介護保険における住宅改修費助成限度額の2種類のリセットについて

介護保険による住宅改修費助成の枠は、原則として1人1回だけ与えられます。しかし、引っ越しをした場合、要介護度が3段階以上上がった場合には、その枠がリセットされるという介護保険上の制度があります。住宅改修費助成限度額のリセットは原則1人1回までとなっています。

介護保険の住宅改修費支給額の上限額がリセットされる条件

40歳以上になると、誰しも介護保険への加入が義務付けられます。

逆に言うと、これからご紹介するのは、少なくとも40歳以上の方に対して、ということになります。


※40歳未満の方は、介護保険の住宅改修費の支給を受けることはできません。


※また、ここでお話ししている「介護保険」とは、公的な(健康保険と一緒に加入するところの)介護保険だとします。


※民間の介護保険に関する記事ではございません。


介護保険に加入したうえで、要支援・要介護の認定を受けるなど、一定の要件を満たせば住宅改修に対して9割または8割の支給を受けることができます。


ただし、その制度は例外などもあり、なかなか複雑です。

したがって、本項では住宅改修費限度額(20万円※要注意!)のリセットについて、ご説明します。

介護保険の住宅改修費は基本20万円を一度のみの支給である



この点が最も誤解を招きやすい部分です。

誤解は大きく分けて、次の2点に分類されます。



  1. 20万円を超える工事をしても、20万円が支給されるわけではない。
  2. 一度に20万円の枠を使い切る必要はない


まず、1については、現実の支給額は次のように計算されます。



  • 20万円×自己負担割合=A
  • 20万円-A=現実の支給額


つまり、1割負担の場合、実際の支給限度額は18万円となります。

一方、2の誤解について。


確かに、20万円の枠は(これからご説明するリセット制度を除き)、1人につき、一生に一度きりですが、「一度にすべてを使い切らないと損になってしまう」というのは誤解です。


最初に、5万円分の枠を使い、次に残りの10万円分の枠を使った場合、まだ5万円分の枠が残っています。


このように、20万円の限度額を数回に分けて使用することは、可能なので、焦って大規模な工事をする必要はありません。


そのうえで、(公的な)介護保険による住宅改修制度におけるリセットについてみていきましょう。


大別すると、次の2つの場合があります。



  1. 引っ越しをした場合
  2. 要介護度が3段階以上上がった場合(3段階リセット)


以下、この順番で見ていきましょう。

引っ越しをした時住宅改修費はリセットされる

混同しないでいただきたいのは、リセットの回数です。

後述の3段階リセットは、1人1回までのところ、こちらでご説明する引っ越しによる住宅改修費のリセットは、制度上は何回でも利用できる、ということです。


ただし、介護保険証の住所も変わる場合にのみリセットされる

しかし、単に引っ越しをするだけではリセットされません。

これはほかの、介護保険上の制度(または公的保険上の制度)にもいえることですが、被保険者の(介護保険被保険者証上の)住所を基準に利用できます。


つまり、住宅改修費の限度額のリセットを受ける場合にも、介護保険被保険者証上の住所が基準になるため、



  • 住所変更の手続きを済ませていない場合や
  • 住所変更の手続きを要しない場合(別荘など)


には、このリセット制度は利用できないことになります。


※なお、A宅(助成を受けて工事済み)からB宅へ引っ越した後、再びA宅に戻ってきた場合などは、リセットできません。

一度、その家に対して助成したのだから、という趣旨です。

要介護度が3以上上がった場合にリセットされる

ここからがやや複雑話になります。

まず、要介護度(要支援度)についてですが、これは別のところではまとめて「介護保険の認定」ということもあります。


介護保険上の制度を利用するには、基本的に要支援・要介護の認定を受ける必要があるのです。


※例外的な制度として、経過的要支援や経過的要介護の制度がありますが、本項では説明の必要がある場合に触れるにとどめます。


要支援は、1と2の全2段階、要介護は1から5の全5段階で、数字が大きくなるほど、支援または介護の必要性が大きくなります。


また、要支援よりも要介護のほうが重いです。

これらを踏まえて、いわゆる「3段階リセット」についてご説明します。


上記の通り、介護保険を利用して住宅改修をする場合において、要介護度が3段階以上上昇した場合には、その枠がリセットされます。


ただし、この「3段階リセット」というのは、なかなか複雑なところがあります。

以下、場合分けをしてみていきましょう。

要支援から要介護3以上に上がるとリセットされる

要支援には、1と2の2段階があります。

要支援2の1段階上が、要介護1ですから、普通に考えると、



  1. 要支援1から要介護2
  2. 要支援2から要介護3
  3. 要支援1から要介護3(4段階上昇?)


この1から3すべてが該当しそうですが、このうち1は2段階しか上昇していないとみなされます。


つまり、要支援1と2は、この住宅改修費3段階リセットのケースにおいては、同じものだとみなされるということです。

要介護度1から要介護度4以上になった場合リセットされる

要介護1から要介護4以上になった場合にはリセットされます。

要介護4は日常生活での介護がおおよそ必要になるため、住宅改修がかなりの確率で必要となります。


緊急の改修になったとしても、リセットされる場合を必ず覚えておき、有効に利用することが望まれるでしょう。

要介護度2から要介護度5に上がった場合リセットされる

これも分かりやすいですね。

要介護度5というのは、上記の通り大変重篤な状態です。


ところで、要介護度は、必ずしも上がる一方ではなく、下がる場合などもあります。

これらも踏まえ、リセットが無効になる場合もありますので、これらについてさらに考察していきましょう。

住宅改修費支給のリセットの注意点

まず、限度額との関係についてです。

※これに関する「誤解」については上述しました。


利用限度額は、20万円ですが、これについていくつかのケースを考えてみます。



  1. 限度額20万円のうち、10万円を利用した後、3段階リセットを行った。
  2. 限度額20万円を一度も利用しないうちに、要介護度が3以上になった。
  3. 限度額20万円をすべて利用したのち、3段階リセットを受けた。
  4. 限度額20万円をすべて使い切った後、3段階リセットを受けたが、その後要介護度が低下し、条件を満たさなくなった。


まず、1についてですが、この場合の新たな限度額は20万円です。

枠が新たに20万円追加されて30万円になるわけではありません。


2については、3段階リセットの起点が問題となります。

考慮の起点は、初めて要支援・要介護の認定を受けたときではありません。

あくまで、はじめて住宅改修を行ったときです。


したがって、これは3段階リセットを行ったとはみなされません。

しかし、要介護度3からさらに3段階上はないため、3段階リセットは利用できません。

※このあたりの言葉の使い方が、ややこしいです。


3については、一見すると一番「お得」に見えます。

結果的に40万円分の枠を利用できるからです。


しかし、住宅改修費の助成を受けられるは、あくまで必要性のある工事に限られます。

これを狙おうと、無理に工事をされるのはお勧めしません。


4については、やや複雑です。

この場合の、考慮されるポイントもやはり、(新たに)工事を行った段階です。


つまり、3段階リセットを利用できる状況になっても、住宅改修を行わず、その後要介護度が低下した場合には、3段階リセットを行えませんし、また行ったともみなされません。


その後、ふたたび条件を満たすようになれば3段階リセットは利用可能です。

リセットは1回まで

例えば、要介護度が1の段階で最初の工事をして助成を受け、その後4にになったときに工事を行って再び助成を受けた場合です。


※介護保険の制度外の住宅改修を行った場合は、当然除きます。

※介護保険の制度内の住宅改修を行ったが、その時助成を受けなかった場合もカウントされません。


その後、要介護度が2に低下し、さらにその後5になった場合などは、もう一度3段階リセットができそうですが、それはできません。


まとめ



いかがだったでしょうか。

3段階リセットに限らず、介護保険の制度は複雑で難解な部分も少なくありません。


しかし、基本的な考え方は意外とシンプルで「介護サービスやそのための補助を必要としている人に対して必要なものを届ける」というものです。

本稿も、いたずらに数字や条件を追い求めるのではなく、そのような趣旨で読まれることを希望します。

この記事の監修者
谷川 昌平
東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

ランキング