外国人の親族も扶養に入れる!国外居住親族の扶養控除について解説

昔に比べて、外国人と結婚をする人や、日本で働く外国人が多くなりました。中には国内外に住む外国人の親族に仕送りをしているという方もいらっしゃると思いますが、そういう場合には扶養に入れて控除を受けることができます。この記事では、外国人の扶養控除適用について、詳しく解説します。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

外国人の扶養控除適用について解説

現代は、家族の形も働き方も多様な時代です。


ご自身や周りの方が、外国人と結婚していたり、日本で働く外国人として暮らしているケースも珍しくないかと思います。


ところで、親や子どもを養っている人が「扶養控除」として税金の優遇措置を受けることができますが、外国人の親族も日本人ように適用が可能ということはご存じでしょうか。


この記事では、

  • 外国人の親族を扶養控除に入れる要件とは
  • 外国人の親族に扶養控除に入れる際に必要な書類
  • 外国人の親族を扶養家族に入れる手続き方法

などについて詳しく解説します。


この記事を読めば外国人の親族を扶養に入れる方法が分かり、税金対策に役立ちます。ぜひ最後までお読みください。

親族であれば外国人でも扶養控除が適用できる

そもそも扶養控除における「扶養親族」とは何かについてきちんと押さえておきましょう。

扶養親族とは、簡単に言うと納税者が稼いだお金で養っている親族のことを指し、扶養していると認められるかどうかは、血縁関係や所得状況などから判断されます。

なお、税制上、配偶者は配偶者控除という別枠があるため扶養親族には含められません。また16歳未満の子どもも、児童手当によってカバーされるため対象外です。

扶養親族としての要件を満たせば、納税者は税金の控除を受けることができ、これは扶養親族が外国人の場合でも同様です。

ただし、親族が日本に住んでいるか海外に住んでいるかによって扱いに違いがあります。

親族が日本に住んでいるなら(別居もOK)

まず、親族が日本に住んでいるのなら、日本人の場合とまったく同じ扱いとなり、外国人であることで特別に必要な手続きなどはありません。


会社員であれば年末調整時に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」という書類を受け取り、記入して提出しましょう。


この際、親族が納税者と同居していなくても大丈夫です。扶養親族は「納税者が稼いだお金で生活している」ことを条件としますが、これは別居で仕送りをしているケースなども含まれます。


ただし、確かに仕送りをしていることとその金額が確認できる書類が必要になる場合もあります。

海外在住の場合は国外居住親族として認められる必要がある

一方、親族が海外に住んでいる場合は「国外居住親族」すなわち「日本国内に住所のない(非居住者)親族」として扶養していることを証明しなければなりません。


この場合には「親族関係書類」と「送金関係書類」が必要です。これらの書類については後ほど詳しく解説します。

扶養する海外在住外国人が在留資格などを持つ必要はない

外国人の扶養親族制度の特徴として、親族の国籍や居住権に関する要件は存在せず、適用の範囲が非常に広いことが挙げられます。


外国人が日本に入国・在留するための資格を「在留資格」と呼びますが(ビザと似ていますが厳密には別物)、扶養親族として認定されるために在留資格は必要ありません。


特に日本で働いている外国人の場合、海外にいる親族の数が多かったり、扶養の範囲があいまいだったりと、実態の把握が困難なのが現状です。


扶養親族の人数が多ければその分控除額も大きくなるため、不正な申告による税金逃れにつながる可能性もあり、一部で問題視されています。

注意:健康保険の扶養には入れられなくなる

外国人親族の扶養控除について解説していますが、これはあくまでも税法の話です。同じように扶養にまつわる概念として健康保険法扶養家族があります。


企業などに勤務する人は健康保険組合などに加入し、それによって医療費の自己負担が軽減されるという仕組みで、扶養家族であれば同様に適用されます。


これまで、海外在住者であっても健康保険法上の扶養家族に含められていましたが、2020年4月からは被扶養者の要件に「国内居住」が追加され、海外在住の外国人は扶養から外れることになりました。


この背景として、日本で働く外国人数の増加があります。国の医療費が膨らむ中で、保険適用の範囲を絞り込む必要があると判断され、海外在住の外国人については今後適用外になったということです。

外国人の扶養控除適用の要件と必要書類

税法上の扶養親族に話を戻し、海外に住んでいる親族を扶養に入れる要件と必要書類について説明していきます。


以前は、扶養親族であることを証明するのに必要な書類はなく、納税者の自己申告が全てという状態でした。


しかし平成27年の税制改正によってこの点が厳格化され、書類の提出が必須となっています。

国外居住親族の要件

国外居住の扶養親族として認定されるには、次の5つの要件を満たしている必要があります。


要件1:その年の12月31日時点で16歳以上であること

16歳未満は、日本国内の居住者であれば児童手当の対象となり、扶養親族には含まれません。


児童手当は海外居住者には適用されませんが、扶養親族の年齢条件には変わりがなくこのようになります。


要件2:扶養者の親族である

配偶者以外の親族で、かつ6親等内の血族および3親等内の姻族が対象です。具体的には、納税者の父母、子ども、祖父母、孫、兄弟姉妹、また配偶者の父母や祖父母も当てはまります。


要件3:納税者と生計を一にしている

税法上の独特の表現ですが、前述の通り「納税者の稼いだお金で共に(別居を含む)生活している」ことを意味します。


要件4:年間の合計所得額が38万円以下(令和2年分以降は48万円以下)

合計所得38万円とは、給与収入であれば103万円以下のことです。

2020年からは、所得税と住民税の基礎控除額が一律10万円引き上げられたため48万円になりますが、収入額の103万円には変わりありません。


要件5:他の控除対象扶養親族になっていない

扶養控除は重複して受けることはできないため、他の納税者の扶養親族となっていないことが必須です。夫婦が共働きの場合には、どちらの扶養に入れるかを選ぶことになります。

必要書類は親族関係証明書と送金証明書

先にも少し触れましたが、以下の2種類の書類を用意する必要があります。


親族関係書類

次の1または2のどちらかが必要です。
  1. 戸籍の附表の写しと、国外居住親族のパスポートの写し
  2. 外国政府または外国の地方公共団体が発行した書類(親族の名前、生年月日、住所の記載があるもの)
日本国籍であれば戸籍謄本を用意することができますが、海外には戸籍制度がないため、出生証明書や婚姻証明書を用いて親子や夫婦であることを証明します。

また、1つの書類で親族であることが示せない場合には、複数の書類を組み合わせるという方法もあります。

送金証明書類

納税者が国外居住親族の生活費や教育費に充てるためとして支払いをしたことを証明するものです。(書類が外国語で書かれている場合には翻訳文も必要)


具体的には「金融機関に提出する送金証明書の控え」や「クレジットカード会社が発行する利用明細書」となり、カード利用明細書については、納税者を契約者とし、親族が家族カードを利用している場合が当てはまります。


送金証明書類は、扶養控除を適用させたい親族一人ごとにそれぞれ必要となります。


例えば両親に仕送りをしている場合でも、同一の口座にすると1人分の扶養とみなされてしまいますので、それぞれ別の口座を用意するのが賢明です。


また、書類は7年間保存することと定められています(会社員であっても、会社ではなく納税者本人の義務)ので、なくさないように注意しましょう。


国税庁のサイトにも「非居住者である親族について扶養控除の適用を受ける方へ」として、日本語版英語版の詳細な記述がありますので、参考にしてみてください。

参考:送金額に下限や上限などは定められていない

納税者が親族の生活をまかなうために送金しているということは大前提ですが、その金額に基準は定められていません。


強いて言えば「常識の範囲内」ということになるでしょうか。送金があまりにも少額の場合には、使途を確認される可能性があります。


なお現金での手渡しは、金額や使途の証明が残らないため、扶養控除の対象としては認められません。扶養控除を受けるためには、必ず送金確認書類が残るように注意してください。

外国人の扶養控除適用に必要となる手続き

国外居住家族の扶養控除を申請するには以下の2つの方法があります。

  • 年末調整での手続き
  • 確定申告での手続き
ぜひご覧ください。

年末調整で手続きする

納税者が企業などに勤務しているのであれば、年末になると年末調整書類が渡されますね。扶養控除を申請する場合には、そのうち「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を用いることになります。

国外居住親族であれば「非居住者である親族」に〇を付け、「生計を一にする事実」の欄に、年間に送金した額の合計を記入します。

そして親族関係証明書と送金証明書を添付して提出すればOKです。

なおこの「非居住者」には、日本人であっても、例えば1年以上継続して留学中の子どもなども含まれます。

確定申告で手続きする

自営業の方などであれば、確定申告で手続きを行います。


確定申告は、毎年2月中旬から3月中旬の間に、確定申告書と添付書類を税務署窓口もしくは郵送で提出するという手続きです。


書き方に迷った場合など、あいまいなまま提出して後から修正になってしまっては二度手間なので、不明点は窓口で尋ねてみるのがよいでしょう。


確定申告には電子申告システム「e-Tax」があり、オンラインでの申請という方法も存在します。


ただ、外国人の扶養控除申請の場合には添付書類を提出しなければならないため、利用するとしても入力だけを行い、印刷して提出とするのがおすすめです。


なお、確定申告書を提出する税務署は、基本的に自分の住んでいる場所を管轄する税務署になります。


管轄の税務署がどこか分からない場合には、国税庁のサイトで郵便番号などから探すことも可能です。

外国人の扶養控除適用についてのまとめ

外国人の扶養控除適用について見てきましたが、いかがでしたでしょうか。


今回の記事のポイントは

  • 親族が外国人でも、要件に当てはまると認められれば扶養控除が適用できる
  • 親族が日本国内居住であれば、扶養控除手続きは日本人の場合と同じ
  • 親族が海外居住の場合は、親族関係証明書と送金証明書をもって「国外居住親族」と認められる必要がある
  • 扶養控除は、年末調整または確定申告で申請する
でした。

扶養控除は、自らの収入で生活することが難しい親族がいる場合、その生活の面倒をみることになる納税者の負担を軽くするための制度です。

親族が外国人であっても生活を支えていることに変わりはありません。

確かに親族であることや、仕送りしていることの証明をしなくてはならないため、書類の用意は多少大変かもしれませんが、しっかりと申請し控除を受けられるようにしたいですね。

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