更新日:2017/10/17
介護保険制度で住宅改修を行う場合の必要手続き・書類について
介護保険による住宅改修手続きは、大きく分けて住宅改修前の手続きと、工事後の支給手続きの2つに分けられます。介護保険の手続き概要は、どのような支払い手続きを行うかによって多少異なり、また特別の事情がある場合には、その旨の手続きが必要です。
目次を使って気になるところから読みましょう!
介護保険を使った住宅改修の手続きの流れ
負担割合は、1割または2割。
これは、合計所得によって決まります。
※40歳未満の方は介護保険に加入していないため、この制度による住宅改修の助成を受けることはできません。
手続きの手順としては、大要次の通りです。
- ケアマネージャーに相談する
- 業者を選ぶ
- 見積書を作成する
- 必要書類を保険者(市町村)に提出する(事前申請)
- 審査が行われる
- 住宅改修工事を実施する
- 工事が完了してから工事代金全額を支払う
- 必要書類を保険者(市町村)に提出する(支給申請)
- 審査が行われる
- 支給を受ける(20万円を超えない範囲における9割または8割相当の金額)
なお、これは入院中など特別の事情がない場合における、償還払いを利用する場合の手続きです。
※償還払いとは、いったん工事代金の全額を支払って、後で支給を受けるというものです。
※受領委任払いを利用する場合には、提出書類が異なり、また7で支払う金額は工事代金の1割または2割となります。
入院中(しかし退院の予定はある)の場合は4の事前申請を行えない、やむを得ない場合に該当します。
しかし、この場合にも退院予定日やその旨の理由を示した理由書を提出しなくてはなりません。
まずは介護保険の被保険者がケアマネージャーに相談する
ケアマネージャーとは、いわゆる介護保険の専門家です。
ケアプランの作成のほか、業者との連絡係を務め、介護保険による住宅改修を行う場合には、その理由書の作成も行ってくれます。
※理由書の作成必要は、保険者(市町村)が負担するので、無料です。
住宅改修の手続きは、このケアマネージャーとの連携のもと行うことになります。
※万が一、自分に担当のケアマネージャーがいない場合には、保険者(市町村)に相談しましょう。
住宅改修の見積もりを施工業者と打ち合わせする
見積書は、あて名が保険者本人で、日付、金額が明記されており、住宅改修事業者の記名、押印があるものでなければなりません。
複数社で見積もりをするべき
- 費用はどれくらいかかるか。
- 施工実績はどのようなものがあるか。
- アフターサービスは充実しているかどうか。
- 保険者(市町村)と受領委任契約をしているかどうか。
とりわけ、保険者(市町村)と受領委任契約をしている業者は、当該市町村が実施している講習を受けることが義務付けられているなど、よりよい施工品質を期待できます。
また、受領委任払いをしたいと思っている場合には、必ずこの業者と契約する必要があります。
※受領委任払いとは、工事完成後に費用の1割または2割のみを支払い、残りの分は保険者(市町村)が支払うというものです。
そのうえで、より安価で適正な工事を受けるために、複数の業者を比較し、よく考えたうえで決定しましょう。
介護保険の保険者に住宅改修の事前申請を行う
上記の通り、やむを得ない場合において、事前申請の手続きを行うことができない場合も、その旨を記した書類を提出しなければなりません。
必要な提出書類とその手続き
必要書類は、下記のとおりです。
- 住宅改修が必要な理由書
- 住宅改修に要する費用の見積書
- 住宅改修の完了予定の状態がわかるもの(写真、施工図、平面図など)住宅改修工事写真添付用紙に住宅改修前の写真(改修箇所ごとの撮影日がわかるもの)
この書類をもとに、介護保険による助成の要件である「住宅改修の必要性」や保険者(市町村)の定める工事類型に該当しているかどうかを審査します。
※したがって、ここで提出した住宅改修の予定を後で無断で変更することはできません。
※やむを得ない理由により、変更する場合には、別途保険者(市町村)に対して、その旨を記した書類を提出などの手順を踏まなくてはなりません。
また住宅改修を行った住宅の所有者が、当該利用者でない場合(借家などの場合)は、
- 住宅の所有者の承諾書
が必要です。
また、受領委任払いを利用する場合には、これらに加えて、
- 介護保険居宅介護(介護予防)住宅改修費の受領委任に関する誓約書
を提出する必要があります。
※これについては、保険者(市町村)により、工事後の申請で提出する場合があります。
保険者が提出された書類等により適当な住宅改修か判断する
- 介護保険の対象者であること(保険料の支払い含む)
- その工事が、その対象者にとって必要なものであること
- その工事が、保険者(市町村)の定める工事類型に該当すること
- その対象者の、介護保険被保険者証上の住居であること
- その対象者の、支給限度額はまだ残っていること
支給限度額のリセットを行う場合には、さらに次の要件を満たしている必要があります。
- その対象者の要介護度が3以上上がっていること。または
- その対象者の被保険者証上の住所が、前の住宅改修工事手続きを行ったところから、変わっていること(引っ越しをしていること)
この、リセット制度については、別稿で述べたので、詳述は避けます。
およそ1週間程度で審査の結果が出るので、それまでは待つことになります。
※この時点で、工事を開始した場合、万が一審査に落ちたときには、全額自己負担となるので気を付けましょう。
住宅改修が完了してから工事代金を支払う
工事の進め方は、業者によって違いますから、ここでは詳述は避けます。
工事が完了したら、そこではじめて工事代金を支払います。
支払う金額は、償還払いなら全額、受領委任払いを利用した場合には1割または2割を支払います。
保険者に住宅改修費の支給申請を行う
※受領委任払いの場合も同様です。
必要な提出書類とその手続き
- 介護保険 居宅介護・介護予防住宅改修費支給申請書
- 住宅改修に要した費用に係る領収証
- 工事費内訳書
- 住宅改修の完了後の状態がわかるもの(写真、施工図、平面図など)
なお、上記の入院中などのやむを得ない場合において、事前申請を省略した場合には、退院後に合わせて、この時点で事前申請に必要な書類を併せて提出する必要があります。
保険者が審査を行う
- 工事が当初審査に通った計画通りに行われたこと
- 工事代金が適正に支払われたこと
- 申請者が、介護保険による助成の要件を満たしていること
なお、事前申請の場合において要支援・要介護の申請をしていた場合には、この時点において要支援・要介護に非該当と判断されたときには、この審査に通ることはできません。
支給決定となった場合に通知され、口座に振り込まれる
支給決定になった場合には、(償還払いを利用した場合には)、通知され、口座に振り込まれます。
受領委任払いの場合には、すでに保険者(市町村)が工事代金の9割または8割相当額を業者に支払っているため、何か新しく振り込まれることはありません。
しかしながら、受領委任払いを利用した場合において、審査に落ちた場合には、全額自己負担となり、結果保険者(市町村)が立て替えた分を、支払う必要が生じます。
まとめ
介護保険の手続きの中でも、住宅改修の手続きは大きなウェイト締めます。
日本も超高齢社会を迎え、要支援・要介護者に向けた住宅改修は急務となっています。
本稿は、介護保険制度の片鱗をご紹介することで、必要な支援が必要な人々に行き渡ることを祈って執筆されました。