介護保険が適用される施設と適用されない施設の、特徴と費用の違い

福祉施設には、介護保険が適用される施設と適用されない施設があります。介護保険が適用されない場合、介護サービス費用は全額自己負担となるため、高額な介護費用が必要になります。それぞれの施設の介護保険適用可否と、特徴や費用について見ていきましょう。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

各介護保険の施設の特徴、費用、介護保険の適用可否


高齢化に伴い、介護保険サービスを利用する高齢者は年々増加しています。


介護度の変化に応じて介護保険サービスで利用できる公的な施設への入所を検討したり、民間運営の有料老人ホームやその他の施設を検討する人も多くいます。

今回は、各施設の特徴や、費用、介護保険の適用可否についてご説明していきます。


介護生活は長期にわたる可能性もあるため、介護保険が適用となるか否かは費用面を考えるととても気になる点です。


介護保険が適用となると、サービス利用費用は所得に応じて1~2割の自己負担額で利用することができます。


そのため、費用負担が抑えられるのです。


その点もよく考慮した上で、ご自身に適した施設を検討しましょう。

民間運営の有料老人ホームとその他の施設

有料老人ホームとは、入居者に食事の提供や洗濯・入浴介助などの日常生活上における介護サービスを提供している施設のことです。


有料老人ホームには、「介護付き有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」の3種類の有料老人ホームがあります。 


この施設ごとに提供されるサービスの違いや、入居者の日常生活自立度の違いがあります。 


その他の施設としては、「サービス付き高齢者向け住宅」「グループホーム」があります。


それぞれの施設にはどのような特徴があるのか、費用はどのくらいかかるのか、介護保険の適用可否について見ていきましょう。

介護付有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームでは、食事・入浴等といった日常生活の介護サービスを受けながら生活することのできる有料老人ホームです。

施設に看護師や介護士が24時間在籍しており、介護が必要となった場合でも施設内の職員による身体的な介護を受けることが可能です。 


介護付有料老人ホームに入居する際には、入居前に支払う入居一時金という初期費用があります。 


入居一時金は0~数千万円と幅広いため、入居を検討している施設に問い合わせをして確認しましょう。 


入居一時金のほかに月額費用がかかりますが、12~30万円ほどとされています。


また、介護付き有料老人ホームは「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている施設であるため、介護保険が適用されます。


そのため、費用の自己負担額は所得に応じて1~2割です。

住宅型有料老人ホーム

住宅型有料老人ホームでは、食事提供サービスや掃除などの生活支援を行ってくれる有料老人ホームです。  

介護付き有料老人ホームとは違い、介護士による排泄・入浴などの身体介助は対応していません。 


入居中に介護を要する状態となった場合には、外部の事業所による介護保険サービスを受けることになります。


住宅型有料老人ホームの入居一時金は0~1000万円、月額費用は10~30万円が目安とされています。


先にも述べたように、外部の事業所による介護サービスは介護保険が適用されるため、自己負担額は所得に応じて1~2割です。


しかし、施設で発生する費用は介護保険が適用されないため、全額自己負担となります。

健康型有料老人ホーム

健康型有料老人ホームとは、日常生活の介護を受けずに自立して生活をすることができる高齢者を対象としている有料老人ホームです。

身体機能維持を目的とし、トレーニングジムや卓球など運動の出来るスペースも兼ね備えています。 


自立している高齢者を対象としている施設であるため、介護が必要となった際には転居しなければなりません。


入居一時金は数千万円と高額で、月額使用料は20万円~40万円以上が目安とされています。


介護保険は適用されないため、費用は全額自己負担となります。

サービス付き高齢者向け住宅

サービス付き高齢者向け住宅とは「サ高住」とも呼ばれており、入居している高齢者の「安否確認」や、生活に関する不安に対して「生活相談」のサービスを提供する施設です。

サ高住では原則として身体介護を行っていませんが、「特定施設」と認められている施設では介護士が在住しており、食事介助や排泄介助といった身体介護サービスを行っている施設もあります。


サ高住ごとに行っているサービスが異なるため、入居を検討する際にはいくつかのサ高住を検討し、施設ごとに行っているサービスを確認してから決めると良いでしょう。


サ高住で提供しているサービス以上に介護サービスが必要となった場合には、外部の事業所による介護保険サービスを利用します。


サ高住に入居する際には、入居一時金ではなく敷金がかかります。


敷金は0~数百万円、月額費用は10~30万円が目安とされています。


「特定施設」と認められている施設では、介護保険が適用されます。

グループホーム

グループホームとは、認知症の症状がある高齢者が、症状の悪化や障害により日常生活を自宅で過ごすことが困難となった場合に、専門スタッフの援助を受けながら共同生活をする施設のことを言います。

高齢者の自立を促す施設でもあるため、個々の残存機能に応じて家事は分担して行います。

認知症になると、記憶障害・見当識障害(日付・場所の理解に関する障害)・理解力の低下・判断力の低下などが起こります。 


それにより、不安が強くなったり易怒的になるなどの感情表現の変化が起こったり、悪化するとうつ状態や暴力的になる場合もあります。


また、せん妄や幻覚・妄想といった症状が出現する場合もあります。 


このような症状に、どのように対応することが良いのかという視点を具えている専門スタッフの援助を受けることのできる施設がグループホームなのです。 


グループホームの入居一時金は0~数百万円、月額費用は15~30万円が目安とされています。


費用は介護保険が適用となります。

公的施設の介護保険施設と福祉施設

公的施設の介護保険施設には、「特別養護老人ホーム(特養)」「介護老人保険施設(老健)」「介護療養型医療施設(療養病床)」があります。

その他の福祉施設としては、「ケアハウス」「養護老人ホーム」があります。


それぞれの施設にはどのような特徴があるのか、費用はどのくらいかかるのか、介護保険の適用可否について見ていきましょう。

特別養護老人ホーム(特養)

特養は、介護度が重度となり、在宅生活を継続することが困難となった要介護3以上の高齢者が入居する施設です。

看護師による状態観察や介護士による日常生活上の介護、機能訓練等のサービスを受けながら生活を送ることができます。


医療依存度の高い高齢者は、入所が困難な施設もあるため施設ごとに確認をしましょう。


特養は入居一時金がかかりません。


月額費用は、部屋のタイプによって費用が異なるため確認が必要です。


ユニット型個室では13万円、多床室(相部屋)では8万円が目安とされています。


特養は介護保険施設であるため、介護保険が適用となります。

介護老人保険施設(老健)

老健は、病院と自宅の中間施設として位置づけられている施設で、リハビリを行い在宅復帰を果たすことが目的とされています。

そのため、日常生活の介護は最小限であり、出来る限りリハビリも兼ねてご自身で行います。


中間施設であるため、3ヶ月ごとに入所継続の審査があります。


老健は入居一時金がかかりません。


月額費用は、部屋のタイプによって費用が異なるため確認が必要です。 


ユニット型個室では13万円、多床室(相部屋)では8万円が目安とされています。 


老健は介護保険施設であるため、介護保険が適用となります。

介護療養型医療施設(療養病床)


療養病床は、専門的な医療サービスが必要であり、要介護度の高い高齢者がリハビリや医療ケアを受けることのできる施設です。


医師や看護師が常勤していることが、特徴のひとつです。


胃ろうや人工呼吸器などの医療依存度の高い場合でも、安心して入所することができます。


療養病床は入居一時金がかかりません。 


月額費用は、部屋のタイプによって費用が異なるため確認が必要です。 


ユニット型個室では25万円、多床室(相部屋)では9~17万円が目安とされています。 


療養病床は介護保険施設であるため、介護保険が適用となります。

ケアハウス

ケアハウスは、要介護3くらいまでの60歳以上の高齢者を対象とした施設です。

ケアハウスは、「一般(自立)型」「介護型」の2種類に分けられており、一般型では自立した高齢者を対象としており、介護が必要となった場合には外部の事業所による介護保険サービスを利用する必要があります。


介護型では、要介護1以上という入居条件があり、介護サービスの提供を行っている施設です。


ケアハウスの入居一時金は数十万~数百万円、月額費用は10~20万円が目安とされています。


ケアハウスの費用は、介護保険が適用となります。

養護老人ホーム

養護老人ホームは、日常生活に介護を必要としない65歳以上の高齢者を対象とした施設です。

生活保護受給者や低所得などの原因によって、自宅で生活を継続することが困難な方が生活する施設です。


入所するためには地方自治体の審査を受ける必要があり、入居中に要介護状態となった場合には退所しなければなりません。


養護老人ホームには入居一時金はなく、月額費用は0~10万円が目安とされています。


養護老人ホームの費用には、介護保険は適用されません。

介護保険3施設の比較

介護保険施設である「特養」「老健」「療養病床」を比較し、それぞれどのような違いがあるのかということを更に詳しく見ていきましょう。

設置主体:特養は社会福祉法人・地方公共団体、老健は医療法人・社会福祉法人・地方公共団体等、療養病床は医療法人・地方公共団体等

平均入所(院)定員数:特養は67.8人、老健は88.8人、療養病床は34.8人

施設数:特養は5,022施設、老健は2,967施設、療養病床は4,007施設

平均要介護度:特養は3.57、老健は3.16、療養病床は4.13

在所者の平均在所(院)日数:特養は1,445.3日、老健は395.4日、療養病床は654.5日

受給者1人当たりの費用額:特養は324.1千円、老健は338.0千円、療養病床は446.1千円

介護保険の適用除外施設とは

65歳以上の方や40歳以上65歳以上の医療保険加入者は、原則として居住する市区町村の介護保険被保険者です。

しかし、65歳以上の方や40歳以上65歳未満の医療保険加入者であっても、法令で定める以下の施設に入所・入院している場合、介護保険の被保険者とはならないことが定められています。


  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第29条第1項に規定する指定障害者支援施設(生活介護施設入所支援に限る)
  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第5条第12項に規定する障害者支援施設(生活介護に限る)
  • 児童福祉法第42条第2号に規定する医療型障害児入所施設
  • 児童福祉法第6条の2第3項の厚生労働大臣が指定する医療機関
  • 独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園法に規定する福祉施設
  • 国立及び国立以外のハンセン病療養所
  • 生活保護法第38条第1項第1号に規定する救護施設
  • 労働者災害補償保険法第29条第1項第2号に規定する労働者災害特別介護施設
  • 障害者支援施設
  • 指定障害者支援施設
  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第29条第1項の指定障害福祉サービス事業者であって、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則第2条の3に規定する施設(療養介護に限る)

まとめ

高齢者が入居または入所することのできる施設は、年々増加しています。

施設ごとに介護サービスの有無や、費用の違い、介護保険が適用されるか否かに違いがあることが理解できたと思います。


入居一時金は高額と設定されていることも多く、入居一時金を設けていない施設と比較すると全体を含めた入居費用が高額となります。


施設の特徴や費用面など様々な情報を収集して、施設を選択することをお勧めします。

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