介護保険のデイサービスはどんな介護をするの!?その内容を詳細解説

介護保険のデイサービスとは、日中、利用者に該当施設へ通ってもらい、日常生活上の支援・生活機能訓練等を日帰りで提供するサービスです。利用者の心身機能の維持向上と、利用者の家族負担の軽減を図ります。介護保険のデイサービスを利用するには、条件や手続きがあります。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

介護保険を利用したデイサービスに関する情報まとめ

現在の日本では、高齢化が進展し、介護を必要している高齢者の増加や介護期間の長期化により、介護保険制度の充実が必要とされています。

デイサービスは介護保険制度の充実の一翼を担う存在として広く普及しています。


デイサービスとは、日中、利用者に該当施設へ通ってもらい、食事、入浴、その他の必要な日常生活上の支援・生活機能訓練等を日帰りで提供するサービスです。利用者の心身機能の維持向上と、利用者の家族負担の軽減を図ります。


ただし、身体の不自由な高齢者であるなら誰でも利用できるというわけではなく、一定の年齢・条件のもと、市町村から要介護認定を受けた方が、介護保険のデイサービスを受けることができます。




介護保険のデイサービス(通所介護、介護予防通所介護)とは

介護保険のデイサービスには、「通所介護」と「介護予防通所介護」があります。

介護予防通所介護とは、要支援1または要支援2の認定を受けた方が対象です。要支援1・要支援2の認定対象者は次の通りです。


  • 要支援1:要介護状態とは認められないものの、社会的支援を必要とする状態で、適切な介護予防サービスを受けることにより、要介護状態への進行が防止できる方が対象です。
  • 要支援2:生活の一部について部分的に介護を必要とする状態で、適切な介護予防サービスの利用により、状態の維持、状態の改善が見込まれる方が対象です。

介護予防通所介護サービスの利用料(自己負担額)は、1か月あたりで要支援1の方が約1,600円、要支援2の方が3,300円となります。


介護予防通所介護は、利用者がデイサービスセンター等へ通い、日常生活上の支援・機能訓練等を日帰りで提供するサービスである点は通所介護と同じですが、要介護状態になることをできる限り防ぎ、利用者の状態がこれ以上悪化しないようにすることを目的としています。


通所介護については以下で説明します。

通所介護(デイサービス)の対象者

通所介護とは、要介護1~要介護5の認定を受けた方が対象です。それぞれのランクの認定対象者は次の通りです。

  • 要介護1:生活の一部について部分的に介護を必要とする状態、①食事や排泄はほとんど単独でできるが、時折介助は必要、②立ち上がり・歩行等が不安定、③問題行動や理解の低下、が見られる方が対象です。
  • 要介護2:軽度の介護を必要とする状態、①食事や排泄に何かしらの介助が必要、②立ち上がりや片足での体勢の保持、歩行などに何らかの支えが必要、③衣服の着脱がやや不自由、④物忘れ・直前の行動の理解の一部低下、がみられる方が対象です。
  • 要介護3:中等度の介護を必要とする状態、①食事や排泄の一部に介助が必要 、②立ち上がりや片足での体勢の保持、歩行等が一人では不可能、③入浴・衣服の着脱に介助が必要、④問題行動・理解力の低下、がみられる方が対象です。
  • 要介護4:重度の介護を必要とする状態、①食事に介助が必要、②排泄、入浴、衣服の着脱には全面的な介助が必要、③立ち上がり・両足での体勢の保持がほぼ不可能、④問題行動が目立ち・理解力のかなりの低下、がみられる方が対象です。
  • 要介護5:最重度の介護を必要とする状態、①食事・排泄が単独では不可能、 ②立ち上がり・両足での体勢の保持が不可能、③意思伝達がほぼ不可能な方が対象です。

通所介護(デイサービス)の利用料の目安

利用料については、要介護ランク別、地域密着型・通常規模型・大規模型でそれぞれ異なり、市区町村ごとでも開きはあります。利用料の目安は次の通りです。
  • 地域密着型通所介護施設:約400円~1,300円(1日の自己負担額)
  • 通常規模型通所介護施設:約380円~1,140円(1日の自己負担額)
  • 大規模(Ⅰ)型通所介護施設:約370円~1,120円(1日の自己負担額)
  • 大規模(Ⅱ)型通所介護施設:約360円~1,100円(1日の自己負担額)

詳細については後述します。

介護保険のデイサービスを利用するまでの流れ

要介護認定を受けたからといって、介護保険のデイサービスをいきなり利用できるわけではなく、必要な手順があります。

介護保険のデイサービスを利用する流れは次の通りです。


  1. 利用者の担当ケアマネジャーへデイサービスの利用を相談
  2. デイサービスの事業所を見学:2~3箇所ほど候補をあげて料金や設備、自宅からの通所距離等を比較検討します。
  3. ケアプラン作成:利用者本人・ご家族が希望するサービス提供事業者に、利用したいサービス内容および利用頻度等を相談します。
  4. 事業者と契約・サービスの利用開始:ケアプラン完成後、サービス事業者と直接契約し、利用を開始します。

デイサービスとデイケアの違い

デイケアとは介護保険サービスの一つで、デイサービスと同じく食事・入浴等のサービスを提供します。

ただし、デイケアの主目的は「リハビリテーション」にあり、必ず医師が在籍しています。


この医師の指示書に基づき、専門スタッフによるリハビリテーションが行われます。


一方、デイサービスでも機能訓練は提供されますが、医師の指示書に基づいて行われるものではありません。


また、デイサービスとデイケアのどちらか一方しか受けられないというような決まりはなく、両方を利用することができます。


デイサービスとデイケアの両方を利用したい場合は、ケアマネジャーとよく相談をしてみましょう。

デイサービスの宿泊サービスとは

全てのデイサービスの施設が対象となるわけではありませんが、施設によっては宿泊サービスの利用が可能なケースもあります。

ただし、通所介護施設での宿泊は介護保険サービスの対象外となるので、自己負担となる上に、各事業所によって利用料金が異なります。


宿泊サービスを利用したい場合は、事前にケアマネジャーにその旨を伝え、宿泊サービスのある事業所を探してもらい、料金等を確認することをお願いしましょう。

デイサービスの個別機能訓練加算とは

個別機能訓練加算とは、通所介護等において、一定の要件を満たし、利用者に合わせた個別機能訓練を行った場合に算定される加算のことです。

訓練内容は、事業所に常勤している専属の指導員1名、看護職員、介護職員、生活相談員等が共同し、主に利用目的に沿ったものを訓練メニューから選択し、計画して行います。


個別機能訓練加算には、「個別機能訓練加算Ⅰ」と「個別機能訓練加算Ⅱ」があります。

  • 個別機能訓練加算Ⅰ:立つ、歩く、座るといった身体機能の向上を目指します。利用者の自立支援および日常生活の充実を目的としています。加算単位は1日につき46単位(自己負担額1割:46円)です。
  • 個別機能訓練加算Ⅱ:家事・屋外での歩行等といった日常生活動作の向上を目指します。職業能力・地域活動など社会生活への参加といった身体機能と生活能力の増進を図ります。加算単位は1日につき56単位(自己負担額1割:56円)です。

デイサービスのメリット、デメリット

デイサービスは、利用者・家族へメリットがある反面・デメリットも存在します。

主なメリット・デメリットは次の通りです。


○デイサービスのメリット


  • 利用者の心身の健康維持・向上が図れる

利用者へ生活機能訓練・口腔機能訓練・健康チェック等を行っているため、健康維持やその向上が期待できます。

また施設に通うことで利用者の「ひきこもり」を防ぎ、孤立感の解消にもつながります。


  • 家族の負担軽減

利用者がデイサービスに通っている間は、ご家族の介護にかかる心身の負担を軽減することができます。

ご家族にとっても自分たちの時間がつくれることで、精神的にゆとりが生まれます。


  • 楽しみや生きがいの発見

デイサービスでは、自宅にいるだけでは体験できない、機能訓練として多様なレクリエーション・運動が行われます。また、利用者が趣味や娯楽を満喫することもできます。

それらを通して生きがいが生まれ、活力がよみがえることが期待できます。


  • 安心した入浴

ご自宅の浴室は、浴槽が深い、段差が多い、滑りやすいということが多く一概に安心して入浴できるとは限りません。

デイサービスでは、介護スタッフから入浴を手伝ってもらえますので安心です。


○デイサービスのデメリット


  • 人間関係でギクシャクすることも

利用者によっては、施設の雰囲気が合わず不快感を覚えたり、他の利用者とのトラブルになってストレスを感じてしまったりするケースがあります。


  • 多く利用すればそれなりに費用がかかる

デイサービスに通う場合には、当然費用が発生します。介護保険が適用されますが、要支援・要介護ランク、利用するケアプランによって費用は異なる上に、利用する回数が増えればそれだけ費用も高くなります。

介護保険のデイサービスのサービス費用の算出方法

介護保険のデイサービスの費用は要介護のランク、デイサービスのタイプ、各市区町村でもそれぞれ異なります。

以下では、サービス費用計算式とサービス利用料金を説明します。

デイサービスのサービス費用計算式

サービス費用計算式は次の通りです。


サービス提供費用(要介護度×施設の規模×施設利用時間)+食費+その他(日用品費・個別機能訓練加算・入浴介助加算等)=1日あたりの費用

それぞれの規模のデイサービスセンターの保険単位とサービス利用料金

デイサービスセンターの保険単位は1単位=約10円ですが、介護保険が1割自己負担の場合は実質的に1単位=1円程度です。


利用料については、地域密着型・通常規模型・大規模型でそれぞれ異なり、市区町村ごとでも開きはあります。


なお、通常規模型・大規模型通所介護施設の区分は、前年度(4月~翌年3月)の1ヶ月当たりの平均利用延べ人数によって決定されます。

利用料金の目安としては次の表を参考にしてください(厚生労働省 平成29年4月「介護報酬の算定構造」)。

○地域密着型通所介護施設(定員19人未満)


利用時間別自己負担額(1割負担)要介護1要介護2要介護3要介護4要介護5
3~5時間未満426円/日488円/日552円/日614円/日678円/日
5~7時間未満641円/日757円/日874円/日990円/日1,107円/日
7~9時間未満735円/日868円/日1,006円/日1,144円/日1,281円/日

○通常規模型通所介護施設(1ヶ月当たり平均:300人超750人以下)


利用時間別自己負担額(1割負担)要介護1要介護2要介護3要介護4要介護5
3~5時間未満380円/日436円/日493円/日548円/日605円/日
5~7時間未満572円/日676円/日780円/日884円/日988円/日
7~9時間未満656円/日775円/日898円/日1,021円/日1,144円/日

○大規模(Ⅰ)型通所介護施設(1ヶ月当たり平均:750人超900人以下)


利用時間別自己負担額(1割負担)要介護1要介護2要介護3要介護4要介護5
3~5時間未満374円/日429円/日485円/日539円/日595円/日
5~7時間未満562円/日665円/日767円/日869円/日971円/日
7~9時間未満645円/日762円/日883円/日1,004円/日1,125円/日

○大規模(Ⅱ)型通所介護施設(1ヶ月当たり平均:900人超)


利用時間別自己負担額(1割負担)要介護1要介護2要介護3要介護4要介護5
3~5時間未満364円/日417円/日472円/日524円/日579円/日
5~7時間未満547円/日647円/日746円/日846円/日946円/日
7~9時間未満628円/日742円/日859円/日977円/日1,095円/日

介護保険のサービス提供事業者を選ぶときに確認すべき点

介護保険のサービス提供事業者を選ぶときには、確認すべき点はいろいろありますが、施設の設備はもとより、その雰囲気、利用者が無理なく通える距離になるかどうかが重要です。送迎車で移動するとはいえ、利用者の体力も考慮にいれる必要があります。


こちらでは確認すべき各ポイントを取り上げます。

立地、施設の雰囲気が合うか(送迎時間など)

立地、施設に関しては次のポイントを確認しましょう。

  • 送迎の際は、自宅から施設までの移動時間はどのくらいか?(無理のない移動時間)
  • 立地はどんなところか、郊外または中心市街地にあるのか?(利便性)
  • 施設が快適で心が安らげるような設計になっているか?(施設の雰囲気)
  • バリアフリーが徹底され衛生的か?(施設環境の充実)

施設や職員の雰囲気が合うか

施設や職員に関しては次のポイントを確認しましょう。

  • 施設の雰囲気が明るく、気軽に入りやすいものになっているか?(施設の雰囲気)
  • 職員は柔和で献身的で明るい方が多いか?(職員の人間性)
  • 職員に経験豊かな方が多く、コミュニケーションがとり易いか?(職員の資質)

サービス内容(送迎、入浴の有無など)

サービス内容に関しては次のポイントを確認しましょう。

  • 送迎の際に同乗する利用者数は何人か?(送迎車両内の快適さ)
  • 送迎の際に職員が添乗し、かつ利用者の自宅の中まで送り届けてくれるか?(送迎の際の安全管理)
  • 利用者に合わせた多様なプログラムを用意しているか?(プログラムの豊富さ)
  • 利用者の趣味・嗜好にふさわしいプログラムがあるか?(生きがいの発見・促進)
  • 利用者の状態に合わせた、糖尿病食、きざみ食、おかゆ等を提供してくれるか?(食事の充実)
  • 食堂等の設備がしっかり整っていて清潔か?(食事環境の充実)

契約について

契約に関しては次のポイントを確認しましょう。

  • サービス内容・利用料金についての適切な説明の有無
  • 苦情・質問の受付についての説明の有無
  • キャンセルの際の対応についての説明の有無
  • 契約書・重要事項等の内容説明の有無

デイサービス事業所の数は減少傾向にある

高齢者は今後増加傾向にあるものの、2016年の年度末時点で、デイサービス事業所数は4万3,399件でしたが、2015年度末時点では4万3,440件でした。41件の事業所が廃業または事業を撤退しています。

こちらでは、減少傾向になっている背景を検証します。

デイサービスが減少した大きな要因は介護報酬の改正

介護報酬は3年に1度改定されますが、そもそも介護施設の売上はこの介護保険制度に大きく左右されることになります。

月平均の利用者が300名より下の規模の施設、つまり1日10人程度しか利用しない小規模のデイサービスセンターの介護保険報酬が、2015年に10%近く削減されています。


デイサービスは、利益率が10%前後とされ、以前は利益率の良いビジネスといえたのですが、この削減によりデイサービスが減少する要因となったしまったことは事実です。

今後小規模なデイサービスセンターは減少の一途を辿る

日本政府は更に、介護労働者の低賃金が社会的問題となった事を踏まえ、平均賃金を上げるために処遇改善加算を発行、そちらに財源が回されているのが現状です。

また、2016年度から、定員の数が18名を下回っている小規模型通所介護施設は地域密着型通所介護施設という名称に代わり、小規模型をそのまま引き継ぐ形となっています。


ただし、通所介護施設は規模が大きければ大きいほど利益率が高くなる傾向があり、規模の小さい施設は今後減少の一途を辿ることが予想されます。

まとめ

デイサービスは介護保険制度に影響され、その利用料金はもとより、そのサービスも変容していくかもしれません。

利用する側も介護保険制度の変化に今後とも注目する必要があります。

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