介護保険料を滞納してしまった!保険の給付制限ってどんなもの?

介護保険料の支払いは義務であり、保険料を滞納してしまった場合にはどのようなペナルティがあるのかご存知でしょうか?滞納が長く続くと、介護保険の給付制限を受けることになります。この給付制限とは一体どのようなものなのか、解説していきましょう。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

介護保険の給付制限に関して知っておくべきこと

介護保険に加入すると、介護保険料の支払いが必要となります。

この介護保険被保険者から納付される介護保険料は、介護保険制度を運営していく上でとても大切な財源となります。

そのため、納付が遅れたり滞納が長い間続く被保険者に対して、保険料をきちんと支払っている方との公平を図るために保険給付の制限などの措置が取られます。

介護保険の給付制限の内容は、滞納期間によって異なります。

もしも介護保険料の滞納をしてしまった場合、どのような措置が取られるのか説明していきましょう。

介護保険の給付制限とは

特別な事情がないのに介護保険料を納付せず滞納したままでいると、一定の期間督促を受けますが、自主的な保険料の納付がない場合には、介護が必要となり公的な介護保険サービスを利用する時に介護保険の給付制限を受けることになります。

さらに保険料の納付がされない場合、最終的に市町村は強制的に保険料の徴収をすることができます。

介護保険料を滞納すると給付制限を受けることになる

介護保険制度では、40歳以上の国民はみな介護保険に加入する義務があり、介護保険料を納めなければならないと定めています。

まず、介護保険料は被保険者によって支払う方法が異なります。

65歳以上の第1号被保険者の場合、1年間に受け取る年金の金額が18万円以上であれば年金からの天引きとなり、それ以外の方、または年度途中で65歳になった方などは口座振替や納付書にて直接市町村に保険料を納付することになります。

40歳以上65歳未満の第2号被保険者の場合、会社などで加入している健康保険の保険料と同じように給料からの天引きにより保険料を納付します。

このように、ほとんどの方が天引きや口座振替にて介護保険料を支払っているので、うっかり保険料支払いを忘れて滞納してしまった、ということは少ないと思います。

しかし、納付書が届いていることを忘れていたり、金銭的に苦しく保険料が支払うことができないなど、どうしても保険料を滞納してしまうこともあります。


介護保険料を滞納していると、基本的に市町村より納付期限以降20日以内に督促状が発行され、保険料だけでなく督促手数料や延滞金がかかることになります。

さらに保険料の滞納を続けていると、いざ介護保険サービスを利用しようとする時に保険給付制限の措置などが取られることになります。

1年間滞納すると支払い方法が変更になる

介護保険料を1年間滞納した場合、介護サービスを利用した際の利用料の支払い方法が「償還払い化」となります。

通常は利用したサービス費の1割(または2割)を自己負担分として支払い、残りの9割(または8割)が保険給付されます。

しかし介護保険料の滞納が1年間あった場合、この保険給付に制限がかかり、いったん利用料のサービス費全額(10割)を自己負担分として支払わなければなりません

その後市町村に申請することで保険給付額が支給されるという仕組みになっています。

この保険給付額とは、介護サービス利用料の自己負担割合が1割の方は利用したサービス費の9割、2割の方はサービス費の8割となります。

1年6ヶ月滞納すると保険給付の一時差し止めになる

さらに介護保険料の滞納が1年6ヶ月を過ぎると、介護保険サービスの利用料が「償還払い化」となり市町村に申請すれば支給されていた保険給付額の一部、または全額が差し止めになるという保険給付の制限を受けます。

そのまま介護保険料を納めないでいると、差し止められている保険給付額から滞納分の介護保険料が差し引かれることになります。

2年以上滞納した場合高額介護サービス費等の給付制限となる

まず、介護保険料の納期限を2年経過した場合には、時効により追って保険料を支払うことができなくなります。

過去に保険料の滞納があり、時効となってしまった介護保険料がある場合には、その期間に応じて保険給付に制限がかかり、介護サービス費の自己負担割合が3割に引き上げられます。

また、高額介護サービス費等の支給にも制限がかかり、制度を利用できなくなります。

介護保険の給付制限を解除することは可能なのか

市町村は、介護保険の給付制限措置を受けている被保険者から介護保険給付制限の「措置解除申請書」が提出された場合、措置解除の可否を審査し、その結果を被保険者に通知します。

保険給付制限が解除された場合には、被保険者証から給付制限の記載が消去されます。

この保険給付制限が解除されるには、滞納介護保険料が完納された、または滞納保険料額が著しく減少している、もしくは介護保険法に規定されている特別な事情があると認められた場合です。

滞納保険料が著しく減少しているとは、滞納保険料のうち、納期限が最も古いものから2分の1以上の期間の保険料の納付がされているか、または納付義務が消滅(時効)してることを言います。



生活保護受給者は介護保険の給付制限を受けない

介護保険サービス利用者に介護保険料の滞納があった場合、介護保険の給付制限をされることがありますが、生活保護受給者の場合、サービス費の自己負担分も公費で賄われるため介護保険の給付制限は受けません。


生活保護受給者の介護扶助とは

介護保険のサービスを利用した場合、通常は利用したサービス費のうち1割(または2割)を自己負担しなくてはなりません。

しかし、生活保護受給者が介護保険サービスを利用する際には、その利用したサービス費は『介護扶助』として生活保護法により負担されます。

介護扶助の対象者は、生活保護を受給している方のうち、介護保険法により規定された要介護または要支援状態にある方です。

生活保護を受けていても、65歳以上の方と40歳以上65歳未満で医療保険に加入している方は介護保険者の被保険者となります。

生活保護受給者で介護保険被保険者の場合は、介護サービス費のうち自己負担分の1割が介護扶助として負担され、介護保険被保険者でない場合には介護サービス費10割が介護扶助として負担されます。


生活保護法第15条の2により、介護保険サービスにおける介護扶助の範囲に制限はなく、介護保険の給付内容と基本的に同じです。
  • 居宅介護支援計画に基づいて行われる居宅介護
  • 福祉用具貸与
  • 住宅改修費の支給
  • 施設介護
  • 介護予防支援計画に基づく介護予防
  • 介護予防福祉用具貸与
  • 介護予防住宅改修費の支給
  • 介護予防・日常生活支援
  • 施設への入退所や保険給付がされない居宅介護サービス等利用に必要となる移送

生活保護受給者が介護扶助を受けようとする場合には、受給者の申請により扶助が開始されます。

介護扶助の申請、問い合わせは居住している市町村の福祉事務所で行うことができます。

そして介護扶助は原則として現物給付となります。

まとめ

今は介護が必要ないと思い、保険料の支払いを避けたくなるかもしれません。

しかし、介護保険料の滞納がある場合には、介護保険の給付制限等の措置を受けることになります。

自分がいざ介護が必要となった時に通常の介護保険の給付が受けられず、金銭的にも困ることになるかもしれません。

金銭的理由でどうしても納付できない期間があったり、納付忘れがあったとしても、滞納した介護保険料を納付できる期間は介護保険法により2年と定められているので、2年の内に完納するようにしましょう。

介護保険料の支払いは40歳以上の国民の義務であり、介護が必要な方を支え、また自分が介護が必要とあった時には支えてくれる大切な財源です。

介護保険料の納付はきちんと行いましょう。

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