パートやバイトにも加入義務が?社会保険の加入条件について解説!

正社員が加入する社会保険ですが、実は加入条件を満たしているならパートやバイト、派遣社員などの雇用形態に関係なく加入しなければならないことをご存知でしょうか?この記事では、社会保険への加入義務が発生する加入条件について、詳しく解説します。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

目次を使って気になるところから読みましょう!

社会保険の加入条件について詳しく解説


社会保険はパートやアルバイトでも条件を満たせば加入しなくてはいけませんが、その条件が何なのかよくわかっていない人も多いと思います。


社会保険に加入すると、健康保険・厚生年金保険など支払わなくてはいけなくなるので、どれくらいの負担になるのか不安ですよね。


社会保険に加入することは得だと言う人もいれば、損だと言う人もいますが、ご自身のライフスタイルによって大きく変わってくるのではないでしょうか。


そこで今回は、社会保険の加入条件について、

  • 社会保険は加入条件を満たしている全ての労働者が加入しなくてはいけない
  • 社会保険の4つの加入条件とは
  • 社会保険に加入できないアルバイトの条件とは
以上のことを解説します。

この記事を読めば、社会保険とはどのような仕組みなのか、加入することのメリットやデメリットが理解できるでしょう。ぜひ、最後までご覧ください。

社会保険は加入条件を満たしている全ての労働者が加入する

社会保険は加入する・しないと労働者が選択することはできません。加入条件を満たせば全ての労働者が加入しなくてはいけないものです。


ここでは、

  • 社会保険とは何か
  • 条件を満たせばパートやアルバイトも加入しなくてはいけない
  • 社会保険に加入するメリットデメリット
以上のことを解説します。

社会保険がどのような制度なのか、あまりよくわからずに加入しているという人も多いと思いますので、今一度確認してみてください。

その他にも、社会保険の非適用業種や法定16業種なども参考として解説します。

そもそも社会保険とは?

社会保険は、具体的に5つから構成されています。

  • 健康保険
  • 厚生年金保険
  • 介護保険
  • 労災保険
  • 雇用保険
国民の生活を保障するための、公的な保険制度のことを言います。

厚生年金保険や雇用保険、労災保険など誰もが一度は耳にしたことがあるものも、実は社会保険の1つだというわけです。

それぞれの内容や制度の目的は全く異なるものではありますが、労働者の生活を保障するという点は同じです。

社会保険は正社員しか加入できないと思っている人もいるようですが、条件を満たせば全ての労働者が加入しなくてはいけません。

条件を満たしているならパートやアルバイトでも加入

社会保険は、加入条件を満たせばパートやアルバイト(掛け持ちも含む)・派遣社員や契約社員でも加入させる義務があります。


短時間労働者や短期雇用であっても、要件を満たせば加入しなくてはいけないのです。


夫の扶養に入っているからといって、社会保険の加入を拒否することはできませんので注意が必要です。


もし、一人暮らしをしている人などで、現在「国民健康保険」に加入している場合は市区町村の役所で脱退の手続きをしてください。


そうしないと、社会保険(健康保険)と国民健康保険の2つの保険料を支払うことになるでしょう。


社会保険の加入条件については、次以降の見出し「社会保険の4つの加入条件とは」で詳しく解説します。

社会保険に加入するメリットとデメリット(社会保険料など)

社会保険に加入するメリットは、

  • 将来もらえる年金が、基礎年金と厚生年金の2つになる(多くなる)
  • 万が一障害者になっても、多くの年金がもらえる
  • 国民健康保険よりも保険料が安くなることがある
  • 医療(健康)保険の給付が充実している

社会保険に加入すれば、保険料の半分は事業主が支払ってくれるため、ご自身で支払うべき保険料の額が少なくなります。

また、傷病手当金や出産手当金・出産育児一時金などが支給されるようになり、万が一のときや妊娠・出産のときも安心です。

反対に、社会保険に加入するデメリットは、
  • 夫の扶養に入っている人は、外れてしまう
  • 毎月のお給料から社会保険料が引かれるため、手取りが減ってしまう
などが挙げられます。

夫の扶養から外れることで、配偶者の家族手当が支給停止になるなど、様々な影響を与える可能性があります。

もし、夫の扶養内でどうしても働きたいのであれば、加入条件に満たないように労働時間を調整するなどの工夫が必要となるでしょう。

注意:事業所が加入条件を満たしていない場合もある

社会保険は加入条件を満たせば加入義務がありますが、そもそも事業所が加入条件を満たしていなければ関係ありません。


加入条件を満たしている事業所は、以下の2つがあります。


強制適用事業所

  • 法人の事業所(株式会社など、事業主のみも含まれる)
  • 従業員が5人以上いる個人の事業所
ただし、サービス業や農林漁業の場合は除きます。

任意適用事業所

  • 従業員の半数以上の同意を得て、事業主が申請して認可を受けた事業所
ただ申請しただけでは適用事業所にはならず、厚生労働大臣の認可を受けなくてはいけません

ここで挙げた適用事業所以外で働いている場合は、社会保険の加入条件を満たしてないということになります。

新しい会社が決まったときに、一般的には社会保険に加入する義務があることが説明される筈ですので、疑問に思ったら担当者に聞いてみるのも良いでしょう。

参考:法定16業種とは

法定16業種とは、

  1. 物の製造や修理、解体などの事業
  2. 土木や建築、その他工作物の建設や修理、解体などの事業
  3. 鉱物の採掘または採取の事業
  4. 電気または動力の発生などの事業
  5. 貨物または旅客の運送の事業
  6. 貨物積み降ろしの事業
  7. 焼却、清掃または屠殺の事業
  8. 物の販売または配給の事業
  9. 金融または保険の事業
  10. 物の保管または賃貸の事業
  11. 媒介周旋の事業
  12. 集金、案内または広告の事業
  13. 教育、研究または調査の事業
  14. 疾病の治療・助産その他医療の事業
  15. 通信または報道の事業
  16. 更生保護事業や社会福祉事業(法に定める)
これらの業種が当てはまります。

この、法定16業種に当てはまる事業所に勤める労働者が5人以上であれば、個人事業主であったとしても社会保険に加入しなくてはいけません。

株式会社を設立していないからといって、社会保険に加入しない人も実際にはいるようですがそれは大きな間違いです。

事業を立ち上げようと考えている人は、社会保険の基本を理解する必要があるでしょう。

参考:社会保険の非適用業種とは

法定16業種に該当しない業種が社会保険の加入条件を満たしていた場合、強制加入ではなく任意となります。


主な業種には、以下が挙げられます。

  • 宗教業
  • 第一次産業(農・林・水産・畜産業)
  • 法務業
  • 接客娯楽業
宗教は教会や神社、法務業は弁護士や税理士などが挙げられます。また、飲食店や旅館なども非適用業種になります。

宗教業や法務業は業種の中でも特殊になるかと思いますが、接客娯楽業はアルバイト・パートでも身近な業種になるため、社会保険に加入したい人は気を付けたほうが良いでしょう。

社会保険の4つの加入条件とは


社会保険はよく、正社員だけが加入するものだと思っている人が多くいますが、パートやアルバイトでも勤務日数など加入条件を満たせば加入しなくてはいけません。


ここでは、社会保険の加入条件について、

  1. 適用事業所の従業員であること
  2. 70歳未満であること
  3. 週の所定労働時間と1ヶ月の所定労働日が一般社員の4分の3であること
  4. 雇用期間や労働時間など、5つの条件すべてに該当すること
以上のことを解説します。

社会保険の加入条件と難しく言ってはいますが、実は普通に勤めていれば簡単にクリアしてしまうものばかりです。

社会保険に加入したい人であれば問題はないでしょうが、逆に加入したくないという人は条件に当てはまらないように気を付けなくてはいけません。

では、早速見ていきましょう。

条件①:適用事業所の従業員であること

社会保険の加入条件の1つに、適用事業所の従業員であることが挙げられます。


先ほど紹介した、法定16業種に当てはまる事業所に勤める労働者か、それ以外の任意適用事業所が当てはまります。


もし、適用事業所に勤めているのに、会社が社会保険の加入手続きを取らなかった場合は法律で罰せられてしまいます。


大手企業など、会社規模が大きいところであればきちんとしているため、このようなケースは稀だと言えますが、個人事業所などは注意が必要です。

条件②:70歳未満(健康保険は75歳未満)であること

社会保険の加入条件は年齢制限がある(70歳未満)ため、もし70歳以上の高齢者を雇った場合は「70歳以上被用者該当届」を提出しなくてはいけません。


また、健康保険は75歳まで適用となるため、あわせて「健康保険被保険者資格取得届」の提出も必要となります。


書類は雇ってから5日以内までに提出しなくてはいけないため、速やかな手続きが求められます。


なお、現在雇っている従業員が70歳になった場合も、同様の手続きが必要となりますが、既に厚生年金に加入しているため「厚生年金保険被保険者資格喪失届」の提出が必要です。


そのまま自動で切り替わることはありませんので、忘れずに手続き・申請することを忘れないでください。

条件③:週の所定労働時間と1ヶ月の所定労働日が一般社員の4分の3であること(4分の3基準)

社会保険の加入条件にある労働時間・労働日数は健康保険法により、4分の3基準となっています。


4分の3基準とは、

  • 1週間の所定労働時間
  • 1ヶ月の所定労働日
一般社員の4分の3以上勤務している人という意味があります。

また、仮に4分の3基準を満たしていない場合も、条件④にある5つの条件を満たせば被保険者となります。5つの条件については、条件④で詳しく紹介します。

パートやアルバイトでも、週5日シフトを入れている人など、一般社員と同じくらい働いている場合は条件を満たす可能性があるということです。

条件④:以下の5つすべてに該当すること

条件③で述べた労働時間・労働日が4分の3未満であっても、

  1. 所定労働時間が週20時間以上であること
  2. 月給が88000円(年106万円)以上であること
  3. 1年以上の雇用期間が見込まれること
  4. 社会保険の対象従業員数が501人以上の事業所に勤務していること
  5. 学生でないこと
上記の条件を全て満たした場合は、被保険者になります。

勤めている会社が501人以上の場合、労働時間・労働日が4分の3未満だからといって油断していると社会保険の加入条件を知らずに満たしてしまう可能性があります。

週3~4のパートやアルバイトでも、1日の労働時間が長い場合は気を付けなくてはいけません。

参考:500人以下の事業所の場合

社会保険の加入条件の1つに、事業所の従業員が501人以上というのがありますが、平成29年4月より、従業員500人以下の事業所(中小企業など)でも社会保険の加入ができるようになりました。


ただし、加入条件が通常とは異なり、1週間あたりの決まった労働時間が20時間以上あるなどの条件に加えて、

  • 会社と従業員の合意があり、企業単位で申請すること
必ず合意がなされていることが重要となります。

ここで言う、会社と従業員の合意とは、
  • 従業員の過半数の同意
  • 従業員の過半数で組織する労働組合の同意
どちらかの要件を満たすことを言います。

また、単に同意を得ただけでは社会保険の加入はできません。代表者は合意を得たら年金機構に申し出をする必要があります。

社会保険の加入は一部の人にとってはデメリットとなる可能性がありますが、一般的にはメリットが多い制度です。

逆に、社会保険に加入できるということで優秀な人材が集まる可能性があり、企業にとってもメリットがあると言えるでしょう。

注意:学生アルバイトの場合

大学生のアルバイトは雇用保険の対象外となりますが、

  • 休学中の場合
  • 卒業見込みであり、卒業後はアルバイト先で就職する場合(予定含む)
  • 夜間や通信制などの学生である場合(定時制)
以上の要件を満たす場合は対象となります。

なお、労災保険健康保険はすべての労働者に加入義務があるため、学生であっても例外ではありません。

また、厚生年金保険は4分の3基準に当てはまると加入が義務付けられるため、年収(130万円)だけではなく労働時間・日数にも気を付けないと、親の扶養から外れる可能性があります。

授業が無い時間を利用して、アルバイトをしている学生は多いのではないでしょうか。社会保険に加入したくない場合は、アルバイト先に事前に相談してシフトを組むと良いでしょう。

注意:週30時間は過去の話

ひと昔前は、週の労働時間が30時間以上の場合が社会保険の加入対象でした。


しかし、現在では社会保険の適用範囲が見直しされており、週の勤務時間が30時間未満でも、その他の要件(条件④)を満たしていれば加入できるようになりました。


従業員が少ない会社だからといって、社会保険に加入しないと思いきや、実は会社内で合意がなされているということもあります。


社会保険に加入するのかどうか、気になる人はちゃんと確認をすることをおすすめします。

社会保険に加入できないアルバイトの条件

ここまでは、社会保険に加入できる条件について説明しました。


ここでは、社会保険に加入できない条件である、

  • 日雇いアルバイト
  • 短期(2ヶ月以内)の期間限定のアルバイト
  • 所在地が一定しない事業所でのアルバイト
  • 季節的業務のアルバイト
  • 臨時的事業の事業所で雇用するアルバイト
以上のアルバイトについて解説します。

アルバイトでも、働き方によっては社会保険の加入対象外になります。

そのことをきちんと理解しておけば、扶養から外れたくない人は正しく仕事を選べるでしょう。

短期や日雇いのアルバイトは、主に学生が長期休みを利用して働くことが多いので、きちんと確認しておくことをおすすめします。

条件①:日雇いアルバイトである場合

日雇いアルバイトは、その名称のとおり1日のみのアルバイトです。この場合、4分の3基準を満たしていないため社会保険の加入対象外となります。


ただし、契約先によっては、働く前に労働契約書を渡されるかもしれません。


よく、労働契約書を見て社会保険に加入しないといけないのだろうかと勘違いする人がいますが、日雇いアルバイトでも労災保険には加入しなくてはいけないのです。


労災保険は労働時間・期間関係なく1日であったとしても、全ての労働者が加入対象となります。


万が一のことを考えましても、労働契約書を渡されたらきちんと締結して下さい。


ただし、日雇いでも1ヶ月を超えて雇用される場合があれば、その日から社会保険の被保険者となります。

条件②:短期(2ヶ月以内)の期間限定バイトである場合

社会保険の加入条件に、「2ヶ月を超える、もしくは超える見込みがある場合」というものがあります。


そのため、2ヶ月以内の短期バイトであることがわかっており、それを超えることが無いのが確実であれば社会保険の加入対象外となります。


ただし、勤務先から当初は2ヶ月であったにもかかわらず、延長を打診された場合は社会保険の加入対象となりますので気を付けましょう。


契約期間が2ヶ月の場合、ちょっとしたことでいつの間にか超えてしまうことも考えられます。


また、短期間であってもダブルワークをしている場合などは、特に気を付けてください。

条件③:所在地が一定しない事業所でのアルバイトである場合

日本全国巡回する演劇家など、働く場所が一定ではないところで働くアルバイトの場合、社会保険の加入対象外となります。


これは、一定期間を過ぎると事業を行う場所が変わるため、社会保険の適用をしようにも事実上困難なのが理由として挙げられます。


他のアルバイトは、条件が変わることで社会保険の加入対象となりますが、所在地が一定しない場合に限っては、いかなる場合も被保険者とはならないのです。

条件④:季節的業務のアルバイトである場合

季節的業務とは、期間を季節に定めて働くアルバイトのことです。


夏休みや冬休みになると、その期間だけアルバイトを募集しているのを求人サイトなどで見かける人もいると思います。


季節的業務は期間でいうと4か月以内となりますが、最初から期間が定められているため社会保険の加入対象外です。


ただし、期間後も継続して雇用が見込まれた場合は、社会保険の加入対象となり当初から被保険者になるため注意が必要です。


社会保険に加入したい人や、季節的業務関係なく長く続けたいと思っている人であれば良い話だと思いますが、そうではない場合はきちんと考えてから返事をしたほうが良いでしょう。

条件⑤:臨時的事業の事業所で雇用するアルバイトである場合

臨時的事業とは美術館や博覧会のように臨時的であり、継続する見込みがない場所で働くアルバイトのことです。期間でいうと6か月以内と定められています。


ただし、季節的業務と同様に期間後も継続して雇用が見込まれた場合は、社会保険の加入対象(当初から)になります。


開催期間が最初から決められているものであれば、そうそう継続して雇用が見込まれることはないと思われます。


しかし、仕事が評価されれば継続の話が無いとも言いきれませんので、その場合は社会保険に加入することを知っておきましょう。

社会保険の加入条件についてのまとめ

社会保険の加入条件やメリット・デメリット、加入できないアルバイトの条件などを解説しましたが、いかがでしたでしょうか。


今回の記事のポイントは、

  • 社会保険は加入条件を満たせば全ての労働者が加入しなくてはいけない
  • 社会保険の加入条件は4つある
  • 社会保険に加入できないアルバイトの条件は5つある
  • 社会保険は現在適用範囲が拡大されており、従業員が500人以下の事業所でも加入できる
以上となります。

社会保険は要件を満たせば、パートやアルバイトでも加入しなくてはいけません。

とくに労働時間・日数の要件は、きちんと計算しておかないとギリギリで超えてしまう可能性もあるため注意が必要です。

求人サイトにあらかじめ「社保完備」などの文言があれば良いですが、そういったものが無かったときのために、社会保険の加入条件についてきちんと知識を身につけておきましょう。

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