外貨建て保険の銀行窓販に金融庁が改善指導?元本割れリスクと苦情

2018年末より外貨建て保険の銀行窓販に対する金融庁の介入が開始。多発する苦情の背景について、商品説明不足や不透明な手数料に対する金融庁の対策と共に解説。後半では外貨建て保険の元本割れリスク(危険性)をわかりやすく解説、メリットやデメリットを明らかにします。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

外貨建て保険の販売に金融庁が「指導」?話題のニュースの背景とは

最近、「外貨建て保険に関する苦情が相次いでいる」「金融庁が保険会社に指導勧告」などのニュースについてよく耳にしませんか。


銀行で定期預金を開設した際などに、外貨建て保険の勧誘を受けられた方もいらっしゃるかもしれません。


銀行の窓口でおすすめされる商品だから安心と思って、外貨建て保険に加入される方も多いと思います。


そのような中で、なぜ外貨建て保険に関する苦情の増加や金融庁が保険会社に指導勧告などのニュースがでているのでしょうか?


この記事では

  • 金融庁と外貨建て保険の販売に関するニュース
  • 話題の背景について徹底解説
  • 外貨建て保険のリスクとメリットについて
  • 外貨建て保険の出口戦略について

について解説していきます。


この記事を読めば、難しいニュースの論点と外貨建て保険のリスクについて簡単に理解することができます。


ぜひ、最後までご覧ください。

金融庁の指導が入る?外貨建て保険の銀行窓販の問題点とは

金融庁は2019年4月9日、投資商品に関する意識調査の結果を発表しました。


調査の中では、およそ7割の顧客が投資商品を購入する際に、商品内容の説明を受けていないとの調査結果が判明しました。


特に、外貨建て保険は銀行窓口でも販売に注力している状況があり、苦情が多いことから、販売担当者の説明不足や商品に関する知識が不足しているのではないかとの問題が浮上しているようです。


金融庁としても今回の調査結果を受け、生命保険会社や銀行への具体的な調査を実施するかもしれません。

顧客本位ではない?商品の説明不足と不透明な初期手数料

生命保険協会のモニタリング内容にもあるように、銀行の外貨建て保険の商品説明については大きな問題点が2つあります。

  • 為替リスクの正しい理解を促していないこと 
  • 積立利率の定義の曖昧さとユーザーの事実誤認の可能性があること
     
外貨建て保険はあくまでもドルベースでの元本保証がされているだけですので、円貨にしたら為替レート次第では元本割れの可能性があります。 


また運用利回り(利息、利益配当の元金に対する割合)については、積立利率と混同して、誤認している方が多いようです。 


払込保険料から初期手数料や為替手数料などを差し引いた金額の実質利回りの表示は、各生命保険会社で消極的であることが問題のようです。 


その上、各生保の商品の多様性や定義の曖昧性も伴い、ユーザーの誤認は必然といえるでしょう。 

銀行側の説明不足の背景とは?外貨建て商品の販売強化について

ではなぜ金融庁は投資商品に関する調査を実施したのでしょうか。


実は2018年末、生命保険協会が銀行窓口で販売されている外貨建て保険について、実態を調査しました。


調査のなかで、生命保険協会や各生命保険会社が受けた苦情件数がなんと前年度比で10%以上増加していることが判明しました。


苦情が増加している主な要因としては、銀行窓口における外貨建て保険の販売が増加しているためです


長引く低金利の影響で定期預金の金利が低くなっていることから、外貨積立の高金利を売り文句に、外貨建て保険の販売に注力してきました。


長期間のデフレにより貸し出し利子が増えない銀行は、外貨建て保険の販売による手数料を目的に販売を積極的に行ってきたのです。


そのような中で退職金を得た高齢者などを対象に外貨建て保険を積極的に販売してきた経緯があります。


このようなユーザーは外貨建て保険と円建て保険商品を混同し、為替リスクなどの認識がなく加入しているケースが多いようです。


金融庁としても消費者保護の観点から、外貨建て保険に対する消費者の声を調査する必要があったのでしょう。


銀行窓販の主力商品?外貨建て保険は「儲かる」

銀行はなぜそこまで外貨建て保険の販売に力を入れるのでしょうか。

それは何よりも手数料(付加保険料)が高く儲かるからです

バブル崩壊後の不良債権問題もあり、企業は可能な限り借り入れ金を減らすように努めてきました。

銀行としては優良企業への貸し付けが増えないこともあり、収益の改善がなかなか図れない状況が続いてきました。

そのような中で販売手数料が商品の7%程度と言われる外貨建て保険は、銀行にとって収益改善の光となる商品になりました。

100万円の商品を販売すると銀行側には7万円ほどの収益となるため、貯蓄額の高い顧客に積極的に販売することにより利益を拡大してきました。

なお、その他の投資商品と比較すると、銀行窓口でよく見かける投資信託の販売手数料は3%程度であることから、いかに外貨建て保険の販売手数料が高いか分かると思います。

外貨建て保険は理解が難しい!商品・リスクの説明不足

先ほどの金融庁や生保協会による調査にもありましたが、外貨建て保険に関する苦情はなぜ多いのでしょうか。


まず、販売数自体が保険会社や銀行の利益面から増えていることについて説明しました。


もう1つの要因としては、銀行員の説明力不足が上げられています。


保険商品は円建てであっても、定期保険、終身保険、養老保険など様々な種類があり、消費者側にとって内容を理解することが難しい商品です。


特に外貨建て保険は、通常の円建て保険商品の複雑さに加え、為替の影響もあることから、販売する側の銀行員にとっても理解し難く、銀行員側の説明力不足による問題が指摘されています。

外貨建て保険のデメリットとは?元本割れリスクや危険性を解説

それでは外貨建て保険にはどのようなリスクがあるのでしょうか。


一般的には、

  1. 為替変動による解約返戻金の増減
  2. 早期解約時の元本割れリスク
  3. 円と外貨との交換時に発生する為替リスク
が上げられます。

1:為替レートの変動により解約返戻金が上下

円建ての保険では、1,000万円と設定された保険金は1,000万円が確実に支払われます。


しかしながら外貨建て保険の場合は保険金が円ではなく米ドルや豪ドルなどで設定されます。


保険金を受け取る際の円安や円高によって、円換算した場合の保険金額が変動することが外貨建て保険では発生してしまいます。


米ドルで10万ドルに保険金が設定されている保険のケースで考えてみましょう。


現在米ドルは1ドルあたり110~111円程度になっています。


これが1ドル90円の円高となっている状況では、10万ドルの保険金を円に両替すると10万ドル×90円の900万円となります。


それでは1ドル120円の円安となった場合はどうでしょうか。


10万ドル×120円の1,200万円となります。


同じ10万ドルの保険金でも、為替が円安となっているか、円高になっているかで数百万円の差額が発生してしまいます。

2:外貨建て保険は早期解約による元本割れの可能性がある

外貨建て保険は円建ての保険と比較すると円を外貨へ交換する手間が発生するとともに、外貨建ての国債にてお客様から預かった資産を運用する必要があります。


円建ての保険商品と比較すると諸経費がかかり、金融商品の流動性も低くなることから、早期に解約すると同内容の円建て商品と比較して解約返戻金が低く設定されている場合があります。


また、中途解約の場合は保険会社が被る諸費用を返戻金から控除する、解約控除があるので元本割れのリスクが高まります。


もちろん保険契約時と比較して円高が進んでいる場合も、当初想定していた解約返戻金額を下回り元本割れとなる可能性が高くなります。

3:手数料に注意!為替手数料は金融機関によって変化

外貨建て保険は、先ほど説明した通り、お客様から預かった円を外貨に両替する必要があります。


保険契約開始時にはお客様から預かった円を米ドルなどの外貨に両替し、保険が解約される際は外貨を再度、円に両替する必要があります。


その際にはそれぞれ為替手数料がかかり、為替手数料はお客様の負担となるため、円建ての商品と比較するとお客様負担となる諸経費が高くなるリスクがあります。

外貨建て保険のメリットとは?高金利な外貨で分散投資が可能

これまで外貨建て保険のリスクについて説明してきました。


為替が円高になった際のリスクや為替手数料の負担などが外貨建て保険には発生しますが、メリットはないのでしょうか。


外貨建て保険のメリットは何と言っても金利の高さです。


日本は長期間のデフレとなっており、その対策として日銀は低金利政策を維持してきました。


しかしながら、アメリカや豪州は比較的経済が順調に推移していることから、政策金利を日本よりかなり高く設定しています(アメリカは2.5%、豪州は1.5%)。


外貨との金利差が発生することから、外貨建て保険では円建て保険では実現できない、高利回りとなっています。

外貨建て保険の出口戦略について!FPさんに相談しませんか?

これまで外貨建て保険のメリットやデメリットについて説明してきました。


この記事を読まれている方の中には既に外貨建て保険に加入しており、金融庁や為替の動向が気がかりで、今後外貨建て保険をどのように運用していくか心配されている方もいらっしゃるでしょう。


今後の対策としては、費用対効果の低い外貨建て保険に加入されている場合は、利回りの高い外貨建て保険に乗り換える方法があります。


また、外貨預金にて外貨による運用を継続しつつも、為替レートの動向にあわせて徐々に円に両替していく方法があります。


どちらの手法をとるにしても、保険や為替に関する知識があるアドバイザーに相談すると損失を最小限に抑えながら資産運用を継続することができます。


外貨建て保険について経験豊富なアドバイザーと相談されたい方は「マネーキャリア相談」を活用されることを強くオススメいたします。

外貨建て保険の販売に対する金融庁の対応に注目

この記事のまとめとしては、
  • 是正指導の背景は、銀行窓販の増加や説明不足にある
  • 外貨建て保険は為替リスクに注意する必要がある
  • 出口戦略についてのご相談は「マネーキャリア相談」へ
でした。

余談ですが、外貨建て保険と併せて金融庁は他の保険についてもメスを入れています。

今年に入り、中小企業の経営者向けの生命保険、いわゆる「節税保険」について、金融庁と国税庁が各生命保険会社から聞き取りを行うとの報道がありました。

金融庁と国税庁はここ数年、節税保険について問題視し、各保険会社へ注意を行っていましたが、保険会社としては主力商品である経営者向け保険を簡単に辞めるわけにはいきませんでした。

そのような中で、金融庁や国税庁による保険会社への具体的な動きがあったことから、金融庁などの意向に逆らい続けることを危険と判断した各生命保険会社は、節税保険の販売について販売を停止した経緯があります。

外貨建て保険についても金融庁が注視していることから、今後の各保険会社への金融庁からの指導勧告や販売停止については気になるところです。

金融庁の動向も把握しながら、ほけんROOMでは皆様のためのアドバイスや記事作成を継続してまいります。

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