火災保険の再調達価格とは?時価計算と保険金額はいくら変わる?

火災保険の再調達価格とは損害が生じた対象物を再取得する際にかかる費用を指します。火災保険の保険金額の設定には再調達価格(新価)と時価による設定の2つがあり、契約する際は再調達価格での保険金額設定がおすすめです。今回は、火災保険の再調達価格についてわかりやすく解説します。

火災保険の再調達価格とは?時価計算で保険金額はいくら違う?


この記事をご覧の方は、「火災保険の再調達価格って何?」とか「時価額との違いは?」といったような疑問を抱いているかと思います。


このことは火災保険の契約にかかわる重要なことで、しっかり理解していないと場合によっては保険会社から補償金を十分に受け取ることが出来ずに困る可能性があるのです。


そこで、この記事では、

  • 火災保険の再調達価格とは何か
  • 火災保険の再調達価格(新価)の算定方法
  • 火災保険の保険金額の計算例
  • 再調達価格と時価額どちらがいいのか

以上のことを中心に解説していきます。

この記事を読んでいただければ、火災保険を契約する際の正しい保険金額の計算方法が理解できるようになります。

是非、最後までご覧ください。

火災保険の再調達価格とは

再調達価格とは火事によって全焼した家を元通りに再築したり、再度購入したりする時に必要な金額のことです。


家が火災によって全焼した場合、多くの方は同等の価値をもった家を建て直すか、購入することになるでしょう。


その際に問題となるのは、全焼した家と同価値の家を建てるためにいくら必要になるのかということです。


火災保険ではこのような非常時に、被害を受けた分の金額を補償してくれるのです。


このように、建物や家財において同等なものを再築・再購入するのに必要な金額のことを再調達価格(新価)と呼びます。


これに対して、新価格から経年劣化などによって消耗した分の金額を差し引いたものを時価額と呼んでいます。


火災保険の契約には、これらの再調達価格(新価)または時価額を使って保険をかけることになるのです。

火災保険の再調達価格と新価の違い

これまで、火災保険の再調達価格(新価)と時価の違いをみてきました。その中で、再調達価格は新価と同じと扱ってきましたが、実際には再調達価格は新価と若干の違いがありますので、ここではそれを確認していきましょう。


損保ジャパンの個人用火災総合保険『ほ~むジャパン』によると

  • 再調達価格とは、損害が生じた地および時において保険の対象と同一の質、用途、規模、型、能力のものを再取得するのに要する額
  • 新価とは、保険の対象と同一の構造、質、用途、規模、型、能力のものを再築または再取得するのに要する額

とのことです。


これを比べると、再調達価格は同一の家を再取得するのに要する額で、新価は同一の家を再築または再取得するのに要する額となっています。違いがわかりましたでしょうか。


再調達価格は再取得、新価は再築または再取得という違いがあり、家を再築するための費用を火災保険の価格にするのであれば、新価を使うのが正しいです。

火災保険の「新価」の算定方法

これまで、火災保険について再調達価格(新価)と時価との違いを確認しました。


この価格の違いは実際どのくらいになるのか、これから火災保険の算定方法をみていきます。


まずは、再調達価格(新価)についてです。火災保険の補償の対象になるのは、建物や家財になりますが、家財には家電や家具、衣類などが含まれています。これらの物をもう一度購入して、家は再築するとしてそれにかかる費用を全部合算したものです。


それにより、たとえ火災によって全焼しても、同等の建物を再築し、家財を元通りに購入できるのです。


とはいえ、簡単に再築すると書きましたが、マンションの場合などはどうなるのでしょうか。


これから、建物の新価について一戸建ての新築物件の場合と、一戸建ての中古物件の場合、マンションの場合とにわけて、再築にかかる費用を詳しく見ていきます。

建物の評価額の算定方法

火災保険の再調達価格(新価)についてですが、建物は再築にかかる費用で火災保険をかけなければ建物は元通りにはなりません。その費用の再調達価格(新価)が建物の評価額となるのです。


建物の評価額をそれぞれの場合にわけて見てみましょう。

一戸建て新築物件のケース

この場合は、購入の際にかかった金額から土地代と諸経費を差し引くと、建物代になるので、その金額が建物の評価額です。

建て売りなどで土地建物を一緒に購入した場合は売買契約書を確認しましょう。土地代には消費税がかかりません。消費税がかかっているところが、建物代に関するところなので、次の計算式がわかります。消費税額から消費税率で割ると建物代が算出できます。

一戸建て中古物件のケース

一戸建ての中古物件ではその物件が建てられた年がいつかと、新築時の金額がわかるかどうかで計算方法が変わってきます。

建築年と新築価格が判明している場合は年次別指数法という計算式が決まっていますので保険会社に確認してください。年次ごとに数値が違うため、新築の建物の価格にその数値をかけ算して建物評価額を決めます。

建築年と新築価格が不明な場合は、建物の構造などにより標準的な建築費に建物の面積をかけ算して出した新築費単価法という計算式で算出します。

どちらにせよ、評価額があまり低いともし火災が起きたときに保険金がたりないということになるので、保険会社に相談して、実態に合わせた金額にするのが妥当です。

マンションのケース

マンションでは、物件の購入価格に専有部分の建物以外に共有部分の価格と土地代が含まれています。火災保険の評価額に入るのは専有部分の建物だけのため、専有部分の面積に標準的な建物の価格をかけ算して算出することになります。

家財の評価額の算定方法

家財の補償額を決めるに当たってまずは二つの評価方法があることをおさえましょう。


その二つの評価方法とは積算評価簡易評価です。


・積算評価

積算評価とは住宅にある全部の家財を確認して、正確な金額を求める方法。


・簡易評価

簡易評価とは保険会社が世帯主の年齢や家族構成を基にあらかじめまとめているおおよその目安を用いて保険金を決める方法。


積算評価はしっかりと実施することが出来れば、正確な補償金を受け取ることが可能ですが、多くの手間がかかるためあまり採用されていないのが現状です。


そのため多くの保険会社では簡易評価を用いて補償金額を設定します。


以下の表は、日新火災海上保険株式会社が例として出している簡易評価表です。


    世帯主年齢     大人2人 大人2人+子供1人   単身
25歳前後・未満520万円600万円310万円
30歳前後700万円780万円310万円
40歳前後1,190万円1,270万円310万円
50歳前後・以上1,450万円1,530万円310万円


上記の表から、世帯主年齢や家族構成に応じて評価額に差があることが分かります。


保険会社はこのような簡易評価表を用いて、補償額を決めています。

再調達価格・時価による火災保険の保険金額の計算例

火災保険の保険金額について、もう少し詳しくみていきましょう。 


保険金額はどのような計算式で支払われるかをご存じでしょうか。 

  • 損害保険金額=損害額ー自己負担額(免責金額) 

支払われる保険金は契約時の保険金額が限度になっています。 


たとえば、1,000万円を損害保険金額の限度にしている契約では、損害額が1,020万円で自己負担額が20万円の場合1,000万円が保険金額として支払われることになります。 


これを踏まえて、次に再調達価格・時価による火災保険の計算例をみていきましょう。


・再調達価格計算例

再調達価格は建物を新築で購入した金額になりますので、新築の場合は購入金額そのまま例として3,000万円とします。


その新築時建物3,000万円を10年後中古で2,000万円で購入した場合、再調達価格は新築時の建物価格3,000万円とし、3,000万円で建物の評価額とします。


・時価計算例

時価で計算した場合の保険金額は経年劣化して1,000万円の価値がさがり、2,000万円として保険をかけることになり、もしその時点で火災で全焼した場合は2,000万円しか保険がおりず、元の家は建てられないということになるのです。

参考:再調達価格(新価)の方が時価よりも良い理由

これまで、再調達価格(新価)と時価について確認してきましたが、再調達価格でないと、いざというときに保険金だけでは家の再建費用をまかなえないということがわかりましたでしょうか。


最近の火災保険の契約では、たいてい再調達価格で契約することが多いですが、中古住宅などでは算出が難しいこともあり、確認が必要です。


再調達価格については他にも注意したほうがいい点がありますので、このまま続きをお読みください。

再調達価格は同等の建物が再建できる分の再取得金額を得られる

再調達価格で火災保険を契約した場合には、被災した建物と同等の価値のある建物を再建できるだけの保険金が支払われます。


たとえば、20年前に2,000万円で新築した建物があるとします。


その建物が20年後に火災によって全焼してしまった場合、再調達価格をもとにした保険金額で火災保険に加入していれば、同じ価値の建物を再建することができます。


そこで気をつけたいのは、再調達価格が保険に加入した時と同じであるとは限らないことです。


その理由は、物価の水準が20年前と比べて同じでない可能性があるからです。


そのため、付保するべき保険金額は必ず再調達価格と同額にする必要があります。


また、事故などの際に保険会社から支払われる保険金は付保されている保険金額が上限となります。


20年後の物価水準で考えて、同じ価値の建物を建てる場合に2,500万円かかるとすれば、保険金額も2,500万円にする必要があるのです。


再調達価格をもとにすれば、被災した建物と同じ価値の建物を再建することができますが、そのためには毎年保険金額の見直しを行なわなければなりません。

時価額は再取得金額が不足する可能性がある

保険金の設定を時価額にした場合、建物や家財が被害を受けたとしても十分な保険金を受け取ることができない可能性があります


先ほど述べた通り、時価額とは設定した再調達価格から建物の経年劣化等による価値の減少分を差し引いて算出されるものです。


先ほどと同じように、20年前に2,000万円で新築として購入した建物を例にして考えてみましょう。


20年後には建物の経年劣化等でその建物の価値が1,000万円ほど落ちたとしましょう。


するとこの建物の再調達価格を2,000万円とした場合に算出される時価額は、


2,000万円(再調達価格)ー1,000万円(経年劣化等による価値の減少分)=1,000万円」


となり、この1,000万円が保険金を時価額にした場合に保険会社から支払われる額になります。


こうしてみると保険金を時価額で設定した場合、保険会社から十分な補償金を受け取ることが出来ないということが分かります

注意:保険料自由化前は新価ではなく時価で計算されている

最近の火災保険契約を見てみると、実はほとんどの保険会社で再調達価格(新価)が用いられており、時価契約はあまり見られないようになりました。


しかしここには思わぬ落とし穴があるので注意が必要です。


1998年に保険料率の自由化が行われました。自由化の後は、各保険会社が再調達価格を採用し始めました。


しかし、1998年以前の契約では時価で計算されることがほとんどでした。


現在では保険契約が最長でも10年となっていますが、以前までは最長で36年の長期契約が可能であったため、現在でもこのプランで契約されている方も多いのではないでしょうか?


何年の前に火災保険の長期契約をしている方は改めてご自身の契約内容を確認してみた方がいいかもしれません。

まとめ:火災保険の保険金額は再調達価格(新価)で計算しよう

火災保険の再調達価格と時価額の違いについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。


今回のこの記事のポイントは、


  • 火災保険の再調達価格は建物、家財ともに決め方に決まりがある
  • 時価ではなく、再調達価格で契約しよう
  • 再調達価格には物価の上昇も加味しよう
です。

評価方法の違いによって、事故の際の補償が大きく異なってしまいます。今一度、現在加入している火災保険の内容の見直しをして、補償を万全にしましょう。

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