介護保険の基本チェックリストにはどのような活用法があるの?

介護保険の基本チェックリストとは、国で定めた25項目の質問に高齢者の方が回答し、その回答結果によって介護保険の総合事業サービスの利用対象者となるかの判定が出ます。要介護状態とならないためのサービスの一環です。基本チェックリストの内容をよく理解しておきましょう。

介護保険の基本チェックリストに関する情報まとめ

平成29年4月1日から、介護保険の要支援者等に対し、多様な支援を行うための「介護予防・生活支援サービス」が始まりました。

地域支援事業を行うにあたり、介護保険被保険者が要介護・要支援状態となることを予防するため、『基本チェックリスト』を用いて被保険者の状態を把握することができます。

基本チェックリストにおいて、要介護状態となるおそれの高い方は介護予防事業の対象となります。

基本チェックリストの対象者

介護保険の基本チェックリストを受けることができる対象者は、以下の要件すべてに該当する方です。

  • 要支援1の認定を受けている認定更新対象の方(要支援2の認定を受けている方も実施は可能です。)
  • 介護予防給付サービスの利用を必要としていない方
  • 基本チェックリストによる事業対象者認定を希望する方
  • 介護保険第2号被保険者ではない方
  • 介護保険の給付制限を受けていない方

要支援1の認定を受けている方で、認定有効期間終了間近の方には認定有効終了の60日前に介護保険課から「基本チェックリスト」対象者の案内のための書類が送付されます。

介護保険の基本チェックリストの4つの特徴

介護保険の基本チェックリストを行う際には、高齢者の方の心身機能の衰えや介護の有無を判断するために25項目の質問が用いられます。

そこで、基本チェックリストの特徴を4つ解説しましょう。

国で定められてた全25項目の質問で構成されている

介護保険の基本チェックリストとは、厚生労働省が作成した25項目で構成されており、「はい」または「いいえ」で答えていきます。

項目は大きく5つの部類に分けられます。

『暮らしぶりその1』
  1. バスや電車で1人で外出していますか
  2. 日用品の買い物をしていますか
  3. 預貯金の出し入れをしていますか
  4. 友人の家を訪ねていますか
  5. 家族や友人の相談にのっていますか

『運動器関係』

  1. 階段を手すりや壁をつたわらずに昇っていますか
  2. 椅子に座った状態から何もつかまらずに立ち上がっていますか
  3. 15分間位続けて歩いていますか
  4. この1年間に転んだことがありますか
  5. 転倒に対する不安は大きいですか

『栄養・口腔機能等の関係』

  1. 6ヶ月間で2~3kg以上の体重減少はありましたか
  2. 身長( cm) 体重( kg) BMI値( ) BMI値が18.5未満か
  3. 半年前に比べて堅いものが食べにくくなりましたか
  4. お茶や汁物等でむせることがありますか
  5. 口の渇きが気になりますか

『暮らしぶりその2』

  1. 週に1回以上は外出していますか
  2. 昨年と比べて外出の回数が減っていますか
  3. 周りの人から「いつも同じ事を聞く」などの物忘れがあると言われますか
  4. 自分で電話番号を調べて、電話をかけることをしていますか
  5. 今日が何月何日か分からない時がありますか

『こころ』ここ2週間の状態を答えてください。

  1. 毎日の生活に充実感がない
  2. これまで楽しんでやれていたことが楽しめなくなった
  3. 以前は楽にできていたことが今ではおっくうに感じられる
  4. 自分が役に立つ人間だと思えない
  5. わけもなく疲れたような感じがする



25項目の質問に高齢者自身が回答する

以上全25項目の回答結果から、生活機能全般ついてや運動機能、栄養状態や認知症などのさまざまなリスクを判定します。

回答の方法は「はい」か「いいえ」で答えるので、難しいことはありません。

高齢者が自身の心身機能の衰えやリスクなどを把握することができる

基本チェックリストに回答することで、高齢者自ら自身の生活や健康状態を振り返ることができ、これまで気付かなかった心身機能の衰えや生活状況を把握することができます。

総合事業のサービス利用対象者を選定するためのツールとして活用する

基本チェックリストを実施し、生活機能の低下などが認められた高齢者の方は総合事業サービス利用の対象者となります。

このように、基本チェックリストでは総合事業サービス利用者の選定をするために活用されます。

総合事業における基本チェックリストの役割

介護保険における、介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)では、これまで全国一律で提供されていた要支援者サービスを、多様な生活支援のニーズをもとに地域で支えていくということになりました。

総合事業は、家事などの生活を支えるサービスや、介護予防教室を実施し、地域で高齢者を支え、高齢者自身も自立した生活を営むことができるような仕組みになっています。

総合事業サービスの利用には、介護保険の基本チェックリストの役割が欠かせません。

介護保険の基本チェックリストの内容

基本チェックリストは全25項目の質問で構成されており、「生活機能全般」「運動機能」「栄養状態」「口腔機能」「閉じこもり」「認知症」「うつ」のそれぞれのリスク判定が行われます。

また、その回答結果から総合事業サービス利用の対象者かどうかの判定もされます。

総合事業のサービス利用にかかる手続きの簡略化

これまで、介護保険の要介護・要支援認定を申請する際には、訪問調査や主治医の意見書提出、審査会での審査など一定の時間を要する必要がありました。

しかし、基本チェックリストを行うことで、総合事業の対象となった方はすぐに総合事業サービスを利用することができます。

このように、総合事業サービス利用における事務手続きなどを簡略化することができます。

高齢者が自身の状態を客観的に把握するためのツール

基本チェックリストに高齢者自身が回答することによって、自身では気付きにくい心身の衰えやリスクを把握することができます。

また質問に答えることで、自身の健康面や生活の状況などを客観的に把握することができます。

介護保険の基本チェックリストの活用イメージ

これまで要支援認定の更新申請の際には、新規認定の時と同じように調査員による認定調査、主治医の意見書の提出、そして介護認定審査会での審査が行われていました。

しかし、介護保険の基本チェックリストにより、被保険者の健康状態や運動機能、認知症の有無などを把握することができるので、認定審査などの事務が簡略化することができ、事務負担を軽減できるメリットがあります。



要支援認定の更新申請に代わるものとしての基本チェックリスト

基本チェックリストを活用することにより、要支援認定の更新申請では、従来行われていた『要介護認定の更新申請』『認定調査』『主治医意見書提出』までの手続きを、代わりに『基本チェックリストの実施と提出』で行い、その後の『介護認定審査会』『判定』の代わりに『リスク判定』『事業対象者の認定』で行うことによって、被保険者に認定の結果を通知しサービスの利用が開始できるようになります。

これまでの要支援認定の更新申請では5つのステップを踏まなければいけませんでしたが、基本チェックリストを活用することで、3ステップで被保険者へ認定結果を通知することができます。

まとめ

介護保険の要介護認定の申請と基本チェックリストの実施は同時には行うことができないので注意が必要です。

基本チェックリストの実施対象要件や本人の希望等を踏まえ、どちらか一方が適切に行われるように支援されます。

寝たきり状態であったり、認知機能の低下などにより目が離せない状態である場合など、明らかに要介護認定が必要だと考えられる場合には介護支援専門員などの担当者によって要介護認定申請への支援が行われます。

基本チェックリストを実施し、総合事業サービス利用対象者となれば、地域で行われる多様なサービスを利用することができ、また要介護状態とならないためにも、介護予防サービスにて機能向上・維持を図って住み慣れた地域で自立した生活を続けていきましょう。

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