更新日:2022/09/18
生活保護受給者も貯金できる?上限金額や資産条件について解説
生活保護受給者は貯金ができないというイメージがありますが、実際はどうなのでしょうか?生活保護受給者の貯金額はいくらまで可能なのかや、資産についての条件を詳しくご紹介します。また、お金があるのに申告せず不正受給してバレた場合どうなるかについても解説します。
目次を使って気になるところから読みましょう!
- 生活保護受給者は貯金できるのか?
- 生活保護受給者も条件つきで貯金はできる
- 貯金目的①生活保護をやめて自立するための資金
- 貯金目的②子供の大学進学や学費
- 貯金目的③葬儀代や老後のための必要経費
- 参考:貯金の目的が引っ越しや車の免許取得などの場合は要相談
- 生活保護受給者の貯金の上限金額にいくらまでという明確な決まりはない
- 生活保護受給者の未申告の貯金がバレると生活保護の廃止や資産没収も
- 生活保護受給者は年に一度の資産調査で現金や資産を申告する
- 正しい貯金の申告をしていないと不正受給として停止や返還となることも
- 生活保護が打ち切りになった場合再申請は可能?
- 参考:生活保護受給者の資産はどこまで調べられる?
- 生活保護受給者の貯金や資産にまつわる裁判の判例
- 貯金額約80万円で入院・看護の費用を貯金目的にしていた老夫婦の判例
- 貯金を理由に生活保護を廃止された後、裁判で勝訴した判例
- 子供の進学のために親が学資貯蓄していたお金が容認された判例
- まとめ:生活保護受給者でも目的によっては貯金できる
目次
生活保護受給者は貯金できるのか?
生活保護とは貯蓄もなく、働くこともできなくなってしまった時に国が生活を保障し自立に向けて支援する制度です。
その一方でさまざまな制約もありますが、具体的にどのような制約があるのかは詳しく知られていません。
中でも貯金について「貯金をしたら保護費が減らされるのではないか?」「いくらまで貯金できるのか?」などの疑問を持つ人は多いのではないでしょうか?
そこでここでは生活保護を受給する際に気になる貯金について
- 生活保護受給者はどのような条件で貯金が認められるのか?
- 貯金の上限金額はいくらか?
- 貯金を申告せずバレたらどうなるのか?
- 貯金に関わる判例にはどのようなものがあるか?
以上のことを詳しく解説します。
この記事を読んでいただければ生活保護受給者の貯金について理解が深まります。そして、正しく貯金をすることができれば自立をする際の助けとなるでしょう。
ぜひ最後までご覧ください。
生活保護受給者も条件つきで貯金はできる
- 自立のための資金目的
- 子供の大学進学や学費目的
- 必要経費的目的
貯金目的①生活保護をやめて自立するための資金
現在は生活保護を受給していても将来的には自立をめざすことはとても大切なことです。自立のためには資金も必要となるでしょう。
生活保護を受給していても目的によっては貯金をすることが認められていますが、将来の自立のための貯金は認められるでしょうか?
自分の力で生活を成り立たせるためという健全な目的のための貯金なので当然認められます。
大切なことは何のための貯金なのかをはっきりさせて説明ができるようにしておくことです。
貯金目的②子供の大学進学や学費
子供の大学進学にはとてもお金がかかります。
大学進学に備えて少しでも貯金をしたいというのは当たり前の考えで、それは生活保護を受給していても同様でしょう。
大学進学率が高くなる中、大学進学目的の貯金が認められるようになりました。
教育の機会均等が認められているうえ、貧困の連鎖を断ち切るためには教育が必要なので当然の流れですね。
高校生がアルバイトをして学費を貯金しても生活保護の減額対象にはなりませんので合わせて知っておくと良いでしょう。
ただし、大学に進学すると世帯分離がおこなわれ生活保護から外れます。保護の対象者が少なくなるので親の生活保護費は減額されます。
また、中学卒業までは児童手当が高校生には生業扶助として高等学校等就学費が支給されます。うまく利用して子供の教育に役立てましょう。
貯金目的③葬儀代や老後のための必要経費
自立や学費目的の他に葬儀代や老後のための必要経費目的の貯金も認められます。
生活保護受給者が高齢者であれば老後のことが気になるのは当然なので、「葬儀のため」「お墓のため」と具体的に説明できるようにしておくと良いでしょう。
また、生活保護受給者は葬祭扶助が受けられます。
対象は
- 生活保護受給者自身の葬儀
- 生活保護受給者が行う葬儀
です。
葬儀全般にかかった費用を国が補助してくれますが、貯金などがあった場合は不足分のみ補助されます。
参考:貯金の目的が引っ越しや車の免許取得などの場合は要相談
生活保護を受給していても人間らしい生活を送ることが保障されています。
そのため最低限度の生活を維持するのに必要な貯金は認められます。これまで紹介した自立や学費、葬儀・老後の資金以外にも
- 引っ越し
- 車の免許取得
- 結婚
などのための貯金は認められることがあります。
生活保護受給者の貯金は禁じられているわけではありません。しかし、1年に1回の資産申告書の提出の際、ケースワーカーの判断によっては保護費支給の減額や廃止ということもあり得ます。
貯金が認められるかどうかは目的によるので必ずケースワーカーに相談しましょう。
生活保護受給者の貯金の上限金額にいくらまでという明確な決まりはない
ここまで生活保護を受給していても目的によっては貯金ができる事を解説してきました。
それでは貯金金額に上限はあるのでしょうか?
実ははっきりとした上限金額は定められていません。
上限金額の基準は地方自治体によって50万や80万という具体的な数字があったり、生活費の半年分という目安があったりとさまざまで、統一された具体的な基準はないようです。
このような現状なので、自分で勝手に貯金をせずにケースワーカーに相談した上で行うようにしましょう。
個々の事情によっては生活保護の目的に合った貯蓄であれば、自治体の基準以上の貯金も認められることがあります。
また、健康的な生活を脅かすほどの節約をして貯金をすることは生活保護の目的からも外れるので好ましくありません。
自立に向けて生活をしっかりと立て直せるように保護費を使うことも大切です。
生活保護受給者の未申告の貯金がバレると生活保護の廃止や資産没収も
生活保護費は収入や貯金が少なく生活をするのに支障がある場合に支給されるものです。
貯金があることを隠すことは絶対にしてはいけません。
もし、貯金があることがばれてしまったらどうなるのでしょうか?
いろいろなケースがあるので一概に言えませんが、金額によっては生活保護が停止され、最悪の場合は資産が没収されることもあります。
貯金があるだけですぐに没収になることはありませんが、正しい貯金額を申告することが大切です。
生活保護受給者は年に一度の資産調査で現金や資産を申告する
平成27年3月に「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」の一部改正についてという通知が出され、1年に1回資産申告書の提出が求められるようになりました。
これまで資産申告書は生活保護申請をする際の必要書類でしたが、申請後も定期的に提出するように変更されました。
資産申告書には預貯金や現金の他、所有不動産・生命保険・自動車・借金などを記載します。記入方法が分からない場合はケースワーカーに相談して正しく記入しましょう。
また、地方自治体によっては通帳のコピーや原本が必要になるので必要書類もあらかじめ確認しておきましょう。
正しい貯金の申告をしていないと不正受給として停止や返還となることも
正しい目的での貯金は認められているので、正確に資産申告を行いましょう。
間違えて金額を少なく申告してしまったり申告するのを忘れてしまったりした場合には、多く支給された分を返還します。
意図的に不正受給をした場合は増額して返還を求められることもあります。場合によっては支給が停止されますので注意しましょう。
また、預金や貯金の口座はネット講座も含めて調査の対象です。
他人名義や子供の口座に貯金を隠すことは絶対にやめましょう。自分の口座から不審なお金の流れがあればバレてしまいます。場合によっては詐欺罪となり罰金等を科せられることもあります。
生活保護が打ち切りになった場合再申請は可能?
生活保護が打ち切りになった場合、再申請は可能なんでしょうか。
再申請は可能です。しかし、以下の場合は申請しても却下される場合があるので、注意しましょう。
- 就労指導に従わずに、能力不活用によって廃止となった者からの生活保護申請
- 就労収入を虚偽に申告して、手持ち金を遊びにつかっていた者からの生活保護申請
就労指導に従わずに、能力不活用によって廃止となった者からの生活保護申請
参考:生活保護受給者の資産はどこまで調べられる?
上記でも解説しましたが、生活保護を受けるには自分がお金をどれくらい持っているか申請しなければいけません。
しかし、資産はどこまで調べられるのでしょうか。
大きく分けると、生活保護を受けるためには以下のような調査が行われます。
- 家財道具の調査
- 銀行口座・生命保険の調査
生活保護受給者の貯金や資産にまつわる裁判の判例
これまで多くの裁判が起こされ保護費からの貯蓄が認められてきました。現在ではこれらの判例に基づいて判断がされているようです。
そこでここでは
- 入院・看護目的の80万円の貯金が認められた判例
- 生活保護廃止処分の取り消しが認められた例
- 進学目的の学資保険が認められた判例
といったこれまでの裁判判例を紹介します。
これらの判例を参考にどのような貯金が認められるのか確認してください。実際に貯金をする場合はケースワーカーに相談することも忘れないようにしましょう。
貯金額約80万円で入院・看護の費用を貯金目的にしていた老夫婦の判例
まずは秋田県の老夫婦の判例を紹介します。
生活保護費などから約80万円を貯金した老夫婦が、この貯金を収入とみなされ保護費の返還を求められました。
老夫婦は「貯蓄は将来の入院・看護に備えたもので生活保護の趣旨から外れたものではなく返還は不当」として裁判を起こしました。
それに対し、秋田地裁では老夫婦の訴えを認める判決を出しました。
その理由として
- 生活保護費の使用目的に合っていること
- 国民の感情から考えて高額とは言えないこと
といったことがあげられています。
この80万円という金額であっても生活保護の趣旨にあっていれば認められるという判例を多くの福祉事務所が参考にしているようです。
貯金を理由に生活保護を廃止された後、裁判で勝訴した判例
次に将来の不安に備えて貯金が認められた判例です。
ある人が生活保護費を切り詰めて貯金をしましたが、その貯金を理由に生活保護を廃止されました。
それに対し不服審査請求を2回行い、2015年には「保護費廃止処分の取り消し」が認められました。
貯金の目的は
- 入院費用
- 介護施設に入居に伴う費用
- 住み替えの費用
など将来に備えるものでした。
これらの目的が生活保護の目的と合っていると認められたことになります。
将来への不安は生活保護費をもらっていてももらっていなくても誰もが持つ感情でしょう。今回の判例によって将来に備えて貯金することが生活保護者であっても認められることが広く知られるようになりました。
子供の進学のために親が学資貯蓄していたお金が容認された判例
子供の進学に備えて貯金したいという考えは親なら誰が持ってもおかしくないでしょう。それは生活保護を受給していたとしても同じです。
ここでは子供の進学目的の貯金が認められた福岡の判例を紹介します。
高校進学のための資金として月3000円学資保険を積み立て満期金として約44万円を受け取ったところ、福祉事務所に収入とみなされ生活保護費が減額されました。
それを不服として訴訟を起こすと原告の主張が認められ「生活保護費の減額は違法」との判決が出ました。
判決の理由は
- 保護費を期間内に使いきる必要はない
- 生活保護の目的にかなう貯蓄は収入にならない
- 高校進学は自立に役立つ
といったものでした。
この裁判によって進学目的のため保護費から貯蓄をすることが容認されることが広く知られることになり多くの子供の未来に希望をもたらしました。
また、養育費をもらいながら生活保護を受けることも問題にはなりません。こちらに関しては養育費と生活保護についての記事でまとめていますので参考にしてみてください。
まとめ:生活保護受給者でも目的によっては貯金できる
ここまで生活保護受給者は貯金できるのかについてを解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
この記事のポイントは
- 生活保護受給者も条件付きで貯金ができる
- 貯金の上限金額ははっきりと決まっていない
- 申告しないと不正受給として返還を求められることもある
- 生活保護者の貯蓄が認められた判例がいくつもある
でした。
生活保護を受給していても自立や進学など将来に備えて貯蓄ができることがお分かりいただけたかと思います。
ケースワーカーと相談して将来に向けた資金設計をすることはとても大切です。今現在の生活を安定させ自立のためにできる事をひとつひとつ行っていきましょう。
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