失業保険には税金がかかる?失業保険と税金や扶養の関係などを解説

失業中にある程度まとまった金額を支給してくれる失業保険ですが、実は税金がかからないことをご存じでしょうか?税金で消える心配がないとはいえ、手放しに喜べる訳ではありません。この記事では、失業保険と税金についての説明をはじめ、失業保険と扶養との注意すべき関係などについても解説します。

失業保険から税金や扶養の関係などについて解説

この記事をご覧のあなたは、失業保険に税金がかかるのかどうか気になっておられることでしょう。


失業保険は何らかの理由で会社を退職することになった人への救済措置であり、失業者にとっては収入がない間生活を支えるためのお金ですから、欠かせない仕組みです。


しかし、失業保険も貰いすぎると所得税が増えて、税金負担が増えるのではないかと考えている方も少なくありません。


そこでこの記事では、

  • 失業保険は課税?それとも非課税?
  • 扶養に入っていても失業保険は受け取れる?
  • 他にも非課税となる手当はある?
主にこれらの点について取り上げていきます。

最後までお読みいただければ、これから退職・転職をするという方にも失業保険を受け取ることに関しての不安を解消していただけるでしょう。

ぜひ最後までご覧ください。

失業保険に税金はかからない(非課税)、確定申告は不要

仕事をして収入を得たときに発生する「所得税」という税金は、その収入額(年収)によって変わります。


当然ながら給料を多く受け取っている人ほど多くの所得税を払う必要があり、それを『「課税所得」が高い』と表現できます。


多くの給料を得るだけでたくさん税金を支払わなければならないことに不満を感じる方もおられるかもしれませんが、実際は純粋な「手取り額」を指すわけではありません。


その一つが「失業保険」であり、このお金は非課税なので課税所得には含まれず、そのため所得税・住民税といった税金が課税されません。


あくまで失業中の生活を支えるためのお金なので、収入には含まれず、基本的に確定申告も不要となります。


ただし、

  • 年度の途中で退職している
  • 年度中に再就職する見込みがない
  • 再就職したが年末調整に失業期間中の金額が含まれていない
このような場合は払いすぎた税金の還付を受けられる可能性があるため、確定申告を行った方が得策な場合もあります。

失業保険と扶養に関する注意点

現代では、夫・妻に関わらず様々な形態で働いている家族が増えました。


しかし、現状では夫が家計における主収入源となり、妻が主婦・またはパート業などを行いながら夫の扶養に入っている、という方がまだ多いです。


実際、扶養に入ることによって被扶養者の税負担を軽減できるだけでなく、扶養者側の税負担も軽減できます。


しかし、扶養に入るためには被扶養者の「年収」が大きなポイントとなり、収入を多く貰いすぎると扶養から外れなければならなくなります。


では、失業保険を受け取ることによって、そのボーダーラインを超えてしまうことはあり得るのでしょうか。


失業保険法について国会制定法律に詳しく記載があるので、ぜひ一度チェックしてみてはいかがでしょうか。


次から、失業保険における扶養の扱いについて詳しく取り上げます。

「○○○万円の壁」は大きく分けて2種類に分けられる

現在、社会保険の扶養に入っておられる方が失業保険の受給をためらうことがあるのはなぜでしょうか。


それは、失業保険を受け取ることによって「見かけ上の収入」が増えて、扶養を外れなければならなくなる、という懸念があるからです。


ただし、実際のところ扶養となるためには2つの壁があり、

  • 103万円(150万円)の壁:税制上の扶養における壁
  • 130万円の壁:社会保険上の扶養における壁
このうち被扶養者が税金の支払いを免除されるのが「130万円の壁」の方であり、「103万円の壁」は扶養者が支払う税金に関係してきます。

まず注目したいのは失業保険を受け取ることによって税制上の扶養における「103万円を超えてしまうのか?」という点です。

結論から言えば、失業保険は非課税なので、失業保険分がプラスされることにより103万円の壁を超えることはなく、それによって扶養者側の税金負担が増えることはありません。

これは配偶者控除(こちらは「150万円の壁」)においても同様なのですが、逆に被扶養者の収入が150万円を超えてしまうと、扶養から外れなければなりません。

注意すべきは「社会保険上の扶養」

失業保険は税制上の扶養には影響を及ぼさないことが分かりました。


では、社会保険上の扶養に関してはどうなのでしょうか。


社会保険上では、被扶養者の収入とみなされる項目に失業保険が含まれているため、失業保険で得たお金も収入に含まれてしまいます。


さらに、年収は実際の手取り額ではなく「見込み額」であるため、たとえ失業保険を受給する期間が短いとしても、実際の収入を含めた「見込み額」の方で130万円を超えてしまいます。


日額に換算すると3,612円以上を受給している段階で、扶養の条件からは外れてしまうのです。


ですから、失業保険を受給しながら社会保険上の扶養を受けることはかなり難しい、と言えます。


被扶養者は扶養から外れることにより、

  • 国民年金
  • 国民健康保険料
これらのお金を自己負担しなければならなくなります。

では、この問題をどうにかして回避する方法はあるのでしょうか。

参考:失業保険をもらい切ってから扶養に入るべき?

社会保険上の扶養に加入し、被扶養者が税金面での優遇を受けるには「130万円の壁」が大きく立ちはだかります。

そこでその問題を解決する方法として挙げられるのは、失業保険の受給期間が終了してから扶養に入る、という方法です。

社会保険上の扶養においては、
  • 失業保険受給までの待機期間(7日間)
  • 自己都合退職における給付制限期間(3カ月)
  • 失業保険給付終了後
これらの期間は失業保険の受給期間としてカウントされませんので、扶養に入ることは可能です。

ですから、退職した方が失業保険の受給が終わってから扶養に入る、という方法も十分に現実的な方法であると言えます。

ただし、退職後すぐに扶養に入るという方法が、必ずしも間違った方法とは言い切れません。

たとえば、失業保険の受給額がそもそも少ない場合は待機期間を待たずに、すぐに扶養に入った方が良いかもしれません。

また、扶養に入っていない間は国民年金や国民健康保険にも加入しなければなりません。

単純に「どうせならお金を貰ってからの方が良い」と考えていると足元をすくわれかねませんので、自分や家族の状況を総合的に判断したうえで決定するようにしましょう。

失業保険以外の課税されない手当を紹介

これまで取り上げた通り、失業保険は基本的に非課税であるため、それによって課税所得が増えることはありません。


しかし、本来であれば「収入」に思えるようなお金であっても、課税所得には含まれず非課税となる名目のお金は、実は他にもあります。


次からは、失業保険の他に非課税となる手当の種類を紹介していきます。


これを覚えておくと、様々な手当を受ける必要が生じたときに、それを受け取ることによって税金が増えるという心配をしなくても良くなるでしょう。

雇用保険の給付には課税されない

企業で会社員として働く誰もが加入するのが「雇用保険」ですが、これは今まで取り上げてきた「失業保険」と同義であり、税金は非課税です。


正式な呼称は「雇用保険」ですが、まさに失業者を救済する意味で存在する保険なので「失業保険」の方が実際にお金を給付できるということを実感しやすいかもしれません。


一口に雇用保険と言っても、実はいくつかの手当に分類され、その全てが非課税です。


では、その非課税となる手当を一つずつ見ていきましょう。

非課税になる手当①:再就職手当

まずは、「再就職手当」です。


再就職手当とは、その名の通り失業者の再就職を支援するための手当であり、失業時に受け取れる手当とは意味合いが少し異なります。


というのも、再就職手当は再就職したときに初めて受け取れるお金であり、失業手当を給付するためだけに再就職への期間を引き伸ばすことを避け、積極的に就職することを促進するという役割もあります。


この再就職手当や、同じ役割を持つ「就業促進定着手当」や「就職手当」と呼ばれるものは雇用保険(失業保険)に含まれるお金なので、非課税となります。


ただし、再就職手当を受給するためには、

  • 失業手当支給の日数が3分の1以上残っていること
  • 直近の3年間で再就職手当を受給していないこと
  • 再就職後、確実に1年以上の勤務が見込めること
  • 再就職先に、前職との関係性がないこと
このような条件をクリアする必要があります。

非課税になる手当②:傷病手当

2つ目は、「傷病手当」です。


仕事上における怪我や病気で入院・治療が必要になった際に適用となるのは「労災保険」ですが、業務外の部分で入院・治療が必要になった際に支給されるのが「傷病手当」です。


傷病手当を受給する条件は、入院や治療のために「仕事ができない状態」であることが証明できる場合です。


ですから、怪我や病気の治療目的以外で入院している場合や、そもそも労務が可能な状態である場合は、傷病手当は支給されません。


この傷病手当も雇用保険の中に含まれているため、受給したとしても税金は非課税となります。

非課税になる手当③:職業訓練受講給付金

3つ目に挙げるのは、「職業訓練受講給付金」です。


失業した人が再就職のために通うハローワークでは、求職者の就職支援のために「職業訓練」を斡旋しています。


職業訓練では中~高校で学ぶような基礎的な知識や、パソコンの技能など仕事に役立つ技能を習得することができます。


その職業訓練を受けるために、職業訓練受講給付金によって毎月10万円(+職業訓練施設までの交通費)の手当を受け取ることができます。


この手当も税金が課されないお金なので税金が増えることはありませんが、雇用保険(失業保険)を受給中の人には二重給付となるため給付されません。


また「特定求職者」として、

  • 月収が8万円以下である
  • 世帯収入が月25万円以下である
  • 世帯の金融資産が300万円以下である
  • 職業訓練に(やむを得ない場合を除き)欠席していない
これらの条件をクリアした場合のみ、給付されます。

非課税になる手当④:育児休業給付・介護休業給付金

その他に非課税となる手当には、

  • 育児休業給付金
  • 介護休業給付金
このような種類があります。

まず育児休業給付金とは、育休のために一時的に休職している人に支給されるお金であり、それは国が個人に対して支給するもので、非課税です。

この制度のおかげで、夫・妻どちらであるかに関わらず育休が取得しやすくなったり、休職中でも給料のことを気にせずに育児に集中できるというメリットがあります。

また、育休ではなく介護のために一時的に休職している人に支給される介護休業給付金も、同様に非課税となります。

これらの手当は正確には「失業者」に支給されるものではないため今まで紹介した非課税の手当とは少し意味合いが異なりますが、このような手当があることも覚えておきましょう。

失業保険と税金や扶養の関係などについてのまとめ

今回は失業保険と税金や扶養の関係について様々な点を取り上げてきましたが、いかがでしたでしょうか。


この記事のポイントは、

  • 失業保険は基本的に非課税である
  • 扶養に入りながら失業保険の手当を受け続けるのは難しい
  • 再就職手当や職業訓練受講給付金も非課税である
以上の点です。

支払う税金は安い方が良いと思うのは当然のことですが、失業時に扶養に入るのは必ずしも正しいとは言えない場合があります。

扶養に入る、または外すことがそのタイミングにおいて最良の選択かどうかを十分考えたうえで、決定するようにしましょう。

ほけんROOMではこの記事以外にも役に立つ記事を多数掲載しておりますので、ぜひご覧ください。

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