更新日:2020/06/24
ボーナスの手取りが減るのは控除のせい?控除額の計算方法を解説!
ボーナスの明細を見て、「思ったより手取りが少ない」「ボーナスからどんな税金がいくら引かれているの?」と疑問を持たれる方も多いと思います。そこで今回の記事では、ボーナスの控除について、所得税や住民税そして、厚生年金などとの関係について詳しく解説七機増す。
目次を使って気になるところから読みましょう!
ボーナス(賞与)の手取りが支給額より少ない?
- そもそも控除とは何なのか
- なぜボーナスから控除されるのか
- ボーナスから控除されるものの種類
- ボーナス控除額の計算方法
そもそも控除とは?
そもそも控除とは「ある金額から一定の金額を差し引くこと」を指します。
控除には所得控除や税金控除など、様々な種類があります。
みなさんに一番関係してくるのは、所得控除です。
その名の通り、所得から一定の金額を控除することを指します。
結婚したり、子供が生まれたり、火事などの災害にあったりで、人によって税金を支払う余裕があるかは様々ですよね。
支払う余裕のある人は多く支払う、余裕のない人は少なく支払う。そうやって税の負担を公平化するために所得控除は設けられています。
所得控除には配偶者控除から医療費控除など14個もの種類があるのです。
一番身近なもので、「給与」を具体例として見てみましょう。
みなさんも自分の給与明細で見たことがあると思います。
- 所得税
- 住民税
- 社会保険料
- 厚生年金
など、本来の給与額からいくらか引かれて支給されていますよね。
これが所得控除です。
ある金額(本来の給与額)から一定の金額(税金や保険料)を差し引いて、手取りが手元に来るわけです。
詳しくは後述しますが、ボーナスにとっての控除は、この所得控除です。
ボーナスにも控除がかかるのはなぜ?
冒頭でも解説しましたが、聞いていたボーナス額と、実際に振り込まれる額には大きな開きがあります。
それはボーナスに控除がかかっているからです。
なぜボーナスにも控除がかかるのでしょうか?
それはボーナスが「給与所得」だからです。
税務上では、月々の給与と同じ扱いだということです。
会社から支給されている以上、それは給与と同じものです。
先程説明した通り、給与には所得控除がかかっています。
ボーナスが給与と同じ扱いであれば、同じように所得控除がかかることにも納得ですよね。
ボーナスから控除されるものは大きく2種類
「控除の意味とボーナスから控除される理由についてはわかったけど、具体的に何が引かれてるの?」
と思われた方もいらっしゃると思います。
ボーナスから控除されるものは大きく分けて2種類あります。
- 社会保険料
- 所得税
「所得税はわかるけど、社会保険料は通常の給与でも払ってるし、なんでダブルで払わなきゃいけないの?」
と思うかもしれませんね。
結論から言うと、法律で「ボーナスからも社会保険料を徴収する」と定められているので仕方がないのです。
実は「ボーナスからも社会保険料を徴収する」という決まりになったのは、平成15年から。
その年から社会保険料が「総報酬制」というものに改正されました。
日本にはボーナスを出す企業、出さない企業がありますよね。
もしボーナスから社会保険料が徴収されなければ、それらの企業間で納める社会保険料が大きく違ってしまうのです。
この不公平さを解消するために「総報酬制」に改正されたのです。
それではこれから「社会保険料」「所得税」に分けて詳しく解説していきます。
まずはそれぞれの概要と計算方法、その後具体的なケースをもとに実際に計算してみようと思います。
①社会保険料
では社会保険料から見ていきます。
まず、ボーナスの手取りは次のような計算方法で算出されます。
ボーナスの手取り額=本来のボーナス支給額−(社会保険料+源泉徴収税)
今回はこの中の社会保険料について解説します。
ボーナスから控除される社会保険料は具体的に次のような内訳になっています。
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
- 雇用保険料
- 健康保険料:ボーナス額から1,000未満を切り捨てた額
- 厚生年金保険料:ボーナス額から1,000未満を切り捨てた額
- 雇用保険料:ボーナス額そのまま
健康保険料=標準賞与額×保険料率÷2
厚生年金保険料=標準賞与額×保険料率÷2
雇用保険料=ボーナス額×保険料率
②所得税
では次に、所得税について見ていきます。
まず、所得税は次のような計算方法で算出されます。
ボーナスの所得税=(ボーナス額ー社会保険料)×所得税率
社会保険料については先程説明した通りです。所得税率はボーナス額ではなく、「前月の給与から社会保険料が控除された後の額」と「扶養親族の数」で決まります。
社会保険料はボーナス額をもとに計算されていましたが、所得税では
- ボーナス額
- ボーナスの社会保険料
- 前月の給与から社会保険料が控除された後の額
- 扶養親族の数
により計算されるのです。
社会保険料はボーナス額自体に対して計算されるのに対し、所得税では前月の給与など様々なものに対して計算されるということです。
所得税はボーナスの社会保険料が計算に必要なので、最後に計算されます。
扶養親族というのは、簡単に言うと「配偶者以外で、家計を共にしている親族」という意味です。
扶養親族の範囲は細かい規定がありますので、国税庁の「扶養控除」をご覧ください。
所得税を計算する時に必ず確認すること
先程見たとおり、所得税を計算するには、所得税率が必要です。
そして所得税率を計算するには
- 前月の給与
- 前月の社会保険料
- 扶養親族の人数
以上の3つが必要になります。
まずは
前月の給与−前月の社会保険料
を計算してください。
この計算結果が前月の社会保険料控除後の給与額になります。
前月の社会保険料控除後の給与額と扶養親族の人数がわかったら、所得税率がいくつになるか調べましょう。
所得税率は国税庁の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」から確認できます。
ご自身の「扶養親族の人数」と「前月の社会保険料控除後の給与額」に対応する列と行を見つけ、「賞与の金額に乗ずべき率」という部分で所得税率を確認します。
繰り返しになりますが、所得税率を知るには
- 前月の社会保険料控除後の給与額
- 扶養親族の人数
控除後のボーナスの手取りはいくら?
会社勤めのビジネスマンにとって、ボーナス(賞与)を支給されるのはメリットの一つと言えます。実際、ボーナスの時期が近付くと、それに合わせてサービスを展開する業界が多くあります。ボーナス支給を受けたときに、各種サービスを受けようと計画して楽しみにしている方も多いことでしょう。
また、一年の収支の計画にボーナスを組み込んでいる方も多いかと思います。将来設計や各種ローンの支払いにも、ボーナスは重要な役割を持っていますよね。
そうなると、自分のボーナスが実際にいくらくらいになるのか、早めに知っておきたいと思うのは自然なことです。
ここでは、ボーナスの控除についてや、額面と手取りの違いについて解説していきます。ボーナスにおける手取り額の計算方法を詳しく掲載しますので、ご自身の計画の参考にしてください。
手取り額とは?
ボーナスについては、各企業における賞与規定の仕組みによって変動があります。これについては、ご自身の所属する会社で確認が必要です。
例えば「1回に支払われるボーナスが月給の2ヶ月分」と明確に定められていると、自分が受け取るボーナス額が想定できるはず。ただし、月給2か月分の規定であったとしても、その金額がそのまま手元に来るわけではありません。
ボーナスは社会保険料と所得税が控除され、その結果の金額が自分の手元に来るものになります。これが「手取り額」です。
対して、上述した会社の規定に基づいて算出された金額が「額面」と呼ばれます。
ボーナスの手取り額を想定するには、控除される社会保険料と所得税の計算方法を理解しておくことが必要です。
手取り額は額面額の8割くらい
社会保険には下記のものがあります。
- 健康保険料
- 介護保険料
- 厚生年金保険料
- 雇用保険料
- 労災保険料
これらのうち、ボーナスから控除される社会保険の対象となるのは、労災保険料以外のものとなります。労災保険料は企業が全額負担するからです。
さて、社会保険料の負担額は、収入を基準として定められます。収入額に応じた料率が決められており、これを用いた計算を行って、金額が確定するわけです。また、額面額から社会保険料を引いた金額を課税対象額と言い、これに所得税率を掛けたものが所得税となります。
所得税率は「賞与に関する源泉徴収税額の算出率の表(国税庁)」で確認することができます。
こうして算出された社会保険料と所得税を会社から支払われる額面額から引いた結果が、ボーナスの手取り金額となるのです。
モデルケース別!ボーナスの控除額計算
ここまで、ボーナスにかかる控除の種類と計算方法を解説してきました。
理屈だけ説明されてもわかりづらいので、ここでは具体例を2つ使って実際に計算し、解説していこうと思います。
計算するモデルケースは次の2パターンです。
- ボーナス30万円、前月給与20万円、扶養親族1人
- ボーナス50万円、前月給与30万円、扶養親族2人
ボーナス30万円、前月給与20万円、扶養親族1人の場合
始めに条件を書き出します。
- ボーナス30万円
- 前月給与20万円
- 扶養親族1人
まずは社会保険を計算します。
ボーナス額の計算式だとこの部分ですね。
ボーナスの手取り額=本来のボーナス支給額−(社会保険料+源泉徴収税)
社会保険は健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料の3つがありました。それぞれ、求めるには保険料率が必要になります。
健康保険料率と厚生年金保険料率は全国健康保険協会の「都道府県毎の保険料額表」、雇用保険料率は厚生労働省の「雇用保険料率について」から調べます。
調べた結果
- 健康保険料率:9.90%
- 厚生年金保険料率:18.300%
- 雇用保険料率:3/1,000
という結果になりました。
(会社は東京所在、一般の事業と仮定しています)
これらの情報をもとに計算式を作ってみます。
健康保険料=標準賞与額×保険料率÷2
=300,000×0.099÷2
=14,850
厚生年金保険料=標準賞与額×保険料率÷2
=300,000×0.183÷2
=27,450
雇用保険料=ボーナス額×保険料率
=300,000×(3/1,000)
=900
※標準賞与額はボーナス額の1,000未満を切り捨てた額なので、もとの額と変わりません。
ここまで出た計算結果をまとめます。
- 健康保険料:14,850円
- 厚生年金保険料:27,450円
- 雇用保険料:900円
- 社会保険料合計:43,200円
ボーナスの手取り額=本来のボーナス支給額−(社会保険料+源泉徴収税)
ボーナスの所得税=(ボーナス額ー社会保険料)×所得税率
=(300,000−43,200)×0.02042
=5,243
- 社会保険料:43,200円
- 所得税:5,243円
ボーナスの手取り額=本来のボーナス支給額−(社会保険料+源泉徴収税)
=300,000−(43,200+5,243)
=251,557
ボーナス50万円、前月給与30万円、扶養親族2人の場合
続いて2つ目のパターンです。
始めに条件を書き出します。
- ボーナス50万円
- 前月給与30万円
- 扶養親族2人
まずは社会保険を計算します。
保険料率はパターン1と変わりません。
- 健康保険料率:9.90%
- 厚生年金保険料率:18.300%
- 雇用保険料率:3/1,000
(会社は東京所在、一般の事業と仮定しています)
これらの情報をもとに計算式を作ります。
健康保険料=標準賞与額×保険料率÷2
=500,000×0.099÷2
=24,750
厚生年金保険料=標準賞与額×保険料率÷2
=500,000×0.183÷2
=45,750
雇用保険料=ボーナス額×保険料率
=500,000×(3/1,000)
=1,500
※標準賞与額はボーナス額の1,000未満を切り捨てた額なのでもとの額と変わりません。
ここまで出た計算結果をまとめます。
- 健康保険料:24,750円
- 厚生年金保険料:45,750円
- 雇用保険料:1,500円
- 社会保険料合計:72,000円
次に所得税を計算します。
ボーナス額の計算式で言うとこの部分ですね。
ボーナスの手取り額=本来のボーナス支給額−(社会保険料+源泉徴収税)
所得税の計算には所得税率が必要でした。
国税庁の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」より調べます。
「前月給与から社会保険控除後の額257,118円」、「扶養親族2人」という情報から
所得税率:2.042%
だと判明しました。
※前月給与の社会保険控除額は給与明細で確認できます。もし計算するとしても、計算方法は先程した「ボーナスの社会保険料」の計算とやり方は変わりません。給与額に保険率をかけるだけです。
計算結果に当てはめると、次のようになります。
ボーナスの所得税=(ボーナス額ー社会保険料)×所得税率
=(500,000−72,000)×0.02042
=8,739
ここまでの計算で
- 社会保険料:72,000円
- 所得税:8,739円
ということがわかりましたので、計算する材料が揃いました。
ボーナスの手取り額=本来のボーナス支給額−(社会保険料+源泉徴収税)
=500,000−(72,000+8,739)
=419,261
つまり、「ボーナス50万円、前月給与30万円、扶養親族2人」の場合、ボーナス額の手取りは41万9,261円になるということです。
まとめ:ボーナスの控除額の計算方法
ここまでボーナスの控除について、引かれるものの種類や計算方法などについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
この記事のポイントは
- ボーナス額が聞いていた額より少ないのは控除がかかるから
- 控除とは給与から社会保険料や税金が引かれること
- ボーナスに控除がかかるのは「給与所得」だから
- ボーナスの控除額を計算するには前月給与、扶養親族の人数などの情報が必要
でした。
普通はボーナスに控除がかかるイメージがないので、いきなり聞いていた額より少なく支給されると驚いてしまいます。
事前にいくらくらい支給されるのかを知っていれば、心の準備もできますし、使い道の予定も立てられます。
ぜひご自身で計算してみてください。
ほけんROOMでは、他にも読んでおきたい保険に関する記事が多数掲載されていますので、是非ご覧ください。