシミュレーションしていきます。

  • 43歳で月収30万円、1カ月間に支払った自己負担額12万円だった場合
自己負担限度額は、所得区分が年収約370万円~約770万円の計算式を使います。自己負担額は医療費の3割であるため、実際にかかった医療費は40万円です。この数字を計算式に当てはめると、

80,100円+ (400,000円-267,000円)×1%=81,430円

これで自己負担限度額がわかりました。高額療養費制度により戻ってくる金額は、

120,000円ー81,430円=38,570円

となります。

多数回該当で自己負担額が引き下げられた場合

43歳で月収30万円の方の医療費の自己負担額が以下のようになった場合についてはいくらから高額医療費が適用れるのか見ていきましょう。
  • 2月…9万円
  • 3月…9万円
  • 4月…9万円
  • 5月…9万円
  • 6月…1万円
2月~4月までの自己負担限度額はそれぞれ

80,100円+ (300,000円-267,000円)×1%=80,430円

5月は多数回該当が適用され、自己負担限度額が44,400円となります。6月の1万円は高額医療費に該当しませんので、高額療養費制度により戻ってくる金額の合計は、

360,000円ー80,430円×3(2月~4月分)ー44,400円=74,310円

となります。

このあと、家族で暮らしている場合や医療費別について、いくらから高額医療費が適用されるのか説明していきます。

合算により高額養療費制度が適用される例

世帯でかかった高額医療費を合算した場合について、夫婦共働きで子供1人と母1人の4人世帯を例にいくらから高額医療費が適用されるのかご紹介していきます。

診療内容自己負担額
夫:45歳(年収400万円、会社員)骨折(入院+通院)入院:120,000円
通院:5,000円
妻:43歳(専業主婦)腫瘍切除の日帰り手術32,000円
子供:12歳(小学生)虫歯治療7,000円
母:73歳(無職)腰痛治療4,000円


1カ月間にこのような費用がかかった場合、自己負担額をすべて合わせると168,000円となります。しかし、夫の自己負担額の入院費と通院費は別扱いになりますので、21,000円未満である通院費は合算できません。


また、子供の虫歯治療にかかった7,000円も、21,000円未満のため合算できません。


一方、母の腰痛治療にかかった4,000円は21,000円未満ではありますが、70歳以上75歳未満なので、合算することができます。


高額療養費として合算できる自己負担額の合計156,000円として自己負担限度額を計算すると、

80,100円+(520,000円-267,000円)×1%=82,630円

です。高額療養費制度により戻ってくる金額は、

156,000円-82,630円=73,370円

となります。


家族で暮らしている場合は、家族みんなでいくらから適用されるのかを合算して計算しましょう。

【注意】高額養療費制度の対象とならない医療費がある

高額療養費制度の対象となる医療費は、健康保険が適用される医療費と同じです。そのため健康保険が適用されない高額医療費は、高額療養費制度の対象にもなりません


具体的な例を挙げると、

  • 差額ベッド代(個室や少人数の病室を希望した場合)
  • 入院中の食事代 
  • 先進医療の費用 
  • 自然分娩の分娩費用 
  • 自由診療 (美容整形、歯のインプラント、未承認抗がん剤の投与など)
  • 不妊治療
  • 出生前診断の費用 ( 超音波検査、絨毛検査、羊水検査など)
などがあります。海外にいる間に急なケガや病気で治療を受けた場合も同じルールが適用されます。

治療のために海外へ行って受診した場合や、日本でできない手術のために海外で治療を受けた場合は健康保険が適用されませんので、高額療養費制度の対象にもなりません。

高額医養療費制度の申請方法・申請期限をわかりやすく解説

国民健康保険や協会けんぽ加入者の場合、高額療養費の申請は自分自身でする必要があります。


ただ、いくらから申請できるかがわかっても具体的にどのようにするのか不安に思われる方もいるのではないでしょうか。


以下で、具体的な申請手続きをご説明します。 

自己負担額を支払ったあとに高額養療費制度を申請する場合

病院を受診すると医療費の自己負担額である3割を病院窓口で支払って帰るケースがほとんどです。医療費が高額になった場合も同じように、病院窓口で自己負担額の支払いをすることになります。 


このように支払いをしたあとに高額療養費制度の申請をすることができます。高額療養費制度の申請書や医療機関の領収書、身分証明書など、必要書類を添付して加入している健康保険の窓口に申請します。 


入院や手術で忙しくしていたため、申請が遅れた場合も安心してください。診察を受けた月の翌月の初日から2年は遡って申請することが可能です。


高額医療費は申請後、受け取るまでに3~4カ月かかりますので、早めに申請することをおすすめします。

自己負担額支払いの前に高額養療費制度の申請をする場合

手術や入院が決まっていて事前に医療費が高額となることがわかっていた場合は、「限度額適用認定証」を利用することで病院窓口での支払いを自己負担限度額以内にすることができます。
 


あらかじめ加入している健康保険に申請して「限度額適用認定証」を取得し、「被保険者証」と一緒に病院窓口で提示してください。 


「限度額適用認定証」には、有効期限がありますので注意しましょう。 

  • 国民健康保険の場合

毎年7月末です。ただし、70歳、75歳を迎える場合は誕生日月の末までとなります。 

  • 協会けんぽの場合 

受付をした月の初日から1年以内です。 


有効期限以降も高額医療費について認定証が必要な場合は、どちらの場合も再度申請する必要があります。 

高額養療費制度の申請先|国民健康保険・協会けんぽ加入視野は注意!

高額療養費制度を申請する前にまずは、自分がどの健康保険に加入しているのかを確認しましょう。健康保険証を見るとすぐにわかります。


社会保険の一つである健康保険は会社員が加入していることが多いです。自営業者や年金受給者が加入しているのは社会保険ではなく、国民健康保険です。


国民健康保険に加入している場合

申請先は自治体の窓口(年金課、健康保険課など)です。申請書は自治体の窓口で入手するか、自治体のホームページでダウンロードして印刷することができます。

申請書の提出は郵送でも可能です。また、申請が遅れている方には自治体から手続きの案内と申請書が送られてくるので、忘れる心配はないでしょう。

協会けんぽに加入している場合

申請先は保険証に記載されている管轄の協会けんぽ支部です。申請書は協会けんぽ支部の窓口や年金事務所の出張窓口で入手するか、協会けんぽのホームページでダウンロードして印刷することができます。

ダウンロードできない方は協会けんぽ支部に電話で相談してください。

参考:高額養療費制度と医療費控除の違いとは

病気やケガなどで高額な医療費がかかった場合に自己負担を減らすことができる公的な制度に「高額療養費制度」と「医療費控除」がありますよね。


自己負担した高額医療費の一部が返ってくるという点では似ているように感じる制度ですが、実はまったく別の制度なのです。
 


まず大きな違いは、医療費の負担を軽くするための仕組みです。高額療養費制度は加入している健康保険から自己負担した一部が払い戻されます。


一方、医療費控除は確定申告時に医療費控除の申請をすることによって、所得税の負担を軽くするものです。
 


高額医療費は健康保険が適用される診療のみが対象ですが、医療費控除は出産や市販薬など、健康保険適用外のものも対象になります。

まとめ:高額医療費がいくらから申請できるかは年齢・所得により決まる

高額療養費制度がいくらから申請できるのかについて説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。

今回の記事のポイントは、
  • 申請するには、金額の条件や対象となる医療が決まっている
  • 申請することで高額医療費の一部が戻ってくる
  • 配偶者や扶養家族などの医療費も高額医療費として合算できるケースがある
  • 限度額適用認定証を利用することで、病院窓口での負担を抑えられる
  • 加入している健康保険によって申請先が異なる
でした。

長い人生の中で病気やケガを一度もしないということはあまりなく、いつ高額医療費で悩まされることになるかもわかりません。

今回の記事でいくらから高額療養費を申請できるのか、申請の方法などについてわかったと思います。
高額な医療費を支払ったり、手術や入院をすることになったりしたら、まずは高額療養費制度を利用できるかどうか確認してみてください。

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