変額個人年金保険とは何?仕組みから投資信託との違い、デメリットを解説

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変額個人年金保険とは運用実績で満期保険金・解約返戻金の金額が増減する、投資信託に似た生命保険です。円建てだと利率が低い中、世界株式など株式で高い利回りの運用実績を出します。しかし、変額個人年金保険には手数料や元本保証のない商品もあり、リスクを伴うデメリットもあります。

変額個人年金保険とは?仕組みや特徴は?おすすめは?

マイナス金利下、円建ての生命保険だと年金積立の効率が悪い中、円建てでも外貨建てでもない、世界株式などを活用した投資信託に似た保険を各保険会社が販売しています。


変額個人年金保険とは?という質問に一言で答えるとすれば、将来の年金受け取り金額が投資の運用実績に応じて変動する個人年金保険です。


変額個人年金保険と聞くと、どのようなイメージを持ちますか?

「変額保険と聞くと元本割れして損をしそうで怖い」「難しそうでメリットがよく分からない」「XX生命の営業マンに紹介されて初めて聞いた」なんて人もいるかと思います。


そんな方のために、この記事では

  • 変額個人年金保険の仕組みと特徴
  • 投資信託やiDeCo・つみたてNISAなどとの違い
  • 変額個人年金保険のメリット:利率はどのくらい出る?運用実績は?
  • 変額個人年金保険のデメリット:手数料や元本割れリスク
  • 変額個人年金保険における手数料「諸経費」について
  • 変額個人年金保険における税金の対象と課税のルール

を解説していきます。


また、相続で変額個人年金保険をお考えの方は、こちらから、ご覧ください。

「満期金」が変動する変額個人年金保険の仕組みや特徴とは?


個人年金保険とは、満期金を確定年金・有期年金・終身年金などとして受け取る、民間の私的年金保険です。


通常の個人年金保険の保険料は、約束された「予定利率(運用利回り)」をもとに運用されるほか、積立金には所定の「積立利率(利子の割合)」に応じて利息が付きます。そのため、あらかじめ将来受け取る満期金や、解約返戻金の金額が予測できるのです。


一方、変額個人年金は、特別勘定で保険料が運用されます。


特別勘定とは、運用実績次第で満期金や解約返戻金が変わるタイプの保険の資産を、その他の資産と分けて管理・運用するための勘定です。


特別勘定の保険では、投資信託などの金融商品で保険料が運用されます。どの金融商品で運用するのかは、保険契約者が決定するのが一般的です。(保険会社が決定するケースもあり) 


そして、その金融商品の運用実績によって満期金や解約返戻金の金額が変わってきます。そのため、最終的に満期金や解約返戻金がいくらになるのかがわかりません。


運用実績がよければ満期金や解約返戻金が増えるのですが、うまくいかなければ支払った保険料よりも満期金や解約返戻金が少なくなる可能性があります(元本割れ)。運用の責任は契約者にあり、元本割れを起こしても保証されることはありません。

変額個人年金保険のポートフォリオ:世界株式や外国債権など

変額個人年金保険については、「日本株式」「世界株式」「日本債券」「世界債券」「リート」「新興国株式」「新興国債券」「コモディティ」など、さまざまな投資先を投資家(保険契約者)自身で選択できます。


債券はもっともリスクが低いかわりに、リターンも少なめです。一方、株式は債券よりもリスクが大きくなりますが、より大きなリターンが期待できます。


中でも、中南米や東南アジアなど、比較的経済水準が低い国に投資する新興国株式は、投資先の経済成長によって、非常に大きなリターンが得られる可能性がある金融商品です。ただし、それだけリスクも大きくなるため、新興国への投資は慎重に決定する必要があります。


また、不動産に投資するリートや、エネルギー・貴金属・穀物などに投資するコモディティは、価格が変動しやすいのがデメリットです。商品の取り扱い金融商品をよく確認し、自分のリスク度に合うポートフォリオ(金融商品の割合)を決定しましょう。

投資信託やiDeCo・つみたてNISAとの違いとは?

老後資金を用意する方法として、変額個人年金保険以外に投資信託への直接投資、iDeCo、つみたてNISAなど、さまざまな方法があります。



これらの方法の大きな違いは、「税制優遇」です。投資信託に直接投資する場合、その運用益には20.315%の税金がかかります。とくに優遇はありません。


しかし、変額個人年金保険であれば、生命保険料控除が受けられます。支払った保険料に応じて所得税計算時には最大4万円、住民税計算時には最大2万8000円を所得額から引いて、税金を軽減することが可能です。
そして、iDeCoは1年分の掛金相当額を毎年所得から引けるほか、運用益も非課税で、給付金の受取時にも控除が受けられます。



つみたてNISAは毎年上限の40万円以内で購入した金融商品からの利益が非課税になります。税制優遇の面だけ見ると、iDeCoが1番メリットが大きいといえるでしょう。

変額個人年金保険のメリットとは満期金が増える可能性が高いこと

前述の通り、変額個人年金保険は保険会社が保険料を運用し、年金の金額を増やすことをひとつの目標としています。

そのため、運用実績が良いと将来もらえる保険金・年金の金額が大きく増える可能性があるのです。

個人で外国株式や外国債券の売買を行ったり、運用状況をチェックしたりするのは大変ですし、経済の知識も必要になります。

しかし、変額個人年金保険なら、運用の手数料はかかりますが、プロがあなたに代わって資産を運用してくれて、面倒な売買の手続きや商品選びをすることなく恩恵を受けることができるのです。

変額個人年金保険の3つのデメリット

変額個人年金保険にはたくさんのメリットがありますが、もちろん良いことばかりではありません。


デメリットをしっかり理解しておかないと思わぬ失敗をしたり損をしたりするので気を付けましょう。

デメリット1:運用実績で元本割れのリスクがある

一番分かりやすいデメリットは、保険会社の運用状況が悪いと将来の積立年金の受取額が減ってしまうという点です。


これは変額個人年金保険のメリットである、顧客から預かった保険料を運用し、年金が増える可能性があるということの裏返しでもあると言えます。


契約後に景気が悪くなったり、保険会社が保有している株や債券の価格が暴落した場合、保険金の金額に大きく影響します。


最悪の場合、満期のタイミングが悪いと支払った元金を大きく下回った保険金しか受け取ることができない可能性があります。


しかし、どんなに運用状況が悪くても、保険期間中の死亡保険金は元金を最低保障している場合が多く、商品によっては満期金も保険料と同額を保障しているものもあります。


加入する前に、運用が上手くいかない時の保険金の扱いや最低保障についてなどは必ず確認しておきましょう。


全銀協会が変額個人年金保険のリスクについてまとめていますので参考にしてみてください。

デメリット2:解約時に期間に応じて解約控除が引かれる

変額個人年金保険を途中で解約する場合も、注意しなければならないデメリットがあります。


解約する場合、解約返戻金を受け取ることができますが、加入から一定期間は、経過年数に応じた「解約控除」が引かれてしまいます。一種の、解約へのペナルティのようなものです。


一般的に、契約後短期間で解約すればするほど解約控除によって差し引かれる金額は大きくなり、10年ほどで解約控除がかからなくなる場合が多いです。


もし契約後、急激に株価や債券価格が上昇し、運用状況が良くなったとしても、あわてて解約してしまって大きな解約控除を引かれてしまうと損をしてしまう可能性があります。


加入前には解約控除がいつ、どのくらいかかるのか、解約を考えている時には現在解約控除はいくらくらいかかるのかをきちんと確認するようにしましょう。

デメリット3:一般生命保険料控除の対象

給与などの所得がある人が所得税や住民税を支払う場合、課税金額は所得額によって変わります。


所得控除とは、この時に決められた項目に該当する場合は、かかった費用に応じて申告する所得額を減らしても良いという仕組みです。


所得額が減ると、課税される金額も減るため、結果的に節税できることになります。


変額個人年金保険は「一般生命保険料控除」の対象になります。


これは死亡保障などがある生命保険の保険料を支払っている人が受けられる所得控除であり、変額個人年金保険の保険料を支払っている人も該当します。


生命保険料控除には他にも「個人年金保険料控除」というものがあり、個人年金保険の保険料を支払っている人が対象ですが、変額個人年金保険は対象外です。


「個人年金保険」という名前がついているので、「個人年金保険料控除」にも該当すると思ってしまいがちですが注意しましょう。

変額個人年金保険の運用手数料や信託報酬がかかる?

投資信託で資産運用をする場合、投資信託購入時や運用時などに手数料が発生します。


  • 購入時手数料:投資信託購入時に発生する手数料。ノーロードなど、無料の商品もある

  • 信託報酬:投資信託を運用する際にかかる経費に充てられる手数料

  • 信託財産留保額:投資信託を途中解約した場合にかかる手数料。無料の商品もある

変額個人年金保険では、このような手数料に該当する手数料として、「特別勘定運営費用」がかかります。(商品によって名称が異なることがあります)


この手数料は積立金から引かれます。そのため、より正確な年金額をシミュレーションしたい場合は、手数料を差し引いて計算しなくてはなりません。 

変額個人年金保険の解約返戻金・満期金の課税のルールについて

個人年金保険の満期金や解約返戻金を受け取ると、所得税がかかります。満期金を一括受取した場合は「一時所得」、年金受取した場合は「雑所得」になり、課税所得額の計算方法が変わるので注意が必要です。


  • 一時所得の場合:(満期金・解約返戻金の受取額-払込保険料-特別控除50万円)×1/2
  • 雑所得の場合:1年間で受け取った年金額-その年金額に対応する払込保険料

雑所得の場合、年金額に対応する払込保険料を計算するのが大変ですが、保険会社が源泉徴収するのが基本なので、自分で計算する機会はあまりないでしょう。解約返戻金は一括受取しかできないので、原則一時所得として取り扱います。

なお、満期金や解約返戻金に所得税がかかるのは、保険契約者(保険料を支払った人)と受取人が同じときです。保険契約者と受取人が異なると、贈与税がかかります。

年金受け取りの満期金の課税ルール

変額個人年金保険の満期金にかかる税金の計算方法も、基本的には通常の個人年金保険と同じです。満期金を一括受取した場合は一時所得、年金受取した場合は雑所得として課税所得額を計算します。


ただし、変額個人年金保険には、年金受取開始後は一般勘定に移行して年金額が確定する商品と、年金受取開始後も特別勘定で年金原資の運用が続く商品があるので注意が必要です。一般勘定であれば、年金額に対応する払込保険料を以下の式で計算します。


支払保険料の総額÷所定の規定に応じて計算した年金の支給総額の見込額

しかし、特別勘定で運用が続く商品では、年金の支給総額の見込額がわかりません。そのため、年金額に対応する払込保険料を以下の式で計算します。


支払保険料の総額÷年金支払期間

上記は変動型確定年金の場合です。変動型保証期間付終身年金の場合は、年金額に対応する払込保険料を以下の式で計算します。

支払保険料の総額÷年金支給開始時の余命年数と年金支払保障期間のいずれか長い方

変額個人年金保険は相続税対策で応用可能

遺産を相続すると、その価額に応じて相続税がかかります。しかし、相続税には「3000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除があるので、仮に法定相続人が1人だった場合、相続した遺産の価額が3600万円以内であれば相続税はかかりません(※)。

もし法定相続人が1人で4000万円分の遺産を相続したとしたら、そこから基礎控除を引いた400万円の部分に相続税がかかります。相続した遺産の価額が1000万円以下の場合の相続税率は10%なので、相続税額は40万円です。


400万円部分の相続税額:400万円×相続税率10%=40万円

しかし、この400万円を変額個人年金保険の死亡保険金として受け取っていた場合には、相続税額が0円になります。相続税には法定相続人1人あたり500万円の、「死亡保険金の非課税枠」があるからです。

「法定相続人1人あたり500万円」なので、2人いれば1000万円、3人いれば1500万円と、法定相続人の人数分、非課税枠が増えていきます。(法定相続人には相続放棄した人も含みます)

そのため、変額個人年金保険の死亡保険金額を「法定相続人の数×500万円」に設定しておけば、それだけ相続税を節税できるのです。ただし、死亡保障額を上げるほど保険料が高くなるので、保険料と保障内容のバランスに注意しましょう。

(※相続税には基礎控除以外の控除もあるので、それらの控除が利用できる場合は、3600万円以上相続しても相続税がかからないことがあります)

変額個人年金保険の年金を受け取る条件で税金の種類が変わる

変額個人年金保険が満期を迎え、年金を受け取る場合、条件によってかかる税金が変わります。

  • 契約者(保険料負担者)と年金受取人が同一の場合、所得税
  • 契約者と年金受取人が異なる場合、贈与税

保険料を自分で支払って、自分で受け取る場合は所得税の対象となり、自分で支払った保険の年金受取人を自分以外にする場合、年金を第三者に「贈与」している形になるので贈与税の対象になります。


また契約者と年金受取人が同一の場合、年金を一括で受け取ると所得税の「一時所得」扱い、分割で受け取ると所得税の「雑所得」扱いになります。

まとめ:変額個人年金保険の仕組みや運用実績を解説しました

これまで変額個人年金保険とはについて解説してきましたが、いかがだったでしょうか?

今までの内容をまとめると


  • 満期保険金は運用実績によって大きく増えたり、大きく減ったりする可能性がある
  • 長生きリスクに備えて、将来の生活費に充てることができる
  • 相続対策としても有効である
  • 解約時には解約控除がかかる
  • 個人年金保険料控除の対象外である
  • あくまでも保険なので投資には向かない
  • 契約者と年金受取人の関係によって所得税の対象か贈与税の対象か変わる

このように言えます。


老後、夫婦2人でゆとりある生活を送るためには月に30万円以上、最低でも22万円は必要であると言われています。


一方で公的年金は年々減額されている傾向にあり、今後も安定した年金が支払われるという保障はありません。


また、日本は世界一の長寿国であり男女ともに平均寿命は80歳を超えています。 自分が想定した以上に長生きすることによって、準備した資産が尽きてしまうという老後破産も他人事ではないのです。


現代では、「長生きリスク」に備えて自分の老後資金は自分で用意する必要があり、変額個人年金保険は老後の公的年金の不足分を補うことができるのです。


デメリットもありますが、メリットも多い変額個人年金保険。良く理解して検討すれば非常に便利な商品であると言えます。


将来のことを考えて、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。

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