介護保険サービスの費用が1割負担から2割負担になるのはどんな時?

介護保険サービスを利用した場合、そのサービス費の自己負担割合は一律1割負担でしたが、2015年に介護保険制度の改正が行われ、一定の所得がある方は1割負担から2割負担へと引き上げられました。制度改正により大幅に変更された介護保険サービスの内容を解説していきます!

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

公的保険サービスを受けるまでの流れと介護保険の加入時期とは

介護保険とは、健康保険などのように一定の条件を満たした場合には必ず加入しなければいけない公的な保険です。

この介護保険への加入は40歳になった月からとなり、国民はみんな加入する義務があります。そして介護保険へ加入した場合、介護保険料を支払うことになります。
65歳以上の方を第1号被保険者、40歳以上65歳未満の方を第2号被保険者としそれぞれの区分に分けて保険料が徴収されます。
介護が必要となった時に受ける介護保険サービスの費用は、介護保険加入者が支払う保険料と国や市町村の公費でまかなわれており、介護保険制度を運営する上でとても大切な財源となります。
これにより、介護サービス利用者は利用した費用の1割負担でサービスを受けられるのです。

介護サービスを受けるまでの流れ

介護保険を利用した介護サービスを受けるには、要介護度に応じてその受けられるサービスの種類や量が決められています。

介護サービスを受けるためには、まず要介護度認定を受ける必要があります。
手続きの方法は、現在住んでいる市区町村の窓口にて要介護度認定の申請を行います。申請後、市区町村の担当職員が自宅などに訪問し申請者への聞き取り調査を行います。
そして市区町村からの依頼により、申請者のかかりつけ医が心身の状況などについて意見書を作成します。これを主治医意見書といいます。
その後、この聞き取り内容や主治医意見書の情報をもとにコンピューターによる介護認定の一次判定が行われ、この一次判定結果と先の情報をもとに介護認定審査会で第二次判定が行われ、利用者の要介護度が決定します。
要介護度が認定されたら、その結果が申請者に通知されます。

この要介護度認定の申請から、認定結果が通知されるのは原則として30日以内に行われます。

要介護認定を受けたら、次に介護サービスを利用するために「介護サービス計画書」の作成が必要となりますので、要支援1・2の方は地域包括支援センターへ、要介護1~5の方は居宅介護支援事業所のケアマネージャー(介護支援専門員)へ依頼します。
依頼を受けた介護支援専門員は、サービス利用者がどのようなサービスを必要としているか、本人や家族の希望や心身の状態を考慮しながら介護サービス計画書を作成します。

介護サービス計画書が作成されたら、その計画書にもとづいて介護サービスが利用者に提供されるようになります。利用者は介護保険により、サービス費用を自己負担1割負担で介護サービスを受けることができます。

以上が介護保険サービスを受ける流れとなります。
また、要介護認定の申請をした際、「非該当」と判定されることもあります。しかし、この非該当と認定されても、市区町村が行っている地域支援事業などの生活支援サービスを利用することが可能な場合があります。
住んでいる市区町村や地域包括支援センターへ確認してみてください。

自己負担額が1割負担から2割負担に変わる?引き上げられるその背景とは

介護サービスを利用した場合、このサービス費は自己負担1割負担でサービスを利用することができました。
介護保険制度は3年ごとにその内容を見直され、改正されています。2015年の介護保険改正で、初めて利用者のサービス利用負担額が大きく変更されることになりました。
その理由は、高齢者世代の格差が他の世代の格差よりも大きい点が指摘され、「世代内の公平性」を保ち、「負担能力に応じて社会保障に貢献してもらう」ため、費用の負担能力がある利用者には負担額を増やすということになりました。

この2015年の介護保険改正で、2015年8月から一定の所得がある高齢者(65歳以上の第1号被保険者のみ)は介護サービス費の自己負担割合が1割負担から2割負担へと引き上げられました。
それでは、1割負担から2割負担へと引き上げられるのはどのような方なのか、見て行きましょう。

介護保険サービスの自己負担額1割負担と2割負担の線引きはどこ?

ここでは、介護保険サービス費の自己負担割合が1割負担から2割負担となる方の条件を見てみましょう。
このすべての条件にあてはまる場合、2割負担となります。
  1. 65歳以上の方で、本人の前年の合計所得金額が160万円以上ある。(合計所得金額とは、収入から公的年金等控除や給与所得控除、必要経費を控除した後で、基礎控除や人的控除等の控除をする前の金額のことです。)
  2. 前年の年金収入とその他の合計所得金額の合計が、同一世帯の65歳以上の人数が1人の場合280万円以上で、2人以上の場合合計346万円以上ある。(その他の合計所得金額とは、合計所得金額から年金の雑所得を除いた金額のことです。)
また、65歳未満の方、市民税非課税の方、生活保護受給者の方は1割負担となります。

介護保険サービスの自己負担額1割負担から2割負担に合わせて高額保険サービスの費用も上がる

介護保険では、ひと月の利用者負担額が一定額以上となった場合、所得などに応じてその一定額を上回った分を払い戻す「高額介護サービス費制度」というものがあります。
これまで市町村民税課税世帯の負担限度額はひと月あたり3万7200円でした。しかし、介護保険サービス費の自己負担割合が2割へと引き上げられたことに伴い、この高額介護サービス費も引き上げられることになりました。
現役並みの所得がある方は、これまでの3万7200円から4万4400円まで負担額が引き上がります。
現役並みの所得がある方とは、原則として世帯内に課税所得145万円以上の第1号被保険者がいる世帯の方となります。

ただし、ある条件を満たしている世帯の場合、負担額は引き上げられず3万7200円のままとなります。そこの例外が適用される世帯には、市区町村から通知が届きますのでよく確認してください。

【参考】特養などの介護保険施設に入所の場合

介護保険施設に入所している場合にも、これらを利用する基準が変更されました。

内容としては、食費と部屋代の負担軽減の基準が変更となります。
これまで負担軽減の対象となっていた方も、基準変更後は非課税世帯であっても、預貯金額が配偶者がいる場合には2000万円、いない場合には1000万円以上ある方は対象外となります。

施行以来の大幅改正2015年介護保険制度改正のポイント

2015年の介護保険制度改正では、制度が始まって以来の大幅な改正が行われました。
これにより、介護サービスの内容や利用者負担についてそのあり方が見直されることとなりました。
大幅に制度が改正されたことにより、利用者だけでなく介護の現場でも混乱する事態となったので、改正のポイントをきちんと押さえ、理解しておくことが大切です。

ポイント1:2015年の介護保険制度改正ポイント

今回の介護保険制度の改正では、一定以上の所得がある利用者のサービス費用が1割負担から2割負担へと引き上げられるなどの他に、特別養護老人ホームに入所できるのが要介護1から要介護3以上の方に変更され、40~64歳までの第2号被保険者の保険料も見直しが行われました。
2015年の改正では第2号被保険者の保険料の引き上げは見送られましたが、今後加入者の年収に応じて保険料が決められる「総報酬制」の導入が行われるかもしれません。

ポイント2:高額介護サービス費の自己負担限度額

介護保険にも、健康保険のようにひと月の利用者が負担するサービス費が一定額以上超えた場合、その超過分を払い戻す「高額介護サービス費制度」というものがあります。
2015年の改正により、一般的な世帯の負担額が3万7200円から4万4400円まで引き上げられることになりました。

ポイント3:在宅サービス費の支給限度額

介護保険サービスでは、要介護者が在宅でサービスを受けた際に、サービス費の9割が介護保険から支給されるようになっています。
しかし、この支給限度額も制度改正によって変更されることになりました。

ポイント4:単身世帯は「実質収入280万円」が負担額の境界線

これまでは介護サービスの利用者負担は一律で1割負担でしたが、2015年の改正により、一定以上の収入がある方はこの負担割合を1割負担から2割負担へ引き上げられました。
この負担額の境界線は、単身世帯は収入が「280万円」以上となっています。

ポイント5:2人以上の世帯の場合「世帯収入346万円」が負担額の境界線

配偶者がいるなどの2人以上の世帯の場合、介護サービスの利用者負担が1割負担から2割負担へと引き上げられる負担額の境界線は、世帯収入が「346万円」以上となっています。

介護の経済的負担に今後備えるためにはどうするべきか3つのポイント

介護が必要な高齢者の増加に伴い、介護保険制度見直しの度に介護保険料とサービス費が値上がりしています。
介護にはサービス費用だけではなく、生活に必要な費用や施設を利用した際の居住費など、想像している以上のお金が必要となります。
今後介護に必要なお金はますます増え、経済的な負担となってくるでしょう。
将来の介護の経済的負担に備えるため、これから対策を練っておくことも大切です。ここでは、どのような対策方法があるのか3つのポイントを説明していきたいと思います。



ポイント1:介護人脈を築いておく

介護が必要となった時、肉体的にも精神的にも負担は増え、さらに金銭的な負担も重くのしかかります。
それらの負担を一気に抱えるのはとても難しいことです。
そこで、介護が必要になった時にはまず公的な介護保険を利用し、介護保険で受けられる利用者負担額軽減等の制度をよく調べることが大切です。
そして世帯が別の家族や親せきにも相談をし、近隣に住む知人や友人にも声をかけておくことで、特に認知症で徘徊の傾向がある方の見守りなどの協力を得ることができます。
このように介護人脈を築いておくことで事故などを防ぎ、また家族や親せきが介護を交代で行ってくれる場合には安心して仕事へ行けたりと、余分な介護費用を負担しなくてよくなります。

ポイント2:給付金などで経済的備えをしておく

公的な介護保険での支給は現金給付ではなく、サービスを利用した分だけ支給される現物給付とされています。
ですがこの公的介護サービス費以外にも、生活で必要な物の購入や介護保険外のサービスを利用した場合には介護費用はさらにかかります。

そこで、現在さまざまな民間の保険会社で介護費用に備えるための保険が販売されています。
この介護保険の給付金には、一時金と年金タイプがありどちらか一方の支給方法が選べます。公的な介護保険だけでは将来の介護費用が心配という方は、この民間の介護保険への加入を検討してみてはいかがでしょうか?

ポイント3:要介護度ごとに支給限度額は違う

介護保険から支給されるサービス費は要介護度ごとに限度額が定められています。
支給限度額内でサービスを利用すれば自己負担割合は1割負担(もしくは2割負担)となりますが、この支給限度額を超えてしまうと、超えたサービス費用は10割自己負担となりますので注意が必要です。

まとめ

2015年の介護保険制度改正では多くの点で見直しが行われ、利用者の負担割合も増えるかたちとなりました。
介護サービス費の自己負担1割負担から2割負担では、たかが1割負担が増えただけと思うかもしれませんが、これまでひと月にサービス費用を2万円支払っていた人が2割負担へと引き上げられた場合、サービス費は4万円の支払いとなってしまいます。
これはかなりの負担になることでしょう。
そのため、必要な介護サービスを経済的理由から減らす利用者もたくさんでてきました。
これらの問題も考慮し、これからの介護保険制度改正を行ってもらいたいものです。

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