更新日:2017/11/01
公的介護保険では、保険料の負担割合が所得によって異なっています。
介護保険では、65歳以上の被保険者の保険料の負担割合は所得によって異なります。介護サービスかかる費用のうち、被保険者で負担する割合を、その被保険者数で割ることで基準額が決まります。これに基準額に、所得に応じた負担割合を乗じることで、介護保険料が決まります。
目次を使って気になるところから読みましょう!
介護保険の保険料は所得に応じて負担割合が異なります。
2000年より始まった介護保険制度。社会保険のため、基本的には被保険者からの保険料で運営するものとされています。被保険者は65歳以上を第1号被保険者、40歳以上を第2号被保険者と呼びます。
40歳以上65歳未満では、介護保険料は医療保険と合わせ、所得に一定の率を掛けた額を支払います。65歳以上でも所得に応じて負担額が異なります。厚生労働省の例では、負担割合を9段階に分けて設定しています。
介護保険料所得別負担割合の基準の決まり方
介護保険では、まず介護給付の金額を求めます。市町村が3年ごとに介護保険事業計画を作成し、この介護サービス見込み量に介護報酬を掛けることで、介護給付に必要な金額の総額が分かります。
次に、これらを国庫、第1号被保険者、第2号被保険者の3者で、50%、22%、28%の負担割合で分けます。社会保険ではありますが、50%は国庫で負担しています。残りの50%を、被保険者の人数比で按分します。
介護保険料所得別負担割合の基準の算定
第1号被保険者22%、第2号被保険者28%という割合は、日本全国のそれぞれの被保険者の総数で決まるもので、3年ごとに見直されます。
この第1号被保険者グループに割り当てられた、介護保険の給付費総額の22%を、第1号被保険者数で割ることで、一人当たりの基準額が決定されます。この基準額を基に、そこから所得別に負担割合が調整されるのです。
第1号被保険者の低所得者層に対する介護保険料負担割合
必要な給付から単純に割り出した基準額を、次に所得別で負担割合を決めていきます。低所得者層に配慮し、負担能力に応じた負担を求めるからです。
「市町村民税が本人は非課税であるが世帯に課税者がおり、かつ本人年金収入などが80万円を超える場合」を基準として、それより所得の低い層を4段階に分け、高い層を4段階に分けます。厚生労働省のこの設定例に基づき、各市町村がより細かく決めていきます。
基準より所得が低い場合の4段階
基準よりも所得が低い4段階を、低い方から第1段階から第4段階に分けます。第1段階では「生活保護被保護者」「世帯全員が市町村税非課税で本人年金収入80万円以下」等となっています。
「世帯全員が市町村民税非課税」で、「本人年収等が80万超120万円以下」が第2段階、「120万円超」が第3段階です。第4段階では、「世帯に市町村民税課税者がおり、かつ本人年収等が80万円以下」とされています。
所得段階別の介護保険料負担割合
それぞれ保険料基準額に異なる倍率を掛けます。第1段階では基準額を1.0とした場合の0.5(公費負担による軽減があるので、実際には0.45)、第2段階と第3段階では0.75、第4段階では0.9、となっています。
第1段階の公費負担は、2015年に国と都道府県、市町村とで負担することで実現しました。消費税が10%になれば第2段階、第3段階でも引き下げるものとされています。
第1号被保険者の高所得者層に対する介護保険料負担割合
高所得者層では、総給付額から割り出した基準よりも、介護保険料の負担割合が高くなります。厚生労働省の設定例では4段階に分かれています。この4段階では本人が市町村民税の課税対象です。
そして、年金以外も含めた合計所得が上がるにつれて介護保険料の負担割合が上がっていくという仕組みになっています。市町村によっては、高額所得者にさらに細かく段階を設定しているところもあります。
基準より所得が高い場合の4段階
基準より高い所得者層を、低い方から第6段階から第9段階に分けます。本人に市町村民税が課税されていて、「合計所得金額が120万円未満」が第6段階です。
以下、同じように本人が市町村民税課税対象で、「合計所得金額が120万円以上190万円未満」が第7段階、「合計所得金額190万円以上290万円未満」が第8段階、「合計所得金額が290万円以上」が第9段階となっています。
所得段階別の介護保険料負担割合
高所得者層についても、介護保険料基準額に対して、段階別に異なる倍率を掛けます。第6段階では基準額を1.0とした場合の1.2、第7段階では1.3、第8段階では1.5、第9段階では1.7となっています。
大都市などでは高所得者が多く、保険料の負担割合もきめ細やかに設定されています。例えば、東京都渋谷区では合計所得金額が2000万円以上まで15段階に分かれ、最高で3.0となっています。
介護保険料所得別負担割合と国庫からの調整交付金
介護保険料の負担割合は、全国で同じように所得別になっているのではありません。介護保険では保険を運営するのは市町村です。基準額自体が、その市町村単位でのサービス量とその市町村での第1号被保険者数で決まっています。
そのため同じ所得でも市町村が異なると保険料の金額が異なることがあります。市町村間で不公平が生じないように、国庫から調整金が交付されます。
介護保険料所得別負担割合基準は市町村別
介護保険では、市町村が運営主体となり、介護保険事業計画を作成します。これに基づき、その市町村での介護給付に要する費用が分かり、その22%を介護保険第1号被保険者数で割ったものが保険料の基準額です。
この基準に所得別に異なる負担割合がかかるのですが、元の基準額が市町村で異なります。介護保険料が所得別に負担割合が異なるとともに、同じ所得でも、住んでいる市区町村で具体的な金額が異なることになります。
国庫からの調整交付金
所得別負担割合の設定も市町村で細かな違いがありますが、金額そのものも市町村によって異なります。これには良い点もあります。市町村別にサービスが異なることで地域の実情を反映できますし、地域ごとに物価も異なるからです。
しかし、これでは高齢者の中でも介護保険利用者が多いかどうかで、市町村間の負担割合に不公平が生じます。そこで国から調整交付金が出されます。
まとめ
介護保険では、保険料は所得に応じた負担割合が定められています。必要な介護サービスの給付額を算出し、その定められた負担割合を、被保険者数で割ることで基準額が決まります。この基準額に対して、所得に応じて負担割合を決めていきます。
厚生労働省では9段階に分かれています。介護保険は市町村別で運営されているので、さらにきめ細かく段階を定めているところも多くあります。