【初心者向け】パートが社会保険の加入対象となる条件を詳しく解説

パートやアルバイトでも、一定条件を満たすことで社会保険への加入義務が発生することをご存知でしょうか?この記事では、パートが社会保険の加入対象となる条件について詳しく解説します。社会保険への加入には、手取り額が減るなどの影響がありますので、ぜひチェックしてください。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

パートが社会保険の加入対象となる条件について解説


平成28年10月及び平成29年4月の法改正によって社会保険の適用対象が拡大されました。それに伴って、パートやアルバイトでも一定の条件のもとで社会保険に加入できることとなりました。


しかし一方で、社会保険に加入できるパートやアルバイトの社会保険料負担が増えることとなります。そのため、手放しでは喜べないという方は多いのではないでしょうか。


実は、パートに対する社会保険の適用拡大はデメリットになることばかりではありません。将来もらえる年金額が増えるだけではなく、場合によっては社会保険料の自己負担分が減ることもあるのです。


そこで、この記事ではパートが社会保険の加入対象となる条件について

  1. パートやアルバイトの社会保険への加入条件
  2. パートやアルバイトが社会保険に加入するメリット
  3. 社会保険に加入した場合の損益分岐点
以上のことを中心に解説していきます。

この記事を読んでいただければ、パートやアルバイトの方が社会保険に加入する際の注意点について理解できると思います。ぜひ、最後までご覧ください。

パートやアルバイトの社会保険の加入条件とは

パートやアルバイトの社会保険への加入条件は、法律で決まっています。細かくは後ほど詳述しますが、大きなくくりとしては社会保険への加入が義務付けられている強制適用事業所とそうでない任意適用事業所とに分かれているのです。


強制適用事業所とは、すべての法人の事業所と常時5人以上の従業員を雇用している個人事業所のことであり、任意適用事業所とは強制適用事業所以外の事業所のことです。


任意適用事業所には社会保険への加入義務はありません。ただし、任意適用事業所であっても、従業員の半数以上が社会保険への加入を希望している場合には、事業者が申請することで社会保険に加入することができることとなっています。


なお法人の事業所の場合は雇用している従業員の数は関係なく、たとえ1人であっても社会保険への加入の義務があります。

条件①:週の所定労働時間と月の所定労働日数が一般社員の4分の3以上

パートやアルバイトの社会保険への加入条件としてまずあげられるのは、週の所定労働時間と月の所定労働日数とが一般社員の4分の3以上あることです。この条件に合致する人は社会保険に加入しなければなりません。


なお、ここで言われている労働時間や労働日数はあらかじめ決まっているものではなく、事業所によって異なります。


パートやアルバイトの場合、その事業所の一般社員の労働時間と比較して週の労働時間及び月の労働日数が4分の3以上になる場合に社会保険への加入が義務付けられます。


ただし、この規定はすべての事業所に当然に適用されるものではありません。従業員の人数や労使の合意の有無によっては、4分の3という所定労働時間や所定労働日数に関係なく、次節で解説する条件が満たされることで社会保険の適用が強制される事業所があります。

条件②:以下の5条件をすべて満たす

平成28年10月から、先述の労働時間及び労働日数に関係なく、以下の条件をすべて満たす人はパートやアルバイトであっても社会保険に加入するべきこととなりました。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上であること(この時間には残業時間は含まれない)
  2. 1年以上の雇用期間が見込まれること(雇用期間が1年以内でも、就業規則や雇用契約書などで、契約の更新について記載されていればよしとされる)
  3. 月に88000円(年間106万円)以上の給与があること(この金額には残業代、賞与、通勤手当などは含まない)
  4. 学生ではないこと(夜間、通信制、定時制の学生は対象となる)
  5. 特定適用事業所に勤務していること(従業員数が501名以上の事業所)
なお平成29年4月からは、5の特定適用事業所に加えて任意特定適用事業所も含まれることとなりました。任意特定適用事業所とは、従業員数が500名以下であって、労使で社会保険加入の合意がなされている事業所のことです。

労使双方で社会保険への加入の合意がされていれば、事業所の人数には関係なく社会保険の適用事業所となるのです。

そのため、勤めている会社が従業員数500名以下の事業所であっても、任意特定適用事業所となっていれば条件1の要件を満たさなくても、条件2の要件の1~4を満たしている人は社会保険の適用対象となります。

条件③:年収130万円を超える見込み

配偶者の扶養家族となっている人で、年収130万円を超える見込みがある場合、その人は扶養から外れることとなります。


扶養から外れた場合には、それまで払わなくて済んだ社会保険料を支払う必要があります。具体的には社会保険料が給与から引かれることとなるのです。


なお、ここでいわれている年収はその年の収入金額のことではありません。扶養家族でいる時点及び不要から外れた時点からの年間の見込金額のことを指します。たとえば、扶養家族でいる間に年収が130万円を超える見込みがある時には、扶養から外れなければならないのです。


また、年収には交通費や、住宅手当家族手当といった各種手当が含まれます。

参考:パートやアルバイトへの社会保険の適用拡大について

パートやアルバイトの人たちへの社会保険の適用拡大が進んでいます。条件2で解説した平成28年及び29年の法律改正はそのあらわれの一つです。


そのうえで、適用範囲の拡大がさらに検討されています。一つは社会保険の適用対象条件である月額給与88,000円を68,000円に引き下げるというものです。


今一つは現在、社会保険の適用対象となっている事業所の従業員数の条件を引き下げるというものです。


これらの施策によって、社会保険の適用対象者と適用事業所を増やし、被用者の保障の公平性を確保するとともに老後の補償を厚くしていこうというのが改正の狙いなのです。


しかし、適用対象を拡大することは事業者の社会保険料の負担が増えることとなるため、実施にあたっては丁寧な検討が必要とされています。

パートの社会保険加入はデメリットだけではない

パートやアルバイトの人の社会保険加入については、保険料負担が増えることによるデメリットが強調されがちです。しかし、次のようなメリットがあることにも注目するべきでしょう。
  1. 将来の年金額が増えること
  2. 万が一の場合でも、年金額が多く支給されること
  3. 健康保険の傷病手当、出産手当が支給されること
  4. 社会保険料の自己負担分が減ること
当然のことですが、国民年金によって支給される基礎年金に厚生年金が加算されるため、将来もらうことができる年金額が増加します。

また、社会保険加入期間中に事故や病気によって障害のある状態になった時には、障害厚生年金が障害基礎年金に加算されます。万が一、なくなった場合には遺族に対して遺族基礎年金に遺族厚生年金が加算されて支給されることとなります。

さらに、国民健康保険では対象にならない傷病手当出産手当が支給されます。

その上、社会保険料は事業所が半額を負担するため、収入金額によっては保険料の自己負担分が減ることとなるのです。

パートが社会保険に加入した場合の損益分岐点

パートやアルバイトをしていて、社会保険に加入する場合の損益分岐点は年収によって違ってきます。一つには年収で106万円を超えた場合、いま一つは年収で130万円を超えた場合です。


年収が130万円を超えると社会保険に加入しなければなりません。また、年収が106万円を超えた場合には、先述した条件2の状況によっては社会保険に加入する必要がでてきます。


これら二つのいずれかに当てはまる場合には、社会保険料の負担によって手取り額が少なくなり、所得マイナスになる可能性があるのです。


その場合の損益分岐点はいくらになるのか。ここではその点について解説します。

年収106万円を超える場合の損益分岐点は年収125万円

年収が106万円を超えた場合の損益分岐点となるのは、年収で125万円です。


健康保険9,9%(東京都)、厚生年金9,15%、雇用保険0,3%として計算すると、106万円のの場合、年間の社会保険料は

  • 健康保険 104,940円
  • 厚生年金   96,990円
  • 雇用保険     3,180円
  • 合計   205,110円
となります。(料率については、全国健康保険協会、日本年金機構のサイトより引用)

106万円からこの金額を引くと、残りは854,890円。社会保険料の負担分だけ収入が減少することがわかります。

通常、社会保険料の負担分は14%といわれているので、その料率で計算した場合の負担額は148,000円となります。この数値から考えると、106万円に社会保険料の負担分約20万円を上乗せした125万円を稼がなければ損をしてしまうこととなるのです。

年収130万円を超える場合の損益分岐点は年収150万円

年収が130万円を超えた場合の損益分岐点は年収150万円となります。


健康保険9,9%(東京都)、厚生年金9,15%、雇用保険0,3%として計算すると、106万円の場合、年間の社会保険料は

  • 健康保険 128,700円
  • 厚生年金 118,950円
  • 雇用保険      3,900円
  • 合計   251,550円
となります。(料率については、全国健康保険協会、日本年金機構のサイトより引用)

また、社会保険料の一般的な負担分といわれている14%の料率で計算しても約18万円の負担が生じます。

年収130万円を超える場合には、その金額に約20万円を足した150万円の年収がなければ、損をすることとなるのです。

パートが社会保険の加入対象となる条件についてのまとめ

パートが社会保険の加入対象となる条件について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。


今回のこの記事のポイントは、

  1. 週の所定労働時間と月の所定労働日数に注意
  2. 勤務先が適用事業所であるか否かに注意
  3. 雇用期間、月収などの労働条件に注意
  4. 社会保険に加入した場合のメリットにも注目
  5. 年収による損益分岐点に注意
です。

社会保険料の負担によって家計を支えるパート収入が減るのは、将来のことを考えれば理解はできるという方は多いことでしょう。しかしながら、毎日の生活を考えると問題は切実です。

その対策として、年収の損益分岐点がいくらになるのかを知ることが大切です。その上で自分の働き方を検討することをおすすめします。

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