もしもの時に備えて、海外旅行保険の損害賠償責任特約について知ろう

海外旅行保険に自動的に付帯される損害賠償責任特約。万が一、他人に損害を与えてしまった場合に必要な補償ですが、その内容についてはご存知ですか。海外旅行保険の損害賠償責任特約について、補償される場合、されない場合を解説します。

海外旅行で賠償請求された場合、海外旅行保険でどのぐらい補償されるの?

みなさんは海外旅行にどのようなイメージを持っていますか。

見知らぬ国で過ごす時間は、しばしの間、夢をみているようなものかもしれません。


しかし、日本とは文化や生活習慣もちがう外国では、思いもよらず、他人に迷惑をかけてしまう可能性もあります。


その場であやまってすむものならよいのですが、現実に損害を与えてしまった場合には、その損害を賠償しなければなりません。


そのような時には海外旅行保険の賠償責任特約が役に立ちます。


しかし、海外旅行保険の賠償責任特約でどこまで補償を受けられるのか、不安もあります。


ここでは、海外旅行保険の賠償責任特約の内容と補償される範囲について解説します。




損害防止費用、緊急措置費用、裁判などにかかった費用全般も補償されることもある

海外旅行保険の損害賠償責任特約では、旅行中に他人にケガを負わせたり、他人の所有するものを壊したりした場合に発生する損害賠償金が支払われます。

支払われる損害賠償金は現実に発生する相手の治療費や壊したものの修理代となります。


しかし、保険会社によってはその他の費用、たとえば、損害の拡大を防止するために有益とされる損害防止費用や緊急措置費用、さらに裁判にかかる費用や弁護士に対する報酬なども支払われる可能性があります。


この点については、海外旅行保険に加入する際、取扱保険会社に確認することをおすすめします。




海外旅行保険に付帯させることができる賠償責任補償特約とは

海外旅行保険に付帯させることができる賠償責任特約は、契約期間中、偶然に他人の身体を傷つけたり、所有するものを壊したりして、法律上の損害賠償責任を負った場合に支払われる保険のことをいいます。


注意するべきは、法律上の損害賠償責任を負った場合に補償の対象となるという点です。


道義上の責任はあっても、法律上の責任はない場合には補償はされません。


簡単に説明すると、法律上、明確な根拠がなく、そのことに対する罰則もない場合の責任が道義的責任と呼ばれるものです。


それに対して、法律上、明確な根拠があって、それに基づく罰則も定められているものが法律上の責任と呼ばれます。


海外旅行保険の賠償責任特約では、法律の上で明確な根拠のある損害賠償責任を補償の対象としていますので、相手に与えた損害がそのことに当てはまらない道義的なものであれば補償はされないのです。

また、各保険会社ともに1回の事故につき、支払われる保険金の上限は1億円で、自己負担額はありません。


補償の対象となるものの範囲には、宿泊するホテル内の動産やルームキーに対する損害、友人の家に宿泊する場合にはその家の動産に対する損害、さらには旅行中に利用するレンタル用品に対する損害などが含まれます。


さらに、法律上の責任を問われない制限能力者、たとえば、未成年者や成年被後見人などの行為によって法律上の損害賠償責任を負った場合には、その親権者や成年後見人に対して損害賠償が請求されることとなりますが、その場合でも、海外旅行保険付帯の賠償責任特約による補償の対象となります。




海外旅行保険の賠償責任補償特約で保険金が支払われないケースや事例とは

海外旅行保険の賠償責任特約は、海外旅行中に偶然発生した事故によって法律上の損害賠償責任を負った場合、保険金額を限度にその損害をてん補する保険です。

旅行中の偶然な事故による法律上の賠償責任が補償されますので、保険でカバーされる範囲は広いのですが、それでも対象とならない事故はあります。


次にその事例を解説します。

故意によって賠償責任が生じた場合や戦争、その他の変乱や核燃料物質など

損害賠償責任特約の対象とならない事故として、被保険者が故意に起こした事故によるものがあります。

たとえば、宿泊しているホテル内の調度品をわざと破損させた場合の損害賠償責任は補償されません。


また、戦争、武力革命、内乱などの武力による変乱や核燃料物質による事故などの損害賠償は補償されません。


ただし、武力による事故のうち、テロによる損害は補償の対象となります。

保険の対象となる方の職務遂行に直接起因する損害賠償責任

損害賠償責任特約の対象とならない事故として、保険の対象となる方の職務遂行に直接起因する損害賠償責任があります。

具体的には、企業に雇われている人が海外旅行中に雇い主の指示を受けて行動中に事故を起こした場合、そのことによって発生した損害賠償責任は補償されない、というものです。


また、保険会社の重要事項説明書には被保険者の職務遂行に直接起因する損害賠償責任は補償されないと記載されていますので、補償の対象からはずれるのは、会社員だけではなく、自営業者も含まれることとなります。


海外旅行はレジャーであって、仕事ではないため、このような規定が置かれているのですね。

保険の対象となる方の同居の親族、旅行行程を同じくする親族に対する損害賠償責任

海外旅行保険の賠償責任特約では、被保険者の同居の親族、旅行行程を同じくする親族に対する損害賠償責任は補償されません。

たとえば、家族で海外旅行に出かけた際に、妻の持ち物をあやまって壊してしまった場合などは補償の対象とはならないのです。


保険会社の重要事項説明書には、他人の身体や財物に対して与えた損害のうち、法律上の損害賠償責任を負った場合に保険金を支払う、と記載されており、被保険者の同居の親族や旅行行程を同じくする親族は他人には含まれません。

航空機、船舶、車両、銃器の所有、使用、管理に起因する損害賠償責任

海外旅行保険の賠償責任特約では、航空機、船舶、車両、銃器の所有、使用、管理に起因する損害賠償責任は補償されません。

たとえば、海外旅行先でレンタカーを借りて運転をし、事故を起こした場合、賠償責任特約では、補償されないのです。


その場合には、海外旅行保険の賠償責任特約とは別に、自動車運転者損害賠償責任特約に加入する必要があります。


この特約は旅行先でレンタカーを借りて運転をして事故を起こした場合の損害を補償する保険です。


補償額は1事故につき、対人賠償が1億円、対物賠償が500万円となっています。


ただ、自動車運転者損害賠償責任特約は海外旅行保険に自動的に付帯されている補償ではないので、加入するためには、保険会社にその旨申し出る必要があります。 


また、この特約による補償を受けられる国は、アメリカ(ハワイ、グアム、サイパン、プエルトリコを含む)とカナダに限定されており、それ以外の国では補償されません。


さらに、補償が認められるレンタカー会社も決められているため、それ以外の会社で借りたレンタカーで事故を起こした場合の補償はないのです。


もしも、アメリカ、カナダ以外の国でレンタカーを借りて運転をするのであれば、レンタカー会社で加入できるレンタカー保険を利用しましょう。

保険の対象となる方が所有、使用または管理する物を破損した場合、その物の正当な権利を有する者に対して負担する損害賠償責任(宿泊施設のルームキー、賃貸業者から借りた旅行用品などは除く)

たとえば、旅行先で使用するために、友人から借りて持っていったものを破損した場合は、海外旅行保険では補償されません。


しかし、宿泊先のホテルで利用するルームキーやレンタル業者から借りたレンタル用品に対して与えた損害は補償されます。

海外旅行保険だと宿泊している施設の出火責任や家財の盗難までは補償されない

海外旅行保険の賠償責任特約では、被保険者の所有、使用または管理する不動産に起因する損害賠償責任は保険金支払いの対象とならない、とされています。

そのため、被保険者が宿泊している施設であやまって火事を出してしまった場合や、家財が盗難された場合に、その施設の所有者い対する損害賠償は海外旅行保険では補償されません。




まとめ

いかがでしたか。

海外旅行保険の賠償責任特約の内容について解説してきましたが、ご理解いただけましたでしょうか。


海外旅行保険に加入する際には、損害賠償責任で補償される範囲をあらかじめ確認することが必要でしょう。

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