更新日:2020/02/18
思ったよりリスクが大きい!社会保険への未加入リスクについて解説
従業員の社会保険加入の負担は、会社にとって無視できない負担となる場合があります。しかし事業所によっては社会保険の加入義務が発生するため、未加入でいることで大きな不利益を被る可能性があるのです。この記事では、社会保険への未加入リスクについて詳しく解説します。
目次を使って気になるところから読みましょう!
- 社会保険への未加入リスクについて解説
- 社会保険への未加入は違法で大きなリスクがある
- 社会保険のメリット・デメリットは?
- 社会保険の加入義務
- 社会保険の未加入罰則
- 注意:建設業の「一人親方」にも加入が求められることも
- 注意:コンビニにも社会保険の加入義務は存在する
- 具体的な社会保険への未加入リスクを紹介
- リスク①:強制加入による過去2年分の保険料請求
- リスク②:通報や告発による法的措置や損害賠償
- リスク③:社会的信用の喪失
- リスク④:人材採用が難しくなる
- リスク⑤:助成金が受けられない
- 参考:社会保険の未加入は調査しやすくなっている
- 参考:年金事務所の定期調査に注意
- 加入したくない!条件を満たさなければ社会保険に加入しなくて良い?
- 社会保険への未加入リスクについてのまとめ
目次
社会保険への未加入リスクについて解説
健康保険や年金保険などの社会保険は、医者にかかったり、老後の安心を得るために重要なものです。
しかし、従業員を雇う側からすると、持ち出しの保険料の負担は大きいため、加入が必要なのはわかっていてもなかなか加入させてあげられないという人もいるのではないでしょうか。
今までは加入が必要ではなかった人でも法改正が進み、未加入の場合にはペナルティを受けることもあります。
この記事では、社会保険の未加入のリスクについて以下の様に解説しています。
- 社会保険に加入しないと違法なのか、どんなリスクがあるのか
- 未加入のリスクの具体例
- 加入したくないときは方法がある?
どうぞ最後までお読みください。
社会保険への未加入は違法で大きなリスクがある
社会保険とは、健康保険や厚生年金保険などのことを指し、法人営業所や5人以上の従業員を雇っている個人事業主は加入することが求められています。
社会保険への加入は時代の変遷とともに拡大されてきています。
一昔前までは加入者は正社員がほとんどで、パートやアルバイトではフルタイムで働いていてもほとんど加入しておらず、個人事業主に雇われる人も未加入が普通であるような状態でした。
しかし現在では法改正が進み、条件を満たせば強制加入となり、従わない場合は違法状態となってしまうのです。
社会保険のメリット・デメリットは?
社会保険は厚生年金保険、健康保険、雇用保険、労災保険、介護保険の5種類があります。
社会保険に加入するメリットは次のようなものがあります。
- 厚生年金に加入することで、将来もらえる年金額が増える
- 国民健康保険に加入するより健保組合の健康保険の方が保険料が安いことがある
- 健康保険からの傷病手当金や出産祝金など、国保にはない手当をもらえる可能性がある
- 会社が倒産したり、働くことが難しくなったときの保障がある
一方のデメリットは次のようなものです。
- 保険料は会社と折半もしくは会社が負担するが、自己負担分を払うと手取りが減る
- 会社の経費が増え、経営が圧迫される
健康保険や厚生年金の保険料の負担は従業員と会社で折半しますが、小規模な会社や個人事業主の場合はかなりの負担となってしまうことがあります。
社会保険の加入義務
社会保障は条件を満たすと加入義務が発生します。主な条件を見ていきましょう。
健康保険、厚生年金保険
社会保険の未加入罰則
社会保険が強制加入となる事業所や法人のことを「強制適用事業所」といいますが、保険加入は義務であり、努力ではありません。
そのため、違反した場合は罰則が設けられており、最悪6か月以下の懲役や、50万円以下の罰金が科せられることになります。
処罰の対象となる行為は以下の様なものです。
- 強制適用事業所であるにも関わらず届け出をしない、虚偽の届け出を出す、通知をしないなど
- 督促期限までに保険料を納付しない
- 保険料に関する帳簿を作成しない
- 調査に対して協力しない、虚偽の報告をするなど
上記は健康保険法の第208条に規定されていますので、気になるかたは一度目を通しておきましょう。
分かっているのに届け出をしなかったり、嘘をつくなどの悪意が見られるときは処罰の対象になります。
注意:建設業の「一人親方」にも加入が求められることも
建設業界では今まで社会保険に加入している割合は、他業界に比べ低いものでした。
「一人親方」として活動し、現場の状況次第で師弟関係が築かれるといった特殊な形態が関係しているのでしょう。
しかし、弟子を持たない「一人親方」であっても、事業所として法人成りしていたり、個人事業主として現場で作業指揮を取っているなどの実態によっては加入義務が発生します。
加入義務があるのにも関わらず未加入であると、契約のときに元請けから社会保険の加入を求められたり、現場への入場が拒否されたりといったデメリットがあります。
業務上の信頼関係にも影響しますので、必要に応じてきちんと加入義務を果たすようにすることが求められています。
注意:コンビニにも社会保険の加入義務は存在する
コンビニオーナーや従業員の長時間労働問題などが問題になっていますが、コンビニ加盟店での社会保険加入率は高くはありません。
加盟店では月の利益から本部への上納金を納めていますが、社会保険は店舗単位での加入となるので、支払いはお店の利益と従業員とで折半する形になります。
そのため、何人も従業員を抱える店舗ではその負担はとても大きいものであり、従業員側も給料が減ってしまうため保険料の負担が難しい状況です。
払えないからといって未加入で許される訳ではなく、条件を満たせば加入義務が発生します。
行政による加入促進の動きが広まる中、コンビニ業界にも何らかの措置を講じることが求められていくのではないでしょうか。
具体的な社会保険への未加入リスクを紹介
強制加入の適用事業所であるにもかかわらず、もし未加入のままであった場合どのようなリスクがあるのでしょうか。
最近は厚生労働省などから未加入の事業所に調査が入ることも多くなり、行政としても加入義務のある状態での放置を見逃すことのないような動きをとるようになっています。
悪意の未加入や報告などに罰則があることは説明しましたが、加入するように促されても未加入だった場合などのリスクについて、具体的に以下で解説していきます。
リスク①:強制加入による過去2年分の保険料請求
加入義務があるにも関わらず未加入だった場合、まずは厚生労働省から指導や加入要請が行われます。
指導などを受けてもそのまま放置した場合、直接訪問や立入検査が実施され、最終的には強制的に加入させられます。
通常指導や要請を受けて加入した場合は、その時点からの保険料を納めれば済むことがほとんどです。
しかし強制加入が実施されると、時効前の過去2年分の保険料までさかのぼって遡求的に請求される恐れがあります。
このとき対象の従業員にも2年分の保険料負担が求められますが、もし既に従業員が退職していて連絡が取れないなどの場合は、全額会社負担になることもあるのです。
2年分の保険料はかなりの金額になりますから、会社の運営にも影響を与える可能性があります。
また、建築業界の事業所や労働者は特に未加入率が多いとされており、未加入の事業所を下請けにすべきではないなど、元請けに対する行政の指導にも力が入れられています。
加入義務が発覚したときは、すみやかに加入を検討した方がよいでしょう。
リスク②:通報や告発による法的措置や損害賠償
健康保険に加入していれば、傷病によって働けなかったときの手当が出たり、出産時に手当や祝金がもらえたりしますし、厚生年金に加入していれば、もしものとき遺族厚生年金がもらえたり、将来貰う事のできる年金額が増えたりします。
もし加入していれば受給する事ができた権利が未加入であったことによって受給できなかったときは、事業主は従業員に不利益を与えたとして訴えられる可能性があります。
従業員からの求めを無視していたなど、悪質な場合は刑事告発されることもあるでしょう。また、不満を持つ元従業員などから、告発や損害賠償請求を提訴されることも往々にしてあります。
加入義務があったのに未加入だったときは敗訴する可能性が高くなりますので、注意しましょう。
リスク③:社会的信用の喪失
社会保険に未加入であったとして行政による立入検査を受けたり、指導を受けたということは、会社としてはブラックだったというイメージが付きます。
強制加入させられたというようなことが広まれば、社会的な信用も喪失してしまうでしょう。
取引先からは従業員にきちんとした待遇を与えることができない会社とみられ、保険料の払い渋りにより、その経営状態までも疑われてしまうかもしれません。
社会的信頼を失うということは、事業を運営していくうえでは大きな痛手となります。自分の従業員を大切にする姿勢は、取引先の対応への姿勢にもつながるものです。
自分や従業員への社会保障を疎かにして仕事も失うことの無いよう、気を付ける必要があります。
リスク④:人材採用が難しくなる
社会保険に加入するということは、従業員にとっての福利厚生の充実にもつながります。
もし社会保険に加入していないと、受け取れるはずの各種手当金や将来の年金が受け取れないなどの具体的な不利益が発生するので、就職先としての候補から避けられる傾向が強くなります。
特に正社員での採用先を探すときなどは、社保完備であることは条件の一つとして当たり前に考えられるのではないでしょうか。
会社は人で成り立っているものです。たくさんの会社の中から選ばれないことには、よい人材を集めることもできません。当たり前のことがきちんとできていない会社には、誰も入りたくないですよね。
仮に社会保険のことを理解せずに就職した場合には、何かあった後に上記のリスク②で説明したような訴訟に発展することもある得るでしょう。
リスク⑤:助成金が受けられない
厚生労働省では事業所に対する助成金の支給などを行っていますが、社会保険に加入していないと、この助成が受けられない場合があります。
特に雇用に関する助成金には、ハローワークでの求人が必須であることがほとんどで、社会保険の強制適用事業所なのに未加入である場合などは、求人を受理してもらう事ができません。
全ての助成金に当てはまるわけではありませんが、義務を履行しない会社には助成金が交付されないのは納得のできる話ではないでしょうか。
加入義務を果たすことで、人材確保や採用活動にも良い影響が出るうえ、助成金の活用にも関わります。
助成金を活用して健全な運営を目指すためにも、社会保険への加入を前向きに検討した方がよいでしょう。
参考:社会保険の未加入は調査しやすくなっている
平成28年からマイナンバー制度が本格的に導入され、順次国税庁などでの運用も開始されています。
現在は年末調整で使用される個人票などにも個人番号の記載が義務化されており、税金や年金番号とのも連動されています。
社会保険とマイナンバーは密接に関与しており、国税庁からの情報提供などによって、以前よりも社会保険の加入状況は調査や確認がしやすい状況にあります。
所得と税金は表裏一体であり、所得の状況が分かれば社会保険に加入が必要な状態かどうかは可視化が容易になります。
マイナンバー制度は行政によって今後もさらに活用の幅が広がっていくことが予想され、税金逃れやブラックな労働条件の発覚などにも利用されていくことでしょう。
参考:年金事務所の定期調査に注意
年金事務所では、数年に一回のペースで従業員の社会保険加入状況に関する調査を行っています。
調査では会社の給与の支払調書や就業規則、源泉徴収簿などの確認が行われ、パートやアルバイトの社会保険の加入漏れや正しい事務処理が行われているかといったことが調べられます。
正しい処理をしている場合には何も恐れることはありませんが、もしこの調査で加入漏れが発覚したときは過去の分までさかのぼって遡求的に保険料の負担が発生する可能性があります。
調査は年々厳しくなっており、年金事務所でも未加入の発覚に力を入れていますので、ごまかすことなく正直に処理をすることが求められます。
悪質なときは処罰も有り得ますので、注意してくださいね。
加入したくない!条件を満たさなければ社会保険に加入しなくて良い?
どうしても保険料を払えない、社会保険に加入したくないときはどうすれば良いのでしょうか。
社会保険の強制適用事務所であれば、加入しないと法令違反になってしまいます。加入条件を満たさなければ未加入による罰則を受けることはありません。
現在法人の形態で一人親方の状態であったり、従業員が5人未満なのであれば、法人から個人事業主に変更する方法が考えられます。
パート従業員一人当たりの時間を減らして雇うようなことも考えられるでしょう。
法人になりたての頃はなかなか保険料を払うのも大変ですが、強制加入に違反するのは得策ではありません。
払うのは大変ですが、従業員のやる気にも影響するところですので、加入未加入の選択は慎重に行うことをおすすめします。
社会保険への未加入リスクについてのまとめ
ここまで社会保険の未加入のリスクについて解説してきましたが、いかがでしたか。
この記事のポイントをまとめると、以下の様になります。
- 社会保険への加入は法令で定められており、加入条件を満たしているのに未加入のままだと違法で、罰則として懲役や罰金を科せられることもある
- 従業員には社会保障の面でメリットが大きいが、事業主には保険料の負担が大きいなどのデメリットもある
- 未加入が発覚すると、過去2年間の保険料を遡求して請求される、従業員からの告発や損害賠償請求の危険性、社会的信用の喪失、新たな人材確保が難しくなる、助成金がもらえないといったリスクがある
- 社会保険の未加入は調査しやすくなってきており、定期的な検査も入るので、未加入を隠すのは難しくなってきている
- どうしても加入したくないときは加入条件を満たさないようにすること
ほけんROOMでは、他にも保険に関する記事が多数掲載されていますので、合わせてお読みください。最後までお読みいただき、ありがとうございました。