介護保険の目的とは何?介護を皆で支える仕組みをご紹介します!

介護保険制度は、高齢者の介護を社会全体で支え合うことを目的としています。介護保険サービスでは、要介護認定基準ごとに手厚い保障が受けられますが、目的の重要な点は、介護を受ける方の自立を促すということです。介護を受ける側も専門家に積極的に意見することが必要です。

介護保険の目的とは

現在の日本では、高齢化が進展し、介護を必要している高齢者の増加および、高齢者介護期間の長期化により、より充実した介護の必要性が増大しています。

一方、高齢者を介護する家族側の構成も変化し、核家族化の進行、介護する家族の高齢化が、高齢者の介護を難しくする要因となっています。


介護保険制度は、この様な日本国内の変化に伴い創設された社会保険制度です。


この制度は、高齢者の介護を社会全体で支え合うことを目的としています。


介護保険とは高齢者の介護をみんなで支える仕組み

介護保険制度は、各市町村が実施主体となりますが、高齢者の介護を社会全体で支え合うことを目的として運営される仕組みとなっています。

その財源の内訳は、税金が50%と保険料が50%となっています。税金の場合は、更に市町村が12.5%、都道府県が12.5%、国が25%となっています。


保険料は40歳以上から徴収され、介護保険を利用する方は「1割負担」または「2割負担」となります。

介護保険の目的となる基本的な理念

介護保険の目的となる基本的な考え方は次の3つとなります。

  • 自立支援を目的とする

介護保険の目的は、単に介護を必要とする高齢者の身の回りの世話をするだけではありません。高齢者の方々の自立を支援することが基本的な理念となります。


  • 利用者本位のサービス

介護保険の充実を目的とする場合、介護する側からの押し付けであってはいけません。介護保険の利用者の選択により、多様な介護主体から保健・医療サービスおよび、福祉サービスを受けることができる仕組みを目指します。


  • 運用は社会保険方式で 

介護保険は、給付とその負担との関係を明確にするため「社会保険方式」を採用します。

介護予防(要介護状態の軽減・悪化防止)

介護保険の目的は、介護を必要とする高齢者が、要支援・要介護状態を悪化させることを防ぎ、状態を軽減させる取り組みを行います。

例えば、介護施設や医療機関でのケア、当然自宅でも介護士等が訪問し、運動能力のケアを目的した介護を実施することになります。

医療との連携

介護を充実させるためには、介護を必要とする高齢者の疾病の治療も踏まえたケアが必要とされます。

入院・転院・退院の各段階で、介護に関するケアを切れ目なく進めるために、医療機関との連携が不可欠です。


在宅の場合には、医療機関と訪問介護施設が連携し、看護師等の在宅医療や、介護士等による身の回りの世話・リハビリテーションの取り組みを円滑に進めることになります。

ケアマネジメントによる総合的、効率的なサービスの提供

ケアマネジメントは、介護が必要な方と、福祉・医療サービス主体とをつなぐ手法を言います。


介護を必要とする利用者やその家族と面接し、それを踏まえつつ利用者の情報を集積し分析、その後に利用者へのサービス計画を立案・実施し、その評価を行いつつ、改善点を探り、新たなプランを立て介護を実施するという手法が行われます。

民間活力の活用

医療機関や既存の介護事業者のみならず、新たな民間業者や、非営利活動法人(NPO)の参入を促し、これらの組織・団体と連携しながら介護に関する施策を実施することになります。

民間の活用を行うことで訪問看護の他、利用者の状態に異常がないかを確認する定期巡回や、認知症患者の徘徊を防ぐ見守り活動等が期待されます。

在宅生活の重視

要支援・要介護状態の悪化を防ぐために、介護関連施設への入所や、医療機関への入院や転院を行うことはやむを得ないことです。

しかし、介護を必要とする利用者としては、住み慣れた家から離れることは抵抗があるものです。


そのため、できるだけ自宅での介護保険給付を受け、状態の改善を目指すことが大切です。この在宅生活の重視は、介護保険の費用を軽減することにもつながります。

介護保険の目指すべき方向性とは

介護保険は、将来の介護を受ける側の更なる増加、一方、介護をする家族の減少・高齢化を踏まえ、介護給付を各利用者に合ったものにする努力をいっそう進める必要があります。

介護保険の目的となる基本的な理念を実現するために、次のような対策が求められています。

高齢者自らが選択する

介護保険では、認知症が進んでいるような場合を除き、介護を必要とする高齢者自身が、どんな介護サービスを求めるのかを決定することになります。

これは介護が、介護を受ける側への「施し」ではなく「権利」へ変化したことを意味します。


そのため、利用者が抵抗なく介護サービスを受けられることが期待できます。


しかし、同時に利用者自身が、ご自分がどんな事ができて、今どんな事ができないのか、を把握する必要があることを意味します。


今後は全て介護関係者にお任せするのではなく、ご自分の限界を確認し、その改善のために積極的な質問・意見を行うことが大切になります。

介護サービスの一元化

介護サービスに関する一元化の整備は進み、平成26年4月から「ケアホーム」が「グループホーム」に一元化されています。


ケアホームは共同生活介護を目的として設けられた施設で、介護給付が適用されていました。障害程度区分が2以上の方を対象に入所が認められており、より介護の必要性が高い方が入所できた施設と言えます。


一方、グループホームは共同生活援助を目的として設けられた施設で、訓練給付が適用されていました。


この一元化で、グループホームを障害支援の区分に関係なく利用できることになり、従来からの日常生活の援助・相談等や、利用者の事情に応じて入浴、排せつ、食事の介護を提供することになりました。


ケアマネジメントの確立

ケアマネジメントに関しては、より一層、利用者に適応した手法が採られなければなりません。

介護の専門家であるケアマネージャーの役割はどんどん重要になっていきますが、ケアマネージャーだけが介護に関して奮闘するわけではありません。

ケアマネージャーの立てるケアプラン(介護計画)の作成に、利用者本人や家族が積極的に意見を述べ、より良いサービスを受けるために協力する必要があります。


社会保険方式の導入

介護保険制度について、その財源の内訳は前述した通りですが、被保険者の公平な介護費用負担を目的とするため、第1号被保険者と第2号被保険者に分けて保険料を納付することになっています。


第1号被保険者

65歳以上の方が対象になります。徴収方法としては、年金から天引きされる「特別徴収」と、各市町村が発行する納入通知書(口座振替)により保険料を納付することになる「普通徴収」があります。


第2号被保険者

40歳から64歳の方が対象になります。事業所に勤務する従業員が加入中の健康保険の場合は、給料に応じて天引きされます。

一方、自営業者のように国民健康保険に加入している方は、納付する保険料に上乗せされます。

介護保険で受けられるサービス

介護保険給付は、利用者各自が認定された要介護認定基準ごとに手厚い保障が受けられます。

これ以上の高齢者の症状の悪化を防ぐ「介護予防サービス」と、基本的な身の回りの世話である「介護サービス」に分類されます。

こちらでは、どのようなサービスが受けられるか大まかに説明します。

施設サービス

施設サービスは入院、入所だけではなく、通院することもあります。


介護予防サービス

介護を必要とする高齢者に対して、心身機能の維持・回復のために主治医が必要と認めた場合、理学療法士や作業療法士等のいる介護老人保健施設・病院・診療所等に通院または入院し、リハビリを受けるサービスとなります。 


高齢者に健康チェックや入浴、レクリエーション等の共通サービスに加え、運動機能向上・栄養改善・口腔機能の向上等の選択的サービスを組み合わせて利用することになります。


介護サービス

介護老人保健施設等に通ったり入所したりして、健康チェックや入浴、レクリエーション等のサービスを受けます。

居宅サービス

居宅サービスでは、ご自分の住み慣れた家での動作訓練や、介護士等からアドバイスを受けられるのが特徴です。


介護予防サービス 

在宅での介護で、心身機能の維持・回復のために主治医が必要と認めた方に、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等がご自宅を訪問して介護予防を目的とするリハビリを行うことになります。


介護サービス

介護老人保健施設等のリハビリスタッフがご自宅に訪問します。住み慣れた自宅での介助や動作訓練、アドバイスが受けられます。

まとめ 介護保険の目的

介護保険は、介護を必要とする高齢者の身の回りの世話だけを目的とするのではなく、高齢者の自立および症状の改善を目指します。


介護を受ける利用者、その家族も介護士等に任せきりになるのではなく、介護の専門家に積極的に意見し、専門家と介護方法を考えていくことが必要になります。

ランキング