更新日:2017/12/16
あまり聞きなれない、介護保険の特定被保険者って誰のこと?
介護保険で指す特定被保険者とは、40歳未満又は65歳以上の医療保険加入者で、二号被保険者となる被扶養者を持ち、かつ加入している医療保険が制度を設けており、被扶養者の介護保険料を徴収されている者を指します。聞きなれない特定被保険者について詳しくみていきましょう。
目次を使って気になるところから読みましょう!
介護保険の保険料を多く払う事になる特定被保険者
保険者は住民票のある市区町村、介護保険サービスを利用することのできる被保険者は、一号被保険者と二号被保険者に大別されます。
一号被保険者は65歳以上の者で、保険料は三年に一度策定される介護保険事業計画における介護サービスの供給量等に基づき、保険者(市区町村)ごとに基準の保険料が設定され、被保険者の所得状況等に応じて徴収されます。
また、二号被保険者は40歳以上65歳未満の医療保険加入者とされており、国が各医療保険者毎の総額を設定し、それに基づき医療保険者毎に保険料率が設定され、医療保険の健康保険料に上乗せされる形で徴収されます。
ところが、この「40歳以上65歳未満の医療保険加入者」である二号被保険者の中には、ご家族の扶養に入られている方も含まれます。この方たちの保険料は、どのように徴収されているのでしょうか?
通常、医療保険加入者が40歳以上65歳未満の二号被保険者である場合、その被扶養者が二号被保険者となっても、その被扶養者の保険料は、独自で徴収されたり、医療保険加入者の保険料に上乗せされることはありません。
ところが、医療保険加入者が40歳未満であったり、65歳以上だったりする場合で、その被扶養者の中に二号被保険者がいた場合、その二号被保険者である被扶養者の介護保険料を、医療保険者から医療保険加入者が徴収される場合があります。
この、自身の介護保険料ではなく、被扶養者の介護保険料を徴収される医療保険加入者のことを、「特定被保険者」と呼びます。
特定被保険者とは
「40歳未満又は65歳以上の医療保険加入者で、40歳以上65歳未満の被扶養者を持つ者」となります。
具体例から見る介護保険の特定被保険者
例えば、最大の被保険者数を持つ、健康保険組合である「協会けんぽ(全国健康保険協会)」は特定被保険者制度を設けていません。
そう考えると「特定被保険者」は、いわば例外といってもいいケースでしょう。
あまりなじみのない、この「特定被保険者」について具体的な例を挙げてみましょう。
介護保険料徴収対象者の具体例
・33歳の医療保険加入者が63歳の母親を扶養している場合
・67歳の医療保険加入者が62歳の妻を扶養している場合
などで、加入されている医療保険の健康保険組合が特定被保険者制度を設けている場合が、特定被保険者となるケースとして考えられます。健康保険組合が特定被保険者制度を設けているかどうかは、それぞれの健康保険組合によりますが、大手企業の健康保険組合はかなりの割合で、特定被保険者制度を設けていると言われています。
特定被保険者の介護保険料の計算方法
ましてや、40歳になっていないのに、介護保険料が引かれていたり、65歳をすぎてご自身の保険料が引き落とされるだけでなく、被扶養者の分の介護保険料まで増えて引かれていたら、疑問に思うことと思います。
いったいどのくらいの保険料が徴収されるのでしょうか?
特定被保険者の介護保険料は、二号被保険者と同様の計算方法になります。
特定被保険者の介護保険料は、それぞれの医療保険の健康保険組合が、国から通知された介護納付金通知額に基づいて、介護保険料率を決定し、その介護保険料率を標準報酬月額および標準賞与額に乗じて定められます。
保険料は「事業主」と「本人」が50%ずつ負担します。
標準報酬月額で計算する
標準報酬月額とは、給与などの報酬(通勤代や残業代を含み、税金をひかれる前の給与)を区切りのよい幅で区分した額で、50等級に分かれています。
大きな給与の変動がない限り、年一回決定された標準報酬月額がその後一年間の保険料の計算に使用されます。
平均的な数字を出すことはそれぞれに給料の額も違いますので難しいのですが、介護保険料率は、被保険者数の最も多い協会けんぽで(協会けんぽには特定被保険者制度は実際にはありませんが、はっきり保険料率が公表されているので例として使っています。)平成29年で1.65%とされています。
標準賞与額で計算する
標準賞与額とは、賞与の総額から1000円未満を切り捨てた額を指します。ただし標準賞与額は、上限を540万円とされています。
介護保険の特定被保険者の注意点
この具体例に当てはまる方が全員特定被保険者となるわけではありません。
それぞれの加入されている医療保険が、特定被保険者制度を設けている場合に、二号被保険者となった被扶養者の介護保険料を徴収される、特定被保険者となります。
また、特定被保険者自身が40歳未満の場合は、介護保険の被保険者にならない点に注意が必要です。
介護保険料を収めているのに介護保険の対象にならない
一号被保険者:65歳以上の方
二号被保険者:40歳以上65歳未満の医療保険加入者
です。
「40歳未満又は65歳以上の医療保険加入者で、40歳以上65歳未満の被扶養者を持つ者」で同じ「特定被保険者」と呼ばれる人の中でも、65歳以上の方はご自身が一号被保険者となり介護保険の対象になりますが、40歳未満の方は介護保険の対象にはなりません。
つまり、保険料を支払っている本人が、40歳未満であれば、例えば介護保険法に定められた16の特定疾病になられたとしても介護保険サービスを受けられる対象にはならないということです。
まとめ
年々、介護サービスを受ける被保険者が増え、保険制度の財源を確保するために保険料が値上がりし続けています。二号被保険者の保険料の半額を負担する事業主の負担も重くなってきています。
特定被保険者制度は、企業独自の健康保険組合で設けられていることが多い制度です。
多くの人で保険料を負担することで、介護保険制度の安定をはかると必要があり、設けられた制度とされています。
特定被保険者制度は、保険料を支払っている本人が、介護保険の被保険者にはならない場合があるという、少し矛盾を感じる人がおられるかもしれない制度ではありますが、介護保険制度を安定して継続していくためには、必要な制度と考えられます。