更新日:2020/02/15
別居でも条件を満たせばOK!別居の親を扶養控除に入れる方法を解説
何かあると困るから、年をとった両親を扶養に入れておきたい……。そうしたいのは山々でも、実際に同居できるとは限りません。しかし条件さえ満たせば、別居していても親を扶養に入れ、控除を受けることができます。この記事では、別居の親を扶養に入れ、控除を受ける方法などを解説します。
目次を使って気になるところから読みましょう!
- 別居の親と扶養控除について解説
- 別居していても両親を扶養に入れることは可能
- 税制上の扶養と健康保険上の扶養の違いを理解しよう
- 健康保険上の扶養の方が条件が若干厳しい
- 注意:扶養控除の控除額は同居の方が多い
- 別居の親を扶養に入れることができる条件
- 扶養控除の条件(税制上の扶養)
- 被扶養者の条件(健康保険上の扶養)
- 別居の親を扶養に入れるメリットとデメリット
- メリット:税金や保険料を節約できる
- デメリット:75歳以上(後期高齢者)は負担が増える可能性がある
- 参考:扶養に入れるなら12月中がベスト
- 別居の親を扶養に入れる方法
- 親を扶養控除に入れる方法(税制上の扶養)
- 親を被扶養者にする方法(健康保険上の扶養)
- 別居の親と扶養控除についてのまとめ
目次
別居の親と扶養控除について解説
扶養控除とは各世帯の収入を担っている世帯主が、その収入によって生活を支えている家族を「扶養」関係とすることにより、節税することができる制度です。
しかし、扶養関係にあるのが必ずしも同居関係にある家族とは限らないので、別居していても子供が高齢の親を扶養家族にする場合は適用されないのか?と思われる方も多いでしょう。
そこで今回は、
- 別居している親を扶養に入れることは可能か?
- 別居している親を扶養に入れるための条件とは?
- 別居している親を扶養に入れるメリットとデメリットは?
- 実際に別居している親を扶養に入れる方法とは?
別居していても両親を扶養に入れることは可能
誰かを養う人がいれば、必ず養われる側の人もいます。
養っている側は養われる側を法的に「扶養に入れる」ことにより、どちらも様々なメリットを受けられます。
誰もがイメージしやすいのは、同じ家に住んでおり、収入源となっている夫が妻や子供を養って(扶養して)いるという関係性でしょう。
現代では様々な働き方が可能となったため、夫だけでなく妻や子供の収入が主な収入源となっている場合もあります。
では、扶養したい親が同居しておらず別居している場合は、どうなるのでしょうか。結論から言えば、たとえ別居していても子供が両親を扶養に入れることは可能です。
それが可能な根拠と理由を、次から取り上げていきます。
税制上の扶養と健康保険上の扶養の違いを理解しよう
まず扶養には、2種類あるということを覚えておきましょう。
いわゆる法律上の「扶養」には、
- 税制上の扶養
- 社会保険(健康保険)上の扶養
健康保険上の扶養の方が条件が若干厳しい
税制上の扶養および社会保険上の扶養それぞれは、手続きをすれば誰もが入れるわけではなく、実際にはいくつかの条件があります。
この条件に関しては後ほど詳しく説明しますが、端的に言えば税制上の扶養および社会保険上の扶養、どちらであっても別居の親を扶養に入れることは可能です。
注意:扶養控除の控除額は同居の方が多い
基本的に扶養控除の対象となる親族がいる場合、扶養における控除額は38万円となります。
税金を計算するための年収額から、満額で38万円を差し引くことができるのです。
たとえ扶養している親が別居していても同じ金額が控除されますが、実は同居しているかしないかで、控除額が変わります。
どのように変わるかというと、
- 親の年齢が70歳以上であり、同居している:控除額は58万円
- 親の年齢が70差以上であり、同居していない:控除額は48万円
このように扶養対象であり70歳以上の親族が同居していると、控除額が通常より20万円もアップします。
70歳以上の「老人扶養親族」と分類される親族がいる方は、この点をよく覚えておきましょう。
別居の親を扶養に入れることができる条件
扶養関係とは、必ずしも同居している必要はなく、定義上の「扶養」でも良いという点を取り上げてきました。
ここで根本に立ち返ってみると、そもそも扶養に入る側は「扶養されるそれなりの理由」がなければならず、その主な基準が所得(年収)額です。
この所得額によって扶養に入れるか入れないかが決まるのですが、実際に別居している親を扶養に入れる場合、扶養される側の親にはどのような条件が求められているのでしょうか。
その条件について取り上げていきます。
扶養控除の条件(税制上の扶養)
まずは「税制上の扶養」における条件について考えてみましょう。
この場合は扶養する相手が、
- 1年間の所得額が38万円(給与のみで103万円)以下であること
- 納税者(収入源)と生計を一にしていること
- 親が納税者の専業従事者ではないこと
被扶養者の条件(健康保険上の扶養)
- 1年間の所得が130万円以下であること
- 親の収入が扶養者からの仕送り額未満であること
別居の親を扶養に入れるメリットとデメリット
ここまでは、別居している親でも扶養に入れることは可能であるという点を取り上げてきました。
では、すでに親に対して仕送りをしている方が、なぜわざわざ「扶養」であることを税制上の手続きによって証明する必要があるのでしょうか。
次から、別居の親を扶養に入れるメリットについて取り上げていきます。
メリット:税金や保険料を節約できる
別居している親を扶養に入れる1つ目のメリットは、節税になるという点です。
親族の生計を支えており「扶養」している場合、その扶養している親族の人数に応じて、自分の収入額から控除ができます。
その控除額は以下の通りです。
区分 | 控除額 |
---|---|
扶養親族(16歳~) | 38万円 |
特定扶養親族(19~23歳未満) | 63万円 |
老人扶養親族(70歳以上・同居) | 58万円 |
老人扶養親族(70歳以上・非同居) | 48万円 |
これは一人あたりの控除額ですから、親2人に仕送りを贈っている場合、人数分の控除を受けることができます。結果的に、扶養をしている側は所得税や住民税において大幅な節税が可能なのです。
また、この「税制上の扶養」に関しては親が75歳以上という高齢であっても、節税のメリットを受け続けることができます。
デメリット:75歳以上(後期高齢者)は負担が増える可能性がある
親が別居していても48万円の所得控除を受けられる扶養制度ですが、実は注意点もあります。
それは、親の年齢が75歳以上になると、社会保険上の扶養からは抜けて「後期高齢者医療制度」への加入が必要となるからです。
親が扶養から抜けるとなると、今まで納税者が支払っていた保険料を、親が自分自身で支払わなければならなくなります。
また、健康保険から抜けるので医療費控除(家族の医療費を合算して控除対象にできる)の対象外にもなります。
参考:扶養に入れるなら12月中がベスト
年末にはどの会社も年末調整を行いますが、その時期と扶養へ加入する時期が被った場合、どうなるのでしょうか。
扶養に関しては、たとえ12月に加入したとしても1カ月分の負担で次期1年分の控除を受けることができますので、税制上はデメリットはありません。
ただし、扶養人数が増えたのが年末調整後である場合は、増えた扶養分が含まれていないため、年末調整をやり直す必要があるかもしれません。
年末調整のやり直しを行えなかった場合は、還付を受けるために納税者本人が2〜3月に確定申告を行う必要があります。
別居の親を扶養に入れる方法
税制上のメリットが大きい「親を扶養に入れる」という方法ですが、ただ仕送りをしているという事実だけでは扶養には入っていません。
きちんと所定の手続きを行うことで、税制上も親が扶養に入っていることになります。では、その手続きはどのように行うのでしょうか。
税制上の扶養および社会保険上の扶養、それぞれの手続き方法について最後に紹介していきます。
親を扶養控除に入れる方法(税制上の扶養)
まず、所得税や住民税でメリットがある「税制上の扶養」に関しては、どのような手続きが必要なのでしょうか。
まず必要な書類として挙げられるのが、
- 扶養控除等申告書
- 扶養事情理由書
- 所得証明書
- 振り込み通知書や現金書留等、仕送り額が証明できる書類
- (年金受給者であれば)受給額が分かる書類
また、仕送りの証明は「直接〇〇円を手渡した」という口頭では全く証明できず、必ず上記に挙げた「証明できる書類(またはデータ)」が必要となる、という点も覚えておきましょう。
親を被扶養者にする方法(健康保険上の扶養)
次は、「社会保険(健康保険)上の扶養」に関する手続き方法です。
このとき必要になる書類は、
- 被扶養者(異動)届
- 被扶養者の住民票
- 被扶養者の戸籍謄本
- 振り込み通知書や現金書留等、仕送り額が証明できる書類
別居の親と扶養控除についてのまとめ
今回は「別居している親を扶養に入れる」をテーマとして様々な点を取り上げてきましたが、いかがでしたでしょうか。
この記事のポイントは、
- 別居している親でも扶養に入れることは可能である
- 親が扶養に入るためには定期的な送金や所得が一定額を下回っていることが必要
- 親を扶養に入れると節税になるが、75歳以上になると親側の負担が増える
- 税制上の扶養・社会保険上の扶養どちらも必要書類を会社に提出する必要がある