更新日:2018/09/28
在宅酸素療法は公的医療保険でサポートしてくれる?詳しく解説!
近年、在宅医療が推進されていますが酸素療法も例外ではありません。この酸素療法には特別な器具を使います。そのため在宅とはいえ医療保険によるサポートがどの程度なされるのか気になるものです。今回は公的医療保険と在宅酸素療法について考えてみました。
目次を使って気になるところから読みましょう!
在宅酸素療法に公的医療保険は適用されるか?
時々街角でも見かける事がありますが、小さいキャリーバッグのようなものから出ているチューブを鼻につけている方がいらっしゃいます。
あれは酸素吸入の補助器具として持ち歩いているもので、呼吸器疾患の在宅酸素療法といって、在宅医療の一環として広まっているものです。
その姿を見て、「自分もタバコを吸っているし、そのような治療をするようになったら、費用はどう負担すればよいのか?」といった不安を持った方もいらっしゃるのではないでしょうか?
この記事では、
- そもそも在宅酸素療法ってどんな治療?
- 在宅酸素療法にかかる費用はどれくらい?
- 公的医療保険の対象になるには条件がある?
- 自己負担が高くなりすぎた場合の救済制度
について解説していきます。
この記事を最後まで読んでいただければ、「在宅酸素療法の基本的な内容やそこにかかる費用」「負担が重くなりすぎた場合、どうすればよいのか」といった疑問の解決につながるはずです。
ぜひ、最後までお付き合いください。
在宅酸素療法とは?
この治療法は高度慢性呼吸不全、肺高血圧症、慢性心不全、チアノーゼ型先天性心疾患といった病気をもっている方に適用されます。
いずれも呼吸器官の働きが低下、あるいはもともと弱い方が患ってしまう疾患やそこからくる症状です。
こうした方は体内へ取り込める酸素の量が少なくなってしまうので、運動不足や栄養不足になってしまいます。
そうした結果、呼吸筋や手足の筋肉がやせてしまい不健康な循環におちいってしまってしまいます。
ですので、在宅酸素療法とは、こうした悪循環を改善するための治療法とも言えるでしょう。
在宅酸素療法の効果は?
実際に、在宅酸素療法により改善されるであろうという症状は次の通りです。
- 息切れの緩和
- 肺や心臓への負担軽減
- 睡眠中の酸素不足の改善
- 頭痛、イラつきの緩和
- 集中力や記憶力の向上
こうした効果は結果として寿命を引き延ばすことにもつながってくると考えられます。
在宅酸素療法の費用
では、在宅酸素療法における費用はいくら位かかってくるのでしょうか?
まず、在宅酸素療法は医療保険の適用になるかという点ですが、在宅酸素療法は公的医療保険が適用されます。
これは、全額自己負担ということになると相当な額になってしまい、一般的な患者では手を出せない治療法になってしまう事も考えられます。
そのため、公的医療保険として年々この在宅酸素療法について支援がなされているといえますが、その内容は、ほぼ年毎に変化するものと考えて、チェックしておく事も重要です。
今回は1か月間でどのくらいかかるのかをお示ししたいと思います。
まず必要なのは酸素を供給する装置ということになります。
酸素装置には持ち運べる携帯型とご家庭に置いておく設置型の2種類があります。
健康保険で3割負担の方ですと、この酸素装置2種の自己負担額は、それぞれ月額15,540円が掛かります。
また、この酸素供給装置には、それを動かすのに必要な電気代と、酸素を作るのに必要な精製水の費用がかかります。
電気代は24時間連続使用して月額1,500円~5,000円程度、精製水は月に10本ほど使うと仮定して月額1,000円~1,500円程度かかるようです。
これらに加え、月に一度の指導管理費7,500円が必要になります。
ここまで、健康保険3割負担という医療保険を加味すると、在宅酸素療法には月額約29,540円の自己負担が費用として必要という試算になります。
在宅酸素療法に公的医療保険は適用される2つの条件
そのために、2つの条件に適合しなくてはならないとされています。
1つは、診察・治療を担当している医師の判断が必要となる「医学的な条件」であり、もう1つが、治療を継続させ、生活の質の向上をはかるための「社会的条件」です。
ここからは、この「医学的な条件」と「社会的な条件」という2つの条件が、それぞれどのような内容なのかについてご紹介していきます。
医学的な条件
在宅酸素療法が公的医療保険の適応になるためには、ある程度症状が安定し、在宅治療が可能であるという医師の判断が必要となります。
また、適応となる疾患は以下の通りです。
- チアノーゼ型先天性心疾患
- 高度慢性呼吸不全
- 肺高血圧症
- 慢性心不全
なお、チアノーゼ型先天性疾患、肺高血圧症および、末期医療における症状緩和については医師の判断で保険を適応することが出来るとなっています。
社会的な条件
- 患者および家族が在宅酸素療法の必要性を理解している
- 長期間の治療が必要
- 定期的な通院(往診)が必要
- 酸素機器の管理が継続的に出来る
- 医療機関への緊急連絡
- 禁煙が完全に守られている
1ではこの治療法が必要であると、患者だけではなくご家族を含めしっかり理解できていることです。
治療には家族の協力が欠かせないものであるため、患者である本人だけが理解するのではなく必ず、家族全員が理解されたうえで治療に入らなければなりません。
2についてですが、この治療はかなり長期間の治療が必要となるため、そのことをよく理解・納得したうえで治療を開始することが大切です。
3・4・5は酸素機器の状態を把握するという理由もありますが、患者本人の健康状態等、医療機関との緊密な連携が取れる状態を確保しておくことも重要なポイントといえます。
6の禁煙については、喫煙が症状をいちじるしく悪化させる恐れがあることから、必須の条件であるといえます。
在宅酸素療法を始めるにあたっては、それに用いる装置になれることも重要ですが、その治療を継続して適切に行っていくことがさらに重要になってきます。
そのためにも、主治医である医師や、看護し・機器提供業者に十分理解・納得がいくまで説明を受けることも大切です。
公的医療保険が適用可の場合、高額療養費制度を活用しよう
高額療養費制度とは、医療費の家計負担が重くなりすぎないように、医療機関に支払う医療費が、1か月の設定上限を超えた場合に、その超えた額を支給してくれる制度です。
上限額は、所得や年齢に応じて定められていて、いくつかの条件を満たすことにより、負担をさらに軽減する仕組みも設けられています。
もし、治療費の継続的な負担が気になる場合は、こういった公的医療保険における各制度をあらかじめ調べておき、自分のケースが適応になるのか等を確認しておくと安心です。
65歳以上の方は高齢者医療制度によりさらに安くなる
簡単に説明すると、公的医療保険における自己負担の割合は、65歳~69歳は3割、70歳~74歳は2割、75歳以上は1割負担になります。
これに関しては、所得などの条件も関係してきますので、自分がどこに属するかを事前にチェックしておきましょう。
在宅酸素療法にかかる費用においては、公的医療保険適応外の部分で必要なものはないか等もあらかじめ確認しておくとよいかもしれません。
まとめ:公的医療保険と在宅酸素療法について
- 在宅酸素療法とは、長期にわたって酸素吸入を自宅や外出先で行ってく治療法の事
- 在宅酸素療法には、月額約30,000円(公的保険適応後)の費用がかかる
- 公的医療保険の適応になるには「医学的条件」と「社会的条件」のどちらにも適合することが必要
- 治療費が高額になったっ場合は高額療養費制度の活用を検討しよう