責任準備金とは?ソルベンシーマージン比率や予定利率との違いは?

生命保険に加入していても、保険会社の規模や運用実績、そして責任準備金を理解している人は少ないのではないでしょうか?こちらでは少し難しい話しになりがちな責任準備金について、加入を検討している方に、保険会社選びの参考になるよう、わかりやすく説明します。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

責任準備金とは?

保険について知るにあたって、そもそも、私たち加入者に対する『保険金』はどこからねん出されているのか、という点を疑問に思われた方もおられるでしょう。

もちろん私たちに対する保険金は、各保険会社が支払っています。 


そして、その支払う保険金のために、『責任準備金』が保険会社によって用意されているのです。


ではこれから、

  • 具体的にこの『責任準備金』とは何なのか
  • 『ソルベンシー・マージン比率』、『解約返戻金』との違い
  • 『予定利率』との関係性

これらの点を、これから取り上げていきます。


保険における保険金がどのようにして決められ、支払われているのか、という点をこの機会に覚えておきましょう。

責任準備金は保険業法で定められている

まず、保険会社は私たち保険加入者に支払われるはずの保険金を、一定額積み立てておくことを義務付けられています。

それが、いわゆる『責任準備金』です。


これは保険業法という法律で定められているものであり、 いわば保険会社は、契約者に対して保険金を支払う「準備」をしておく「責任」を有している、というわけです。 



保険業法によると、

  • (責任準備金)第百十六条 保険会社は、毎決算期において、保険契約に基づく将来における債務の履行に備えるため、責任準備金を積み立てなければならない。


しかし、ある方はその「責任」は、保険会社が倒産などしてしまった場合は、なくなってしまうのではないか、と心配されるかもしれません。


では、もし保険会社が何らかの理由により破たんしてしまった場合、積み立てられていた責任準備金はどうなるのでしょうか。


保険会社によって積み立てられていたお金はなくなり、今まで保険料を支払ってきたのにもかかわらず、私達は何の保障も受けられなくなってしまうのでしょうか。


…いいえ、そのようなことはありません。


まず、加入していた保険会社が破たんしたとしても、専門の保護機構や他の保険会社によって、基本的に保障は継続されます。 


そして、破たんしていた保険会社が責任準備金として積み立てていた分の、「9割」は最低でも保障されることとなっています。 


ただし、保険会社の変更により、保険の契約(保障)内容そのものが変更されることはあり得ます。どちらにしても、私たちに対して支払われるはずの『責任準備金』がある日突然なくなるようなことは、ありません。


どちらにしても、私たちに対して支払われるはずの『責任準備金』がある日突然なくなるようなことは、ありません。

責任準備金の計算方法

一般的に、保険会社によって個々の責任準備金がいくら用意されているのか、という点は公開されていません。

ですから、契約者が責任準備金について確認するとき、その金額は『将来支払われる金額(解約返戻金)』とほぼ同額と推測することができます。


責任準備金 ≒ (支払われるはずの)解約返戻金 (≒ 支払う保険料) 

各保険における責任準備金のイメージ

この責任準備金は、基本的に契約者に対して、将来支払う可能性のある金額に比例して大きくなるため、掛け捨てのようなタイプではなく、いわゆる『積み立て型』のようなタイプの保険では、用意する責任準備金も大きくなります。

  • 定期保険(掛け捨て)の場合 保険金は必ず支払われるわけではない ⇒ 低額で始まり、満期には責任準備金は0となる 
  • 終身保険、養老保険の場合 保険金が必ず支払われる ⇒ 解約返戻金、または死亡時の保険金及び満期保険金を受け取るまで、それらの増加に比例して増加する

簡単に言うと、契約者に対して保険金として支払われる金額が大きい保険ほど、責任準備金が高く積み上げられていくわけです。

責任準備金とソルベンシー・マージン比率との違い

よく混同してしまいがちなのは、今取り上げている『責任準備金』と、 保険会社評価の際に用いられる指標である、『ソルベンシー・マージン比率』ですが、 そこには明確な違いがあります。

責任準備金が、契約者に対して『支払う保険金における、予測範囲内の積み立て』であるのに対して、 ソルベンシー・マージン比率は、『予測外で起こり得ることへの、保険金支払い能力』と言い表すことができます。


たとえば、私たちが定価で12万円ほどする高額商品を購入するために、 一か月ずつ貯金しているとします。




その商品は、今現在は12万円で購入することができますが、ちょうど貯金を貯め終わるころの1年後には、インフレや原材料の高騰によって販売価格が上昇している可能性が大いにあります。 


今の収入の範囲内で、月1万円貯金すれば、1年後にはその高額商品を購入することができますが、もしも商品の価格が高くなっていれば、貯金だけではその商品を購入することはできないことになります。


そこで、商品が高くなっていることをあらかじめ予想して、月に1万円プラス、2千円を貯蓄することにしました。


このうち、基本として積み立てられる分の1万円が『責任準備金』で、危険を予測して余分に2千円積み立てられる能力のことを『ソルベンシー・マージン比率』と置き換えることができます。


支払能力に余剰のある…いわば、経営が良好な保険会社はソルベンシー・マージン比率を高く保つことができる (2千円といわず、5千円、1万円と積み立てにプラスすることができる?)ので、この比率は、私達が保険会社を選ぶ際の一つの指標となり得るわけです。

責任準備金と解約返戻金との違い

責任準備金と解約返戻金の違いは以下の通りです。


  • 責任準備金:契約者への保険金支払いのために、積み立てられるもの 
  • 解約返戻金:契約の解約時に、今まで支払ってきた保険料(加入期間)に応じて支払われる保険金

基本的に保険会社より個々の責任準備金は公表されないため、 将来的に受け取ることができる(積み立てられている)解約返戻金とほぼ同等の額を、責任準備金として計算することができます。

責任準備金と予定利率の関係

責任準備金と合わせて覚えておきたい用語として、『予定利率』というものがあります。


予定利率とは、保険における「利回り」のことであり、国の経済状況によっても変化するこの利率が上がることによって、私たち保険の契約者に還元される部分が増え、いわば保険料が安くなります。


昔に比べて全体的に下降の一途をたどった予定利率は、それぞれの保険によって異なっていますが、いわゆる保険における『保険料』は責任準備金と利回り分で設定されており、 予定利率が上がると、支払う保険料は下がることになり、その逆もまた然りです。


予定利率は、とりわけ貯蓄を目的とした保険においては、元本割れ(支払った保険料よりも受け取る保険金の方が少ない)するかどうか、にも関係してくる重要な要素となりますので、予定利率も、保険を決定するうええの、一つの指標となります。

まとめ

ここまで、保険料の設定に深く関係する『責任準備金』について取り上げてきました。


重要なポイントをまとめると、


  1. 責任準備金とは、保険金支払いのために保険会社が積み立てておくもの 
  2. 終身保険や養老保険は、積み立てられる責任準備金は大きくなる 
  3. 解約返戻金と、責任準備金の金額はほぼ同等であり、万が一の時も保障される

この3つが大切なポイントです。


突き詰めると難解な点も多いですが、これらの基本を覚えておくなら、これから加入しようとしている保険について、その保険料を支払う根拠を理解することができ、ベターではなく、自分や家族にとってベストな保険を選ぶうえで、助けになるでしょう。


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