農業をやっている場合の確定申告について解説!記帳方法も紹介

農家や兼業農家など、農業で一定以上の収入を得ている場合は確定申告が必要です。農業での収入は「農業所得」に分類されるなど、確定申告には農業ならではの知識も必要になります。この記事では、そんな農業による収入がある場合の確定申告について、記帳方法などを紹介します。

農業をやっている場合の確定申告について解説


農業をやっている場合は兼業であっても確定申告が必要なことを知っていましたか?

確定申告とは収入や経費を一年に一度税務署に報告することです。日々のお金の流れを帳簿につける必要があるため面倒に感じる人も多いようです。

しかし、実際は確定申告にはいくつかメリットがある上、複雑な帳簿付けを簡単にするツールも出てきています。

そこでこの記事では農業所得の確定申告について
  • 農業所得の確定申告の方法
  • 白色申告と青色申告の違い
  • 農業所得の確定申告のメリット
  • 確定申告書・収支報告書の作成方法
以上の点を中心に詳しく解説します。

この記事を読んでいただければ農業所得の確定申告について理解が深まり、自分に合った方法で確定申告できるようになります。

ぜひ、最後までご覧ください。

農業で得た収入は「農業所得」として確定申告する

農業で得た収入は事業所得になるため38万円を超える場合は確定申告が必要です


確定申告というと面倒に感じる人も多いかと思いますが、ポイントを押さえればそれほど難しくないのでしっかり申告しましょう。


ここでは農業所得について

  • 売り上げから経費を引くことができる
  • 申告には帳簿が必要
  • 確定申告書と収支内訳書を提出

など確定申告をする際に知っておきたい情報を詳しく紹介します。


正しく申告すれば収める税金を減らすこともできますのでぜひ参考にしてください。

農業所得は売上から経費を引くことができる

所得には事業所得・不動産所得などさまざまな種類があり、場合によっては確定申告をする必要があります。


多くの人にとって身近な給与所得は基本的に確定申告は必要ありませんが、農業所得はどうなのでしょうか?


農業所得は事業所得に分類されるため確定申告が必要です。


確定申告は面倒に感じるかもしれませんが、売上から経費を引くことができるという大きなメリットもあります。


農業をする上で発生する肥料・資料や農機具、人を雇った場合の賃金などの経費を計上することができますので、レシート明細書など必要書類を保管しておきましょう。

所得を計算するための帳簿(法定帳簿)が必要

農業による収入がある場合は事業所得として確定申告をすることを説明してきましたが、確定申告をするためには帳簿をつける必要があります


帳簿(法定帳簿)とは取引記録を残しておくものです。以下のような記載内容がはっきりとわかるようにしておきましょう。


【帳簿記載内容】

  • 売上げや仕入れ、経費などの金額
  • 仕入れや経費の具体的な内容(摘要)
  • 取引のあった日付
  • 売上先・仕入先などの取引先の名称

形式はどのようなものでも構いません。PCで表計算ソフトを利用してもいいですし、もちろんノートに記入しても認められます。


確定申告には複式簿記の知識が必要な青色申告と白色申告がありますが、白色申告であればそれほど難しくはありません。専門的な知識がなくても、慣れれば誰でも書けるようになります。

提出するのは確定申告書と収支内訳書

帳簿に売上や経費、収入などお金の流れを記載することを説明してきましたが、確定申告の際はどのような書類を提出するのでしょうか?


確定申告時に提出するのは

  • 確定申告書
  • 収支内訳書

です。これらの書類は国税庁のHPからダウンロードすることができます。


実際に提出するのは帳簿そのものではなく、帳簿をもとに作成した収支内訳書になります


帳簿に正確に記録が残っていないと収支内訳書が作成できないので日々の帳簿付けはしっかりとやっておきましょう。


帳簿を転記して収支内訳書を作成するので、経費の分類を収支内訳書と同じ区分にしておくと手間が省けます。

参考:白色申告と青色申告の違い

確定申告の方法には「白色申告」「青色申告」の2種類があります。


平成26年からはどちらも帳簿が義務付けられましたが、それでもさまざまな違いがあります。ここではそれぞれの特徴を紹介します。


白色申告

  • 提出書類が少なく手間がかからない
  • 簿記の専門的な知識が必要ない
  • 申請は必要ないのですぐに確定申告できる
  • 控除額は10万円


青色申告

  • 専門的知識が必要な複式簿記(特別控除を受ける場合)
  • 青色申告の承認の申請が必要
  • 赤字を3年間繰り越すことができる
  • 控除額は最大65万円

簡単に言うと、手間が少ないのが白色申告、税金面で有利なのが青色申告です。


収入が少なく簡単に確定申告を済ませたい場合は白色申告を、所得が多く税制上の優遇を多く受けたい場合は多少手間がかかっても青色申告を選ぶといいでしょう。

参考:農業の赤字で税金対策

面倒なイメージのある確定申告ですが、税金対策や所得証明ができるなどのメリットがあることも見逃せません。


損益通算

会社員など他の仕事をしながら農業をしている人も近年増えていますが、そのような場合農業所得が赤字になってしまっても他の所得と損益通算ができます


損益通算とは赤字が出た分を他の所得から差し引くことです。これにより農業収入の赤字を他の所得と相殺することができ、他の所得にかかる税金を減らす効果があります。


赤字だからと農業所得を申告しないと損益通算できませんので赤字でも必ず申告するようにしましょう。


所得証明

また、住宅を借りる際や住宅ローンを組む際に所得証明書を求められることがあります。意外なところでは保育園に入園する際にも必要なことがあります。


確定申告書は所得証明書としても利用できるので覚えておくといいでしょう。

注意:自家消費のみでも確定申告は必要

農業をしているとお米や野菜など他に販売せず自分たち家族で消費することがあります。これを自家消費(家事消費)と言います。


実は自家消費のみでも農業をしている場合は確定申告が必要です。厳密に言うと家庭菜園でも申告が必要ということになります。税法上では農産物を収穫時点で所得が発生したと解釈します。


ただし、自家消費に関してはさまざまなケースがあり自治体によっては小規模で自家消費のみの場合は申告不要としています。(参考;秋田県美里町


どのように扱って良いか迷った際には税務署や確定申告時に行われる相談会などで相談しましょう。

白色申告での簡易的な記帳の方法を解説

ここまで農業をする場合は事業所得として確定申告をしなければならないことを説明してきました。


収入額が少なく手間をかけたくないケースでは白色申告を利用する人が多いです。帳簿を初めてつける際は農業所得ならでは記帳の方法もあり、難しく感じるかもしれません。


しかし、ポイントさえ押さえれば特別なパソコンのソフトがなくてもノートなどを利用して簡単に記帳ができます。


そこで、ここでは白色申告の記帳の方法や注意点を解説します。

ノートなどにわかるように書く

農業所得を白色申告する場合、記帳には決まった形式はありません。


パソコンなどを使わずに市販のノートを利用することも可能です。記入しやすく、長く続けられる方法を選ぶと良いでしょう。


記載内容は「収入」と「支出」の流れがはっきりとわかるように

  • 取引の日付
  • 金額
  • 相手方の名称
  • 内容

以上のことを整然とかつ明瞭に記録しておきましょう。


白色申告の帳簿が簡単につけられる「簡易帳簿」のノートも販売されているのでそういった商品を利用するのもいいでしょう。


慣れれば難しいことはないのですが、サボってしまうと後が大変になりミスにもつながるので毎日の帳簿付けを習慣にすることも大切です。

収穫に関する記帳方法

農業所得の申告では他の所得の申告にはない収穫に関する事項も記帳します。


一般的に収入金額を記帳するのは商品やサービスの販売時ですが、農作物に関しては収穫した際に収入として記帳することが必要です


【農産物の収穫に関する記載事項】

  • 収穫の年月日
  • 農産物の種類
  • 数量

以上の情報をしっかりと記帳しましょう。


ただし、白色申告では収穫に関する記帳も簡単なもので良いとされています。


米や麦などの穀物以外の野菜など消費までの期間が短い農作物は収穫の際の記帳を省略することができます。その場合は販売時に数量・単価・農産物の種類を記帳します。

売上や自家消費に関する記帳方法

売上や自家消費(家事消費)に関する記帳方法を紹介します。


【自家消費に関する記載事項】

  • 取引の年月日
  • 相手方の名称
  • 金額

以上を記載します。


白色申告の場合は取引が少額な場合や請求額が確認できる書類がある場合は取引ごとではなく、1日分をまとめて記帳することもできます。


また、必要書類がそろっていれば現金主義を用いて記帳の手間を省くこともできます。


形の悪い農産物や余った農産物を家族で消費することもありますが、そのような家事消費はその都度記帳する必要はありません。


年末に農産物の種類・合計数量・合計金額を1年分まとめて記載することが可能です。

費用に関する記帳方法

農業をしているとさまざまな費用がかかります。それらの費用を漏れなく記帳することにより所得から経費を引くことができます。費用が発生したらその都度丁寧に記帳しましょう。


費用は雇人費、小作料、減価償却費などの区分に分けて記帳します。


【費用に関する記載事項】

  • 取引の年月日
  • 支払先の名称
  • 具体的な内容
  • 金額

上記を記載します。


白色申告では費用も売上と同じく簡易的な記載が認められています。少額な取引や請求額が確認できれば1日分をまとめた記帳が認められます。


同じように書類がそろっていれば現金主義を用いた記帳で手間を省くことができます。

未成熟の農産物などの扱い

農産物・畜産物の中には収穫まで時間のかかるものもあります。まだ収穫できない果実や未成熟の農産物や畜産物の扱いはどのようにすればよいでしょうか?


未成熟の農産物や育成中の牛馬などの経費は収穫・成熟するまで累積しておきます


年度をまたぐ場合では収穫する年に処理することになります。


未成熟な農産物の費用の処理方法は減価償却になります。(金額が高い場合)


10万円未満では一括で経費として処理をすることができます。10万円以上20万円未満の場合は一括で経費として処理するか3年間の均等償却をするか選ぶことができます。

注意:帳簿は7年間保存する必要がある

確定申告のために帳簿を付けることが義務付けられていますが、確定申告が終わったからと言ってすぐに処分してはいけません。

帳簿には保存義務があり、白色申告でも帳簿や関連書類を決められた期間捨てることなく保存する必要があります。

書類によって保存期間が違うのでそれぞれについて紹介します。

【確定申告に関する帳簿・書類の保存期間】
書類保存期間
法定帳簿7年
任意帳簿5年
棚卸表等の書類5年
請求書・領収書など5年
法定帳簿とは収入金額や必要経費・売上金額などを記載した帳簿で白色申告をする際に必ず作成する帳簿です。任意帳簿とは業務に関して必要に応じて作る帳簿です。

青色申告では本格的な記帳が必要

ここまで白色申告について詳しく解説してきましたが、ここからは税制上の優遇が受けられる青色申告について紹介します。


青色申告の帳簿には2種類あります。

  • 簡易簿記
  • 複式簿記

どちらかの帳簿を選ぶことができますが、青色申告の最大のメリットの特別控除65万円を受けるためには複式簿記をつける必要があります。


専門的な知識が必要ですが農業収入が多いのであれば得られる恩恵も大きいので複式簿記で青色申告することをおすすめします。

複式簿記で正確に記帳する必要がある

青色申告では税制上の大きなメリット受けることができますが、複式簿記で帳簿を作成する必要があります。


青色申告で必ず作成する帳簿は

  • 仕訳帳
  • 総勘定元帳

の2つです。


仕訳帳は全ての取引を日付順に記載した帳簿です。総勘定元帳は勘定科目ごとに全ての取引をまとめた帳簿です。この2つの帳簿を主要簿といいます。


その他にも必要に応じて作成する帳簿として

  • 現金出納帳
  • 預金出納帳
  • 仕入帳
  • 売上帳
  • 買掛帳
  • 売掛帳

などがあります。業務内容によってはこれらの全ての帳簿を作成する必要はありませんし、これ以外の帳簿を作ることもあります。


確定申告では帳簿の原本を提出することはありませんが、7年間の保存義務がありますので紛失しないように保管しましょう。

会計ソフトを利用すれば簿記の知識は不要

「借方」「貸方」など専門用語も多い複式簿記。正確に記帳するためにはかなりの専門知識が必要で手間もかかります。


しかし、「freee」や「農業簿記」といった会計ソフトを利用すると簿記の知識がなくても簡単に青色申告をすることができます


ある程度簿記の知識があれば日々の仕分け入力はできるかもしれません。しかし、最も大変なのは決算時の書類作りでかなりの手間と時間がかかってしまいます。


会計ソフトならば毎日の入力を欠かさなければ決算時には自動的に決算書類を作成してくれるので手間を省きたいという人にも会計ソフトはお勧めです。

税理士や青色申告会を活用する方法も

現在は簡単に利用できる会計ソフトがあるので青色申告をするハードルはかなり下がってきました。


しかしそれでも自分一人でやると不安になったり、忙しくて時間が取れなかったりといったこともあるかもしれません。その場合はプロの手を借りるという方法もあります


税理士に依頼

税理士に確定申告を依頼するすると大幅に確定申告の手間を省けます。それ以外にも専門的なアドバイスをもらえるというメリットもあります。


税理士はお金のエキスパートなので自分では気づかなかった節税対策を教えてもらえることもあります。


青色申告会を活用

また、税理士に依頼するほどではないけれども確定申告の質問をしたいという場合は青色申告会を活用するのも良いでしょう。


青色申告会では会費を払えば個別で相談に乗ってもらえます。定期的に相談会や指導会を行っていることもあるので、青色申告に不安があるなら活用してみてはいかがでしょうか?

確定申告書と農業所得用の収支内訳書を作成する

農業の従事者が白色申告をする場合

  • 確定申告書
  • 農業所得用の収支内訳書

の作成が必要です。作成した書類は基本的に住民票のある税務署に提出します。


提出方法には

  • 直接税務署に持参
  • 郵送
  • e-TAX

といった方法があります。


直接税務署に持参すると、相談コーナーで分からないところを相談することもできますが提出期限間際に行くととても混雑しているので注意しましょう。


最近ではe-TAXを利用する人も増えています。e-TAXを利用するには事前準備が必要なので早めに用意しておきましょう。

確定申告書を作成する

農業による収入を申告する場合は事業所得に分類されるため確定申告書Bの作成が必要です。


確定申告書の作成には3つの方法があります。

  • 手書きで確定申告書に記入する
  • 会計ソフトを利用する
  • 国税庁の確定申告書作成コーナーを利用する

手書きで確定申告書に記入する場合は計算間違いがないように気を付けて下さい。


会計ソフトや確定申告書作成コーナーを利用する場合は必要事項を入力していくだけで自動的に計算してくれるので安心です。


PCとネット環境があるならば会計ソフトか確定申告書コーナーを利用する方がミスが少なく手間がかからないのでおすすめです。

収支内訳書(農業所得用)を作成する

白色申告をするためには確定申告書の他に収支内訳書の作成も必要です。忘れずに作成しましょう。


収支内訳書には

  • 一般用
  • 不動産所得用
  • 農業所得用

の3種類があります。農業所得は農業所得用を選びましょう。


農業所得用の収支内訳書には農産物の棚卸高、小作料、種苗費、農具費といった農業ならではの項目があります。


収支内訳書は2ページあり、1ページ目には帳簿を参考に収入金額や経費などを記入・計算していきます。雇人費、小作料・賃借料、事業専従者も必要があれば記載します。


2ページ目には収入金額の明細、減価償却費の計算、育成費用の計算を記入します。数字の付いた項目は1ページ目と対応しています。同じ数字が入っているか確認しましょう。

農業をやっている場合の確定申告についてのまとめ

ここまで農業をやっている場合の確定申告について詳しく解説してきましたがいかがでしたでしょうか?


この記事のポイントは

  • 農業所得は事業所得として確定申告する
  • 確定申告では経費を引くことができる
  • 農業所得が赤字の場合は損益通算ができる
  • 農業所得の帳簿には農業独特の項目がある
  • 白色申告の帳簿はノート等でもつけることが可能
  • 青色申告は手間はかかるが税制上の優遇を受けることができる

でした。


農業を営んでいる場合は副業であっても確定申告をする必要があります。


面倒に感じるかもしれませんが、税金対策や所得証明に利用できるというメリットもあるので必ず行いましょう。白色申告ならそれほど手間はかかりません。


農業収入がかなりの金額になるなら税金上有利になる青色申告がおすすめします。会計ソフトを使えば簡単に帳簿を付けることができます。税理士や青色申告会も上手に利用して時間や手間を節約することも大事です。


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