入院中における介護保険による住宅改修費の助成申請手続きについて

原則として、介護保険の対象者は在宅していなければならず、入院中の場合は住宅改修費助成の対象外になります。しかし、事情により入院中に住宅改修を行う必要がある場合には、所定の手続きを踏めば、介護保険による助成を受けることができます。

入院中に介護保険で住宅改修をする事はできるのか

(公的)介護保険の加入者は、一定の要件を満たす住宅改修を行う場合には、保険者(市町村)から助成をうけることができます。

ただし、これについては次のような留意点があることに気を付けましょう。



  • 介護保険の加入者しか利用することができない。


本稿は、入院中の介護保険加入者を前提としています。

したがって、仮に入院中で住宅改修の必要があると思われる方であっても、介護保険に加入していない(つまり40歳未満)場合には、助成を受けることはできません。


なお、介護保険料を正しく支払っていない場合には、必要な助成を受けることができない場合がありますので、ご注意ください。



  • 必要性のある住宅改修でなければならない。


これは、次の2つのことを意味します。



  • 工事の内容。
  • 給付を受ける対象者(在宅の原則)。


工事の内容が、保険者(市町村)の定めた類型に当てはまるとともに、その工事がその介護保険被保険者にとって必要性のあるものでなければなりません。

第2の点については、給付を受ける対象者は、住宅改修を行おうとしている住宅に居住していなければなりません。


※所有権者である必要はありませんが、もしそうでない場合には、所有権者の承諾書が別途必要となります。


つまり、入院や入所などをしている場合は、原則としてこの条件を満たさないのです。

※特別養護老人ホームを退去する場合も退院と同じ扱いになりますので、以下では入院中の場合を想定して記述します。

原則入院中に介護保険を使って住宅改修をする事はできない

ただし、これをそのまますべての人に適用すると次のような場合に困ります。

  • 現在は入院・入所しているが、あくまで一時的なものであり、退院・退所のめどは立っている(その後の生活が心配だ)という場合。


また反対に、



  • 現在は在宅しているが、まもなく入院・入所する予定である(あえて工事を行う必要はないが、助成が受けられるのならやってみたい)という場合。


このような、境界事例について詳説することが、本項の目的です。

介護保険で住宅改修はどれくらい保障されるのか



(公的)介護保険の認定を受けた人、条件を満たした場合、住宅改修費用の9割、または8割が助成されます。

※どちらになるかは、負担割合(1割負担か2割負担か)によって異なります。


※「介護保険の認定を受ける」とは、要支援または要介護の認定を受けた場合(例外的に申請中でも可能)です。


※支払方法には、最初全額を支払って後から助成分の支給を受ける償還払いと、当初から1割または2割のみを支払う受領委任払いの2種類があります。

本稿では、償還払いを前提に解説し、必要に応じて受領委任払いとの関係について述べることにします。

原則20万が上限

原則20万円までの工事が助成の対象になります。

※よく誤解されていますが、助成額は工事必要の9割または8割なので、20万円の工事を行った場合は、18万円または16万円となります。


なお、この20万円の枠は、一回で使い切る必要はなく、複数回に分けて利用することができます。


この枠は1人1回まで与えられますが、例外として



  • 引っ越しをした(被保険者証上の住所が変わった)とき。
  • 要介護等級が3以上上がったとき。

これについては、本項のテーマから外れるので詳述はしません。

別稿で述べていますので、そちらをご照覧ください。


ただし介護保険の支給申請を入院中にする事はできる

被保険者在宅の原則からすると、入院中は(介護保険の助成を受けた)住宅改修を行うことはできません。

※もちろん、全額自己負担での工事を行うことは可能です。


しかし、退院の予定がある場合には、例外的に申請を行うことができます。

住宅改修が必要な理由書に退院の予定があることを明記する

介護保険による住宅改修の流れは、おおむね次のようになります。

  1. 事前の打ち合わせなど
  2. 事前申請
  3. 審査
  4. 住宅改修工事
  5. 事後申請(工事完了の届け出)
  6. 審査
  7. 給付


ここで、申請は2と7の2つあることが分かります。

ここで述べている、「入院中に行える申請」というのは2のことです。


なお、今回のように入院中の場合には2の申請をすることができません(やむを得ない場合に当たります)。

したがって、必要な手続きが異なります。


具体的には、「事前承認申請書の提出をしないで着工が必要な理由書」を保険者(市町村)に提出する必要があります。

※2の段階で代わりに行う手続きです。


その際、理由欄には次の事項を記入しましょう。



  • 退院予定日
  • なぜ、住宅に戻る前に介護保険による住宅改修をする必要があるのか(緊急性)


なお、記入はケアマネージャー等に代わりにやってもらうこともできます。

※理由書の作成費用は、全額市が負担するので不要です。

もし在宅に戻れなかった場合は住宅改修の費用はでない旨の了解を得る

入院中の介護保険の対象者に対して、必要事項を説明します。

あくまで、入院中の住宅改修は例外的な措置であり、また退院を前提としているため、もしその予定が変わった場合には、要件を満たさなくなります。

つまり、退院予定がなくなった場合には、



  • 仮に工事を行った場合、全額自己負担になること。
  • 受領委任払いを利用していたときは、市が立て替えた分を返還しなくてはならないこと。


この点について、入院中の方に了解を取っておきます。

工事完了報告書の提出は在宅に戻られた後に行うこと

申請は、2と7の2回行いますが、7における工事完了報告書(工事完了届、住宅改修の完成後の状態が確認できる書類等)の提出は、退院後に行う必要があります。

入院中に住宅改修をする時の注意点

大別して、次の2点に気を付けましょう。

  • 退院しなかった場合は全額自己負担になる
  • 本人が入院中なので、本人にあった取り付けが難しい・できない場合がある


退院しなかった場合全額自己負担になる

これは、償還払いであっても、受領委任払いであっても同様です。

償還払いとは、当初工事費全額を業者に支払った後、保険者(市町村)から20万円を限度枠として、18万円(16万円)までが事後的に支給される制度です。


こちらの制度を利用した場合において、退院できなかった場合には、市から支給されません。


また、受領委任払いとは、保険者(市町村)と受領委任契約を結んでいる業者と契約し、所定の手続きを踏んでいる場合には、当初支払う工事費用は1割(2割)で、残りは保険者(市町村)が支払う、というものです。


しかし、退院できなかった場合には、その市が支払ったお金は、本来支払う必要のないお金だったということですから、返還しなくてはなりません。

本人の動作確認なしで取り付けると取り付けが合わないことがある



入院中であったとしても、住宅改修工事は本人の福祉の向上にあることは変わりありません。

ですが、入院中の場合、必ずしも本人が住宅改修業者と綿密な打ち合わせを行うことができず、結果、手すりやドアノブが本人に合わないといった事態が起こりがちです。


したがって、入院中の本人(病院)とできるかぎり綿密に連絡を取り合うことが重要です。


まとめ

いかがだったでしょうか。

介護保険制度は、なかなか複雑でどのタイミングでどういった手続きを行えばよいのか、どういう書類が必要なのか、といった細部を把握することは容易ではありません。


しかし、そのようなケースに対応するために、ケアマネージャー等がいます。


彼らがうまく活用されつつ、必要としている人に必要な介護サービス・助成が行き渡ることを切に希望いたします。

この記事の監修者
谷川 昌平
東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

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