更新日:2022/07/01
ソルベンシーマージン比率って何?これで選択すべき保険会社がわかる
ソルベンシーマージン比率とはあまり聞きなれない言葉ですが、保険会社を測るものさしとしては、とても重要なものなのです。どのようなものなのかどのように使うのか?うまく使うととても便利なのです。ではこのあと詳しく見ていきましょう。
目次を使って気になるところから読みましょう!
- ソルベンシーマージン比率の意味を解説します
- ソルベンシーマージン比率とは、保険会社の支払い余力のこと
- 保険会社は大数の法則に基づいて保険料と保障内容を決めている
- ソルベンシーマージン比率が高いと、大数の法則によらない事態が起きても安心
- ソルベンシーマージン比率の計算式・算出方法
- 保険リスク、予定利率リスク、巨大災害リスク、資産運用リスク、経営管理リスクなどを数値化
- リスク金額と有価証券の含み益などを含む広義の自己資本額との比率
- 保険加入時は、保険会社のソルベンシーマージン比率を比較しよう
- ソルベンシーマージン比率が低いと、東日本大震災のようなケースのときに破綻する可能性が高い
- ソルベンシーマージン比率が高すぎると、保険料に対して保障が見合っていない可能性がある
- ソルベンシーマージン比率が200%を下回っていると、不安要素の一つとなる
- 通常の予測を超えるリスクの金額の「半分」を基に計算している
- 行政指導ラインの200%の2倍の400%以上かどうかが目安
- 参考:ソルベンシーマージン比率と責任準備金の違いとは?
- まとめ
目次
ソルベンシーマージン比率の意味を解説します
皆さん、保険についての知識もだいぶ高まって来たことと思います。ですが、保険用語ってまだまだ難しいものがたくさんあっていやになりますよね?
でも、そんなことを言っているだけでは、今後の最良の保険選択ができる力の向上や運用の実績の積み上げは難しくなっていきます。
それには、少しでも理想的な状態になるための方法の一つとして「ソルベンシーマージン比率」という言葉を勉強してみるのも良いことです。
本記事では、「ソルベンシーマージン比率を理解する重要性」について、
- 「ソルベンシーマージン比率」とは?
- これがなぜ重要なの?
- こんな保険会社の選択方法があったの?
- 高ければいいってもんじゃない!
上記の内容を中心に解説して行きます。
この記事を読んでいただけると、今後のみなさまの保険関連の知識向上のアップにつながることと思いますので、どうぞこのままご覧ください。
ソルベンシーマージン比率とは、保険会社の支払い余力のこと
ソルベンシーマージン比率(Solvency Margin Ratio)とは、直訳すると「支払いの能力のあることの余裕の割合」となります。
簡単に言うと「支払い余力」と「通常の予想を超えて発生するリスク総額に対する比率」です。
保険会社というのは、事件事故の発生したときに契約者に対して保険金の支払いを行いますが、大規模災害や運用環境の急激な悪化などでの「通常の予測を超えたリスク」に対しては、「自己資本」や「準備金」で対応します。
つまり、「ソルベンシーマージン比率」とは、どの程度「自己資本」や「準備金」の支払余力を有するかを示す健全性の指標になります。
また、ソルベンシーマージン比率は、保険会社の経営に対して、早めの改善を促すための指標として利用できるものであり、200%を下回ると金融庁から早期是正措置命令を発動することになります。
金融庁の「ソルベンシー・マージン比率の算出基準の見直しに関する保険業法施行
規則の一部を改正する内閣府令等について」を参照してみてください。
簡単に言うと、保険会社に様々な予期せぬリスクが訪れた際でも、その保険会社が保険金や返戻金などを払っていける余力を示した数値です。
詳しくみてみましょう。
保険会社は大数の法則に基づいて保険料と保障内容を決めている
大数の法則とは、独立して起こる事象について、それを大量に行えば行うほどその事象の発生する確率が決まった値に近づくということです。
例えば、正確に作られたサイコロを振って1の目の出る確率は、振る回数を増やせば増やすぼど6分の1に近づいて行く、というこのことです。ここでいう決まった値というのは目の数が6個あるので1つの目に着目した1/6となります。
これが、大数の法則です。
保険の世界で言うと、日本国においての今日のある年齢の人の死亡率というのはどれ位?を総務省や厚労省が定期的に発表しています。
このデータを基にすれば、どの年齢の人は、どれ位の数の人が、いつ亡くなるか?わかりかす。
死亡率が正確にわかっていれば、亡くなった人へ支払う保険金を捻出するためには、どれだけの保険料を集めてくればいいかわかります。
ここでの決まった値は、「死亡率」です。
十分に大きな契約数がとれている状態にできれば、大数の法則が働いて死亡率に限りなく近づいて行きます。そのため亡くなる方の数はこの値で計算が可能となります。
保険会社はこの値を利用して契約者への保険金を支払っても会社自体が成り立って行くように、保険料が決定します。
上記が、保障内容と保険料の決定プロセスとなります。
ソルベンシーマージン比率が高いと、大数の法則によらない事態が起きても安心
保険事故というのは長い年月で見たときにある確率に収まります。
ところがある限定された期間の中ではその確率が非常に高くなることがあります。
非常に大きな規模の自然災害が、小さくない範囲で発生したときなどが該当します。
そのようなときには保険の支払い請求が集中して発生します。
そのときに手持ちの現金が保険会社になかったらどうでしょう?契約上支払いしないといけない顧客に約束通りのお金を渡せないという事態となっています。
こんなことを避けるには、統計上の死亡率等のデータより高い確率で起きたと想定して支払いがする準備をしておくことが必要です。
その解決策としては、「その保険会社のソルベンシーマージン比率を高い状態にしておく」ということです。
「ソルベンシーマージン比率が高いと一時的に支払わないといけない保険金が増大したとしても全ての該当者への支払を滞りなく進め完了させることができます」
この状態の保険会社というのは、契約者としては安心ですね。
ソルベンシーマージン比率の計算式・算出方法
ソルベンシー・マージン比率の計算式は、下記になります。
「支払余力/(1/2× 通常の予測を超える危険に対応する額 ) 」
(参考:金融庁監督局保険課 ソルベンシー・マージン比率の概要について)
以下、内容の詳細を順にみていきましょう。
保険リスク、予定利率リスク、巨大災害リスク、資産運用リスク、経営管理リスクなどを数値化
1.保険リスク
保険事故の発生率が普通の予測を超えることにより発生し得るリスク
●生保
リスクの種類 | リスク対象金額 | リスク係数 |
---|---|---|
A普通死亡リスク | 危険保険金額@ | 0.6/1000 |
B生存保障リスク | 個人年金保険期末責任準備金額 | 10/1000 |
Cその他のリスク | 危険準備金積立限度額 | 1 |
保険リスク相当額 =
・ A:普通死亡リスク相当額、B:生存保障リスク相当額、C:その他のリスク相当額
●損保 一般保険リスク
種類 | 保険料基準 リスク係数 | 保険金基準 リスク係数 |
---|---|---|
a火災保険 (家計地震保険を除く) | 12% | 33% |
b傷害保険 | 9% | 26% |
c自動車保険 | 8% | 14% |
d船舶保険 | 56% | 62% |
e積荷保険 | 21% | 39% |
fその他の保険 | 17% | 34% |
一般保険リスク相当額 =
ρ:0.05、 a:火災保険、b:傷害保険、c:自動車保険、d:船舶保険、e:積荷保険、f:その他の保険について、保険料基準のリスク相当額と保険金基準のリスク相当額のいずれか大きい額。
第三分野の保険リスク
実際の保険事故の発生率等が通常の予測を超えることにより発生し得るリスク
リスクの種類 | リスク対象金額 | リスク係数 |
---|---|---|
Dストレステストの対象とするリスク | 危険準備金積立限度額 | 0.1 |
E災害死亡リスク | 災害死亡保険金額 | 0.06/1000 |
F災害入院リスク | 災害入院日数総額×予定平均給付日数 | 3/1000 |
G疾病入院リスク | 疾病入院日額総額×予定平均給付日数 | 7.5/1000 |
Hその他のリスク | 危険準備金積立限度額 | 1 |
生命保険会社の第三分野の保険リスク=D+E+F+G+H
損害保険会社の第三分野の保険リスク=D
D:ストレステストの対象とするリスク相当額、E:災害死亡リスク相当額、F:災害入院リスク相当額、G:疾病入院リスク相当額、
H:その他のリスク相当額
ストレステストの対象とするリスク(生損共通)
ストレステストとは、毎決算期に商品ごと予め設定した予定事故発生率が十分なリスクをカバーしているか確認するものです。
- 保険事故発生率等に基づいてテスト実施期間(10年間)発生率に関するリスクの99%のカバー発生率を予測する。
- 将来発生の保険金額と予定発生率に基づく保険金額を比較して、予定発生率に基づく保険金額が大きければ保険料積立金が十分と判断する。
- 逆に下回っていると判断されるときは、保険料積立金が不十分なため危険準備金を積み立てる。
2.予定利率リスク
責任準備金の算出の基礎となる予定利率を確保できなくなるリスク
(例) 予定利率5%(生保):2%×0.01+1%×0.2+1%×0.4+1%×0.6=1.22%
⇒ 逆ザヤの期待値 1.22%、これに責任準備金の額を乗じる。
●生保
予定利率の水準 | リスク係数 |
---|---|
2%以下 | 0.01 |
2%超 3%以下 | 0.2 |
3%超 4%以下 | 0.4 |
4%超 5%以下 | 0.6 |
5%超 6%以下 | 0.8 |
6%超 | 1.0 |
●損保
予定利率の水準 | リスク係数 |
---|---|
1%以下 | 0.01 |
1%超 3%以下 | 0.1 |
3%超 4%以下 | 0.2 |
4%超 5%以下 | 0.35 |
5%超 6%以下 | 0.5 |
6%超 | 0.7 |
3.巨大災害リスク
地震(関東大震災に相当する規模) 台風(昭和34 年の台風第15号(伊勢湾台風)に相当する規模) 上記が再来 した場合の推定正味支払保険金をリスク量として設定。(いずれか大きい額)
4.資産運用リスク
- 価格変動リスク
保有する有価証券その他の資産の通常の予測を超える価格変動等により発生し得るリスク
(国内株式10%、外国株式10%、国内公社債1%、外貨建債券等5%、不動産5%、金地金20%、商品有価
証券1%)
⇒ 分散投資効果 分散投資による効果 (生命保険会社30%、損害保険会社20%) - 信用リスク
保有する有価証券その他資産、取引の相手の債務不履行などの理由により発生し得る リスク 与信先、発行体など - 子会社等リスク
子会社などへの投資その他の理由により発生するリスク - デリバティブ取引リスク
先物取引、オプション取引、スワップ取引等により発生するリスク ヘッジ対象資産に対してリスクを相殺するような取引を設定している場合はその分リスクが減少する方向に設定。投機目的の場合は個別に設定する。 - その他のリスク(再保険リスク、再保険回収リスク)
再保険先の保険会社の経営破綻に伴い発生し得るリスクで、金融機関に対する信用リスクと同じ1%を用いている。 - 最低保証リスク
特別勘定を設けた保険契約であって、変額年金保険等の保険金等の額を最低保証するものについて、支払時に特別勘定資産の額が保険金等の額を下回るリスクで、特別勘定資産の通常の予測を超える価額 の変動等により発生し得るリスク 最低死亡保証、最低年金原資保証、最低年金年額保証のリスク係数(最低保証額の2%)
5.経営管理リスク
経営政策・経営判断の誤りなどに起因するリスクや事務面やシステムにおける事故に係るリスクなどの
事業経営上のリスクで、各リスク合計の一定率(2%)、当期末損失が発生している会社についてはプラス3%
参考資料
リスク金額と有価証券の含み益などを含む広義の自己資本額との比率
ソルベンシー・マージン比率は、下記の各項目が算出されると計算できます。
・広義の自己資本額(*ソルベンシー・マージン総額)
ソルベンシー・マージン総額=有価証券の含み益などを含む広義の自己資本額
・リスク金額(**リスク相当額)
リスク相当額=通常の予測を超える危険(保険リスク、予定利率リスク、資産運用リスク、経営管理リスク、巨大災害リスクなど)を合計して算出
※ソルベンシー・マージン比率の計算は、上記2点を下記の計算式で比べます。
=〔ソルベンシー・マージン総額*÷(リスク相当額**×1/2)〕×100 (%)
保険加入時は、保険会社のソルベンシーマージン比率を比較しよう
実際に自分で保険に入ることを検討する場合は、検討に上がった各保険会社のそれぞれのソルベンシーマージン比率を比べてみてみると安心して契約できるのかの目安になります。
ソルベンシーマージン比率が高いときと低い場合でどんなことが言えるのか詳細にみていきましょう。
ソルベンシーマージン比率が低いと、東日本大震災のようなケースのときに破綻する可能性が高い
ソルベンシーマージン比率が低い場合は、非常に大きな規模の災害が発生すると当然のごとく支払わないといけない保険金額が膨大となりますので、契約者に支払うべき保険金が大きくなるため、支払い切れない事態が発生する可能性が高くなります。
そのときに備えて保険金の支払いに耐えるだけのソルベンシーマージン比率が達成されていれば良いですが、これが低かったときは会社として存続に係わる支払が発生してしまうこととなり、最悪の場合は債務超過となって倒産の可能性もあります。
ソルベンシーマージン比率が高すぎると、保険料に対して保障が見合っていない可能性がある
ソルベンシーマージン比率が高過ぎる場合は、「保険料が保険金に対して高い」状態と言っていいと思います。
なぜなら、保険事故が発生したときに支払う保険金額を一定額としたときに、契約者から徴収する保険料を高くしていけば、それだけでソルベンシーマージン比率は上がっていくためです。
もしくは、「保険金額が保険料に対して低過ぎる」とも言えるので、ソルベンシーマージン比率が高い、の理由のみでその保険会社を選択することは慎重にお願いします。
ソルベンシーマージン比率が200%を下回っていると、不安要素の一つとなる
通常の予測を超えるリスクの金額の「半分」を基に計算している
ソルベンシーマージン比率の計算式を思い出してください。分母が「リスク相当額の半分」となっているのにお気づきかと思います。
ということは、ソルベンシーマージン比率が200%だったとして、そうそう無いことなのですが、もし「リスク相当額」を支払うことになったときには、支払の余裕は0円となってしまいます。
これでは、ちょっと不安ですよね。
行政指導ラインの200%の2倍の400%以上かどうかが目安
それでは、破綻の危険が無いラインはどことみれば良いのでしょうか?
上記の例からも行政の指導が入る200%ではこころもとなく、その2倍の400%あればまずは安心のレベルと思って良いではないでしょうか。
上記の例でみても400%超えた状態で破綻したのは、6社中で2社となっています。
参考:ソルベンシーマージン比率と責任準備金の違いとは?
区別の難しい面のある、ソルベンシーマージン比率と責任準備ですが、これも参考までにみてみましょう。
ソルベンシーマージン比率
「通常予測できる範囲の“外”のリスク」に対しての、保険金支払い能力のこと。
責任準備金
一定程度の支払増加や金利低下などの収入減として「通常予測できる範囲のリスク」に対して、保険金の支払いを予め見込んで、負債として積み立てているもの。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
まとめ
ここまで、ソルベンシーマージン比率についての詳細を解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
今回の記事のポイントは、
- ソルベンシーマージン比率が高いと、支払い能力が高いため会社の信用リスクは低い。
- ソルベンシーマージン比率が低いと、大規模災害が発生したときの破錠リスクが高い。
- ソルベンシーマージン比率が高過ぎるのは、保険料が保険金額と見合っていない可能性があるため、保険会社として選択して良いかは多方面から検証の必要あり。
- ソルベンシーマージン比率は、400%あれば安心の一つの目安。
この記事が皆さんの保険会社選びの一助ととなればとても嬉しく思います。
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