更新日:2018/02/28
介護保険は生活保護を受給していても利用可能?適用の仕組みを解説!
我が国では高齢化社会を迎え、介護保険制度が重要となっていると共に、高齢者の生活保護世帯が増加しています。そんな中、生活保護受給者が介護保険料を支払わずに、介護保険制度の介護サービスを利用することができるという現在の仕組みについて、解説します。
目次を使って気になるところから読みましょう!
生活保護受給者に介護保険は適用されるの?
現代において、介護保険はなくてはならない重要な制度です。
また生活保護受給世帯数は、過去最多記録を更新し続けています。
とりわけ生活保護を受給する高齢者世帯の増加は、大きな社会問題となっています。
では、もし生活保護を受ける方に介護が必要となったら…
そのときには、介護保険サービスを使うことができるのでしょうか。
介護保険の利用にはお金がかかります。
被保険者全員が払う介護保険料や、サービス利用時に払う1割~2割の自己負担分。
はたして必要最低限度の生活費しか給付されない生活保護受給者が、それらを支払うことができるのでしょうか。
大丈夫です!
本人の負担なく介護保険サービスを使える仕組みが、きちんと用意されているのです。
生活保護受給者は介護保険料を支払う必要がない
介護保険料は、サービス利用の有無にかかわらずすべての介護保険被保険者が払わなければなリません。
- 65歳以上の第1号被保険者は年金より天引き
- 40~65歳未満の第2号被保険者は公的医療保険料に上乗せ
通常はこういった形で徴収されています。
生活保護を受ける方は、この介護保険料を支払う必要がありません。
ただし同じ免除でも、その仕組みはその方の年齢層により異なります。
「65歳以上」「40~65歳未満」
それぞれの年齢層における免除のシステムについてご説明します。
65歳以上の生活保護受給者は:”第1号被保険者”
もちろん生活保護を受ける方も同様です。
被保険者が介護保険サービスを受けるには、介護保険の申請と認定が必要です。
第1号被保険者は、申請するにあたっての特別な条件はありません。
「介護保険を使いたい」
そう思ったら、いつでも申請することができます。
その後に審査を受けて「要支援1以上」と認定されれば、介護保険サービスを利用することができます。
しかし、被保険者は介護保険料を納めなくてはいけないはず。
生活保護を受ける第1号被保険者の介護保険料は、どう払われているのでしょう。
介護保険料は生活扶助から賄われる
しかし生活保護を受ける第1号被保険者の介護保険料は、保護費の「生活扶助」から賄われているのです。
生活扶助とは本来、衣食・日用品費として給付される、いわゆる生活費。
そこに介護保険料の分だけ加算されるわけです。
介護保険の利用者負担も介護扶助で賄われる
では、生活保護を受ける第1号被保険者についてはどうでしょうか。
生活保護受給者の自己負担分は1割です。
それが介護保険料と同様に生活保護費から支払われることになります。
こちらは保護費の「介護扶助」から賄われます。
※ただし必ず全額免除というわけではなく、支払い能力に応じて本人が一部負担する場合もあります。
生活保護よりも介護保険が優先して適用される
生活保護法における「他法優先の原則」です。
やはり生活保護は最後の砦。
他に使える資源があるなら、そちらから使ってくださいということですね。
このルールにより、
- 生活保護を受ける第1号被保険者の介護保険料は生活扶助から
- 利用料は「介護扶助10割」ではなく「介護保険:介護扶助=9:1」
という形になっているのです。
40歳以上65歳未満の生活保護受給者は:”みなし2号”
結論から言うと、介護保険は使えません。
前出の通り、40~65歳未満の第2号被保険者は、介護保険料を公的医療保険料と一緒に納めています。
しかし、生活保護を受ける方のほとんどは公的医療保険に加入していません。
病院にかかるときには医療保険証を使わず、医療費は生活保護費の「医療扶助」から支払われます。
医療保険料を納めていない方は、介護保険料も納めることができません。
つまり40~65歳未満の生活保護を受ける方は、介護保険の被保険者になれないのです。
(ただし生活保護を受けていても就労先の健康保険に加入している方は、通常通り第2号被保険者となります。)
ではこの方々は、介護が必要になってもサービスを使うことができないのでしょうか。
いいえ、介護保険は使えませんが「介護保険と同じサービス」は使えます。
一体どういうことでしょうか。
介護保険とは違う財布、つまり生活保護費からサービス利用料が支払われるのです。
介護保険被保険者ではないけれど、第2号被保険者とみなして認定審査が行われます。
こういった方々を、介護保険のみなし2号といいます。
通常の被保険者と同じく要支援1以上と認定されれば、介護保険と同じサービスを受けることができます。
誤解されやすいのですが、介護保険サービスのほとんどは「介護保険限定サービス」ではなく「介護保険対応サービス」です。
例えるなら「Tポイントカード使えます」というお店のようなもの。
他にクオカードが使えることもあるでしょうし、もちろん現金だって使えます。
介護保険対応サービスが保護費に対応していることも、大いにあるわけです。
みなし2号の方も全額介護扶助により介護保険と同じサービスを利用できる
みなし2号の方のサービス費用は、生活保護費の介護扶助から支払われます。
受けられるサービスはもちろん、介護保険サービスと同じものです。
サービスを提供する現場の人、例えばデイサービスのスタッフさんなどは「この人はみなし2号」などということは認識していないことがほとんでしょう。
他の利用者さんと何ら変わらぬサービスが提供されます。
介護費用は生活保護費の介護扶助で賄われる
生活保護を受ける第1号被保険者のサービス費用は、その1割のみが介護扶助から賄われるんでしたね。
しかし介護保険を使えないみなし2号の介護サービス費用は、10割すべてが介護扶助から支払われます。
では、みなし2号の方が介護サービスを受けるにはどういった条件があるのでしょうか。
その条件は、第2号被保険者とまったく同じです。
40歳以上65歳未満の方は、以下の特定16疾病該当者のみが申請することができます。
- 末期がん(医者が一般的な基準で回復の見込みがないと判断した段階のがん)
- 関節リマウチ
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- パーキンソン病関連疾患
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
申請後に審査を受けて「要支援・要介護」と認定されれば、介護サービスを利用することができます。
つまり介護保険への加入をしないまま、生活保護のサービスとして介護サービスを利用することになります。
ちなみに介護扶助は、ほとんどの場合で金銭給付ではなく現物給付となります。
本人に現金が渡ることはほぼありません。
月途中で生活保護受給者となった場合の介護サービスの利用者負担は?
料金が1日または1回単位のサービスについてなら、話は簡単です。
保護適用日より前に利用したサービスのみが、通常の1~2割負担となります。
では、料金が月単位とされているサービス(福祉用具貸与・要支援の訪問介護と通所介護など)についてはどうでしょう。
通常は月単位のサービスでも、そのほとんどには日割の料金が設定されています。
利用回数にかかわらず、
(日割料金×その月の保護開始日前日までの日数)×0.1=本人負担額
と計算されます。
※1割負担の場合です。
まとめ
介護保険利用料の自己負担率は、所得により1割→2割→3割と上昇し続けています。
やむなくサービスを減らす利用者も少なくありません。
そんな中で「取りっぱぐれのない」生活保護受給者は、サービス提供事業所にとってはまさに上客といえます。
ここだけの話ですが…
生活保護を受ける方に対して、必要のないサービスを目いっぱい無理に入れさせる事業所もあります。
もっとひどい場合では、貧困者を粗末なアパートに囲いこんで保護費を巻き上げるようなビジネスだって存在するのです。
あなたの保護費を狙う輩がいます。
介護サービスは、他ならぬ利用者自身とそのご家族のためのもの。
「無料で使わせてもらっているんだから、自分たちの希望は言いづらい」
と遠慮して言いなりになってはいけません。
本当に必要なサービスを、自分たちで判断してお受けください。
それが、国全体の保護費節約にもつながるのですから。