更新日:2021/12/01
外貨建て保険に是正指導?実質利回りの明確化と手数料の関係
最近、外貨建て保険が金融庁から是正指導を受けたことをご存知ですか。外貨建て保険は為替相場変動によって受取額が増えるなどのメリットがある一方、実質利回りが見えずらく、苦情も相次いでいます。今回は是正指導を受けたワケや外貨建て保険の注意点を解説します。
目次を使って気になるところから読みましょう!
外貨建て保険の不明瞭な商品の見せ方に是正指導?
かつては「低金利のこの時代に、返戻率130%!」というような派手な宣伝文句ばかりだった外貨建て保険の広告ですが、最近は注意喚起の文章が多くなっています。
本当は外貨建て保険は危険な商品だったのかと、不安になる方もいることでしょう。
突然の広告方針の変化に、何かあったのかと勘ぐりたくもなりますよね。
実は、外貨建て保険は「不明瞭な商品説明を改善すべき」と金融庁から是正指導を受けていることをご存じでしょうか?
そこで、この記事では外貨建て保険の是正指導について、
- 金融庁による保険会社への是正勧告の内容とは
- 数字のトリックに騙されない!外貨建て保険の「実質利回り」とは
- 外貨建て保険でもっとも注意すべき「為替リスク」とは
以上のことを中心にお伝えしていきます。
この記事を読めば外貨建て保険に対する是正指導の内容が分かり、より安全に外貨建て保険を運用できるようになることと思います。
ぜひ最後までご覧ください。
金融庁の外貨建て保険への是正指導について
平成30年12月3日、金融庁は生命保険各社にこう伝えました。
「募集補助資料の中で実質利回りをわかりやすく提示し、顧客への情報提供を充実させるといった方向性も考えられるのではないか」
単なるアドバイスのように聞こえるかもしれませんが、これは実のところ金融庁による「是正指導」に他なりません。
金融庁は9月にも「外貨建て保険は投資信託などと比べて運用コストや実質利回りが分かりにくい」と指摘しています。
そして、商品説明において積立利率がまるで実質利回りであるかのように誤解させかねないとして改善を訴えていました。
そういった経緯があった上で、今回金融庁は業を煮やして是正指導を行ったわけです。
外貨建て保険の「実質利回り」とは?手数料との関係性
金融庁が是正指導の中で言及した実質利回りとは、「支払った保険料」に対し「実際に手にできる保険金」で考えた場合の利率です。
外貨建て保険は円建てに比べて予定利率が高いため、保険金が同じ額なら保険料は安くなります。
しかし外貨建て保険は、円建てに比べてかなり手数料が高額です。
たとえ公表している積立利率が高くても、それは保険料から手数料等を差し引いた積立金に適用される利率です。
よって、実質利回りは保険会社が提示する積立利率より低くなります。
結果として、外貨建て保険の保険料は円建てと比べて利率の差ほどは安くなっていません。
では、外貨建て保険にはどのような手数料がかかるのでしょうか。
ここからは、
- 外貨建て保険加入時の手数料
- 外貨の両替でかかる為替手数料
- 是正すべき販売員の説明不足
以上のことについてお伝えしていきます。
外貨建て保険の加入でかかる手数料について
金融庁の調査によると、銀行窓販(銀行の保険販売窓口)で売られる外貨建て保険には、銀行側は販売手数料や事業費として保険料の7〜8%、中には10%以上を受け取っています。
高いと言われる投資信託の販売手数料が2〜3%ですから、これはかなり高い数字です。
銀行が外貨建て保険をやたらすすめてくる理由は、ひとえにこの高額な手数料にあります。
国内企業への融資で儲からない時代であるからこそ、銀行は外貨建て保険で荒稼ぎにかかっているというわけです。
なお、契約した後にも運用関係や年金管理など多くの手数料が引かれ続けます。
外貨の両替にも手数料あり!為替手数料について
外貨建て保険は、保険料支払い時や保険金受け取り時に為替手数料が必要であることにも注意してください。
為替手数料とは、円を外貨に両替するときや外貨を円に両替するときに支払う手数料のことです。
為替手数料の額は保険会社によってさまざまですが、1ドルあたり1銭~50銭としているところが多いようです。
大した金額ではないと思うかもしれませんが、1ドルあたり50銭で保険料を3万ドル払い込んだ場合、1万5,000円もの為替手数料がかかることになります。
売り手側の説明不足問題!外貨建て保険は儲かる商品?
最初に販売員から、外貨建て保険は儲かる商品だという説明を受けた方もいるかもしれませんね。
確かに「最低でも年3%の積立利率を保証」などと言われると「定期預金の年利が0.01%の時代に、すごい商品だ!」と飛び付いてしまうのも無理はありません。
仕組みが複雑すぎてパンフレットを読んだだけでは理解できないことが災いし、内容をよく理解しないまま契約してしまう人は少なくありません。
本来ならそういった顧客にもしっかりリスクについて説明するのが販売員の仕事ですが、特に銀行窓販では「説明不足」が是正指導の対象となっています。
商品を売りたいということはもちろん、銀行員自身が外貨建て保険についてよく理解できていない場合もあるようです。
外貨建て保険のリスクについて徹底解説
ここまでは、外貨建て保険の手数料についてお伝えしてきました。
では外貨建て保険には、手数料以外にどのようなリスクがあるのでしょうか。
実は、外貨建て保険で手数料以上に留意すべきリスクは為替変動によるリスクです。
ここからは、為替が変動することによって外貨建て保険にどのようなデメリットが発生するのかということについて解説していきます。
為替リスク!解約返戻金が元本割れすることも
特に一時払いの外貨建て保険で警戒すべきなののは、為替変動による元本割れのリスクです。
たとえ運用利率が高くても、円高が進めば満期保険金や解約返戻金が大幅に下がる可能性があります。
加入時に1ドル=100円だったのが満期時に1ドル=90円になっていれば、保険金は
(一時払保険料-各種手数料等)×0.9=保険金
と計算され、事前に保険会社から聞かされていた返戻率とは似ても似つかない数字になってしまいます。
もし再びリーマンショックのようなことが起これば、その時点で大幅に元本割れしてしまうことは間違いないでしょう。
ただし逆に円安になればその分得するわけですから、為替リスクは「為替メリット」と表裏一体のものであるといえます。
為替によって支払う保険料が上下する
一方で保険料を一時払いではなく年払いや月払いにしていた場合、今度は為替のレートによって支払う保険料が上下するというリスクが発生します。
外貨建て保険はあくまで外貨で保険料を支払いますので、為替が円安に動いていけば、どんどん保険料が上昇してしまいます。
かといって円高に進んでいけば、保険料は下がっていくものの、このまま下がり続ければ保険金が想定より安くなるという不安を抱え続けることになります。
最初に「なんとなくお得そうだから」という曖昧な理由で外貨建て保険に加入してはいけません。
外貨建て保険のリスクをしっかり把握した上で他の運用商品と比較し、自分のニーズに合致した商品選択を心がけましょう。
外貨建て保険の出口戦略について!FPさんに相談しませんか?
外貨建て保険は商品選択も重要ですが、それ以上に終わり方が大事です。
最大のリスクが為替にある以上、外貨建て保険は円転のタイミングにこそ注意すべきです。
しかし、たとえ保険会社の資料が是正されたとしても、外貨建て保険の構造は難解ですから円転すべきタイミングがよく分からない場合もあることでしょう。
そんなときは、ぜひ保険や投資の専門家であるFP(ファイナンシャルプランナー)に相談しましょう。
FPはあなたに適した外貨建て保険の活用方法について、的確なアドバイスをくれるはずです。
ほけんROOMのマネーキャリアではFPの無料相談を受けることができますので、ぜひ活用してはいかがでしょうか。
まとめ:金融庁の外貨建て保険への是正指導について
外貨建て保険の是正指導についてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
この記事のポイントは、
- 金融庁は外貨建て保険に対し、顧客へ実質利回りを分かりやすく提示するよう是正指導を行った
- 外貨建て保険は手数料が高額である分、実質利回りは低くなっている
- さらに為替リスクが重なれば、元本割れする可能性もある
以上のことでした。
是正に関する行政指導の種類は、是正指導→是正勧告→命令の順に厳しくなります。
なぜ金融庁が是正指導を行っただけで保険会社が震え上がるかというと、これが最終的に「業務停止命令」や「免許取り消し」に繋がるからです。
今後の保険会社の是正の動きに、ぜひ注目していきたいところです。
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