介護保険の外出介助サービスを使いたい!その問題点と解決法について

介護保険の外出介助を使いたいとケアマネジャーに伝えたら、何だか渋い顔…。実はこの外出介助、介護保険の中ではかなり特例となるサービスなんです。正直言って、その利用は一筋縄では行きません。さまざまな利用上の制限とその解決方法について、解説していきたいと思います。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

介護保険の外出介助についてのまとめ記事

「自宅の中でのことは何とか自分でできるけど、とにかく外出が大変で…」 

そんな思いで、外出介助を期待して介護保険を申請される方はとても多いものです。


しかしこの介護保険サービスの外出介助、

そう簡単には受けられないということをご存じでしょうか。


外出介助は

「訪問介護(ホームヘルプ)サービス」

の一種として位置づけられています。


 介護保険における訪問介護サービスというものは、本来は自宅の中で行われるもの。

あくまで例外として、通院など一部の外出介助を

介護保険サービスの対象として認めています。

「目的地に行くための自宅での準備などをひっくるめて、

 外出も一連の訪問介護サービスの流れに含む」

とみなすからです。

そしてそれら外出介助も、無条件に認められているわけではありません。 

介護保険の外出介助対象者

外出介助サービスが受けられるのは、

介護保険の認定審査を受けて要支援1~要介護5と認定された方です。 


「要支援だから外出介助は使えないとケアマネジャーに言われた」

という方がときどきいますが、要支援だから絶対無理というわけではありません。

ただし、使える条件が要介護者に比べればかなり厳しいのは確かです。


外出介助はあくまで例外のサービスであるがゆえに、 

「それは本当に必要な外出なのか?」

「本当に一人では行けないのか?」

「家族が付き添えないのか?」

「介護保険以外の手段でどうにかできないのか?」

という自治体の突っ込みをすべて言い負かせるような材料と

申し開きをするケアマネジャーの手腕が必要になります。

要支援ではその材料が弱いのです。


単に一人での外出が不安という理由では、外出介助は認められません。

 (自治体により条件の厳しさに差はあります)  

介護保険の外出介助のサービス内容

外出介助は「訪問介護」として位置付けられているとお伝えしました。

まずはその中でも代表的な「介護タクシー」について、

また「その他の訪問介護」について、その内容をご説明していきます。

介護タクシー

介護タクシーは、一人での外出が難しい方をサポートする車両。 

介護保険サービスとして使えるのは、

要介護1以上

・ケアプランに介護タクシー利用が含まれている

この二つの条件を満たす方に限られます。

介護タクシーの「通院等乗降介助」は、要介護1以上の方しか使えないのがその理由です。


そして介護タクシーの運転手は、

介護職員初任者研修(ヘルパー2級)以上の資格を持つスタッフです。


介護タクシーのサービス内容は以下の通りです。

一連のサービスの中で、介護保険適用部分とそうでない部分があるのでご注意ください。 


まずは出発前。

自宅まで迎えに行き、最初に利用者の健康状態を確認。

問題なければ着替えなど出かける準備を手伝います。

ベッドからタクシーまでの移動と乗車の介助を行い、玄関を施錠して出発します。

ここは介護保険適用サービスとなります。 


次に移動中。

もちろん運転手は利用者の様子を気にして声かけも行います。

しかし移動中は介護保険適用ではありません。

(別の付き添いスタッフが、乗車中に常時の見守りなどを行う場合を除く)

通常のタクシーと同じと思ってください。


目的地到着後。

降車と、目的地までの移動を介助します。

通院の場合は必要に応じて受診後の会計や薬の受け取りも手伝います。

ここは基本的に介護保険適用です。(受診中の待ち時間は適用されません) 


帰宅後。

降車から自宅まで、あるいはベッドに移るまでを介助します。

必要に応じて着替えや排泄の介助をを行うこともあります。 


※介助の内容はケアプランによって決まるので、

必ず上記全ての介助が行われるわけではありません。

特に病院内の介助は自治体により厳しい制限があり、

院内での付き添いは全て自己負担になってしまう場合もあります。 


そして介護タクシーの料金についてです。

以下の費用がかかります。


・タクシーでの移送料金

・介護保険自己負担額1~2割

・(場合により)車椅子や寝台などのレンタル料


タクシーの移送料金(運賃)は介護保険が適用されないため、全額自己負担です。


「通院のタクシー代がばかにならないので、介護タクシーで安くならないか?」

利用者さんからこんなご相談がよくありますが、これは大きな誤解。

介護タクシーは、通常のタクシーと同様の料金に加えて介護サービスの料金、

場合によっては迎車や貸し切りの料金もかかります。

つまり通常のタクシーより高くつくのです。


交通費の節約が目的であるのなら、介護タクシーは全くおすすめできません。 

訪問介護

公共交通機関による外出・乗り物を使わない徒歩や車椅子での外出も、

基本的には介護タクシーと同じです。


ただし大きく違うのは、こちらは要支援の方も使えるということ。

もしバス等の乗降に介助が必要である場合は

「通院等乗降介助」ではなく通常の身体介助と位置づけられます。


バス等に乗車中は(座位を支える介助や常時の見守りが必要ないのなら)

介護保険サービスとして使えません。ヘルパーを拘束した実費が必要です。


ところで外出介助について、よく話に出るのが

「単なる散歩の付き添いは介護保険サービスでできるのか?」

ということ。


散歩というものは買い物や通院とは違い、明確な目的地がありません。

ですから認められる基準のハードルは特に高いのです。

以下のような条件が課せられます。


・単なる趣味の散歩ではなく「閉じこもりの改善」などの明確な目的があること。

・他の介護サービスでは目標の達成が困難であること。 

 (例えば「閉じこもりの改善」はデイサービスなどにより解決できることがあります)

・家族や地域の協力があれば、それらを優先して使うこと。

・常時介護できる状態での見守りが必要であること。(一人で安全に移動できる人はだめ)

・医療リハビリ(歩行訓練等)ではないこと。(それは訪問リハビリを使ってください)

・ケアマネジャーはその効果を一定期間ごとに評価し、継続するかどうかを検討すること。


…こんなに条件が多いのならば、最初から訪問リハビリを使った方が良い気もします。

外出介助で介護保険が適用される場合とされない場合

外出介助は、その目的により

介護保険適用になる場合とならない場合があります。

それぞれを見ていきましょう。

介護保険が適用される外出介助の主な目的

外出介助として介護保険給付の対象となる外出目的は、

以下のように日常生活での必要性が高いものに限られます。


  • 通院
  • 日常生活品の買い物
  • デイサービス事業所や介護施設の見学
  • 官公署への届出
  • 選挙の投票

しかしやはりこれも判断の難しいところで、

洋服は日常生活に早急に必要なものではないため、買い物介助の目的としてNG。

では下着はどうなのか?

というような細かい判断は、自治体に委ねられています。 

介護保険の給付費対象外とされる外出目的

では、介護保険適用にならない外出目的とはどんなものなのでしょう。

下記にその例を挙げます。


  • 日常生活に必須なもの以外の買い物
  • ドライブ
  • パチンコ
  • 観劇
  • 冠婚葬祭
  • 外食
  • お墓参り
  • 地域のお祭りへの参加

パチンコはともかく冠婚葬祭やお墓参りくらいいいじゃない…とも思いますが、

極端に言えば行かなくても死なない・人権に直結しないからNGなのです。


しかし逆に言えば、お墓参りに行くことが利用者の健康維持に不可欠ということを

証明できるケアプランがあれば、適用となる可能性もあるということです。

それもこれも、しつこいようですが自治体によって判断基準の程度に差があります。 

もし介護保険の給付費対象外の目的で外出したい場合

もちろん介護タクシーを全額自腹で払えば、

介護保険サービスに該当しない目的での外出も可能です。

しかし、かなり高額の支払いは覚悟してください。


もう結局、外出の手伝いをしてもらうのは無理じゃない!

そう諦めるのはまだ早いです。介護保険サービス以外に目を向けてみましょう。


例えば障害者手帳を取得することで、その等級により

・タクシー代の助成

・外出介助

・駐車禁止違反の免除

などを受けられる場合があります。

また一般的に障害者サービスは、介護保険よりもはるかに用途の制限が少ないです。

障害者手帳の取得については、主治医にご相談ください。


また一定以上の要介護度と認定された方に、

福祉タクシー乗車券(自治体により名称は異なります)を配布している自治体もあります。


一例として、船橋市はタクシー代が半額になる券を要支援2〜要介護2の方には年間12枚、

要介護3以上の方には枚数上限なしで配布しています。

一般タクシーでも使えるため、どんな目的の外出でも利用が可能。素晴らしい!

外出援助サービスとその利用方法

そんな素晴らしいサービスは導入されていなくても、

全ての自治体ではありませんが「外出支援サービス」を使える場合があります。

主に以下の2種類の外出支援サービスがあります。


自治体や社会福祉協議会による移送サービス 

NPO法人のボランティアによる「福祉有償運送」


福祉車両を使った移送サービスで、介護保険外です。

(ただし要介護認定は受ける必要があります)

どちらも介護保険サービスよりも用途の制限は少なく、運賃もリーズナブルです。

乗降介助などを受けることもできます。


これらのサービスは、ケアマネジャーさんもちゃんと把握できていない場合があります。

尋ねても要領を得ない場合は、役所の窓口や社会福祉協議会にご相談ください。

まとめ

介護保険が始まった当初は外出サービスの適用範囲はこんなに厳しくなく、

待ち時間も乗車時間も全て介護保険適用でした。


現在の介護保険での外出サービスは、かなり使い勝手が悪いと言わざるを得ません。


代替手段やご紹介した地域資源の利用も視野に入れ、

より豊かな生活を送れる方法を検討していただきたいと思います。

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