生活保護になると保険証が持てない?生活保護受給者証は保険証の代わりに?

生活保護を受給する場合、保険証を持つことができなくなるのをご存じですか?保険証がないと医療費が全額負担になってしまうし、身分証もなくなってしまう、と心配になるかもしれません。生活保護を受給する際の保険証の扱いや、生活保護受給者証は保険証の代わりになるかについて解説します。

この記事の監修者
谷川 昌平
東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、保険相談や選び方のポイントを伝える「ほけんROOM」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

生活保護受給者は保険証はもてない?

様々な要因で仕事をしておらず、アルバイトやパートでも働くことができず、生活保護は生活を最低限維持するための最後の砦として考えている人も多いことでしょう。

しかし生活保護には制約も多く、普通の生活を送っていたときには当たり前のように持てていた健康保険証を持つことができなくなることをご存知でしょうか。

そこで、この記事では「生活保護受給者の保険証」について、
  • 生活保護受給者は健康保険証を持つことができるのか
  • 生活保護受給者証は保険証の代わりになるのか
  • 生活保護受給者証と保険証に関する疑問点
以上のことを中心に解説していきます。

この記事を読んでいただければ、生活保護受給者の医療費や保険証について詳しく知ることができ、今後生活保護を受給せざるを得なくなったときや、これから受給申請をしようとする人の手助けになります。

是非最後までご覧ください。

生活保護受給者は保険証は持てない

生活保護は、色々な理由で仕事ができないなど生活が困窮している人に対して最低限の生活を送ることができるよう、国から援助が行われる制度です。


しかし、生活保護の受給中は保険証を欲しいと思っても、持つことができなくなります。これは生活保護法上そのように規定されているため、やむを得ないことです。


生活保護受給者の保険証については、以下でさらに詳しく見ていきます。

国民健康保険や後期高齢者医療制度から脱退する必要がある

生活保護を受給することになると、国民健康保険および後期高齢者医療制度からは脱退しなければなりません。


国民健康保険とは、基本的にすべての国民が加入する義務がある医療保険制度のことで、医療費の軽減を図り国民すべてが健康な生活を送るための国の制度です。


しかし、この保険制度への加入のためには保険料を負担する必要があり、生活保護受給者はこの保険料の負担はなしで、国民健康保険への加入もできないこととされています。


また後期高齢者医療制度とは、75歳以上の人が国民健康保険とは別に加入する保険制度のことで、個人単位で保険料を支払い、療養においては医療費を軽減するための制度ですが、こちらも生活保護受給者は加入することができません。


これらの制度は生活保護を受給することになった時点で脱退する必要がありますが、逆に生活保護を受給しなくなった際には、再度国民健康保険に加入しなければなりません。

生活保護を受給しても会社の社会保険からは抜ける必要がない

生活保護を受給したときには国民健康保険から脱退しなければなりませんが、社会保険からは抜ける必要はありません。


社会保険とは、国民健康保険とは別に企業に勤める人が加入する健康保険制度のことです。


保険料の負担が国民健康保険の半分程度で済む、組合によっては色々な補助金制度があるなど、国民健康保険よりも手厚い保障を受けることができる健康保険制度です。


会社に就職した後は基本的に条件が揃えば社会保険に加入することとなりますが、給与が少ないなどの理由で生活保護の受給を続ける場合に、一度加入した社会保険は国民健康保険と違って抜ける必要はないのです。

生活保護受給者証は保険証の代わりになる?


生活保護の受給者は、生活保護受給者証という証明書が役所から交付されます。


生活保護受給者は国民健康保険に加入することはできませんが、それは医療費を全額負担しなければならないということではありません。


生活保護受給者は別の医療費の補助制度があり、医療費の負担はほぼなしとなっています。


これは生活保護受給者証が保険証の代わりになるということではなく、別の方法で医療費補助を受けるというものです。


以下にその方法について詳しく説明します。


なお、生活保護受給者証の見本はリンクのとおりです。

生活保護受給者証の様式

生活保護受給者は基本的に医療券を使って病院を受診する

医療費の3割のみ自己負担となる保険証を持つことができないのでは、生活保護受給者は医療費の負担がかなり重くなりそうですが、生活保護受給者には別の医療費補助の制度があります。

生活保護受給者は、医療券というものを利用して診療機関を受診することとなります。

医療券は、医療費の代わりに窓口に提出することで医療費が全額免除されます。

医療券は役所に申請して認定されることで入手することができ、有効期限は一年間で、その後は更新の手続きをすることでさらに継続して利用することができます。

もし医療券を提出せずに診療機関を受診した場合は、10割負担となり医療費の全額を支払わなければなりません。

しかし、その場合でも後日医療券を入手した場合は、医療費が全額返還されます。

また、医療券はすべての診療機関で利用できるわけではなく、指定の病院でしか利用することはできないため、希望の病院を利用することができないこともあります。

生活保護受給者が病院を受診する場合、まずは最寄りの福祉事務所に行き、ケースワーカーと相談をして病院を紹介してもらうような流れとなります。

なお、医療券の見本はリンクのとおりです。

会社の社会保険に加入している場合は医療券と併用する

生活保護を受給していても社会保険に加入できることは前述のとおりですが、それでは医療券と社会保険を併用することは可能なのでしょうか。


結論から言えば併用することは可能です。その場合は健康保険からの給付が7割、自己負担額が3割となり、この3割について生活保護の医療費補助が支給されることとなります。


受給者本人にとってはいずれの場合も自己負担額はありませんが、医療費の補助の出所が医療券のみの場合とは異なります。


また、健康保険に加入していると出産一時金などの制度もあり、メリットが大きいため、加入できる状況であれば加入したいものです。

緊急時に限って生活保護受給者証で診療が受けられる

生活保護を受給し始めたばかりで、まだ医療券は申請中である場合など、医療券を持っていない状態で急に診療機関にかからなければならないときもあるでしょう。


また、生活保護受給者が病院にかかるときは基本的に福祉事務所のケースワーカーを通しての受診となりますが、福祉事務所は平日9時から17時までの開庁であることが多く、休日や深夜には対応できないこともあります。


こういった緊急時のときは、医療券がない状態でも診療機関に生活保護受給者証を提示することで、とりあえず受診することはできます。


しかし、生活保護受給者証はあくまでも生活保護を受給していることの証明書であって、医療券の代わりにはならず、保険証のように使うこともできません。


医療券なしで受診した場合は、後日必ず医療券を持って診療機関の窓口に提示するようにしましょう。

その他、生活保護受給者と保険証のQ&A

生活保護と保険証については、他にも色々な疑問点があります。


たとえば、生活保護受給者証は身分証明書として使えるのか、親が生活保護受給者の場合の子供の保険証はどうなるのか、などです。


生活保護はデリケートな問題であるため、できれば他人に知られたくないと思う人もいます。


ここからは、そんな生活保護受給者と生活保護受給者証について、疑問点と回答をまとめましたのでご覧ください。

生活保護受給者証は身分証明にも使える

生活保護受給者証は身分証明書としては使用できないと思われるかもしれませんが、場合によっては身分証明書として使用できます。


例えば、役所で住民票の写しを取得する場合などは、生活保護受給者証が本人確認のための身分証明書として使用できます。


しかし、生活保護受給者証には顔写真は入っていません。


そのため、運転免許証のようにどこでも一枚で身分証明書として使用できる書類とは異なり、顔写真入りの身分証明書が必要な場面では、身分証明書として使用することはできません。


顔写真入りの身分証明書が必要な場合は、マイナンバーカード(個人番号カード)を発行すると良いでしょう。

親から世帯分離すれば子供に保険証を持たせることはできる

また、生活保護を受給している親に扶養される子供がいる場合、親が保険証を持つことができないため、子供も保険証を持つことができません。


しかし、生活保護という制度は個人ではなく世帯単位で計算されるもののため、親と子供が世帯分離していれば、子供は保険証を持つことができます。


例えば子供が就職や結婚などをして親と世帯が1年以内に分離する予定がある人は、子供と親を世帯分離し、扶養から抜けることによって、子供が保険証を持つことができるようになります。


この場合、親は生活保護を受けることができます。

保険証のコピーで生活保護かどうかばれる?

生活保護を受給している人は、できれば他人にはそのことを知られたくないと思っているものです。


普段の生活の中では、生活保護受給者証などを他人に見せる場面がないため、書面上からばれる心配はありません。


しかし、どうしても保険証が必要な場面になると、生活保護受給者は保険証を持っていないためばれる可能性があります。


例えば、子供が修学旅行に行くときなどや、子供を保育園もしくは託児所などに預けるときです。


このとき、保険証のコピーの提出を求められることがありますが、そんなときはばれる可能性もあります。


他にも、アルバイトの面接などでも身分証明書として保険証のコピーの提出を求められる場合もありますが、そんなときはマイナンバーカードなどで代用できないか、アルバイト先に確認してみましょう。

生活保護が廃止になり、保険証を発行したい場合に必要なもの

就職などをして安定した収入を得ることができるようになると、生活保護は廃止となります。


生活保護が廃止になったときは保険証を改めて持つことができるようになるため、必ず手続きをしておきましょう。


国民健康保険に加入する場合は、「生活保護廃止決定通知書」が必要となりますので事前に準備しておきましょう。


また、会社に就職する場合は会社で社会保険に加入することになりますので、特段手続きをする必要はありません。


しかし、社会保険の加入にあたってもマイナンバーは必要となりますので、あらかじめマイナンバーは用意しておきましょう。

参考:生活保護受給対象者って?条件と受給方法

生活保護受給対象者について解説します。


生活保護は生活に困窮するすべての国民に対してその程度に応じて必要な保護を行い最低限度の生活を保障するとともに自立を支援していくために設けられた制度です。


受給の対象は、様々な事情により働けなかったり、他からの援助を受けられずに生活が困窮する方となります。


窓口は生活保護を申請しようとする方が住む地域を管轄する福祉事務所です。福祉事務所では申請者の状況を調査し、保護が必要と判断すれば給付を開始します。

生活保護を受けるための受給条件

生活保護は生活に困れば誰でももらえるものではありません。生活が困窮した原因が国で定める条件にみあうものであることが必要となります。その条件は次の通りです。

  1. 資産をもっていない
  2. 働くことができない、もしくは働いても収入が少ない
  3. 他の公的な支援制度を利用しても生活できない
  4. 頼ることができる親族がいない
資産とは不動産や預貯金、自動車などがあげられます。それらすべてを手放しても生活できないのが条件の一つです。ただし例外もあります。たとえば所有している不動産の売却益よりも生活保護費で借りるアパートの家賃のほうが高くつくことがあります。このようにもともとの資産価値が低ければ資産の売却をしなくてもすむ可能性があるのです。

病気や家族の介護などで働くことができなかったり、働けたとしても収入が低く厚生労働大臣が定める最低生活費の基準を下回る方は保護の対象の対象となります。

年金に代表される公的な支援制度を利用してもなお生活が困窮する方は保護を受けられます。

経済的に頼ることができる親族がいれば、まずはそちらの支援を受けることが前提です。それでも生活できなければ保護の対象となります。

生活保護を受けるための流れ

生活保護を受けるにはまず住んでいる地域を管轄している福祉事務所で事前相談を受ける必要があります。そこでは生活保護制度の仕組みや他の社会保障制度について説明を受けながら、申請の有無について検討することとなります。


続いて生活保護の申請をすることとなった場合、福祉事務所では相談者の状況調査を行います。調査内容は次の通りです。

  1. 家庭訪問などによる相談者の生活状況調査
  2. 所有不動産、預貯金、借金の有無などの資産調査
  3. 実際の収入、年金など社会保障給付の調査
  4. 親族による援助の可否調査
  5. 就業の可否調査
以上の調査を行ったうえで生活保護の支給の有無が決まります。

生活保護の申請が通ると次の条件のもと、保護費の支給が開始されることとなるのです。
  1. 保護費は厚生労働大臣が定める最低生活費から、申請者が得ている収入を引いた差額
  2. 保護の期間中は毎月の収入を申告
  3. 担当のケースワーカーによる不定期訪問
  4. 就業できる方については就業に向けて助言、指導を行う

生活保護を受けるためには身分証明書が必要

生活保護を受けるためには本人確認のできる書類が必要となります。ただし申請する自治体によって異なるので、事前の確認が必須です。ここでは鹿児島市を例に解説します。


鹿児島市では次の3種類のいずれかを組み合わせたものとなります。


A書類

  1. 個人番号カード
  2. 写真付きの住民基本台帳カード
  3. 運転免許証、パスポート、在留カード
  4. 身体障害者手帳
  5. 船員手帳
  6. 国や地方公共団体が発行した写真付きの身分証明書

B書類

  1. 国民健康保険、健康保険、船員保険もしくは介護保険の被保険者証
  2. 国民年金手帳
  3. 写真なしの住民基本台帳カード
  4. 仮運転免許証
  5. 医療受給者証
  6. 生活保護受給者証
  7. 後期高齢者医療保険者証
  8. 敬老パス、友愛パス(どちらも鹿児島市発行のもの)

C書類

  1. 写真付きの学生証
  2. 写真付きの社員証

組み合わせは次の通りです。
  1. A書類についてはどれか1枚以上
  2. B書類についてはどれか2枚以上
  3. B書類1枚以上とC書類1枚以上
なお、これらは提示するのみでよいのですが、有効期限内の原本であることが必要となります。

まとめ:生活保護受給者は保険証がもてない

生活保護受給者の保険証について見てきましたが、いかがでしたでしょうか。


今回のこの記事のポイントは、

  • 生活保護を受給している場合は保険証を持つことができない
  • 生活保護受給者は医療券を使うことで、無料で診療行為を受けることができる
  • 生活保護受給者証は保険証の代わりにはならない
  • 生活保護受給者証は身分証として使うこともできる

です。


生活保護受給者は医療費が無料になるため、病気になったとしても心配することはありません。


しかし、そもそも生活保護は生活する上での制約も多いため、できる限り自立して生活できるようになることが重要です。


ほけんROOMでは、他にも読んでおきたい保険に関する記事が多数掲載されていますので、ぜひご覧ください。

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