産休手当(出産手当金)はどこから振り込まれる?出産一時金も紹介

産休手当(出産手当金)はどこから振り込まれるのか、例えば夫の健康保険から振り込まれるのか、国民健康保険から振り込まれるのか、扶養だとどうなるのか、など気になりますよね。自分が産休手当を受け取る資格をもっているかを確認するためにも、どこから振り込まれるか、どこから出るのかについて解説します。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

産休手当(出産手当金)はどこから振り込まれる?

内容をまとめると

  1. 出産手当金は、ご自身の勤務先の健康保険組合から支給される
  2. 有給休暇の場合は「原則」支給対象外!
  3. 条件を満たせば、退職した場合でも出産手当金は支給してもらえる
  4. 出産手当金、出産育児一時金、育児休業給付金の制度をもらい忘れないようにしっかチェックする!

妊娠・出産は人生の中でも喜びの瞬間ですよね。


一方で、女性は産休にはいるため収入が減ってしまう不安があると思います。


仕事は休んで収入は減るし、出産の入院費用で出費がある…。


なにか子育てを支援するための手当はないのかと探し、この記事にたどり着かれたと思います。


この記事では、出産にあたりもらえる産休手当などについて紹介しています。


まずは、産休手当金(出産手当金)から解説していきますが、出産後にもらえる手当は下記の3つです。


※産休手当については、以降は正式名称の出産手当金と表現していきますね。

  • 出産手当金(産休手当金)
  • 出産一時金
  • 育児休業給付金
それぞれ、どこから支給してもらえるのでしょうか?

出産手当金はどこから?|健康保険組合から支給

出産手当金とは、出産を理由に休業することになった女性のための制度です。


どこからどのくらいもらえるのか気になる部分を中心に解説します。


出産による休業で収入が減ってしまう部分の補償です。(給与月額の2/3くらいを補償してくれる仕組み)


出産手当金は、ご自身の勤務先の健康保険組合から支給されますので、

  • 働いている(働いていた)
  • 勤務先の健康保険に加入している(加入していた)

ことが必要です。


夫の勤務先の健康保険からは出ませんのでご注意ください。


妻ご自身の健康保険組合から支給され、国民健康保険からも支給されません。


どのくらいの金額がもらえるか気になりますよね。


出産手当金は、給与額をもとに算出されますので、金額は一律ではありません。


ご本人ごとの計算が必要ですが、具体例をもとにいくらもらえるのか目安を示します。


出産手当金の計算には「標準報酬月額」を使います。


標準報酬月額とは、毎月の給料(残業代含む)の月額を区切りのよい幅で区分したものです。


健康保険組合のホームページで標準報酬月額表を公開していますし、会社からもらう標準報酬月額決定通知書でご自身の標準報酬月額が分かります。


それでは平均的なケースをもとに具体的な金額を計算してみます。


支給開始前12か月分の標準報酬月額を平均した金額を使いますので、下記の想定で算出します。


標準報酬月額が240,000円の期間が3か月あり、その後は妊娠したこともあり残業をしなかったため220,000円だったという場合を想定します。

  • 標準報酬月額240,000円の期間が3か月
  • 標準報酬月額220,000円の期間が9か月

(24万円×3か月+22万円×9か月)÷12か月=22.5万円

この22.5万円が標準報酬月額の12か月平均です。ここから支給日額を計算します。

22.5万円÷30日×2/3=5,000円

この5,000円が支給日額です。

では、どのくらいの期間支給してもらえるのでしょうか。

出産手当金のもらえる期間は、98日間です。

産前42日間(双子以上98日間)+産後56日間=98日間(双子以上154日間)

つまり、想定しているケースだと49万円の支給額です。

支給日額5000円×支給期間98日間=490,000円

また、出産が予定日より遅れた場合、その遅れた期間についても出産手当金が支給されます。

上の計算式にご自身の給与額を当てはめて計算してみてくださいね。

出産手当金の支給条件

出産手当金は、つぎの3つの条件を満たしていると支給されます。


  • 妻の勤務先の健康保険に本人が加入している
  • 妊娠4か月(85日)以降の出産
  • 出産を理由に休業中(無給の休業)
正社員でなくても出産手当金はもらえます。

アルバイトでも勤務先の健康保険に加入していれば支給対象です。

また、無給状態であることが支給条件なので、出産のために仕事を休んでいても有給休暇の場合は「原則」支給対象外です。

これには、例外があります。出産手当額のほうが金額が高い場合は、その差額が支給されます。

ちなみに、退職していても支給対象となる条件がありますので、のちほど解説します。

出産手当金の申請方法

まず、出産手当金の申請期間は産休開始の翌日から2年間です。


産休開始から2年が経過すると請求権が時効を迎えることは覚えておきましょう。


その申請方法ですが、大きな会社だと総務部門の担当者が申請してくれる場合もあるので、妊娠し安定期に入ったら所属部署だけではなく総務系の担当部門と相談したほうが良いでしょう。


ご自身で行う場合の申請先は健康保険組合です。


必要書類はつぎのとおりです。

  • 出産手当金支給申請書
  • 病院の証明(出産の記録)
  • 事業主の証明(勤務の記録)
  • 振込先口座情報
  • 健康保険証
  • 母子手帳
  • 印鑑
医師や勤務先に記入してもらう箇所がありますので、事前に申請書について確認しましょう。

(全国健康保険協会「協会けんぽ」より)

以上が出産手当金の紹介でした。

どこからご自身がどのくらい受給できるか把握できたでしょうか。

参考:会社を退職することになった場合、出産手当金はもらえるか

産休に入らず、そのまま退職する場合もありますよね。


産休中の無給を補償するのが出産手当金ですが、退職した場合でも出産手当金は支給してもらえます。


その条件について紹介しますので、よく確認してください。

  • 退職日までに健康保険加入期間が1年以上
  • 出産(予定)日から42日以内に退職
  • 退職日に働いていない

この3つの条件をクリアしていることが必須です。


健康保険加入期間が継続して1年以上あるという条件は、「継続して」がポイントです。


どこからが「継続」とみなされるのでしょうか。分りやすく解説しますね。


いまの勤務先が1年以内に転職してきた場合でも前職から空白期間がなければ大丈夫です。


つまり、A社に3月20日まで勤務してB社に3月21日から勤務というような転職ならば問題ありません。


ですが、A社に3月20日まで勤務してB社に4月1日から勤務というような転職だと健康保険加入期間に空白が発生していることにみなされて通算期間とされません。


B社の4月1日が1年以上という計算の開始時期になります。


この空白期間に任意継続制度で加入期間を延ばしていても国民保険に加入していても空白期間とみなされて継続していることにはなりません。


ちょっと複雑ですが、この「継続して1年以上」の健康保険加入期間がなくても一部ですが出産手当金をもらえる場合もありますので、加入している健康保険組合と事前の確認作業は怠らないでください。


例えば、出産日から42日以内の期間で産休をとっていた日数分は出産手当金が支給してもらえます。 


出産日又は出産予定日から42日(双子以上の場合は98日)以内の期間中に退職している必要があります。


ですが、妊娠中は人によっては安定期に入っても体調が悪いことが続き出産予定日の42日前まで働ける状態ではなく、42日よりも前に産休に入らざるを得ないということはよくあることですよね。


それでも退職の日付はよく考えてから決めてください。


退職日が出産日または出産予定日より42日(双子以上は98日)以内の期間中でないと、出産手当金の支給条件をクリアできないからです。


出産手当金をもらうには退職日をいつにするかが重要です。


1番分かりやすいのとにかく産休期間中(産前42日以内)に退職するということです。


また、退職日に勤務していないことも必要です。


なので、どこから退職していいのかは、出産予定日から逆算して勤務先と早めに相談して計画的に決めましょう。 

出産一時金はどこから?|健康保険組合から支給

出産育児一時金とは健康保険が適用されず高額になる出産費用の自己負担を支援することが目的の制度です。


どこからどのくらいもらえるのか気になる部分を中心に解説します。  


出産費用は高額ですよね。


厚生労働省によると出産費用の全国平均は約49万円です。


この費用を一括で準備するのはなかなか大変です。


40万円以上もポンっと一括で支払う必要はありません。つぎの制度があります。

  • 直接支払制度
  • 受取代理制度

ちなみに、出産育児一時金の支給額は42万円です。


詳しく解説すると、一児につき42万円で、多胎児だと人数分×42万円です。


双子なら84万円の支給額ということです。


支給元は加入している健康保険組合です。


支給条件などは、後述しますね。
直接払制度と受取代理制度、制度上の違いはありますが、支給を受ける側からすると大差ないです。


この制度によって、出産育児一時金の支給が健康保険組合から直接病院へ支払われますので、病院の窓口では、「出産にかかった費用−出産一時金」を支払うだけでよくなります。


全国平均との差だと約7万円を病院に支払うことになるわけです。


また、出産にかかった費用が出産育児一時金の額より少ない場合は、後日その差額が口座振込で支給されます。


※直接支払制度・受取代理制度を利用できるかどうかは病院によりますので出産する病院にご確認ください。

出産一時金の支給条件

出産育児一時金は、健康保険組合から支給されるものですので、健康保険組合に加入していることが必要です。


出産手当金とは違い、本人加入ではなくても、加入しているのが国民健康保険の場合でも支給対象です。

  • 国民健康保険加入者でもOK
  • 夫の健康保険の被扶養者でもOK
  • 妊娠4ヶ月(85日)以降の出産が対象
  • 流産、死産、人工妊娠中絶の場合でも対象  

ただし、産科医療補償制度に未加入の病院の場合は支給額に差があり404,000円です。


出産を予約している病院がどんな状況なのか確認してみたほうが良いでしょう。 

出産一時金の申請方法

出産育児一時金は原則42万円の支給があることが分かりましたよね。


その申請方法について紹介していきます。


申請方法は、出産一時金の受取方法の違いで分かれてきます。全ての方法を紹介しますね。


一般的には、病院が健康保険組合に直接申請し病院が健康保険組合から出産育児一時金を受け取ります。


しかし「出産育児一時金>出産費用」の場合は差額を口座に振り込んでもらう申請を本人が健康保険組合に行う必要があります。


 受取方法はつぎの3つですので、それぞれの申請の流れを順をおってみていきましょう。 

  • 直接支払制度
  • 受取代理制度
  • 産後申請方式  

【直接支払制度】 

最近はほとんどの病院でこの方式を採用していることが多いと思います。 

  1. 病院が提示してくる「直接支払制度」の同意書に記入
  2. 入院時に病院に健康保険証を提出
  3. 退院清算時に出産育児一時金だけでは足りない場合に差額を支払う
  4. 出産育児一時金から出産費用を差し引いて余りがあれば健康保険組合に差額請求の申請をして口座に振り込まれる 

【受取代理制度】

 小規模な病院だとこの方法での流れになることがあります。

  1. 健康保険組合から「受取代理制度」の申請書をもらう
  2. 病院で申請書に記入してもらう
  3. 健康保険組合に申請書を提出
  4. 入院時に病院に健康保険証を提出
  5. 退院清算時に出産育児一時金だけでは足りない場合に差額を支払う
  6. 出産育児一時金から出産費用を差し引いて余りがあれば健康保険組合に差額請求の申請をして口座に振り込まれる 


【産後申請方式】 

うえの2つと違い本人が出産育児一時金を受け取ります。

  1. 健康保険組合から「出産育児一時金申請書」をもらう
  2. 病院に申請書の証明書欄を記入してもらう
  3. 退院後に申請書を健康保険組合に提出
    4出産育児一時金の全額が口座に振り込まれる
     


≪差額の請求方法≫ 

出産育児一時金で病院が出産費用を受け取りますが、その出産費用のほうが少なかった場合、差額分は健康保険組合に申請して口座に振り込んでもらう流れになります。


直接、病院に健康保険組合から出産育児一時金を支給してもらった場合は、産後に差額の有無をしっかり確認する必要があると覚えておきましょう。


そして、差額でもらえる分がある場合は、健康保険組合に申請が必要です。


加入している健康保険組合や、国民健康保険によって請求方法や必要書類は異なりますので、詳細は加入している健康保険の窓口にお問い合わせください。


一般的なケースを紹介しますね。


普通の会社員として健康保険組合に加入しているケースでは、「支給決定通知書」というのが届いてから差額の受け取りを「健康保険出産育児一時金差額申請書」にて健康保険組合に申請します。


もっと早く「支給決定通知書」が届く前に差額を受け取りたいという場合は、「健康保険出産育児一時金内払支払依頼書」にて健康保険組合に申請します。


 それぞれの申請書は添付書類が以下のように異なります。


【内払金支払依頼書の場合】

  • 医療機関等から交付される直接支払制度に係る代理契約に関する文書の写し
  • 出産費用の領収・明細書の写し
  • 申請書の証明欄に医師・助産婦または市区町村長の出産に関する証明を受けること。ただし、医療機関等から交付される領収・明細書に「出産年月日」及び「出産児数」が記載されている場合は必要ありません。(証明が受けられない場合は、戸籍謄本、戸籍事項記載証明書、登録原票記載事項証明書、出生届受理証明書、母子健康手帳(出生届出済証明がなされているもの)などを添付してください。) 

【差額申請書の場合 】 

  • 添付書類不要 
  以上は全国健康保険協会「協会けんぽ」より


どこからご自身はどのくらいの金額を受給できるかイメージできたでしょうか。


出産費用の平均についてはこちらで詳しく解説していますので、ぜひ読んでみてください。

育児休業給付金はどこから?|雇用保険から支給

育児休業給付金は、育児休業中の生活が困らないように給料を補償してくれる制度です。加入している雇用保険から支給されます。


どこからどのくらいもらえるのか気になる部分を中心に解説します。  


育児休業給付金の支給開始は、育児休業を開始してから2か月後です。


また、育休は、8週間の産休のあとに取得するものですから、産後4か月後くらいから支給が開始するともいえます。 


支給期間ですが、子どもが2歳になるまでです。


保育園に入園させて仕事に復帰しようとするとだいたい1年半前後が育休期間な人が多いように思います。


この育休期間中ずっと支給されます。


では、いくらくらいもらえるのか計算していきましょう。

【支給開始から180日まで】育休開始時の賃金×67%

【181日以降から】育休開始時の賃金×50%

具体的に計算してみますね。


育休開始時の給料が月額20万円の場合で育休を5月1日から翌年の3月31日まで取得した場合だと…


最初の6か月間で合計約80万4千円の支給です。


その後は約約50万円です。


合計すると130万4千円で、月額ベース約11万8千円程度支給されることになります。


支給方法は2か月分をまとめて振り込まれます。

育児休業給付金の支給条件

育児休業給付金をもらうための主な条件をあげますね。


これらを満たしていればいいので正社員かパートかは関係ありません。

  • 子どもが1歳未満
  • 育休前の2年間に11日以上働いた月が12か月以上ある
  • 雇用保険に加入している
  • 育休後、退職予定がないこと
  • 育休中に給与の8割以上の金額が支払われていない
  • 育休中の勤務日数が月に10日以下

この条件を満たしていれば支給対象者です。


自身が条件を満たしているか、満たすにはどうすればいいか不安な場合には、早めに勤務先と相談するか、最寄りのハローワークに問い合わせしましょう。

育児休業給付金の申請方法

育児休業給付金の申請は勤務先がハローワークに行うのが基本です。


提出が必要な書類はコチラです。

  • 育児休業給付受給資格確認票
  • 育児休業給付金支給申請書
  • 休業開始時賃金月額証明書
  • 出勤簿
  • 母子手帳

 勤務先に申請を任せる場合は、母子手帳などを用意しておき、「資格確認票」と「申請書」に必要事項記入を求められたら記入して勤務先に提出しましょう。


流れはこのような申請の流れです。

  1. 受給する本人が勤務先に育児休業を申請する
  2. 勤務先がハローワークに書類を申請する
  3. 「受給資格確認票」と「申請書」を本人が記入する
  4. 母子健康手帳の写しなどと合わせて勤務先に提出する
  5. 本人提出書類と出勤簿などの勤務先が用意する書類をハローワークに提出する 

これが初回の流れです。


初回以降も2カ月に1度、申請書を提出する必要があります。

産休手当はどこから出るのかのまとめ

どこからどのくらいもらえるのかイメージできたでしょうか?


今回の記事のポイントはこの3つの制度でした。

  1. 出産手当金
  2. 出産育児一時金
  3. 育児休業給付金

正社員だけではなくパートでも条件を満たしていれば受給できる3つの制度をしっかりと理解して、もれることがないようにしましょう。


妊娠・出産・育児の初期は大きな出費が連続する一方で休業や退職などで収入が減り、家計にとっては苦しい時期です。


皆さん、給付を受けられるものは最大限活用して、この期間を乗り切っているのが実情です。


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