殺人では生命保険は支払われない?どんな基準で判断するのか解説

生命保険による保険金は、被保険者が自殺など故意に死亡した場合、支払われることはありません。しかし、殺人事件の被害者の場合、生命保険が支払われないのは、遺族にとってはとても辛いことになります。では、殺人事件がどのような場合なら保険金が支払われるのか説明します。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

死亡理由が殺人だった場合、被害者に生命保険はおりるの?

ドラマでも保険金目当ての殺人事件などをよく見かけますが、実際に殺人で死亡した場合には、生命保険がおりる対象となる場合と、そうでない場合があります。

生命保険とは、遺された遺族が生活をしていく為に保険金を支払うものとなっているので、保険会社に『保険金目当ての殺人』とみなされなければ、生命保険の対象となる被保険者が殺人事件で亡くなったとしても、保険金を受け取ることは可能です。


ただし、殺人事件により被保険者が死亡した場合には

  • 契約者が故意に被保険者を殺害した場合
  • 被保険者が犯罪行為をして殺害された場合
  • 受取人が故意に被保険者を殺害した場合

上記のような殺人に対しては、保険金の支払い対象にはなりません。


また、直接殺人は犯さなくても、殺人を教唆をした場合であっても支払い対象にはなりません。

日本も海外も昔から保険金目当ての殺人が起きている

保険金殺人としては、1998年8月の和歌山毒物カレー事件や、同年の久留米看護師連続保険金殺人事件など、有名な保険金殺人事件が多数おきています。

和歌山毒物カレー事件では、『動機なき殺人』としてメディアでも取り上げられましたが、夫をはじめとして友人からも保険金を手にしており、保険金詐欺を繰り返してきたことが背景となっていました。


また、久留米看護師連続保険金殺人では、4人の看護師のうち2人の看護師の夫を共謀して殺害し、そのうちの1人である主犯格は他の3人をこき使い、詐欺を含めて2億円もの金額を手にしていたものです。


今年に入ってからも、フィリピンで日本人が殺害され、海外旅行保険を目当てにした殺人事件も起きており、保険金殺人は日本国内のみならず、海外でも事件が起きているのが実状です。

受取人が殺人の犯行者に関与しているかどうかで決定する

保険金目当ての殺人事件が起きた場合、保険会社から保険金を受け取ることができるかどうかは、保険金受取人が殺人事件と関与しているかが問題となります。



もちろん、直接殺人に手を下していなくても、殺人教唆を行っていれば、保険金は受け取ることはできません。


また、保険会社は殺人事件の場合は、保険金殺人でないことが断定できるまで保険金を支払うことはなく、受取人と殺人の犯行者との関与がないと確証を得た際に、保険金を支払うことになります。


もし保険会社が保険金を支払った後に、警察の捜査により保険金殺人と判明した場合には、受取人が殺人に関与していれば、保険会社は返還請求を行うことができるようになっています。

受取人が殺人に関与していなかった場合は、生命保険はおりる

生命保険の被保険者が、殺人によって死亡した場合、受取人には殺人事件と関与していないという確証が必要となります。


前述でもお伝えした通り、生命保険は遺された遺族に支払うものであり、病気や事故でなくても、故意による死亡でなければ、もちろん保険金は支払われます。


生命保険は、医療保険や貯蓄保険などとは違い、多額となりますので、警察や保険会社の調査のもと支払われることになりますが、受取人が殺人に関与していないことが明らかであれば、生命保険は遺族である受取人に速やかに支払われることになります。

ただし刑事裁判で無罪でも、可能性があれば生命保険はおりない

保険金殺人では、生命保険の保険金額や収入などの資産から見て、あまりにも多額であった場合は、受取人の動機として注目されやすくなります。


保険金殺人の疑いで刑事裁判となった場合、合理的な疑い以上のものを証明できなければ、有罪判決にはなりません。

いわゆる、『疑いしきは罰せず』という原則から、殺人罪としては無罪判決になるということです。


しかし、民事裁判の場合は、証拠優越が原則から、保険金殺人の可能性が認められれば生命保険会社は保険金を支払わない場合があります。


このように、刑事裁判と民事裁判とでは、殺人罪として問われる原則が相違するので、結果として刑事裁判では有罪判決にならなくても、民事裁判で保険金殺人の可能性があれば、生命保険はおりないということが実際にあり、犯人が経済的利益を得ることはできませんでした。

受取人が殺人に関与していた場合は、生命保険はおりない

ドラマなどで良く聞く話ですが、お金が入ったら結婚してあげるからと言って、生命保険の受取人が殺し屋を雇ったり、恋人に被保険者を殺させたという場面があります。


このような場合は、殺人教唆となるので、保険会社は生命保険の支払いをしないことになります。


また、保険金殺人といっても、受取人が保険金を手にすることを目的として、生命保険の被保険者を殺害するということだけではありません。 


例えば、受取人が被保険者を憎み、結果的に殺人事件が起こったとします。この場合、生命保険による保険金を目的ではない殺人になりますが、受取人は殺人に関与しているわけですから、もちろん生命保険はおりないことになります。

保険金目的ではない無理心中の場合でも生命保険はおりない

一家無理心中や、介護による疲れから老夫婦の心中など、悲しいニュースを見かけることがあります。

夫婦が生命保険に入っている場合、保険金の受取人は、夫婦お互いに指定していることが一般的です。


事故などによって、夫婦が同時に死亡した場合には、それぞれ被保険者の法定相続人になります。

法定相続人とは

  1. 子ども
  2. 子どもがいない場合は、親や祖父母
  3. 子ども、親、祖父母がいない場合には、兄弟姉妹

このような順で、保険金を受け取ることになります。

しかし、夫婦同時に死亡した理由が心中であった場合には、保険会社から保険金は支払われることはありません。


無理心中は、不慮の事故ではなく、故意の殺人として扱われるのです。

複数の受取人のうち、一人が殺人に関与していた場合

子どもが親を殺害するという痛ましい事件がニュースで取り上げられたりしていますが、例えば、兄弟が親を殺害し、保険金を受け取ろうとした場合を例にあげてみたいと思います。


  1. 兄弟二人が共謀して、親を殺害した場合、保険金は支払われない。
  2. 兄が殺人を教唆して、弟が親を殺害した場合、保険金は支払われない。
  3. 兄が親を殺害し、弟は殺人に対して何も関与していなかった場合、保険金は弟のみに支払われる。

ここで、注目して頂きたいのが、3の弟が関与していなかった場合についてです。


保険金は全額、弟が受け取ると思われがちですが、契約時に指定された保険金受け取り割合の通りに保険金が支払われます。


したがって、弟の保険金受け取りが5割だった場合には、兄には支払われず弟にも、5割の保険金しか支払われないことになります。

過去に日本であった保険金目当ての殺人事件

保険金目当ての殺人事件は、ニュースで事件を目にする以上に実際は多発しています。


1935年、日本で初めての保険金殺人と言われている日大生殺し事件を境に、現代に至るまで、様々な保険金殺人が起きています。

  • 1981年 佐賀替え玉保険金殺人事件
  • 1986年 名古屋実娘保険金殺人事件
  • 1989年 熊本養鶏場宿舎放火殺人事件
  • 1999年 長崎・佐賀連続保険金殺人事件
  • 2012年 尼崎事件

これらは、ニュースやネットなどで大きく取り上げられた保険金殺人事件ですが、その他にも多々保険金殺人は繰り返されています。


中には、マスコミがセンセーショナルな報道をし、世間から好奇の目が向き、警察が捜査に乗り出し、保険金殺人が発覚したという事件もありました。

まとめ

生命保険会社は、保険金殺人の疑いがある場合には、保険金の支払いを拒否することができます。


しかし、中には刑事裁判により死罪判決は無罪となり、犯人が保険金を受け取るということもあります。

保険金殺人は、刑法上の詐欺罪にあたる為、時効は7年となっています。保険金を受け取った日から、7年以上経過すれば、時効は成立となってしまうのです。


そのような短い時効だからこそ、生命保険会社は、殺害された被保険者に対する受取人の殺害関与については、様々な視点から推察し、関与の可能性がある場合は、保険金の支払いを遅らせるということがあるのです。


しかし、人間は欲深い生き物なので、一度多額のお金を手にすると、二度三度と保険金詐欺や殺人を繰り返すことがあるので、結果的に犯罪が明るみにでてしまうということです。


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