親の介護をするときに役立つ介護保険の知識と、準備しておくべきこと

いざ親の介護という時に困らないよう、介護保険の正しい知識と準備しておくべきことをご紹介します。介護生活もお互いに負担なく生活が行えるように、どのような生活をしていきたいか親とよく話し合っておくことも大切です。現在は、民間の介護保険も充実しています。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

親に介護が必要になる前に抑えておきたい全知識

いつかは経験することになるであろう親の介護に対して、不安を感じている人は多いでしょう。


病気や加齢が原因となり、体の自由がきかず、身の回りの日常生活の動作(更衣や入浴等)が行えなくなったときに親の介護に携わる人がほとんどです。


いざそういう状況になったときに、介護保険やサービスについて知識を持っていないと、自分一人では介護をすることが負担に感じてしまいます。


そうなるまえに介護保険やサービスについて、ある程度理解をしておくことは、親にとっても介護者にとってもとても介護負担を軽減する意味で、とても重要になります。



介護保険のサービスを受けるには要介護、要支援認定を受ける必要がある

介護保険のサービスを受けるには、介護認定を受ける必要があります。

市町村の申請窓口へ相談をし、申請書と医師に現在の状態を記載してもらう意見書を提出をします。

申請手続きは、本人またはご家族であれば行うことができます。


申請手続きを行うと、後日ご自宅に調査員が訪問し、認定調査を行います。


認定調査では、介護認定を受けたい本人の身体機能や認知機能、日常生活でどのように支障が生じているか等を調査します。


認定調査の結果をもとに介護認定調査会が行われ、介護が必要な状態にあるかを判断します。


それにより、要支援または要介護状態と認められた場合に、介護保険サービスを受けることが可能となります。


申請手続きを行ってから結果が出るまでの期間は、約30日を要すことが多く時間がかかるため、親の介護の可能性が生じたら早めに申請手続きを行いましょう。

介護保険によって受けられる介護サービス

介護保険によって受けられる介護サービスには、居宅サービス・支援サービス・施設サービスの3つに分けられます。

居宅サービスとは、在宅生活を送りながら受けることのできる介護保険サービスのことを言います。


支援サービスとは、利用者に適したサービスの提供が行えるよう、ケアマネジャーが相談支援・ケアプランの作成・各機関への連絡を行うことを言います。


施設サービスとは、利用者が施設へ入所し、受けることのできる介護保険サービスのことを言います。


【居宅サービス】

  • 訪問サービス(訪問看護・訪問リハビリ・訪問介護・訪問入浴)
  • 通所サービス(デイサービス・デイケア)
  • ショートステイ
  • 福祉用具貸与
  • 特定福祉用具販売
  • 住宅改修

【施設サービス】

  • 特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・指定介護療養型医療施設に入所

どちらのサービスでも、生活の場が異なるだけで、日常生活の介護やリハビリを受けることができます。

毎月の介護にどれくらいの費用がかかるのか

公益財団法人 家計経済研究所が実施している「在宅介護のお金と負担2016年調査結果」では、1ヶ月あたりの在宅介護にかかる費用は平均で6万円という結果が出ています。


しかし、病気の重症度や介護度によって介護費用は変わるため、あくまでも目安として捉えてください。


介護度が要介護5に近ければ近いほど介護を要する状態であるため、必要な福祉用具や専門職によるサポートも多くなります。


そのため、介護度が高いほど介護費用は大きくなります。


また、介護施設に入所する場合は、在宅介護に比べて介護費用は高くなります。


居住費が月額10万円以上の施設がほとんどで、その他に食費や介護サービス費用が加わります。


介護施設に入所している場合でも、在宅介護同様に介護度が高いほど費用は高くなります。

介護保険のサービス利用料と介護保険サービス以外のサービス利用料

介護保険のサービス利用料と介護保険サービス以外のサービス利用料について考えてみましょう。

同じサービスを受けるにも、介護保険が適用される場合には自己負担額が1~2割となり、サービスを受けることができます。


介護保険が適用されない場合には、全額自己負担となります。


自治体や民間企業で提供しているサービス(配食サービスや家事支援など)は介護保険サービス外のため、全額自己負担となります。

介護保険料総額の目安は300万円

高額とされる介護費用ですが、その介護保険料総額の目安は約300万円とされています。

介護度や施設入所なのか在宅介護なのかという状況により差は生じますが、いずれにしても高額になることに変わりはありません。


額だけを見るととても払うことができないと不安に感じてしまうことと思います。


この親の介護費用、どのようにして工面すればよいのでしょうか。

親の介護費用は基本的に親自身が支払う

親の介護費用は、基本的には親自身が支払います

親自身も過去に介護の経験をしていれば、介護にどれほどの費用がかかるということを認識しています。


出来る限り、まわりに迷惑をかけないように準備をしています。


実際に親の介護をしている人の半数以上は、親の介護費用を負担していません。

親は老後に備えてお金の準備をしておくことが大切

介護を要す状態になった時に、様々な援助を受けて毎日を充実させて過ごすためには、やはり準備が大切になります。

お金がないからと必要なサービスを我慢して、その分介護者の介護負担を増大させてしまうことになると、本人だけでなくご家族の精神的な負担も大きくなってしまいます。


そうならないためにも、親は老後に備えてお金の準備をしておくことが大切です。

高額介護サービス費制度などの公的なサポートも活用しましょう

高額介護サービス費制度とは、介護保険を利用して支払った自己負担額1割または2割の合計が一定金額を超えたとき、超えた分のお金が戻ってくるという制度です。


自己負担の上限金額は、所得などの諸条件によって異なります


生活保護または年金収入が少ない場合には、高額介護サービス費制度で介護保険サービス利用料の自己負担額が抑えることができます。


親を扶養に入れた場合の介護保険料

基本的に親の扶養と介護保険料の関係は、親の年齢と扶養に入れる自分の年齢によって変わって来ます。

40歳以上65歳未満の方は介護保険の第2号被保険者となり、65歳以上の方は介護保険の第1号被保険者となります。さらに扶養には「税法上の扶養」と「健康保険上の扶養」の2種類があります。


健康保・年金上の扶養」のなかで健康保険での扶養は一定上の年収の範囲で配偶者や両親も扶養家族に入れることができますが、厚生年金の扶養では配偶者だけで、両親についてはその対象から外されています。


税法上の扶養」でも一定の収入内においては自分の扶養にすることで納める市県民税などが安くなります。会社に努めながら年金をもらっていても、扶養家族が増えることにより還付申告(確定申告)で還付金の額も増えてきます。



親の介護保険料は年末調整で控除できるのか

税金の計算は国民一人一人の経済状況に合わせて税額が計算されるようになっています。

例えば、病気や怪我をして医療費が多くかかった人の税金は少なくなるよう医療費控除というものがあります。


同じように、家族の健康保険料や年金保険料を負担した場合は年末調整確定申告の際に国民健康保険や介護保険、国民年金などで申告すると社会保険料控除額が増え所得税や住民税が下がります


親が年金暮らしの場合は、そもそも税金が高くないので、

社会保険料控除があってもなくても税金には関係ない場合などがあります。その場合は、健康保険料を活かしきれていないので働いている自分の年末調整で親の介護保険料を社会保険料控除としてひけば、自分の所得税や住民税がすくなります。

親が認知症の場合の介護保険サービス

親が認知症になってしまったとき、介護保険を使って自宅で受けられるサービスには訪問サービスやデイサービス、ショートステイなどがあります。

サービス利用料金は1割負担になります。介護度が重くなるに連れて介護保険料も高くなりますが、介護度が重くなれば介護保険負担限度額も引き上げられるため、多くのサービスを受けることができます。しかし、限度額を超えた場合は全額自己負担になります。


認知症の場合は、介護度が重くなくても、家族が対応するには難しい問題行動が見られることもあり、介護負担の軽減を図るために、サービス限度額を超えてサービスを受け、全額自己負担金が発生するケースが見られます。


施設に入所する場合は、どの施設であっても、介護サービス費以外に、食費や日常生活費、個室であれば部屋代がかかり、グループホームでは10万円から20万円程が必要で、負担は大きくなります。

親が元気なうちに準備するべき5つのこと

介護が必要になった時に困らないよう、親が元気なうちに準備すべきことを5つご紹介します。

準備をしておくことで、不安の少ない生活を送ることができます。

自治体のサービスを調べておく

先にも述べたように、各自治体では配食サービスや家事支援、通院援助などといった、介護保険サービスとは別に介護に関するサービスを実施しています

どのようなサービスを行っているかを把握し、介護保険サービスと合わせて利用することができると、介護者の介護負担を軽減することができます。


要介護になったときどうしたいか、親子で話し合っておく

要介護になったときに、どのような生活を希望するのかということは個々に異なります。

「迷惑をかけたくないから施設に入所したい」という人や、「住み慣れた自宅で生活を続けたい」という人と様々です。


介護者の介護力も考慮しながら、出来る限り親の希望に近い生活を実現していくことで、より良い介護生活を送ることができます。

介護に使えるお金どの程度あるのかを把握しておく

親の貯金がどの程度あるのか、年金はいくらもらえているのか等、金銭面を把握しておくことはとても重要です。

介護はどれくらいの期間続くかは分かりません。


介護費用に使えるお金を把握しておくことで、介護保険サービスを生活を考慮ながら利用することができます

財産リストや重要書類をまとめておく

どこの銀行に貯金をしているのか、通帳や印鑑、保険証の保管場所など、財産や重要書類に関係する情報の共有を行っておきましょう。

急に親が認知症になってしまったり、亡くなってしまったときに、大事なものの場所が分からない等とならないようにするためには、とても大切なことです。


言いにくい場合には、亡くなった時に伝えたいことを書いた「エンディングノート」を作ってもらうことも1つです。

親の介護も保障する民間の介護保険の保障内容と特徴

年々高齢化率の上昇に伴い、国の財源が追い付かなくなりつつあることから、公的介護保険の保証がどう変わるかが分からなくなってきています。

そのため、民間の介護保険を検討する人が増加しています。


親が介護状態になったときに給付金がでるが給付額は少額

親が介護が必要な状態になった際に、給付金がでる民間の介護保険もあります。

ただし給付を受ける場合には、契約時に両親の年齢が75歳以下などと条件に該当している必要があります

公的介護保険の認定基準に連動している

これまでの民間介護保険は、保険会社が設定した基準で給付金を支払うかどうか判断するというものでした。

現在の民間介護保険では、公的介護保険で要介護3以上を基準として給付金を支払う等と、公的介護保険の認定基準に連動しているものもあります。

待機期間は30日

要介護3以上の認定を受け、状態が軽快しない期間が30日以上継続した場合に給付金が受け取れます。


これまでの民間介護保険では、待期期間が90日以上経過しないと給付金が受け取れないものが多かったので、待期期間が少なく給付金が受け取れるようになりました。

まとめ

いつかは訪れる親の介護、金銭面や介護負担に対する不安を感じている人は多くいます。

少子高齢化に伴い、現在では介護をサポートする介護サービスや自治体の福祉サービスが充実しています。


介護負担・精神的負担を増大させずに、親と介護者が快適な生活を送るためにも、サービス内容を把握しておき、適切なサポートを受けることが大切です


また、いざというときのために、貯金などの出来る限りの準備を心がけましょう。

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