(公的)介護保険における住宅改修の限度額を具体的にご紹介します

介護保険の認定を受けると、一定の限度額のもと、原則として1人1回のみ住宅改修費の助成を受けることができます。手続きは、各介護保険の保険者に対して、原則住宅改修前に行う必要があります。限度額は、20万円(実質18万円)となり、対象工事のみに支給されます。

介護保険の住宅改修における支給限度額

介護保険には、公的な介護保険(ふつうは単に「介護保険」というとこちらを指します)と民間の介護保険があります。


ここでは、前者の公的な介護保険について、認定を受け、住宅改修を行おうとした場合の限度額についてご説明します。


要支援または要介護の認定を受け、自宅に手すりなどのバリアフリー設備をつけようとした場合には、実際の住宅改修費の8割または9割相当額が支給されます。

介護保険の住宅改修への支給限度額は20万



介護保険の認定を受け、介護を受ける場合は原則1割負担ですので、住宅改修の場合も、同様であることはイメージしやすいでしょう。

以下、1割負担の方を前提としてお話を進めます。


2割負担になるケースというのは、単身世帯で、年間給与所得が160万円の場合などです。


※2人以上の世帯の場合、世帯収入が346万円を超えると自己負担が2割となります。


ただし、あらゆる工事でも1割負担になる(9割が助成される)わけではなく、支給限度額が設定されています。


すなわち、20万円までの住宅改修であれば、9割(18万円)が助成されますが、それを超える工事をする場合には、実費負担ということになります。


介護保険の住宅改修の支給

介護保険に基づいて住宅改修費が支給される場合については、制限があります。

その制限は、次の4種類です。



  • 人的制限(どういう人を対象にしているのか)
  • 工事の内容による制限(どういう住宅改修を行おうとしているのか)
  • 金額的制限(限度額)
  • 利用回数の制限(原則1回だが例外有り。後述)


対象者は

要支援1から2または要介護1から5の認定を受けていることが必要です。

※まだ認定を受けていない方でも、新規の申請中である場合は、この制度を利用できますが、審査の結果非該当となった場合には、支給されません。


また、後述しますが最初の工事の申請をした際の要支援・要介護等級は、重要になります。


なお、当然ですがこれから住宅改修を行おうとしている住宅の居住者である必要があります。


※入院・入所をしている場合も、介護保険による給付を受けることができますが、あくまでその時も退院・退所が前提となります。



この人的要件に合致したうえで、その住宅改修がその人の身体的状況や住宅の状況を勘案して必要であると認められた場合、各保険者の定める工事形態に該当したならば、支給が行われます。


※どのような工事が具体的に該当するのかは、本稿の趣旨から外れるので詳述は避けます。


自己負担額は

自己負担額は、次の2つの要素によって決定されます。

  1. 介護保険による住宅改修費の支給対象となる工事かどうか。
  2. 限度額(20万円)の範囲内かどうか


2について、20万円までなら原則1割負担(18万円までが支給)となります。

なお、住宅改修費の支給は原則「償還払い」です。


助成金の受け取りの流れは、原則下記のようになります。



  • 保険者(市町村など)に申請※やむを得ない場合は、工事後でも可
  • 工事を行い、工事費を支払う
  • その後、助成金の支給を受ける


なお、受領委任払いという、当初から1割のみを支払い、保険者が残りの割合を業者に直接支払うという形式を選択できる場合があります。


この時は、次のような要件を満たす必要があります。



  • 入院・入所をしていないこと(退院・退所見込みの方も含む)
  • すでに要支援・要介護の認定を受けていること
  • 市などが実施する研修を受講しているなど、保険者の定める業者と契約すること


後者のほうが、実際に用意する必要のあるお金が少なくなるので、必要な方はこちらを検討されるべきでしょう。

介護保険の住宅改修の費用計算

ここでは、介護保険の自己負担割合が1割であるAさんに登場していただき、実際に住宅改修を行った場合における自己負担額や限度額との関係について、ご説明します。

以下、特に断りのない限り以下の条件の上でのお話となります。




  • 介護保険料をすべて支払っている。
  • 入院・入所しておらず、その予定もない。
  • 被保険者証に記載されている住所にしか住宅を持っていない。
  • 新築・増改築ではない。
  • 保険者の定める工事のみを行う。
  • その工事はAさんの身体的状況、住宅の状況にとって必要と認められている。



工事費用が20万だった場合の計算

限度額以内だったケースです。

工事費用が20万円だった場合、その9割が支給されます。

つまり、この場合は、


20万×9割=18万円で、自己負担額は20万-18万=2万円となります。


※ただし、前述のように原則支給は、工事後になり、工事費は一度すべてを実費で支払わなくてはなりません。

工事費用が限度額の20万円を超え場合の計算

限度額を超えた20万円以上の工事の場合の処理は2通り考えられます。

例えば、50万円の工事をした場合を考えてみましょう。


考え方①


  • 工事総額-限度額=自己負担分となる。すなわち
  • 50万円のうち、30万円が自己負担で20万円(限度額)がそのまま支給される。

こちらの考え方のほうが、分かりやすい気はしますが、実は違います。

実際は、次のように考えます。


考え方②


  • 工事総額-限度額=自己負担分その1
  • 限度額×0.1=自己負担分その2
  • 限度額×0.9=支給分

すなわち


  • 50万-20万=30万
  • 20万×0.1=2万
  • 20万×0.9=18万

よって


  • 自己負担分=30万+2万=32万円
  • 支給分=18万円

となります。


「限度額が20万円なのだから、それを超える工事の場合は当然20万支給される」と考えるかもしれませんが、それは誤りなので注意しましょう。

場合により介護保険の住宅改修の支給金を複数回貰える

原則として、介護保険の住宅改修の支給金は一生につき1人1回までです。

しかし、次の2つの場合に関しては例外が認められています。



  • 要介護状態区分が3段階(以上)上昇した場合。
  • 転居した場合。


なお、1人1回までの正確な意味は、「20万円の限度額の枠を使い切ることができるのは」という意味です。


つまり、1回で枠を使い切らず例えば、5万円の枠を利用した場合(つまり4万5千円の支給を受けた場合)には、残りの15万円の枠(つまり13.5万円の支給分)はまだ利用できます。


以下は、この枠の全部または一部を使い切ったうえで、その枠が「リセット」される場合について述べています。


※本稿は、分割工事か一括工事かのどちらがよいのかについては中立の立場をとります。

要介護状態区分が3段階上昇した場合

ここで注意が必要なのは要支援から要介護になった場合です。

要支援は2段階、要介護は全5段階の区分があります。

要支援から要介護に移行した場合は、話が少し複雑なので、再びAさんに登場してもらいましょう。


例)Aさんは当初要支援1だったが、要介護2に上がった。


要支援1<要支援2<要介護1<要介護2の順番に重くなるので、Aさんの等級は3段階重くなったように見えますが、この場合は2等級上がったとしかみなされません。


「リセット」されるためには、要支援1または2からでは要介護3以上に上がっていないといけないのです。

転居した場合

住所変更の手続きが必要です。

あくまで、介護保険による住宅改修費の支給は、被保険者証にある住所のみだということ(別荘などの改修には支給されない)を押さえましょう。


まとめ



いかがだったでしょうか。

超高齢社会を迎え、住宅のバリアフリー化は多くの人々にとって急務になっています。


そのなか、限度額はありつつも介護保険によって住宅改修費のほとんどが支給される制度は、いわば恵みの雨といえるでしょう。


そのうえで、制度の趣旨や内容をよく理解してもらい、必要な方に必要な助成が行き渡ることを祈って、本記事を執筆させていただきました。

この記事の監修者
谷川 昌平
東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、保険相談や選び方のポイントを伝える「ほけんROOM」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

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