介護保険サービスを受ける際に、費用が10割負担される場合とは?

介護保険の介護サービスを受けた場合、原則自己負担1割分(または2割)を支払わなければなりませんが、費用を10割負担される場合があるのです。どのような場合に費用を10割負担され介護保険サービスを利用することが出来るのか?その内容を解説していきます。

介護保険の介護サービス費10割負担を全額給付されるパターンを解説

介護保険を利用して介護サービスを受けた場合、利用者はそのサービス費の1割もしくは所得によって2割の自己負担分を支払わなければなりません。これは介護保険制度に規定されていることです。
しかし、ある一定の条件を満たしている場合、この介護保険の介護サービス費の全額である10割負担を給付される場合があります。どのような場合サービス費を10割負担してもらうのか?
また、どのような形で給付されるのかを説明していきます。

介護保険の介護サービス費10割負担を給付されるのは生活保護受給者だけ

生活保護受給者は生活保護法によって守られ、日常生活を送るために一定額の給付が行われています。しかし、高齢となり介護が必要となった時には、さらに金銭的負担が増えてしまいます。
このことにより、生活保護受給者も安心して介護サービスを受けられるようにするため、生活保護の給付の中に『介護扶助』というものがあります。
介護扶助により、介護保険サービスを受けた際のサービス費用は10割負担されるようになります。
この介護保険の介護サービス費が10割負担され給付されるのは介護扶助を利用できる生活保護受給者のみとなります。

生活保護受給者のための介護扶助とは

まず、生活保護の目的は、憲法第25条にあるように「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国はすべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と規定されています。
生活保護には、国が生活に困窮する方たちに必要な保護を行い、最低限度の生活を保障し、自立した生活を補助するという目的があります。

介護保険制度の導入により、生活保護受給者であっても介護サービスを受けることは国民の権利であるとし、生活保護受給者も介護保険の被保険者と位置付けられています。介護保険の給付対象となるサービスを受けることが最低限の生活を送るものとして、『介護扶助』という形で給付されることになりました。(これにより、生活保護受給者は介護サービス費を10割負担されます。)

介護扶助の対象となるのは、生活保護受給者で、介護保険法により要支援1~2・要介護認定1~5を受けている方です。介護扶助を受けようとする際には、まず要支援・要介護認定を受ける必要があります。

介護扶助の項目は下記に記している8項目となります。
  1. 居宅介護(居宅介護支援計画に基づき行うものに限られています。)
  2. 福祉用具
  3. 住宅改修
  4. 施設介護
  5. 介護予防(介護予防支援計画に基づき行われます。)
  6. 介護予防福祉用具
  7. 介護予防住宅改修
  8. 移送

これらの中で必要な介護サービスが介護扶助により給付されることになります。

 

注意が必要なことは、介護扶助が負担する割合は条件により異なります。介護保険法による第1号被保険者(65歳以上)と第2号被保険者(40歳以上65歳未満の医療保険加入者)が介護扶助を利用した場合、介護保険がサービス費の9割を負担し、介護扶助が1割を負担することになります。

また、40歳以上65歳未満の生活保護受給者で医療保険等に加入していない場合には、特定疾病により要支援・要介護状態であれば介護サービスを利用でき、自己負担額も介護扶助によって10割負担されます。

 

介護サービス費の負担割合は被保険者の条件によって異なりますが、生活保護受給者の介護サービス費の自己負担は10割負担されるということです。

介護扶助は原則として現物給付される

介護保険被保険者がこれまで介護保険料の納付が出来ていない場合や長期に渡って滞納を続けていた場合、原則としては介護保険サービスを利用した際のサービス費は通常自己負担1割(収入によって2割)のところ、10割負担となってしまいます。

しかし、生活保護の受給を受けている方が介護保険サービスを利用した場合は、生活保護費のなかの『介護扶助費』から介護保険で利用したサービス費は賄われるようになっています。
居宅介護や施設介護でのサービス費や食費などが利用者の負担なしに10割負担され、現物給付の形で支給されます。
介護扶助費はサービスによってかかった介護費用を直接、指定の介護事業者へ支払われる現物給付が原則とされていますが、現物給付が適当でないと判断された場合には現金給付による支給もされます。


介護扶助の指定介護機関

生活保護受給者に対して介護保険のサービスを提供する場合には、事業者は生活保護法による指定を受ける必要があります。
生活保護法に基づく介護扶助による介護サービスを提供する事業者は、その開設者、本人または設置者の同意を得て事業所の所在地の知事に指定されるものとなります。このような介護機関を「介護扶助指定介護機関」といいます。

事業者は介護扶助指定介護機関の指定を受けた後、事業所の所在地・名称や法人所在地・名称などに変更、または事業を廃止する際にはそれぞれ変更・廃止届の提出が必要になります。

介護扶助の介護券とは

生活保護受給者への介護扶助が決定された場合、福祉課から指定介護機関へ毎月介護券が発行されます。介護券には有効期間が記載されており、この期間内で介護扶助による介護サービスを提供するようになります。
事業者はこの介護券を基に介護報酬の請求を行うことが出来るようになり、介護券は事業者にて5年間保管するように義務づけられています。
事業者がケアマネージャーに介護券と実績報告を提出し、ケアマネージャーによって介護券に記載されている公費負担者番号や受給者番号、保険者番号、被保険者番号などを確認し、給付管理を行います。それから国民健康保険団体連合会への介護報酬の請求を行い、国民健康保険団体連合会からサービス提供事業者へ介護保険料の自己負担分が支給されます。

また、介護券には本人支払額の欄があります。これは、利用者本人に生活保護以外の年金などの収入がある場合に、その金額が生活保護で算定されている生活費や住宅費用に充当しても余ってしまう時には、介護扶助で支払われる金額の一部を負担しなければなりません。
なので介護券が発行されるからと言って、サービス費が給付により10割負担されるということではありません。

介護扶助を受けるための手続き

生活保護を受給されている方が介護サービスを受けた際に、サービス費が生活保護の介護扶助から10割負担されるためには別に手続きが必要となります。

生活保護法の第15条の2では、介護扶助を受ける場合に関してこう記されています。
『介護扶助は居宅介護支援計画、もしくは介護予防支援計画に基づいて行われる。』と、あります。ですので、介護扶助を受ける際にはケアプランがまず必要となります、そして各自治体によって利用票や介護保険被保険者証の写しなどの提出物が決められています。
介護保険制度には各自治体によって異なる手続きが存在しますので、介護扶助を受けようとする際にも、かならず自分の住んでいる自治体に必要な提出物を確認するようにして下さい。

介護扶助申請の流れは、まず要介護認定を受けていない方は要介護認定の申請を行います。その後、要介護認定が下りたら介護保険被保険者証が届きます。
そして担当のケアマネージャーにより必要な介護サービスのためのアセスメントが実施され、ケアプランの作成後サービス担当者会議が開かれます。利用票への同意がされて、介護扶助の申請を行うことが出来ます。
介護扶助の申請は福祉事務所にて行われます。福祉事務所は申請に基づいて審査を行い、介護扶助の可否を決定します。

福祉事務所の審査により介護扶助が決定されると、福祉課より介護サービスを提供するサービス事業者へ介護券というものが毎月発行されます。これによって介護扶助による利用者はサービス費を10割負担してもらうことが出来るのです。

生活保護を受給していて介護保険の被保険者である場合は介護扶助から1割が負担される

生活保護受給者のうち、65歳以上の方は生活保護を受けていても介護保険の第1号被保険者となりますので、自己負担1割を生活保護の介護扶助から負担されます。
また、40歳から65歳未満の生活保護を受けている方で、医療保険の被保険者であれば介護保険の第2号被保険者として自己負担1割を介護扶助から負担されます。

生活保護の被保険者以外の場合は介護扶助が10割負担する

生活保護を受給している方のうち、40歳から65歳未満の生活保護受給者で医療保険未加入者の場合は、『介護保険の被保険者以外の者』となります。
介護保険の被保険者以外の方は、生活保護の介護扶助にて介護保険を10割負担での給付で受けられます。
ただし、生活保護受給者の多くは国民健康保険の適用除外となり、医療保険への未加入となるので、介護保険の被保険者となることはほぼありません。

まとめ

生活保護受給者でも、要支援・要介護状態になれば生活保護の介護扶助により介護サービス費が10割負担され、介護を受けることが出来ます。これは最低限の生活を保障されている国民の権利です。

高齢になり、身体的な変化によって介護が必要になるのはみんな同じことです。
国では、みんなが平等に安心して介護が受けられるように、さまざまな支援や援助がされています。
自分にとって必要な介護サービスを受けたいという時には、各市町村へ相談するようにしましょう。

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