更新日:2018/02/03
介護保険の請求はどのようにするの?事業所ごとにわかりやすく説明!
各事業所では介護保険請求を国民健康保険団体連合会へ行います。支払のスケジュール、請求額の計算方法を正確に把握し申請する必要があります。介護保険請求は何かと煩雑ですが、事前の準備と職員の知識・経験の向上でスムーズな請求額の計算・請求申請が可能となります。
目次を使って気になるところから読みましょう!
介護保険請求の流れまとめ
ただし、この請求は事業所にとって煩雑な作業であり、職員が慣れるまでにナカナカ時間がかかってしまうことでしょう。
そこで今回は、介護保険請求について説明します。介護保険請求の流れや、支払のスケジュール、請求額の計算方法を紹介します。
この記事を読めば、介護保険請求の基本的な知識を得ることができ、スムーズな請求手続きを行うための良い参考資料となることでしょう。
介護保険請求の流れ
- 介護保険利用者の個人ファイルの作成
ケアマネージャーから介護保険利用者を紹介され、事前面接、重要事項説明、契約が済み次第、利用者の個人ファイルの整理を行います。
この利用者の個人ファイルには、①複写したフェースシート(利用者の性別・年齢・要介護度等の調査票)・サービス計画書等の書類、②面接記録、③重要事項説明書、④契約書、⑤健康保険証・介護券の写し等を、一つのファイルへまとめます。
こうすれば、他の介護保険利用者の書類が混ざってしまう心配がなく、利用者の個人情報の管理を徹底することができます。
- 介護保険請求用ファイルの作成
介護保険利用者の個人ファイルを作成したら、介護保険請求へ向けて請求関係の書類のみをまとめたファイルを作成します。
この介護保険請求用ファイルには、介護保険利用者の健康保険証の写しを保管しておきます。つまり、健康保険証の写しは介護保険利用者の個人ファイルと、介護保険請求用ファイルの二つにそれぞれ保管します。
こうしておけば、介護保険請求をする慌ただしい時期に、いろいろな書類を保管している個人ファイルの中から、わざわざ請求に必要な資料だけを引き出す手間が省けます。
介護保険利用者が大勢になればなるほど、このような事前の準備が必要となることでしょう。
介護保険請求の流れは事業所によってそれぞれ以下のような作業を行います。
居宅介護支援事業所の場合
- 介護保険利用者より、サービス計画の作成依頼の受付・契約
- 介護保険利用者へ、利用票交付
- 介護サービス提供事業者に介護サービスの提供を依頼・調整し、サービス提供票を交付
- 介護サービス提供事業所の実績報告を確認
- 国民健康保険団体連合会に、①給付管理票、②介護支援費請求明細書等を送付
- 国民健康保険団体連合会から居宅介護支援費を受け取る
居宅介護支援事業所が地域包括支援センターから委託を受けた場合
- 地域包括支援センターから委託される
- サービス計画書を作成し、介護サービス提供事業所へサービス提供の依頼、その調整後、初回や変更の時にサービス提供票交付
- 介護サービス提供事業所の実績報告確認
- 地域包括支援センターへ、①委託費請求書、②実績報告書、③その他の書類を提出
- 地域包括支援センターから委託費を受け取る
サービス提供事業所の場合
- 居宅介護支援事業所からの介護サービスの提供依頼を受付・調整し、サービス提供票を交付してもらう
- 介護保険利用者と契約しサービス開始
- 居宅介護支援事業所に実績報告
- 国民健康保険団体連合会へ請求
- 介護保険利用者へ請求し、費用を受け取る
- 国民健康保険団体連合会から介護給付費を受け取る
介護保険の請求と支払いのスケジュール
ただし、何らかの理由で翌月10日までに請求できなかった時は、「月遅れ請求」として翌々月(2月)以降に請求することができます。
この請求には2年間の時効期間があり、時効起算日(時効を計算し始める第一日目)は、介護サービス提供月の翌々々月1日(3月1日)からとなります。
なお、10日が土日・祝日の場合には、締切日が早まる場合があります。毎年、国民健康保険団体連合会では1年間の締切日の一覧を提示しているので、忘れずに確認しておきましょう。
居宅介護支援事業所の請求・支払いスケジュール
- 毎月20日~10日頃→翌月のサービス提供票を作成後、介護サービス提供事業所へ送付
- 翌月5~6日頃→介護サービス提供事業者から実績報告を受け取る
- 翌月10日頃→帳票類を作成後、国民健康保険団体連合会へ提出
- 翌々月末頃→国民健康保険団体連合会からの支払を受ける
サービス提供事業所の請求・支払いスケジュール
- 月末→翌月分のサービス提供票を集め、そのの確認と利用予定表を作成
- 月末~初旬頃→実績を居宅介護支援事業所に送付
- 翌月10日頃→帳票類を作成後、国民健康保険団体連合会へ提出
- 翌々月末頃→国民健康保険団体連合会からの支払を受ける
介護保険のスムーズな請求業務のために、事前にやっておきたいこと
また、居宅介護支援事業所・サービス提供事業所に分けて説明していきます。
居宅介護支援事業所
- サービス提供票の変更について
サービス提供票の予定が変更になる時には、介護サービス提供事業所へその変更連絡を忘れずに行います。
ただし、電話連絡のみでは介護サービス提供事業所の担当者へ、変更した内容が正確に伝わらない場合もあります。そのため、変更したサービス提供票を改めて介護サービス提供事業所へ送付することが適切です。
- 福祉用具貸与について
福祉用具貸与は、日付によって単位数が変わるサービスです。つまり、サービスの開始や終了、施設の入所・退所の日付により、半月分の単位数になります。サービス提供票を作成するときには、しっかりと単位数を確認することが必要です。
- 要介護度の区分変更について
区分変更申請した日付によっても、介護サービス提供事業所の単位数は変わります。区分変更申請の際は、事前に介護サービス提供事業所へ連絡することが適切です。
また、利用者の要介護度が確定する間は、介護サービス提供事業所へ請求をストップするよう伝えておきましょう。
要介護認定の確定後は、介護サービス提供事業所へその結果を連絡後、サービス提供票を交付します。その際に、月遅れ請求をいつ行うのかも連絡しておきます。
- 単位数オーバーについて
介護保険利用限度額いっぱいの単位数でサービスを組んでいる場合は、その後に利用追加・変更等で単位数オーバーになるケースがあります。利用追加・変更の際は必ず単位数を確認します。
- 未請求分の確認について
要介護度の区分変更申請等が理由で、国民健康保険団体連合会へ請求をストップしていた分を確認します。確認漏れをしないためにも未請求分をリストに記載し、請求手続き前に確認することを勧めします。
サービス提供事業所
- サービス提供票をチェックする
サービス提供票が届いたら、①事業所番号、②サービスコード、③加算の内容、④費用等を確認します。間違いを発見したら、速やかに居宅介護支援事業所の担当ケアマネージャーに報告しましょう。
- サービス変更について
介護保険利用者が体調不良で利用を中止したり、利用時間を短縮したりした場合、サービス提供票の内容と実際で違いが出ることになります。その場合は、居宅支援事業所の担当ケアマネージャーに報告しましょう。
- 介護保険被保険者証について
国民健康保険団体連合会に請求する時に、利用者から新しい介護保険被保険者証の写しをもらっていないことに気付くと、請求が遅くれることがあります。事前に利用者・その家族から写しを取得しておきましょう。
- 要介護度の区分変更の連絡を受けた場合について
居宅介護支援事業所より「要介護度の区分変更を申請した。」という連絡が来たら、該当する介護保険利用者について請求手続きの時にわかるように、月遅れリスト等へ記録することをお勧めします。
- 実施記録は当日に完了させる
実施記録は、当日中に作成を完了しましょう。提供票と実績が合わないケースがあると、実施記録から確認作業を行うことになります。記録が何日も後に作成されていたのでは、記録内容が不正確なおそれがあり、確認作業が迅速に進まなくなります。
介護保険請求額の計算方法
○計算式
単位数{サービスコード表、サービス提供回数(日数)}×単位数単価(端数切捨て){地域区分、サービス種類}×90%(端数切捨て)=介護報酬
注意点は次の通りです。
- 単位数の計算:小数点以下の端数処理を四捨五入する
- 金額への換算:小数点以下の端数を切捨てる
- サービスコード表:サービスごとの単価表、インターネットなどでも入手可能
- 地域区分:介護サービスにあたる職員の人件費相当分、地域差を勘案するために設定
○地域区分(人件費割合・地域ごとの上乗せ割合)について
地域毎の上乗せ・人件費割合を説明します。下表を参考にして下さい(厚生労働省報告「地域区分」を参考に作成)。
等級 | 上乗せ割合 | 人件費割合(70%) | 人件費割合(55%) | 人件費割合(45%) |
---|---|---|---|---|
1級地 | 20% | 11.40円 | 11.10円 | 10.90円 |
2級地 | 16% | 11.12円 | 10.88円 | 10.72円 |
3級地 | 15% | 11.05円 | 10.83円 | 10.68円 |
4級地 | 12% | 10.84円 | 10.66円 | 10.54円 |
5級地 | 10% | 10.70円 | 10.55円 | 10.45円 |
6級地 | 6% | 10.42円 | 10.33円 | 10.27円 |
7級地 | 3% | 10.21円 | 10.17円 | 10.14円 |
その他 | 0% | 10円 | 10円 | 10円 |
例えば東京都内であっても23区は1級地に該当しますが、多摩市は2級地というように同じ都道府県内でも割合が異なる場合があります。
また、人件費の割合は介護サービスの種類でも異なります。下表を参考にしてください。
人件費割合 | 70% | 55% | 45% | 0% |
---|---|---|---|---|
介護サービスの種類 | 訪問看護、訪問介護、訪問入浴介護、夜間対応型入浴介護、居宅介護支援、定期巡回、随時対応型訪問介護・看護 | 看護小規模多機能型居宅介護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、認知症対象型通所介護、小規模多機能型居宅介護、短期入所生活介護(ショートステイ) | 通所介護、短期入所療養介護、特定施設入居者生活介護、地域密着型通所介護、認知症対応型共同生活介護、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、地域密着型特定施設入居者生活介護、地域密着型介護老人福祉施設入居者生活介護 | 居宅療養管理指導、福祉用具貸与 |
利用請求額の計算方法
○介護保険自己負担分
計算式:費用総額(10割)-介護報酬(9割または8割)=介護保険自己(利用者)負担額(1割または2割)
○介護保険外請求分
契約書等に明記されていることを条件に徴収できるサービスです。通所介護等の食事代、入所施設等の居室代、紙おむつや尿取りマット代、レクリエーション材料費があげられます。
○利用限度額
要介護度に応じて給付で利用できる単位数の上限は異なります。居宅介護サービスの場合を例に表にすれば次の通りです。
居宅介護サービス | 利用限度額(単位) | 利用者負担額(1割) | 利用者負担額(2割) |
---|---|---|---|
要支援1 | 5,003単位 | 5,003円 | 10,006円 |
要支援2 | 10,473単位 | 10,473円 | 20,946円 |
要介護1 | 16,692単位 | 16,692円 | 33,384円 |
要介護2 | 19,616単位 | 19,616円 | 39,232円 |
要介護3 | 26,931単位 | 26,931円 | 53,862円 |
要介護4 | 30,806単位 | 30,806円 | 61,612円 |
要介護5 | 36,065単位 | 36,065円 | 72,130円 |
なお、福祉用具購入費は年間10万円、住宅改修費は原則として一人1回20万円が上限です。
自己負担額割合について
○1割負担
・利用者本人の合計所得金額が160万円未満
・利用者本人の合計所得金額が160万円以上でも、同一世帯の第1号被保険者の方の年金収入+その他の合計所得金額により①65歳以上の方が1人の場合は280万円未満、②65歳以上の方が2人以上の場合は346万円未満
○2割負担
・利用者本人の合計所得金額が160万円以上で、同一世帯の第1号被保険者の方の年金収入+その他の合計所得金額により①65歳以上の方が1人の場合は280万円以上、②65歳以上の方が2人以上の場合は346万円以上
負担限度額について
負担限度額(1日分) | ユニット型 個室 | ユニット型 準個室 | 従来型個室 特別養護老人ホーム | 従来型個室 介護療養型医療施設及び介護療養型医療施設 | 多床式 特別養護老人ホーム | 多床式 介護療養型医療施設及び介護療養型医療施設 | 食費 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
[第1段階] ①老齢福祉年金受給者の方で、世帯全員が住民税非課税の方 ②生活保護受給されている方 | 820円 | 490円 | 320円 | 490円 | 0円 | 0円 | 300円 |
[第2段階] 世帯全員が住民税非課税で、本人の課税年金収入額と合計所得金額と非課税年金収入額の合計額が年額80万円以下の方 | 820円 | 490円 | 420円 | 490円 | 370円 | 370円 | 390円 |
[第3段階] 世帯全員が住民税非課税で、本人の課税年金収入額と合計所得金額と非課税年金収入額の合計額が年額80万円を超える方 | 1,310円 | 1,310円 | 820円 | 1,310円 | 370円 | 370円 | 650円 |
[第4段階] 住民税課税世帯の方 | 1,970円 | 1,640円 | 1,150円 | 1,640円 | 840円 | 370円 | 1,380円 |
こちらの負担限度額については、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、短期入所生活介護または短期入所療養介護(ショートステイ)が該当します。
なお、この負担限度額を利用するには、利用者本人等が負担限度額認定申請をして、負担限度額認定証の発行を受ける必要があります。そのため、利用者本人等へ負担限度額認定証の有無を事前に確認し算定を行いましょう。