海外旅行保険の自動車運転損害賠償責任特約の内容とその限界を知る

海外で車を運転する時には海外旅行保険に入っているだけでは不十分です。自動車運転損害賠償責任特約に加入しなければ、事故が起きた時に補償されません。ただし、限界もあります。海外旅行保険の自動車運転損害賠償責任特約の内容と、その限界を補うための他の方法を解説します。

自動車運転事故は海外旅行保険で補償されるのか

海外旅行に出かけたら、車を運転してみたいと思うことはありませんか。

レンタカーを借りたり、愛車を持ち込んだりして異国の道を走る、というのは旅の楽しみのひとつでもあるからです。


しかし、車の運転に事故はつきもの。


安心して車を運転するためには自動車保険に加入することは必須です。


ところで、海外旅行保険には、現地で自動車運転をすることで事故を起こしてしまった場合の補償は付いているのでしょうか。


答えは否です。


海外旅行保険に付いている損害賠償責任特約では、自動車運転による事故は補償されません。


しかし、特約を付けることで自動車運転事故が補償されるようになります。


ここでは、海外旅行に出かけて自動車の運転をする場合に知っておきたい海外旅行保険の補償内容について解説します。




自動車運転事故は海外旅行保険の損害賠償責任特約を追加すると補償される

海外旅行保険に付いている損害賠償責任特約で担保されるのは、偶然起きた事故によって他人の体を傷つけたり、他人のものを壊したりすることによって被る賠償責任です。

たとえば、買い物中にうっかりして、店頭の商品を壊してしまった場合の補償がこれにあたります。


しかし、この損害賠償責任特約は、船舶や車両、航空機、銃器の所有、使用、管理が原因で発生した事故による損害賠償は担保しないとされており、自動車運転事故は補償の対象外となっているのです。


そのため、海外で自動車の運転を計画しているのであれば、通常の海外旅行保険にプラスしてオプションとして付けることができる自動車運転損害賠償責任特約に加入しなければなりません。


自動車運転損害賠償責任特約で補償されるのは、自動車運転による事故によって生じた他人への損害賠償責任の費用と訴訟になった場合の訴訟費用です。


補償される金額は対人賠償が1億円、対物賠償が500万円となっています。


注意しなければならないのは、現地で借りたレンタカーに保険が付いていた場合、まず、その保険を利用し、それでも賠償責任額に足りない時に、その部分に対して自動車運転損害賠償責任特約による補償がされる、ということです。


事故による損害賠償額すべてを支払うものではないのですね。


また、日本国内の自動車保険のように示談代行サービスは付いていないので、事故の解決は現地の保険会社にお願いすることとなります。


その際、自動車運転損害賠償責任特約から損害賠償金を支払う場合には、必ず保険会社の同意を得なければなりません。


保険会社の同意を得ずに示談を行うことは認められていないのです。

海外旅行保険の損害賠償責任特約で補償されない自動車運転事故の場合がある

海外旅行保険の自動車運転損害賠償責任特約は、海外を旅行中の自動車運転による事故を補償するものですが、自動車を運転していて起きたすべての事故が補償の対象とはなりませんので注意が必要です。

たとえば、レンタカーなのか、友人から借りた車なのか、といった自動車の使用形態の違いや、純粋にレジャーを楽しむためなのか、もしくは仕事で運転しているのかといった使用目的の違いによって、補償の対象になるのかならないのか、が決められています。


使用目的の違いによる補償の有無についていえば、自動車の修理や売買などの仕事の目的で自動車を運転している場合には、補償の対象とはなりません。


また、自動車競技を行っている場合の事故も補償されないこととなっています。


あくまでもレジャーを目的としたドライブ中の事故を補償する特約なのです。

レンタカー以外の自動車運転事故は損害賠償責任特約で補償されない

自動車の使用形態の違いによる補償については次のようになります。


海外旅行保険の自動車運転損害賠償責任特約では、レンタカーを借りて運転している時に発生した事故による損害賠償責任を補償するとなっています。

レンタカー以外の車による事故は保険の対象とはなっていないのです。


たとえば、現地で友人や知人から借りた自動車を運転している際に起きた事故や、自分の車を持ち込んで事故を起こした場合、さらにはゴルフカートなどのレジャーに使用される車両を運転中に事故を起こした場合などは自動車運転損害賠償責任特約では補償されないこととなります。

飲酒運転や無免許運転など過失による自動車運転事故は損害賠償責任特約で補償されない

海外旅行保険の自動車運転損害賠償責任特約で補償されないケースは、自動車の使用形態や使用目的の違いによるものだけではありません。


保険会社の約款には保険金が支払われない場合として、被保険者の故意、重大な過失という記載があります。


飲酒運転や無免許運転などは補償の対象とはならないのです。




海外旅行保険の損害賠償責任特約の加入するときに知っておくべきこと

これまで解説してきたこと以外に、海外旅行保険の自動車運転損害賠償責任特約に加入する際、知っておくべきことは次の通りです。
  • 日本国内で加入している自動車保険では、海外で自動車運転による事故は補償されません。他社運転危険担保特約などの特約が付いている場合でも同様です。
  • 車両保険への加入はできません。
  • 自動車運転損害賠償責任特約が利用できる国は限定されています。
  • 自動車運転損害賠償責任特約が利用できるできるレンタカー会社も限定されています。
  • 自動車運転損害賠償責任特約が利用できない国では、レンタカー保険への加入も検討する必要があります。
  • クレジットカードに付帯されている海外旅行保険には他人に対する損害賠償責任を担保されていません。
  • 被保険者の配偶者や親族に対する事故(人身事故、物損事故)については補償されません。

クレジットカード付帯の海外旅行保険では損害賠償責任特約に加入できない

クレジットカードには海外で自動車を運転していて起きた事故を補償する保険が付帯されています。

しかし、補償されるのは被保険者自身が事故によって被った被害に対する損害と携行品に対する損害です。


他人を傷つけたり、他人のものを壊したりした場合に被る損害賠償責任については補償されません。


そのため、他人に対して負う損害賠償責任を担保するためには、海外旅行保険の自動車運転損害賠償責任特約に加入する必要があります。

海外旅行保険の損害賠償責任特約はアメリカやカナダに限定されていること

海外旅行保険の自動車運転損害賠償責任特約を利用することができる国はアメリカ(ハワイ、サイパン、グアム、プエルトリコを含む)とカナダの二か国に限られています。


また、利用できるレンタカー会社は決められています。


対象となるレンタカー会社については、海外旅行保険加入の際、保険会社に確認してください。

損害賠償責任特約に加入できないときは現地のレンタカー保険か自動車保険に加入する

アメリカやカナダ以外の国で自動車を運転する場合には、現地のレンタカー保険もしくは自動車保険に加入しなければなりません。

現地でレンタカーを借りると自動的に付帯されるのがレンタカー保険です。


内容は対人賠償と対物賠償がセットになっています。


補償額は、国によって異なりますので、加入の際に確認してください。


レンタカー保険による補償額では心配な場合には、任意で上乗せの保険に加入することができます。


上乗せする保険契約では、免責金額はありますが、車両保険への加入もできます。


なお、海外で自分や友人の車を運転する場合には、レンタカー保険は利用できないので、現地の自動車保険に加入しなければなりません。




まとめ

いかがでしたか。


海外で自動車を運転する際に注意しなければならない海外旅行保険の内容について解説いたしましたが、ご理解いただけましたでしょうか。


海外旅行保険は万能ではありません。


旅行する国や、自動車の使用形態によって補償が異なってくるのです。


安全で楽しい旅行にするために、海外で自動車を運転する場合には海外旅行保険だけではなく、他の方法による補償のあり方も検討するべきでしょう。

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