介護保険の予防給付と介護給付の内容と費用について詳しく説明!

介護保険の予防給付とは、利用者の要介護状態になることを未然に防止することや状態の改善を促すための給付です。一方、介護給付とは、利用者の要介護状態の悪化を主に防止し、状態の維持・改善を促すための給付です。要介護度により利用できる介護保険給付は異なります。

介護保険の予防給付と介護給付に関して知っておくべき情報まとめ

要介護認定を受け、要支援または要介護度が決定された方は、介護保険給付を利用することができます。

ただし、要介護認定されたからといって一律に同じ給付が受けられるわけではなく、要支援または要介護の区分によって介護保険の対象になる給付は異なります。


今回は、介護保険の予防給付と介護給付のそれぞれの内容と費用を説明します。この記事を読めば、介護認定を受けたご自分または認定を受けた家族が給付を利用する場合、どんな内容で費用はどの位になるのか大体の目安についておわかりになることでしょう。




介護保険の予防給付と介護給付の対象者

介護保険の予防給付とは、利用者の要介護状態になることを未然に防止することや状態の改善を促すための給付となります。介護保険の予防給付の対象者は次の通りです。


要支援度内容
要支援1要介護状態とは認められないものの、社会的支援を必要とする状態。
要支援2生活の一部について部分的に介護を必要とする場合で、介護予防給付の利用により維持、改善が見込まれる状態。

介護保険の介護給付とは、利用者の要介護状態の悪化を主に防止し、状態の維持・改善を促すための給付となります。介護保険の介護給付の対象者は次の通りです。


要介護度内容
要介護1生活の一部について部分的に介護を必要とする状態。
要介護2食事や排泄、歩行等に何かしらの介助を必要とする状態。
要介護3問題行動・理解力の低下がみられる等、中等度の介護を必要とする状態。
要介護4問題行動が目立ち・理解力のかなりの低下、食事・排泄・入浴・歩行等に全面的な介助を必要とする重度の介護状態。
要介護5意思伝達ほぼ不可能、食事・排泄・入浴・歩行等が単独では不可能な最重度の介護状態。


介護保険の給付管理はケアマネジャーが行う

ケアマネジャーが行う介護保険の給付管理の流れは以下の通りになります。

1.各利用者の介護保険給付の利用予定(サービス利用票等)を作成(1ヶ月単位)

 ↓

2.介護サービス提供事業者との調整

 ↓

3.サービス提供後は実施内容(サービス提供票等)を確認

 ↓

4.給付管理表を作成し国民健康保険団体連合会へ送付

介護保険の給付サービスの種類

介護保険の給付は要支援・要介護の介護度によっても、保険が適用されるサービスの内容は異なります。

こちらでは、介護保険の介護給付と予防給付に分けて説明します。

居宅介護サービス費

要介護度1以上の方が対象となります。費用(自己負担額)は利用するサービス内容や地域ごとに異なります。

  • 訪問看護:看護師等が訪問し医療処置等を行うサービスです(処置時間:20分~1時間、費用446円~927円前後)。
  • 訪問介護:介護スタッフが日常生活を手助けするサービスです。身体介護(処置時間:20分未満・30分未満、費用188円~279円前後)、生活援助(処置時間:45分未満・45分以上、費用208円~256円前後)。
  • 訪問入浴介護:利用者が介助を受けて入浴できるサービスです(費用約1,400円)。
  • 訪問リハビリテーション:理学療法士等が訪問してリハビリを行うサービスです(1回355円程度)。
  • 居宅療養管理指導:内科医・歯科医師等が訪問し、服薬・歯磨き・栄養摂取等の指導を行うサービスです(費用約352円~553円前後)。

地域密着型介護サービス費

利用者が住み慣れた地域で介護生活を続けることができるサービスです。市区町村によって事業が運営され、原則として当該自治体の住民がサービスを受けられます。費用(自己負担額)は利用するサービス内容や地域ごとに異なります。概ね要介護1以上の方が対象になります。

  • 小規模多機能型居宅介護:「通い」を中心に行いながら、利用者の状態・希望等により、訪問、短期間宿泊を組み合わせたサービスを行います(月額:約10,320円~26,849円)。
  • 認知症高齢者グループホーム:認知症の要介護者等を対象に日常生活上の世話や機能訓練を行います(1日:約759円~852円)。
  • 認知症対応型デイサービス:認知症の要介護者等を対象に日帰りの食事・入浴・機能訓練を行います(1回:約985円~1,414円)。
  • 夜間対応型訪問介護:夜間の定期巡回訪問または通報により、介護福祉士等が居宅を訪問し緊急の対応を行います(月額:981円~2,667円)。
  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護:有料老人ホーム等に入所している要介護者を対象に、日常生活上の世話や機能訓練を行います(1日:約533円~798円)。
  • 地域密着型特定施設入居者生活介護:特別養護老人ホーム入所者を対象に、日常生活上の世話・機能訓練・健康管理等を行います(1日:約625円~894円)。
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護:日中夜間を通じて介護スタッフ・看護師が連携し、定期的な訪問や利用者からの通報・電話で対応します(月額:約5,600円~29,399円)。

居宅介護福祉用具購入費

福祉用具購入費は介護保険利用限度額が年間10万円となります。各市町村より福祉用具販売の指定を受けている事業所から購入した場合が対象です。


事前にケアマネジャーと購入について相談した上で、購入後に市町村窓口へ支給申請します。支給限度額は、1割自己負担の方は9万円、2割自己負担の方は8万円です。


 対象となる福祉用具は次の通りです。なお、同一品目は原則1回のみ保険対象です。


  • 腰掛便座(便座の床上げ部材含) 
  • 特殊尿器(自動排せつ処理装置含) 
  • 入浴補助用具(入浴用いす、浴槽用の手すり等) 
  • 簡易浴槽 
  • 移動用リフトのつり具部分 

居宅介護住宅改修費

住宅改修費は介護保険利用限度額が同一住宅で20万円となります。各市町村へ登録している業者から工事を受けることが条件となります。


事前にケアマネジャーと改修について相談した上で、工事施工前に市町村窓口へ申請、その承認を得ます。支給限度額は1割自己負担の方は18万円、2割自己負担の方は16万円です。  


対象となる住宅改修は次の通りです。


  • 手すり取り付け工事
  • 住宅の段差や傾斜の解消
  • 滑りにくい床材・移動しやすい床材へ変更
  • 扉の撤去や開き戸から引き戸等へ扉の取り替え工事
  • 和式から洋式へ便器の取り替え工事
  • その他、介護上必要な工事

居宅介護サービス計画

居宅介護サービス計画費は、要介護者が、居宅介護支援事業者から居宅介護支援を受けたときに支払われる保険給付の計画費を指します。かかった費用は全額が介護保険で賄われますので利用者の負担は0です。

高額介護サービス費

介護サービスの利用料の1ヶ月間の支払が一定の上限額を超えた場合、その超えた部分について「高額介護サービス費」として支給されます。自己負担の上限(月額)は所得によって異なります。下表を参考にしてください。
自己負担の上限(月額)15,000 円(個人)24,600 円(世帯)44,400円(世帯)
対象者①前年の合計所得金額と公的年金収入額の 合計が年間80万円以下の方等(個人)。
②生活保護を受給している方等。
①世帯の全員が市区町村民税を課税されていない方。
②前年の合計所得金額と公的年金収入額の合計が年間80万円以下の方等(世帯)。
①現役並み所得者に相当する方がいる世帯の方。
②世帯のどなたかが市区町村民税を課税されている方。

特定入居者介護サービス費

特定入居者介護サービスには、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、短期入所生活介護または短期入所療養介護(ショートステイ)が該当します。自己負担限度額については第一段階から第四段階まで区分されています。

  • 第1段階:老齢福祉年金受給者の方で、世帯全員が住民税非課税の方や生活保護受給されている方が対象です。
  • 第2段階:世帯全員が住民税非課税で、本人の課税年金収入額と合計所得金額と非課税年金収入額の合計額が年額80万円以下の方が対象です。
  • 第3段階:世帯全員が住民税非課税で、本人の課税年金収入額と合計所得金額と非課税年金収入額の合計額が年額80万円を超える方が対象です。
  • 第4段階:住民税課税世帯の方が対象です。

当該施設の自己負担限度額については下表を参考してください。なお、島根県出雲市の負担限度額(1日の居住費・食費)を基に作成しています。


1日の居住費・食費第1段階第2段階第3段階第4段階
ユニット型個室820円820円1,310円1,970円
ユニット型準個室490円490円1,310円1,640円
従来型個室 
特別養護老人ホーム
320円420円820円1,150円
従来型個室 
介護療養型医療施設及び介護療養型医療施設
490円490円1,310円1,640円
多床式 
特別養護老人ホーム
0円370円370円840円
多床式  
介護療養型医療施設及び介護療養型医療施設
0円370円370円370円
食費300円390円650円1,380円

施設介護サービス費

施設サービスは次の通りです。要介護度の違いにより、原則として入所できる条件が限定されてしまう施設もあります。月額の利用費は概ね2万円前後となります。


  • 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム):原則として要介護3以上の方が対象です。
  • 介護老人保健施設(老人保健施設):要介護1以上の方が対象です。 
  • 介護療養型医療施設(療養病床等):要介護1以上の方が対象です。

介護保険の予防給付内容

要支援と認定された方が対象になります。以下では予防給付の内容と費用(自己負担額)の目安を説明します。

介護予防サービス費

要支援1,2の方が対象です。サービス内容は、利用者の要介護状態の悪化を主に防止し、状態の維持・改善を促すための給付となります。

○訪問サービス

  • 介護予防訪問看護:処置時間20分~1時間、費用446円~927円前後。
  • 介護予防訪問介護:週1、2回利用で約1,331円~2,661円程度。
  • 介護予防訪問入浴介護:約950円程度。
  • 介護予防訪問リハビリテーション:1回355円程度。

地域密着型介護予防サービス費

利用者が住み慣れた地域で介護生活を続けることができるサービスです。市町村によって事業が運営され、原則として当該自治体の住民がサービスを受けられます。費用(自己負担額)は利用するサービス内容や地域ごとに異なります。

  • 介護予防小規模多機能型居宅介護:月額約3,403円~6,877円。 
  • 介護予防認知症高齢者グループホーム:要支援2のみ、1日約755円。 
  • 介護予防認知症対応型デイサービス:1回約852円~952円。 

介護予防住宅改修費

居宅介護住宅改修費と同様、住宅改修費は介護保険利用限度額が同一住宅で20万円となります。各市町村へ登録している業者から工事を受けることが条件となります。 

居宅介護住宅改修費と同じく、事前にケアマネジャーと改修について相談した上で、工事施工前に市町村窓口へ申請、その承認を得ます。

介護予防福祉用具購入費

福祉用具購入費と同様に、介護保険利用限度額が年間10万円となります。各市町村より福祉用具販売の指定を受けている事業所から購入した場合が対象です。 

福祉用具購入費と同じく、事前にケアマネジャーと購入について相談した上で、購入後に市町村窓口へ支給申請します。

介護予防サービス計画費

介護予防サービス計画費は、要支援者が、居宅介護支援事業者から居宅介護予防支援を受けたときに支払われる保険給付の計画費を指します。かかった費用は全額が介護保険で賄われますので利用者の負担は0です。

高額介護予防サービス費

要介護の高額介護サービス費と全く内容は同じです。詳しくは「高額介護サービス費」を参照してください。

特定入居者介護予防サービス費

こちらも要介護の特定入居者介護サービス費と全く内容は同じです。詳しくは「特定入居者介護サービス費」を参照してください。

介護保険の給付制限とは

介護保険サービスは、自己負担額の1割・2割を出せば無制限に利用できるわけではありません。以下では給付制限が行われるケースを説明します。

要介護認定を受けている人の給付制限

要介護度によって、給付される1ヶ月あたりの支給限度額が定められています。この限度額を超えて利用した場合、超過分は利用者が負担することになります。次の表を参考にしてください。

要介護度支給限度額
要支援150,030円
要支援2104,730円
要介護1166,920円
要介護2196,160円
要介護3269,310円
要介護4308,060円
要介護5360,650円

保険料を滞納している場合の介護保険給付制限

ご自分で納付する必要があって、介護保険料を滞納すると滞納期間の長さによってペナルティが発生します。次の点に注意してください。

  • 1年以上滞納:介護サービス費用を一時的に全額自己負担する必要があります。
  • 1年6か月以上滞納:1年以上滞納した場合と同じく、介護サービス費用を一時的に全額自己負担する必要があります。
  • 2年以上滞納:滞納期間に応じて一定期間、自己負担額が3割に引き上げられます。

介護保険の給付制限を解除する方法

ご自分で納付する必要があり介護保険料を滞納があった場合は、いきなり介護保険給付が全額自己負担になるのではなく、市町村より催告がなされます。


催告に従い納付しましょう。それでも滞納した場合には前記した通り給付制限が行われます。ただし、市町村の窓口へ申請すれば費用の8割または9割は戻ります。申請の際には市町村の指示に従ってください。

まとめ

介護(予防)保険給付は利用者が認定された要介護度により、給付内容・費用が異なる場合があります。ご自分またはご家族が要介護度をよく確認しがら介護保険給付を活用しましょう。

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