条件を満たせば強制加入?社会保険の加入義務が発生する条件を解説

一定の条件を満たした場合、社会保険の加入義務が発生することをご存知でしょうか?加入義務が発生する条件は会社だけでなく、パートなどの従業員にも定められているため、注意が必要です。この記事では、社会保険の加入義務が発生する条件について解説します。

社会保険の加入義務が発生する条件について解説


社会保険は加入条件が何度も改正されているため、条件がよくわからないという人も多いのではないでしょうか。


加入するかしないかを選べないので、万が一加入条件を満たしてしまうと困るという人もいると思います。


社会保険は、加入条件を満たすとパートやアルバイトでも加入しなくてはいけないため、なんとなくシフトを組むのではなく、ちゃんと働き方を考えなくてはいけません。


そこで今回、この記事では、

  • 社会保険の加入義務があるのは会社と従業員である
  • 社会保険の加入義務がある事業所の条件とは
  • 社会保険の加入義務がある従業員の条件とは
  • 社会保険に加入するのはいつ?手続きの仕方について
以上のことを解説します。

この記事を読めば、社会保険の加入条件がわかるため、仕事を選ぶときの参考になるでしょう。ぜひ、最後までご覧ください。

参考:「社会保険」は健康保険や雇用保険などの総称

社会保険という言葉は耳にしたことがあっても、それがどういう仕組みなのかよくわからないという人も多いのではないでしょうか。


社会保険とは、下記5つの総称のことを言います。

保険種類内容
健康保険病気やケガで病院に行くとき、3割負担で受診できる
入院や高額治療のとき、一定額以上は掛からないようにする
(限度額認定)などの制度
厚生年金保険高齢者・障碍者になったとき、生活を維持するための制度
20~60歳の国民は全て加入義務がある
介護保険介護が必要になったときに必要となる費用を軽減する制度
40~64歳までの人が義務付けられている
雇用保険失業中の生活を維持(失業手当)や
再就職に役立つ技術力を磨く(職業訓練)ための制度
労災保険通勤・業務災害に見舞われたときの制度

しかし多くの場合は、健康保険と厚生年金保険の2つの保険のことを指す場合に社会保険という言葉が使われます。

社会保険の加入義務があるのは会社と従業員

社会保険の加入義務は、主に3つにわかれています。


ここでは、

  • 会社(強制適用事業所と任意適用事業所)
  • 従業員(適用事業所の役員や正社員など)
  • 短期間労働者
以上の3つについての加入条件について解説します。

また、参考として、もし社会保険に加入しなかった場合はどうなるのか、「社会保険未加入時の違反罰則」についても紹介します。

強制適用事業所と任意適用事業所

まず最初に、加入義務がある会社について見ていきましょう。


社会保険の加入義務がある事業所は、以下の2種類が挙げられます。

事業所加入条件
強制適用事業所株式会社
有限会社
合同会社
一般社団法人
NPO法人
個人事業所
(常に5人以上の従業員がいる)
任意適用事業所従業員の2分の1以上が、社会保険の
加入に同意している

農林水産業やクリーニング、美容師、宿泊業などのサービス業、法律事務所や税理士事務所などについては、常時5人以上の従業員がいても加入義務はありません。


任意適用事業所は、従業員の過半数以上の合意を得て、さらに年金事務所からの許可をもらわなくてはいけません。


社会保険を希望する従業員が多い場合、会社はきちんと検討する必要があります。

少数派の意見もきちんと汲み取らないと、従業員が辞める原因を作ることになるでしょう。

適用事業所の役員や正社員など

次に、加入義務のある従業員について見ていきましょう。

従業員
加入義務補足
常勤役員取締役・相談役・顧問・監査役など
非常勤役員×
出社日数と労働時間が4分の3未満
正社員全員に加入義務がある
パート・アルバイト週の労働時間・労働日数が正社員の4分の3以上か、
週20時間以上勤務の場合、
その他の加入要件を合計で5つ満たしている

(参考・日本年金機構「適用事業所と被保険者」より)


ただし、従業員の年齢に関しては気を付けなくてはいけません。近年、高年齢者の増加に伴い、60歳以上になっても働き続けるケースが増えてきています。

従業員がそのまま働き続け、65歳以上になると社会保険の手続きが必要となるため、ポイントとなる年齢であることを知っておくと良いでしょう。

加入要件を満たした適用事業所の正社員以外の労働者

正社員以外のパートやアルバイト、派遣社員・契約社員の場合でも、

  • 4分の3以上の労働日数・労働時間(一般社員の)がある
4分の3基準に当てはまる場合は、社会保険の被保険者になります。

また、週の労働時間が20時間以上であっても、
  1. 毎月のお給料が88000円以上
  2. 1年以上の雇用が見込まれる
  3. 大学生ではない
  4. 強制適用事業所と任意適用事業所のどちらかに勤めている
以上で挙げた4つの条件を全て満たしている場合は、社会保険の被保険者になります。

パートやアルバイトで働く人の中には、夫の扶養から外れたくない人もいるかもしれません。

求人サイトに「社保完備」などの文言が無ければ、最初に確認することでトラブルを避けることができるでしょう。

参考:社会保険未加入時の違反罰則

社会保険は加入しなくてはいけないものであり、未加入のままであれば年金事務所から加入するように電話や文書が届くでしょう。それでも加入しない場合は、立入検査を行います。


立入検査まで行われると、最大2年間まで遡って保険料を納付しなくてはいけません。また、それ以外にも罰則として、

  • 6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金
これらが課せられる可能性もあり、世間から社会的信用も失う恐れがあるでしょう。

社会保険に加入しなかったことで従業員から訴えられることもあり、もしそのような事態が起これば損害賠償を請求されることもあるかもしれません。

社会保険の加入義務がある事業所の条件


社会保険の加入義務がある事業所の条件には、

  • 強制適用事業所
  • 任意適用事業所
以上の2つがあると先ほど紹介しました。

ここでは、もう少しこの2つの事業所について細かく解説をしたいと思います。

強制適用事業所と任意適用事業所の条件とは一体なんなのか、社会保険の対象外になる業種は何になるのかをきちんと知っておきましょう。

また、参考として「加入義務がある法人の例」や「法定16業種」についても紹介します。

強制適用事業所

強制適用事業所には、以下の条件があります。

  • 法定16業種に当てはまり、常時5人以上が働いている事業所
  • 5トン以上の船舶・30トン以上の漁船
法定16業種に関しては、次の見出し「参考:法定16業種とは」で詳しく解説します。

また、国・地方公共団体でも常時従業員を使用していれば加入しなくてはいけません。

農林水産業や宗教法人、法務業や接客娯楽業などは法定16業種以外に該当するため、強制適用事業所ではありません。

この場合、希望すれば社会保険に加入できる任意加入となります。

任意適用事業所

任意適用事業所は、

  • 事業所の従業員の過半数以上が同意している
  • 事業主が厚生労働省に申請し、許可を受けている
上記で挙げた条件を満たしていれば、社会保険の被保険者となります。(参考・日本年金機構「任意適用申請の手続き」より)

事業主は同意を得たら、事業所を管轄している年金事務所に任意適用同意書などを準備して、速やかに申請してください。

任意適用事業所だからといって、社会保険に加入するかどうかを選ぶことはできません。

もし、仮に反対していたとしても、過半数以上の同意を得て社会保険の加入が決まった場合は絶対に加入しなくてはいけなくなりますので気を付けてください。

社会保険はメリットが多い制度ですが、人によっては加入したくない場合もあると思います。

任意適用事業所は単に過半数以上の同意を得るだけではなく、従業員の気持ちをきちんと汲む必要があるでしょう。

参考:加入義務がある法人の例

社会保険に加入義務がある法人には、

  • 株式会社
  • 有限会社
  • 合同会社
  • 一般社団法人
  • NPO法人
  • 従業員が常時5人以上いる個人事業所
これらが挙げられます。

ただし、宗教法人は仕事ではなく修行であるとしており、加入義務があると言われていますが実際は見送られています。

労働者を常時1人以上雇用する場合、全ての法人に加入義務があるとされていますので例外は無いことを理解しておきましょう。

加入義務があるのにもかかわらず未加入だった場合、社会的な信用を大きく失う可能性もあり、お金よりも大切なものを失うかもしれません。

参考:法定16業種とは

法定16業種とは、以下の業種のことを言います。

  1. 製造・加工・解体業
  2. 土木・建設業
  3. 鉱物の採掘業
  4. 電気事業
  5. 貨物業
  6. 貨物運搬業
  7. 清掃業
  8. 販売業
  9. 金融・保険業
  10. 賃貸業
  11. 媒介周旋業
  12. 広告業
  13. 教育・研究業
  14. 医師・看護師など医療事業
  15. 通信・報道事業
  16. 社会福祉事業・更生保護事業

個人事業主でも、法定16業種に当てはまり、5人以上の従業員がいれば社会保険に加入しなくてはいけません。


パートやアルバイトの場合、法定16業種以外の業種に勤めることのほうが珍しいかもしれません。


なお、飲食店や映画館などの接客娯楽業にあたる場合は、法定16業種以外になります。

社会保険の加入義務がある従業員の条件

社会保険の加入義務は、事業所だけではなく従業員にも条件があります。


ここでは、

  • 経営者・事業主
  • 常勤役員
  • 正社員
  • 契約社員や派遣社員・パートタイマー・アルバイトなど
  • ダブルワーカー
上記で挙げた雇用形態の条件について解説します。

会社に勤めるときに、私たちは正社員になるのか、アルバイト・パートなのかなど選ぶことはできますが、社会保険は加入条件を満たせば絶対に被保険者にならなくてはいけません。

社会保険の条件について、しっかりと理解しておきましょう。

経営者・事業主

経営者や事業主の場合、会社形態によって加入義務が異なるので確認しておきましょう。

会社形態加入義務
株式会社
有限会社
合同会社
法人なので経営者1人の場合でも
加入義務がある
個人事務所
事業主は加入できない
(従業員は別)

法人であれば経営者も被保険者になりますが、事業主は対象外となります。


これは、厚生年金保険が、会社員・会社経営者が加入する必要がある年金制度の表れです。


また個人事務所で、5人以上の従業員が働いている場合は従業員は被保険者になるということに注意しなければなりません。(5人未満の場合は任意となる)


事業主が加入できないからといって、従業員に加入させることを知らないという人もいるのではないでしょうか。


もし未加入のままだと、違反となり罰則が課せられる可能性もあるので気をつけましょう。

常勤役員

常勤役員とは、主に顧問や監査役・相談役のことを言います。社会保険の加入義務があり、仮に報酬額が低くても被保険者になります。


もし、非常勤役員であれば、社会保険の被保険者ではなくなりますが、

  • 出社日数と1日の労働時間がともに正社員の4分の3未満である
上記で挙げた条件を満たさなくてはいけません。

つまり、毎日会社に来ても1日の労働時間を5時間以内にしたり、1日8時間働いたとしても、出勤日数を4分の3未満にしたりする必要があるという訳です。

ほとんど会社に来てないつもりでも、常勤役員の条件を満たせば被保険者となるため注意が必要です。

正社員(試用期間中も)

正社員雇用された場合、条件関係なく全員が社会保険の被保険者にならなくてはいけません。


ここで気を付けなくてはいけないのが、正社員によくある「試用期間」です。会社によって2~6ヶ月程度の使用期間を設けている企業は多いと思います。


たとえ試用期間中でも、社会保険は本採用されている正社員と同じ扱いとなるため、加入させなければ違反となります。


中には試用期間中だからといって、加入させないケースもあるようですが、

  • 追徴金の支払い
  • 延滞金の支払い
未加入が発覚すれば、これらの支払いを課せられる可能性があるでしょう。

もし、正社員採用されたのに、試用期間中だからといって社会保険の加入が無かった場合、しかるべき対策を立てるなどしたほうが良いかもしれません。

契約社員や派遣社員・パートタイマー・アルバイトなど

正社員以外の雇用形態(パート・アルバイト・派遣社員・契約社員など)の場合、週の労働日数・時間が、一般社員の4分の3以上あれば年収関係なく被保険者となります。


もし、4分の3基準に満たなかったとしても、

  1. 週20時間以上の労働時間がある
  2. 月のお給料が88000円以上である
  3. 1年以上の雇用見込みがある
  4. 学生ではない
  5. 強制適用事業所か任意適用事業所で勤務している
上記5つの条件を全て満たせば、短時間労働者でも被保険者となります。

社会保険の加入条件が見直され、加入しやすくなった一方で扶養内で働きたい人にとっては労働日数や時間をちゃんと考えなくてはいけなくなりました。


なお、国籍問わず条件を満たせば、外国人労働者も社会保険に加入しなくてはいけません。加入条件は日本のアルバイト・パートと同じです。


もし、ビザの関係で一時帰国したとしても、社会保険の加入期間が半年以上あれば脱退一時金の請求が可能です。

ダブルワーカー

2つ以上の事業所で働くダブルワーカーは、近年増えつつあると言われています。ダブルワーカーも社会保険の加入条件はパート・アルバイトと同じです。


ただし、気を付けなくてはいけないのが、もし働いている事業所ごとに条件をクリアしてしまった場合です。


仮に2つの会社で働いている人が、それぞれに社会保険の加入条件を満たしてしまったら、それぞれの会社の社会保険の被保険者になってしまいます。


どちらかを選ぶということはできませんので、労働日数や時間など条件を満たさないように工夫しなくてはいけません。


1年以上の雇用が見込まれており、週に20時間・月のお給料が88000円を超えている場合は加入要件を満たしていますので気を付けましょう。

社会保険の加入するのはいつ?手続きを紹介!

社会保険は従業員を採用したあと、原則として5日以内に手続きをしなくてはいけません。


そのときに扶養の手続きなども一緒に行わなくてはいけないため、事業所の速やかな対応が求められます。


社会保険加入に必要な書類は、

  • 健康保険・厚生年金保険新規適用届
  • 被保険者資格取得届
  • 被扶養者異動届(扶養者がいる場合)
  • 保険料口座振替納付申出書
  • 法人の登記謄本など(コピー不可)
これらが必要となり、日本年金機構「新規適用の手続き」よりダウンロードが可能です。

手続き方法は、
  1. 必要書類を日本年金機構に提出
  2. 審査
  3. 会社宛てに保険証などが届く
  4. 従業員に保険証を渡す
主に、このような流れになります。

不備が無ければ、手続きもスムーズに進むため数週間もしないで保険証が届くでしょう。社会保険の手続きは採用以外にも、休職や退職などでも都度申請が必要となります。

社会保険の加入義務が発生する条件についてのまとめ

社会保険の加入義務が発生する、事業所や従業員の条件や加入手続きの方法などを解説しましたが、いかがでしたでしょうか。


今回の記事のポイントは、

  • 社会保険は、健康保険と厚生年金保険の2つの保険のことを指す場合に使われる
  • 社会保険の加入義務があるのは会社従業員
  • 短期間労働者も加入要件を満たせば被保険者となる
  • 社会保険未加入時の違反罰則は、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金 
以上となります。

社会保険は加入要件を満たせば、絶対に加入しなくてはいけません。もちろん、社会保険の加入にはメリット・デメリットがありますので、ご自身の働き方に合わせる必要があるでしょう。

昔のようにアルバイトやパートだからというだけで、社会保険の加入義務が無いわけではありません。

労働時間・日数など要件を満たせば、アルバイトやパート、その他の正社員以外の雇用形態でも社会保険の被保険者になることを覚えておきましょう。

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