確定申告で生命保険料控除を受けるためにはどうしたらいいか?

確定申告というと自営業者にとっては馴染みのあるものです。けれどもサラリーマンの方が確定申告で生命保険料控除ができるということについてはご存知ないかたもいらっしゃいます。ここでは生命保険料控除を例にとって確定申告の手続きのしかたをご紹介します。

自営業者必見!生命保険料控除を確定申告で受ける方法

自営業者の方が一年間に支払った生命保険料について、確定申告で生命保険料控除をすることにより納めるべき税金を安くすることができます。どのようにしたらいいのかをご紹介します。


サラリーマンの場合は年末調整

サラリーマンの方が生命保険料控除を受ける場合には、毎年10月ごろに加入している生命保険会社から送られてくる「生命保険料控除証明書」と会社から毎年11月ごろに配布される「給与所得者の保険料控除申請書」に必要事項を書いて会社に提出します。上記2点の書類を提出すると会社の総務部などで年末調整の計算をしてくれます。


もし会社に書類を提出するのを忘れてしまったという場合は、サラリーマンの方もご自身で確定申告をすることによって生命保険料控除を受けることができます。

生命保険料控除の概要

生命保険料控除とは、契約している生命保険や共済などに対して1月~12月まの間に支払った金額に応じた一定額が所得税・住民税から控除されるという制度です。なぜ所得税・住民税から控除できるのかというと、生命保険に加入することによって万が一のときのために個人的に備えをしているため、そのことが社会保障費の軽減につながるからといった理由によるものです。


生命保険料控除には3種類の控除があります。また生命保険を契約した時期に応じて新制度と旧制度に分かれています。

生命保険料控除には3種類の控除がある

生命保険料控除には3種類の控除があり、それぞれの控除の対象となる主な保険は下記のとおりです。

一般の生命保険料控除

  • 終身保険・定期保険・養老保険・学資保険などの貯蓄型保険(保険期間5年未満の場合は控除対象外)
  • 平成23年12月31日以前に契約した医療保険・ガン保険
  • 個人年金保険控除の対象にならない個人年金保険

ただし、受取人が契約者本人・契約者の配偶者・6親等以内の血族および3親等以内の姻族となっているものに限られています。


介護医療保険料控除

  • 平成24年1月1日以降に契約もしくは更新をした医療保険・ガン保険

こちらについても、受取人が一般の生命保険料控除と同様になっているものに限られています。


個人年金保険料控除

  • 「個人年金保険料税制適格特約」を付加した個人年金保険

「個人年金保険料税制適格特約」とは、個人年金保険料控除を受けることを目的として付加する特約のことです。この特約を付加するためには、年金受取人が被保険者と同一で、かつ契約者本人またはその配偶者であること、保険料払込期間が10年以上であること、年金支払期間は10年以上(年金支払開始年齢が60歳以上)の3つの条件が必要となります。


生命保険料控除における新制度と旧制度の計算方法と上限

生命保険料控除における新制度と旧制度の違いは、生命保険を契約したのはいつなのかによるものです。平成23年12月31日以前に契約した生命保険は旧制度平成24年1月1日以降に契約した生命保険は新制度となります。それぞれの制度において控除できる金額の計算方法と上限は下記のとおりです。


旧制度

所得税

年間の支払保険料控除額
20,000円以下

支払保険料全額

25,000円以上50,000円以下支払保険料÷2+12,500円
50,000円以上100,000円以下

支払保険料÷4+25,000円

100,000円以上一律50,000円

一般の生命保険料控除と個人年金保険料控除がある場合、それぞれの控除額が最高5万円ずつ、合わせて最高10万円の所得控除を受けることができます。


住民税

年間の支払保険料控除額
12,000円以下支払保険料全額
15,000円以上40,000円以下支払保険料÷2+7,500円
40,000円以上70,000円以下支払保険料÷4+14,000円
70,000円以上一律35,000円

一般の生命保険料控除と個人年金保険料控除がある場合、それぞれの控除額が最高3万5千円ずつ、合わせて最高7万円の所得控除を受けることができます。


新制度

所得税

年間の支払保険料控除額
20,000円以下支払保険料全額
20,000円以上40,000円以下支払保険料÷2+10,000円
40,000円以上80,000円以下支払保険料÷4+20,000円
80,000円以上一律40,000円

一般の生命保険料控除と個人年金保険料控除と介護医療保険料控除がある場合、それぞれの控除額が最高4万円ずつ、合わせて最高12万円の所得控除を受けることができます。


住民税

 年間の支払保険料    控除額
12,000円以下  支払保険料全額
12,000円以上32,000円以下支払保険料÷2+6,000円
32,000円以上56,000円以下支払保険料÷4+14,000円
56,000円以上一律28,000円

一般の生命保険料控除と個人年金保険料控除と介護医療保険料控除がある場合、それぞれの控除額が最高2万8千万円ずつ、合わせて最高7万円の所得控除を受けることができます。

生命保険料控除をする際、旧制度と新制度の生命保険がある場合、下記の3パターンから選ぶことができます。

  • 旧制度の生命保険料控除だけを適用
  • 新制度の生命保険料控除だけを適用
  • 旧制度と新制度の生命保険料控除を組み合わせて適用

なお、生命保険料控除全体の上限額は所得税で12万円、住民税で7万円となります。例えば、旧制度の一般の生命保険料控除が5万円、旧制度の個人年金保険料控除が5万円、新制度の介護医療保険料控除が4万円のとき、所得税の上限額は14万円ではなく、12万円となります。


生命保険料控除の確定申告をする方法

生命保険料控除の確定申告をするにあたり、「確定申告書」という書類が必要になります。確定申告書は、自営業者の方には1月下旬ごろに税務署から送付されます。サラリーマンの方が確定申告をされる際には、ご自分で税務署出向いて書類をもらうか、税務署に電話をして送付してもらうことになります。最近では国税庁のHP内にある確定申告書等作成コーナーで直接支払った金額等を入力して印刷することもできます。




確定申告に必要な書類

確定申告で生命保険料控除の手続きをするときに必要な書類は下記のとおりです。

  • 確定申告書A第一表・第二表
  • 源泉徴収票(会社で発行してくれます)
  • 生命保険料控除証明書
  • 印鑑(シャチハタは不可)

もし生命保険料控除証明書を紛失した場合、生命保険会社に問い合わせると再発行してくれます。

生命保険料控除の確定申告の書き方

はじめに、生命保険会社から送られてきた生命保険料控除証明書の申告額の欄に記載されている金額に上記でご紹介した計算方法に基づいて生命保険料控除額を算出します。


つぎに、確定申告書A第二表の⑭生命保険料控除の項目にある旧生命保険料の計や新生命保険料の欄などに1月から12月までに支払った金額を記入します。


最後に確定申告書A第一表の生命保険料控除額の欄に生命保険料控除を記入します。


生命保険料控除の確定申告における注意点

確定申告で生命保険料控除をする際に気をつけなければいけない点があります。


確定申告書に支払った金額を記入にあたり、新制度と旧制度を間違えないようにする必要があります。


新制度と旧制度では計算方法が異なるため、もし間違えてしまうと税務署から問い合わせがきてしまいます。


また税務署に確定申告書を提出する際、必ず生命保険料控除証明書を添付しなければなりません。


ただしe-taxで送信する場合はその必要はありませんが、生命保険料控除証明書を一定期間ご自分で保管しておいたほうがよいでしょう。

確定申告を忘れた場合は期限後告知になる

確定申告は申告期限内に行うのが鉄則です。


もし忘れた場合は期限後告知となってしまいます。自営業者の方は特に青色申告の方については、いくつかの優遇措置を受けられなくなってしまいます。


もし申告期限内に書類を提出できなさそうという場合は、概算でもいいのでひとまず期限内に書類を提出し、あとで修正申告をすることもできます。


ただ、サラリーマンの方が年末調整のときに生命保険料控除をし忘れた場合、還付できるものがある場合には過去5年にさかのぼって確定申告をすることができます。

平成28年度分の確定申告書からはマイナンバーの記入が必要となる

平成28年度分の確定申告からマイナンバーの記載が必要になりました。


マイナンバーは日本に居住する人や法人に割り当てられた番号のことをいいます。


確定申告をする際には、申告する本人のマイナンバーをはじめ、家族の分についても記入する必要があります。

まとめ

生命保険料控除は年末調整だけでなく、確定申告でも実施することが可能です。


計算方法が煩雑ではありますが、きちんと計算をして多く支払ってしまった税金を取り戻すこともできますので、調べてみるといいでしょう。

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