前年の所得が介護保険に関係する。毎年変わる介護負担割合証とは?

介護保険証には介護被保険者証と介護負担割合証の2種類があります。なかなか分からない負担割合証は、実は昨年の収入(所得)等によって今年の介護サービス費用の負担額が変わって来ます。また、介護保険法の改正で一部の方が1割負担から2割負担へ引き上げられます。

介護保険の介護保険負担割合証についての全情報

平成27年度の介護保険法改正により、平成27年8月から一定以上の所得がある方を対象に、介護サービスを利用したときの自己負担割合についての見直しが行われました。

そこで、負担割合を明確化するために要介護・要支援認定を受けているすべての方に「介護保険負担割合証」が交付されることになりました。

平成27年7月までは一律の1割(介護サービス利用者)でしたが、平成27年8月からは1割または2割(一定以上の所得がある方)となります。

介護保険負担割合証の主な記載事項

介護保険負担割合証には様々な情報が記載されされますが、負担割合証で重要になってくる主な記載事項は以下の情報です。


  • 利用者負担割合……1割または2割のいずれかが記載されます 
  • 開始年月日及び終了年月日……毎年8月1日~翌年7月31日 ※年度途中で負担割合が変わる場合があります。


要介護・要支援認定を受けた方に、昨年の収入を精査し、毎年7月頃に市区町村から負担割合が記された証が交付されます。これは負担割合が1割の方も2割の方も全員に発行されます。

この負担割合証を介護保険被保険者証と一緒に保管し、介護保険サービスを利用する際は、必ず負担割合証と介護保険被保険者証の2枚を一緒にサービス事業者や施設に提出してください。

交付される負担割合証の見本と様式

介護保険負担割合証は、たて約13cm×よこ約9cmの大きさで、両面に印刷された紙証で届きます。


表面には


・交付された年月日


・被保険者の情報(被保険番号、住所、氏名、生年月日、性別)


・利用者負担の割合


・発効期日


・有効期限


・保険者番号並びに保険者の名称及び印(自治体名と自治体の印)



裏面には


1.この証の交付を受けたときは、大切に保管してください。


2.介護サービスを受けようとするときは、必ずこの証を事業者又は施設の窓口に提出してください。


3.介護サービスに要した費用のうち、「利用者負担の割合」欄に記載された割合分の金額をお支払いただきます。(居宅介護支援サービス及び介護予防支援サービスの利用支払額はありません。)


4.被保険者の資格がなくなったとき又はこの証の有効期限に至ったときには、直ちに、この証を市町村に返してください。


5.この証の表面の記載事項に変更があったときは、14日以内に、この証を添えて、市町村にその旨を届け出てください。


6.不正にこの証を使用した者は、刑法により詐欺罪として懲役の処分を受けます。


といった被保険者の詳細な情報であったり、注意事項等が記載されています。手元に届いたら、まず、記載事項に自分の情報に誤りがないかしっかりと確認しましょう。また、毎年、介護被保険者証と同様に負担割合証も色が変わりますので、提出する際は混同しないように注意して下さい。  


負担割合証の発行時期

負担割合証は要介護(支援)認定を受けている全員に交付されます。

この負担割合証の発行時期はすでに要介護認定を受けている方、新規の方などによって異なります。

●すでに要介護(支援)認定等を受けている方

前年の所得に応じて負担割合を決定し、毎年7月に交付されます。


●新しく要介護(支援)認定等を受けようとする方


認定結果通知書、介護保険証と一緒にに同封されます。


●適用期間中に世帯構成や所得の変動によって負担割合が変更になった方


変更を確認した翌月に、新しい負担割合証が交付されます。 

負担割合証の2割負担対象者について


介護保険サービスを利用する場合、サービス費用の一部を利用者が負担することが必要でした。

この利用者負担については、今までは所得の上限にかかわらずサービス費を1割として一律にしていましたが、団塊世代が75歳以上となる2025年以降も介護保険制度を持続可能にするため、65歳以上の方(第1号被保険者)のうち、一定以上の所得がある方には介護サービス費のうち2割を負担してもらうことになりました。

2割負担の所得水準

2割負担となる人(一定以上所得者)とは、下記の両方にあてはまる人のことです 

  • 65歳以上で本人の合計所得金額が160万円以上 
  • 年金収入+その他の合計所得金額が、単身世帯で280万円以上、または65歳以上の人が2人以上いる世帯で346万円以上がある人

※負担割合の判定にあたっては、対象となる収入に非課税年金は含まれません

※判定は、第1号被保険者個人単位で行います(本人の合計所得が160万円以下の場合は、同世帯内の他の第1号被保険者の所得状況にかかわらず、1割負担となります)

※第2号被保険者(40〜64歳の方)は一律に1割負担となります


2割負担の判定の流れ

2割負担の対象となる方の判定の流れは下記の通りです。 

  1. まず、要介護(要支援)認定を受けている人であるか 
  2. 本人が65歳以上(第1号被保険者)であるか 
  3. 本人が市町村民税を課税されているか 
  4. 昨年の被保険者本人の合計所得金額が、160万円以上であるか

2割負担となる対象の方は、上記の基準以上の所得を有する方で、同一世帯(例えば、夫婦)でも負担割合が異なることがあります。

生活保護受給者は所得に関わらず1割負担になる

生活保護では、介護扶助・介護保険で給付される給付内容であるホームヘルプサービス(訪問介護)・施設等の介護サービス費用のうち自己負担分について介護扶助の支給があります。

生活保護受給者の被保険者の場合、介護サービスを受けるために必要な負担の9割は自治体より支払われます。残り1割の自己負担分は、介護扶助から支払われることになりますが、その自己負担の料金も生活保護法で支給されることになります。 


この費用は、直接、福祉事務所から介護事業者へ支払いが行われるため自己負担は発生しません。また40歳〜64歳の第2号被保険者にあたる介護保険に加入していない全員に支給されます。

要約すると、給付が支給される場所は異なりますが、内容的には特に大きな変わりはありません。


生活保護を受けている方のほとんどの場合、経済的出費になるマイナスになる自己負担は無いに等しいと言うことです。

その為、生活保護を受けている方の場合は所得等に限らず1割負担になります。(生活保護開始日の月から生活保護廃止日の月までは1割です。ただし、廃止日が1日の場合は、その前月末日までとなります。) 

年度途中の負担割合の変更について

負担割合証は毎年8月1日から翌年7月31日まで有効ですが、年度の途中でも変更があった場合、負担割合も変更になりますので損しないためにも速やかに相談・報告しましょう。

変更が生じるのは以下の場合です。


●所得更正による変更


●65歳以上の世帯の構成の変更

・転出・転入等に伴う住所等の変更

・65歳になった人が家族にいる場合

・同一世帯の第1号被保険者の死亡   など


※第2号要介護(要支援)認定者が65歳に到達した時は、翌月から負担割合が変わる場合があります。  

もし負担割合証をなくしてしまったとき

もしも、負担割合証を紛失してしまった際は、再交付が可能です。

再交付の申請には介護保険負担割合証再交付申請書を記入の上、役所の担当課に行きましょう。申請をしたからと言って、即日交付は対応していないところもあるのでご注意下さい。大抵は1・2日後に郵送にて再交付されます。

また、申請時にはマイナンバーでの本人確認が必要な手続きになります。

窓口での申請の場合は、マイナンバー確認書類(通知カードや個人番号カード等)と身元確認書類(運転免許証、パスポート等)を合わせて提示しましょう。

郵送の場合は、マイナンバー確認書類と身元確認書類の写し(コピー)を添付します。

代理人での申請や、住民票が別世帯の方の申請でも受付可能ですが、必要書類が増えてしまいます。

再交付の必要書類

再交付に必要な書類は、役所の窓口に申請に来た人によって異なりますので注意しましょう。

被保険者本人が申請する場合

  • 本人の個人番号の確認ができるもの…マイナンバーカード(個人番号カード)または 通知カード 
  • 本人確認ができるもの…顔写真つきの官公庁発行の身分証明書(マイナンバーカード、運転免許証、パスポート、身体障害者手帳など) 
  • マイナンバーカード(個人番号カード)を申請時に提示する場合は、1点で可

住民票が同じ世帯の方が申請する場合

  • 再交付をする被保険者の個人番号が確認ができるもの…マイナンバーカード(個人番号カード)(コピー可)または 通知カード(コピー可) 
  • 窓口に申請に来た方の本人確認ができるもの…顔写真つきの官公庁発行の身分証明書(運転免許証、パスポート、身体障害者手帳など)

住民票が別世帯の方が申請する場合

(本人と同居していても、住民票を別世帯にしている家族も含む)

  • 再交付をする被保険者の個人番号が確認ができるもの…マイナンバーカード(個人番号カード)(コピー可)または 通知カード(コピー可)
  • 窓口に申請に来た方の本人確認ができるもの…顔写真つきの官公庁発行の身分証明書(運転免許証、パスポート、身体障害者手帳など) 
  • 窓口に申請に来た方が代理人だと確認できるもの…被保険者本人からの委任状

しかし、被保険者本人が身体的な事情等により委任状を記入できない場合は、役所の担当課に相談ください。また、顔写真つきの官公庁発行の身分証明書を持っていない場合は、本人確認として認められる書類を複数持って行くことが良いでしょう。 

負担割合証の再発行の流れ

再交付には
  1. ケアマネジャーや市区町村の窓口にて相談
  2. 介護保険負担割合証再交付申請書に必要事項を記入
  3. 市区町村の役所の担当課に提出
  4. 本人確認が出来る物を提示(代理人等は委任状も提出)
  5. 後日、負担割合証が被保険者の住所へ郵送される

の流れで進められます。役所によっては即日発行に対応していない場合もありますので窓口で相談して下さい。

また、同様に自治体によっては不正な再交付を防止するため、電話およびFAXでの再交付申請を受付けていない場合もあります。上記の方法で再交付の申請をすることが難しい場合は、役所の窓口まで直接相談ください。

負担割合証の交付に際しての注意事項

介護保険負担割合証が交付されるに際して、下記の事に注意してください。
  • 介護保険負担割合証の提出がないと、負担割合が確認出来るまで一時的に2割負担になることがあります。必ず担当のケアマネジャー、介護施設職員等にご提示ください。
  • さかのぼって所得の修正申告をすると介護負担割合が変更され、7月利用分からの差額を支給したり、返還を求めるられることがあります。
  •  65歳以上の方の転入、転出などがあった場合は翌月からの負担割合が変更されることがあります。
  • すべての方に、月額の負担上限が決められています。上限額を超えた際には、その差額は高額介護サービス費として支給されます。その為、2割負担の方でも必ずしも自己負担額が2倍になるとは限りません。 
  • 生活保護受給者の方、65歳未満の方(第2号被保険者)、住民税非課税世帯の方は1割負担となります。 
  • 給付の減額を受けている方は、減額期間中は割合証に限らず3割負担となります。 
  • 区内で転居された際には、住所の変更手続きが必要です。詳しくは役所の担当係までお問い合わせください。  

間違いやすい介護保険の負担割合証と介護保険証の違い


介護保険証とは、介護を必要とする人が介護保険サービスを利用する際に介護被保険者である事を確認する必要な証明書です。

負担割合証とは、介護を必要とする人が介護保険サービスを利用した際に介護サービス費の利用負担割合が1割なのか2割なのかを記載した証書のことです。

割合の額は、負担割合証の「利用者負担割合」の欄に記載されています。

介護保険のサービスを利用する際は、介護保険被保険者証と介護保険負担割合証の両方の提示が必要になります。

忘れないよう事業所等に提出しましょう。

まとめ

とてもややこしいシステムですが、少子超高齢化社会が進む現代で、今の介護保険制度を今後も維持して行くために執拗不可欠なシステムです。

特に、団塊世代が75歳以上となる2025年には現在の保険料も更に引き上げられるのではないかと言われています。高齢者を支える若者や自治体の財源を守るために、一定以上の所得がある人には負担額が増えることが予想されます。

しかし、負担が増えるから経済的にもと不安になる人も多いかと思います。負担額が一定以上上がらないよう、負担が大きい方にも高額介護サービス費など助成制度も充実していますので、併せて利用することで経済的にも負担はあまり変わらないと言われています。

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