介護保険の介護給付金に関することをあなたは知っていましたか?

介護保険の給付金には、公的な介護保険での介護給付金と、掛け金をかけて介護保険に加入している、民間の介護給付金の2つに分類されます。公的介護保険の介護給付金は、民間の介護保険給付金と異なり、現金ではなく介護サービスの提供となる現物支給です。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

介護保険の介護給付金に関する全知識

介護状態になったときに受けられる保障として、公的介護保険と民間の介護保険に加入をしていれば、そこからも保障を受けることもできますが、今回は公的介護保険のことを中心に説明させていただきます。


予防給付金は、支援が必要と認められた人、介護給付金は、介護が必要と認められた人に給付される公的介護保険の保険給付金です。

公的介護保険の給付金は、現物給付(介護サービス)です。

要支援・要介護状態区分に応じて、1ヶ月の支給基準限度額が決定されています。


また、公的介護保険は40歳以上の人が、全員加入して介護保険料を納め、介護保険制度での要介護状態になった時に、所定の介護サービスが受けられる保険です。


ちなみに、

65歳以上の人は「第1号被保険者」

 ※ 介護の原因を問わず所定の介護保険制度での要介護状態となっ

   ている場合に保障を受けられます。


40~64歳の人は「第2号被保険者」

 ※ 第1号被保険者と異なり原因が制限されます。

   第2号被保険者は、老化に起因する特定の病気(16疾患)に

   よって介護保険制度での要介護状態となった方に限り介護サー

   ビスを受けることができます。


なお、介護保険で定めている特定の病気である特定疾患は、下記の通りとなっています。


① がん(末期)

② 関節リウマチ

③ 筋萎縮性側索硬化症(ALS) 

④ 後縦靱帯骨化症 

⑤ 骨折を伴う骨粗しょう症 

⑥ 初老期における認知症 

⑦ 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病 

⑧ 脊髄小脳変性症 

⑨ 脊柱管狭窄症 

⑩ 早老症 

⑪ 多系統萎縮症 

⑫ 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症 

⑬ 脳血管疾患 

⑭ 閉塞性動脈硬化症 

⑮ 慢性閉塞性肺疾患

⑯ 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症


公的介護保険の介護給付金とは・・・


介護保険制度での要介護状態の被保険者が、公的な介護保険での介護サービスを受けた場合に、介護サービスを提供した事業所へ、保険者(市区町村)から介護保険給付費として、被保険者にかわり自己負担分を除き支払われるものです。

要介護度1~5の人が対象の介護保険給付金

公的な介護保険給付金は、要介護の認定を受けた要介護1~要介護5までの人を対象にした下記のサービス費です。

  1. 居宅介護サービス費
  2. 地域密着型サービス費
  3. 居宅介護福祉用具購入費
  4. 居宅介護住宅改修費
  5. 居宅介護サービス計画費
  6. 高額介護サービス費
  7. 特定入所者介護サービス費
  8. 施設介護サービス費


以上の8種類があり、それぞれの介護サービスの提供を受けた場合に提供事業所に対して、規定の給付金が支払われます。


居宅介護サービス費

俗に「居宅サービス費」とよばれるもので、都道府県が事業者の指定や監督を行い、居宅で生活が継続できるように介護保険定められたサービス体系で、下記の介護サービスを提供した対価としての費用(給付金)です。

訪問介護 

訪問入浴介護

訪問看護

訪問リハビリテーション

居宅療養管理指導

通所介護

通所リハビリテーション

短期入所生活介護

短期入所療養介護

特定施設入居者生活介護

福祉用具貸与

特定福祉用具販売


地域密着型介護サービス費

地域密着型サービスとよばれるもので、 市町村が事業者の指定や監督を行い、認知症高齢者や中重度の要介護高齢者等が地域での生活が継続できるように、平成18年4月の介護保険制度改正により創設されたサービス体系で、下記の介護サービスを提供した対価としての費用(給付金)です。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護

夜間対応型訪問介護

地域密着型通所介護

認知症対応型通所介護

小規模多機能型居宅介護

認知症対応型共同生活介護

地域密着型特定施設入居者生活介護

地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護

複合型サービス


居宅介護福祉用具購入費

福祉用具購入と呼ばれるもので、福祉用具の貸与が困難な入浴又は排泄に要する下記の福祉用具などを購入したときに給付される費用(給付金)です。

腰掛便座

自動排泄処理装置の交換可能部品

入浴補助用具

簡易浴槽

移動用リフトのつり具の部分


保険者である市区町村から購入にかかった費用(1年間で10万円までを限度として)の9割または8割の現金を償還してもらう償還払いでの給付となります。


居宅介護住宅改修費

住宅改修(さらに略して住改)とよばれるもので、自宅で引き続き生活ができるよう住宅改修した場合、介護保険では下記の住宅改修工事につき給付される費用(給付金)です。

てすりの設置

段差解消

滑り防止、および円滑な移動のための床材の変更

扉の取替え

洋式便座等への便器の取替え

上記の住宅改修に付帯して必要となる改修


保険者である市区町村から住宅改修工事にかかった費用(20万円までを限度として)の9割または8割の現金を償還してもらう償還払いでの給付となります。 


居宅介護サービス計画

介護サービスを受けるためには、本人や家族の希望に添って、心身の状況や生活の環境などに配慮したうえで、適切に利用できるよう、介護サービスの種類や内容を定めた「介護サービスの利用計画」(ケアプラン)を作成することを義務づけています。


ケアプランを居宅介護支援事業者(ケアプラン作成機関)のケアマネジャーに依頼して、計画書の作成や給付管理、状態観察、計画書の見直しなどのマネージメントをおこなった場合に、マネージメント料として給付される費用(給付金)です。



高額介護サービス費

高額医療費と同じように、介護サービスの利用料(同一世帯の居宅サービス・施設サービスの合計額)の1ヶ月の支払が一定の上限額を超えた場合、その超えた部分について「高額介護サービス費」として支給するものです。

※介護保険での保険者の給付費用分や施設サービスの居住費(滞在費)・食費や日常生活費、福祉用具の購入費、住宅の改修費は含まれません。  


平成29年8月利用分より、世帯のどなたかが市県民税を課税されている方の負担の上限が37,200円(月額)から44,400円(月額)に引き上げられます。

ただし、同じ世帯の全ての65歳以上の方(サービスを利用していない方を含む。)の利用者負担割合が1割の世帯は、時限措置として年間446,400円(37,200円×12ヶ月)の上限が設けられています。


なお市民税世帯非課税の方について、施設サービス等の居住費(滞在費)・食費については負担を軽減する制度があります。


特定入所者介護サービス費

特定入所者介護サービス費とは・・・

低所得の介護認定者が、介護保険施設等で施設サービスや短期入所サービ スを利用した際に生じる居住費(滞在費)・食費について負担限度額が設定され、この額を超えた分について特定入所者介護サービス費として介護保険制度で事業所に対して給付される費用(給付金)のことです。

施設介護サービス費

要介護認定で要介護1~5の要介護認定者が、介護保険施設でのサービスの提供を受けたとき、サービス提供の対価としての費用(給付金)です。 


介護老人福祉施設

介護老人保健施設

介護療養型医療施設


利用者の自己負担は、介護サービスにかかった費用の1割または2割と、食事の標準負担額、日常生活費などになります。


要支援1・2の人が対象の予防給付金

予防給付金は、要支援の認定を受けた要支援1~2までの人を対象にした下記のサービス費です。

  • 介護予防サービス費 
  • 地域密着型介護予防サービス費 
  • 介護予防福祉用具購入費 
  • 介護予防住宅改修費 
  • 介護予防サービス計画費
  • 高額介護予防サービス費 
  • 特定入所者介護予防サービス費


以上の7種類があり、それぞれの介護予防サービスの提供を受けた場合に、提供事業所に対して介護給付金が支払われます。

介護予防サービス費

予防サービスとよばれるもので、要支援認定者が要介護状態になることをできる限り防ぐ(発生を予防する)、あるいは状態が悪化しないようにすることを目的として、住み慣れた地域で自立した生活が継続していけるように、下記のサービスの提供を受けたときの対価としての費用(給付金)です。


介護予防訪問入浴介護 

介護予防訪問看護 

介護予防訪問リハビリテーション 

介護予防居宅療養管理指導 

介護予防通所リハビリテーション 

介護予防短期入所生活介護 

介護予防短期入所療養介護 

介護予防特定施設入居者生活介護 

介護予防福祉用具貸与


地域密着型介護予防サービス費

地域密着型予防サービスとよばれるもので、認知症の要支援認定者が認知機能の悪化防止により、住み慣れた地域で生活が継続されるように努めることを目的に、下記の介護サービスを提供した対価としての費用(給付金)です。


  • 介護予防認知症対応型通所介護 
  • 介護予防小規模多機能型居宅介護 
  • 介護予防認知症対応型共同生活介護

介護予防福祉用具購入費

予防福祉用具購入費では、要支援認定者が要介護状態になることをできる限り防ぐ(発生を予防する)、あるいは状態が悪化しないようにすることを目的とし、貸与になじまないものである下記の用具を購入した場合に給付される費用(給付金)です。

腰掛便座 

自動排泄処理装置の交換可能部品 

入浴補助用具簡易浴槽 

移動用リフトのつり具の部分


保険者である市区町村から購入にかかった費用(1年間で10万円までを限度として)の9割または8割の現金を償還してもらう償還払いでの給付となります。 


介護予防住宅改修費

住宅改修(さらに略して住改)とよばれるもので、自宅で引き続き生活ができるよう住宅改修した場合、介護保険制度下では下記の住宅改修工事につき給付される費用(給付金)です。

保険者である市区町村から購入にかかった費用(20万円までを限度として)の9割または8割の現金を償還してもらう償還払いでの給付となります。


てすりの設置 

段差解消滑り防止、および円滑な移動のための床材の変更

扉の取替え 

洋式便座等への便器の取替え 

上記の住宅改修に付帯して必要となる改修


保険者である市区町村から購入にかかった費用(20万円までを限度として)の9割または8割の現金を償還してもらう償還払いでの給付となります。


介護予防サービス計画費

予防プランとよばれるもので、各市区町村に設置してある地域包括支援センターまたは、居宅介護支援事業所のケアマネージャーが、要支援認定者者に要介護状態になることをできる限り防ぐ(発生を予防する)、あるいは状態がそれ以上悪化しないようにすることを目的として、本人や家族の希望に添って、心身の状況や生活の環境などに配慮したうえで、適切に利用できるよう、介護サービスの種類や内容を定めた「介護予防サービスの利用計画」(ケアプラン)の作成や給付管理、状態観察、計画書の見直しなどのマネージメントをおこなった場合に、マネージメント料として給付される費用(給付金)です。

高額介護予防サービス費

高額介護サービス費と同様に、介護サービスの利用料(同一世帯の居宅サービスの合計額)の1ヶ月の支払が一定の上限額を超えた場合、その超えた部分について「高額介護サービス費」として支給するものです。

※介護要望保険での保険者の給付費用分や福祉用具の購入費、住宅の改修費は含まれません。 


平成29年8月利用分より、世帯のどなたかが市県民税を課税されている方の負担の上限が37,200円(月額)から44,400円(月額)に引き上げられます。 


ただし、同じ世帯の全ての65歳以上の方(サービスを利用していない方を含む。)の利用者負担割合が1割の世帯は、時限措置として年間446,400円(37,200円×12ヶ月)の上限が設けられています。

特定入所者介護予防サービス費

特定入所者介護予防のサービス費とは・・・

介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設への短期入所(ショートステイ)を利用する方の食費・部屋代については、原則ご本人による負担となっていますが、低所得者の方については、食費・部屋代の負担軽減を行っています。


市町村が独自に行っている市町村特別給付金

市町村特別給付金とは、市町村が独自に要介護・要支援者等に対して介護保険法で定められている保険給付以外に市町村の条例で定めた、介護給付や予防給付とは別の給付金として行うものです。 

『横だしサービス』とも呼ばれ、


紙おむつ給付 

移送サービス    
配食サービス 

寝具乾燥サービス


など市区町村内の実情をもととした給付を提供し、サービス展開をする為、各市町村によりサービスなどは異なります。



介護保険給付金の支給限度基準額

在宅サービスについて、利用者の状況に応じた適正なサービスを提供する観点から、必要な居宅介護サービス毎に支給限度の基準額を設定しています。

区分支給限度基準額 
複数のサービス単位での限度基準額が設定される。


介護度区分支給限度単位区分支給限度額
要支援15,003単位
50,030円
要支援210,473単位104,730円
要介護116,692単位166,920円
要介護219,616単位196,160円
要介護326,931単位269,310円
要介護430,806単位308,060円
要介護536,065単位360,650円

種類支給限度基準額 

市町村では、一定の個別サービスについての限度基準額を設定することができる。


福祉用具購入費支給限度基準額 

毎年4月からの1年間で上限は10万円までです。


住宅改修費支給限度基準額

居住している同一住居について住宅改修を行った場合、累積金額の上限が20万円までです。


上記支給限度額の9割または8割が介護給付金となります。


介護保険料を滞納し続けた場合の介護給付金額制限

基本的には納付期限以降20日以内に督促状が発行され、督促手数料、延滞金がかかることになりますが、一定期間以上保険料を滞納状態が続くと、介護サービスが受けれないなど、さらなる措置がとられることになります。

 

下記の内容によってそれぞれの対応が変わります。


○ すでに要介護認定を受けて介護サービスを受けている場合


○ 第1号被保険者で認定前に保険料を滞納し、保険料の徴収債権が時

  効で消滅している場合


○ 第2号被保険者で国民年金保険料の滞納がある場合


滞納から1年経過すると現物給付から償還払いになる

介護保険料を納期限から1年以上滞納した場合 利用料金の支払い方法が変更になり、通常であれば、利用した介護サービスの1割または2割を負担すれば良いところを、いったん全額を支払わなければなりません。

その後、滞納分の納付が完了したら領収書等を提出し、申請をすることによって、負担した分の9割または8割が返還されます。


滞納から1年6ヶ月経過すると保険給付金が一時差し止めになる

納期限から1年6ヵ月以上滞納した場合介護保険給付が、一時差し止めとなり、介護サービス費用を全額支払うことになります。

さらに、後日申請すれば払い戻されることになっている金額が一時的に差し止めになってしまい、介護保険給付額を滞納している介護保険料に充てることがあります。

つまり、払い戻しの請求をしても、戻ってくるはずの9割部分が戻らないということになるのです。


要介護認定を受ける前に介護保険料を滞納した場合

保険料は納付期限から2年を経過すると、時効になり、支払うことができなくなります。


要介護認定時に、過去10年間に時効が成立した介護保険料があると、その滞納期間に応じて一定期間、自己負担金額が1割から3割に引き上げられることになります。また、この期間は高額介護サービス費の払い戻しを受けることができなくなってしまいます。

介護サービスを受けてない方は、介護保険料を滞納していた場合でも、あまり困ることはありませんが、実際に介護サービスが必要になった時には、非常に困ることになりますので注意してください。


介護保険の給付管理はケアマネジャーが行う

介護認定者が介護保険サービスを利用すると、サービス提供事業者は介護給付費(利用者負担分を除くサービス利用料)を国民健康保険団体連合会(以下「国保連」という。)に請求することとなります。

国保連は審査を行ったうえで、サービス提供事業所に介護保険給付金が支払われますが、その審査の際に必要となるのが、保険者(市区町村)からの介護情報などの書類と、ケアマネジャーが作成する給付管理票という書類です。


ケアマネジャーが行う給付管理業務は、下記の一連のプロセスから構成されています。


  1. 1か月単位で個々の利用者の介護保険サービスの利用予定を作成
  2. サービス提供事業者との調整を行う
  3. サービス提供後は実施内容を確認
  4. 国保連に必要書類を送付


介護保険の給付金にかかる税金の解説

介護保険の給付金にかかわらず、入院給付金、手術給付金、通院給付金、がん診断給付金、特定疾病保険金、先進医療給付金といった、病気やけがを原因とした死亡を伴わない生前の給付金に関しては、保険金の受け取りが本人の場合だけではなく、配偶者や直系親族、生計を同じくする親族のときも含めて原則的には非課税になり、税金はかからないと考えて良いでしょう。

介護保険による介護給付金は所得税がかからず非課税で受け取ることができる

所得税法施行令第30条には、「損害保険契約に基づく保険金及び生命保険契約に基づく給付金で、身体の傷害に基因して支払を受けるもの並びに心身に加えられた損害につき支払を受ける慰謝料その他の損害賠償金」(一部要約)は非課税になることが明記されています。


治療費や療養費など、実際に発生した費用を補う性格の給付金には課税されない、と理解しておくといいでしょう。


非課税で受け取った介護給付金にも相続する場合は相続税がかかる

介護給付金の生前給付金の受け取りに関しましては、前の章でものべましたが非課税となっています。


しかしながら、介護給付金を受取人が受け取ったのちに、介護給付金を相続した場合には、当然ながら相続した金額に対して、相続税が発生することとなります。


また、受取人と被保険者が同じで、かつ被保険者の亡くなった後に介護給付金の請求が行われた場合も、それが相続とみなされて課税対象になることもあります。

まとめ

介護認定を受けた被保険者の方にとっての公的介護保険の給付金は、民間の介護保険給付金と異なり、現金ではなく介護サービスの提供となる現物支給です。

つまり公的介護保険制度では、介護認定をうけた被保険者には介護サービスを提供し、介護サービスを受けた事業所に対して、介護給付金を支払う仕組みとなっています。


介護サービスでは種類やサービス内容、費用など詳細に決められています。


また、市区町村独自の介護給付金もありますので、わからない点などは、利用前に市区町村や居宅介護支援事業所へお問い合わせください。


介護認定を受けた被保険者の方は、心身の状態や周辺の環境など色々な角度から検討し、適切な介護サービスを選択してください。


ランキング