更新日:2020/02/16
条件を満たせば強制加入?社会保険の加入義務が発生する条件を解説
一定の条件を満たした場合、社会保険の加入義務が発生することをご存知でしょうか?加入義務が発生する条件は会社だけでなく、パートなどの従業員にも定められているため、注意が必要です。この記事では、社会保険の加入義務が発生する条件について解説します。
目次を使って気になるところから読みましょう!
- 社会保険の加入義務が発生する条件について解説
- 参考:「社会保険」は健康保険や雇用保険などの総称
- 社会保険の加入義務があるのは会社と従業員
- 強制適用事業所と任意適用事業所
- 適用事業所の役員や正社員など
- 加入要件を満たした適用事業所の正社員以外の労働者
- 参考:社会保険未加入時の違反罰則
- 社会保険の加入義務がある事業所の条件
- 強制適用事業所
- 任意適用事業所
- 参考:加入義務がある法人の例
- 参考:法定16業種とは
- 社会保険の加入義務がある従業員の条件
- 経営者・事業主
- 常勤役員
- 正社員(試用期間中も)
- 契約社員や派遣社員・パートタイマー・アルバイトなど
- ダブルワーカー
- 社会保険の加入するのはいつ?手続きを紹介!
- 社会保険の加入義務が発生する条件についてのまとめ
目次
社会保険の加入義務が発生する条件について解説
社会保険は加入条件が何度も改正されているため、条件がよくわからないという人も多いのではないでしょうか。
加入するかしないかを選べないので、万が一加入条件を満たしてしまうと困るという人もいると思います。
社会保険は、加入条件を満たすとパートやアルバイトでも加入しなくてはいけないため、なんとなくシフトを組むのではなく、ちゃんと働き方を考えなくてはいけません。
そこで今回、この記事では、
- 社会保険の加入義務があるのは会社と従業員である
- 社会保険の加入義務がある事業所の条件とは
- 社会保険の加入義務がある従業員の条件とは
- 社会保険に加入するのはいつ?手続きの仕方について
参考:「社会保険」は健康保険や雇用保険などの総称
社会保険という言葉は耳にしたことがあっても、それがどういう仕組みなのかよくわからないという人も多いのではないでしょうか。
社会保険とは、下記5つの総称のことを言います。
保険種類 | 内容 |
---|---|
健康保険 | 病気やケガで病院に行くとき、3割負担で受診できる 入院や高額治療のとき、一定額以上は掛からないようにする (限度額認定)などの制度 |
厚生年金保険 | 高齢者・障碍者になったとき、生活を維持するための制度 20~60歳の国民は全て加入義務がある |
介護保険 | 介護が必要になったときに必要となる費用を軽減する制度 40~64歳までの人が義務付けられている |
雇用保険 | 失業中の生活を維持(失業手当)や 再就職に役立つ技術力を磨く(職業訓練)ための制度 |
労災保険 | 通勤・業務災害に見舞われたときの制度 |
しかし多くの場合は、健康保険と厚生年金保険の2つの保険のことを指す場合に社会保険という言葉が使われます。
社会保険の加入義務があるのは会社と従業員
社会保険の加入義務は、主に3つにわかれています。
ここでは、
- 会社(強制適用事業所と任意適用事業所)
- 従業員(適用事業所の役員や正社員など)
- 短期間労働者
強制適用事業所と任意適用事業所
まず最初に、加入義務がある会社について見ていきましょう。
社会保険の加入義務がある事業所は、以下の2種類が挙げられます。
事業所 | 加入条件 |
---|---|
強制適用事業所 | 株式会社 有限会社 合同会社 一般社団法人 NPO法人 個人事業所 (常に5人以上の従業員がいる) |
任意適用事業所 | 従業員の2分の1以上が、社会保険の 加入に同意している |
農林水産業やクリーニング、美容師、宿泊業などのサービス業、法律事務所や税理士事務所などについては、常時5人以上の従業員がいても加入義務はありません。
任意適用事業所は、従業員の過半数以上の合意を得て、さらに年金事務所からの許可をもらわなくてはいけません。
適用事業所の役員や正社員など
次に、加入義務のある従業員について見ていきましょう。
従業員 | 加入義務 | 補足 |
---|---|---|
常勤役員 | 〇 | 取締役・相談役・顧問・監査役など |
非常勤役員 | × | 出社日数と労働時間が4分の3未満 |
正社員 | 〇 | 全員に加入義務がある |
パート・アルバイト | 〇 | 週の労働時間・労働日数が正社員の4分の3以上か、 週20時間以上勤務の場合、 その他の加入要件を合計で5つ満たしている |
(参考・日本年金機構「適用事業所と被保険者」より)
加入要件を満たした適用事業所の正社員以外の労働者
正社員以外のパートやアルバイト、派遣社員・契約社員の場合でも、
- 4分の3以上の労働日数・労働時間(一般社員の)がある
- 毎月のお給料が88000円以上
- 1年以上の雇用が見込まれる
- 大学生ではない
- 強制適用事業所と任意適用事業所のどちらかに勤めている
参考:社会保険未加入時の違反罰則
社会保険は加入しなくてはいけないものであり、未加入のままであれば年金事務所から加入するように電話や文書が届くでしょう。それでも加入しない場合は、立入検査を行います。
立入検査まで行われると、最大2年間まで遡って保険料を納付しなくてはいけません。また、それ以外にも罰則として、
- 6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金
社会保険の加入義務がある事業所の条件
社会保険の加入義務がある事業所の条件には、
- 強制適用事業所
- 任意適用事業所
強制適用事業所
強制適用事業所には、以下の条件があります。
- 法定16業種に当てはまり、常時5人以上が働いている事業所
- 5トン以上の船舶・30トン以上の漁船
任意適用事業所
任意適用事業所は、
- 事業所の従業員の過半数以上が同意している
- 事業主が厚生労働省に申請し、許可を受けている
参考:加入義務がある法人の例
社会保険に加入義務がある法人には、
- 株式会社
- 有限会社
- 合同会社
- 一般社団法人
- NPO法人
- 従業員が常時5人以上いる個人事業所
参考:法定16業種とは
法定16業種とは、以下の業種のことを言います。
- 製造・加工・解体業
- 土木・建設業
- 鉱物の採掘業
- 電気事業
- 貨物業
- 貨物運搬業
- 清掃業
- 販売業
- 金融・保険業
- 賃貸業
- 媒介周旋業
- 広告業
- 教育・研究業
- 医師・看護師など医療事業
- 通信・報道事業
- 社会福祉事業・更生保護事業
個人事業主でも、法定16業種に当てはまり、5人以上の従業員がいれば社会保険に加入しなくてはいけません。
パートやアルバイトの場合、法定16業種以外の業種に勤めることのほうが珍しいかもしれません。
なお、飲食店や映画館などの接客娯楽業にあたる場合は、法定16業種以外になります。
社会保険の加入義務がある従業員の条件
社会保険の加入義務は、事業所だけではなく従業員にも条件があります。
ここでは、
- 経営者・事業主
- 常勤役員
- 正社員
- 契約社員や派遣社員・パートタイマー・アルバイトなど
- ダブルワーカー
経営者・事業主
経営者や事業主の場合、会社形態によって加入義務が異なるので確認しておきましょう。
会社形態 | 加入義務 |
---|---|
株式会社 有限会社 合同会社 | 法人なので経営者1人の場合でも 加入義務がある |
個人事務所 | 事業主は加入できない (従業員は別) |
法人であれば経営者も被保険者になりますが、事業主は対象外となります。
これは、厚生年金保険が、会社員・会社経営者が加入する必要がある年金制度の表れです。
また個人事務所で、5人以上の従業員が働いている場合は従業員は被保険者になるということに注意しなければなりません。(5人未満の場合は任意となる)
事業主が加入できないからといって、従業員に加入させることを知らないという人もいるのではないでしょうか。
もし未加入のままだと、違反となり罰則が課せられる可能性もあるので気をつけましょう。
常勤役員
常勤役員とは、主に顧問や監査役・相談役のことを言います。社会保険の加入義務があり、仮に報酬額が低くても被保険者になります。
もし、非常勤役員であれば、社会保険の被保険者ではなくなりますが、
- 出社日数と1日の労働時間がともに正社員の4分の3未満である
正社員(試用期間中も)
正社員雇用された場合、条件関係なく全員が社会保険の被保険者にならなくてはいけません。
ここで気を付けなくてはいけないのが、正社員によくある「試用期間」です。会社によって2~6ヶ月程度の使用期間を設けている企業は多いと思います。
たとえ試用期間中でも、社会保険は本採用されている正社員と同じ扱いとなるため、加入させなければ違反となります。
中には試用期間中だからといって、加入させないケースもあるようですが、
- 追徴金の支払い
- 延滞金の支払い
契約社員や派遣社員・パートタイマー・アルバイトなど
正社員以外の雇用形態(パート・アルバイト・派遣社員・契約社員など)の場合、週の労働日数・時間が、一般社員の4分の3以上あれば年収関係なく被保険者となります。
もし、4分の3基準に満たなかったとしても、
- 週20時間以上の労働時間がある
- 月のお給料が88000円以上である
- 1年以上の雇用見込みがある
- 学生ではない
- 強制適用事業所か任意適用事業所で勤務している
なお、国籍問わず条件を満たせば、外国人労働者も社会保険に加入しなくてはいけません。加入条件は日本のアルバイト・パートと同じです。
もし、ビザの関係で一時帰国したとしても、社会保険の加入期間が半年以上あれば脱退一時金の請求が可能です。
ダブルワーカー
2つ以上の事業所で働くダブルワーカーは、近年増えつつあると言われています。ダブルワーカーも社会保険の加入条件はパート・アルバイトと同じです。
ただし、気を付けなくてはいけないのが、もし働いている事業所ごとに条件をクリアしてしまった場合です。
仮に2つの会社で働いている人が、それぞれに社会保険の加入条件を満たしてしまったら、それぞれの会社の社会保険の被保険者になってしまいます。
どちらかを選ぶということはできませんので、労働日数や時間など条件を満たさないように工夫しなくてはいけません。
1年以上の雇用が見込まれており、週に20時間・月のお給料が88000円を超えている場合は加入要件を満たしていますので気を付けましょう。
社会保険の加入するのはいつ?手続きを紹介!
社会保険は従業員を採用したあと、原則として5日以内に手続きをしなくてはいけません。
そのときに扶養の手続きなども一緒に行わなくてはいけないため、事業所の速やかな対応が求められます。
社会保険加入に必要な書類は、
- 健康保険・厚生年金保険新規適用届
- 被保険者資格取得届
- 被扶養者異動届(扶養者がいる場合)
- 保険料口座振替納付申出書
- 法人の登記謄本など(コピー不可)
- 必要書類を日本年金機構に提出
- 審査
- 会社宛てに保険証などが届く
- 従業員に保険証を渡す
社会保険の加入義務が発生する条件についてのまとめ
今回の記事のポイントは、
- 社会保険は、健康保険と厚生年金保険の2つの保険のことを指す場合に使われる
- 社会保険の加入義務があるのは会社と従業員
- 短期間労働者も加入要件を満たせば被保険者となる
- 社会保険未加入時の違反罰則は、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金