更新日:2023/01/26
学資保険が妻名義の場合控除はどうなる?年末調整の控除額はいくらか
学資保険は妻名義の場合でも控除の対象になる場合があります。年末調整にて学資保険が控除の対象になるのは生命保険の機能を持つからです。この記事では、学資保険が年末調整で控除対象になる理由・控除の具体的な金額・受け取り方法について解説します。
目次を使って気になるところから読みましょう!
- 学資保険は妻名義でも年末調整の控除対象になる
- 学資保険が年末調整の控除対象になる理由
- 学資保険も生命保険の一種のため生命保険料控除が適用される
- 契約者が妻の名義であっても夫の所得から控除することができる
- 学資保険の年末調整で控除を受ける際の注意点
- 新契約と旧契約では生命保険料控除額が異なる
- 一般生命保険料控除額には上限がある
- 契約者が誰であっても保険料負担者の生命保険料控除の対象となる
- 契約者が妻の場合、受取人は妻またはその親族である事
- 学資保険の年末調整の控除は具体的にいくら戻ってくる?
- 契約者が妻である場合の学資保険の生命保険料控除を受ける方法
- 会社員の方は生命保険料控除申告書に妻の分の保険料を記入する
- 自営業者は確定申告で保険料控除を申請する
- まとめ:学資保険は妻名義でも控除を受けられる
目次
学資保険は妻名義でも年末調整の控除対象になる
10月下旬頃から11月中旬頃までに保険会社から郵送される「控除証明書」が自宅に届き、「うちの学資保険の契約者は妻だった」と思い出した方は多いのではないでしょうか。
「学資保険は年末調整で控除の対象になる?」「契約者が妻の場合は保険料の控除ってどうなるんだっけ」と気になる方もいらっしゃると思います。
国税庁「妻が契約者の生命保険料」で発表の通り、実は学資保険は妻名義でも夫の年末調整の控除対象にすることができます。
知らずに損をするなんてもったいないですよね。できることがあるのであれば絶対に知っておくべきです。
そこでこの記事では、
- 学資保険が年末調整で控除対象になる理由
- 控除を受ける際の注意点
- 年末調整で還ってくる具体的な金額
- 年末調整の手続き方法
について解説します。
ぜひ最後までご覧ください。
学資保険が年末調整の控除対象になる理由
子どもの教育資金の準備のために学資保険に入られているご家庭も多いと思います。
貯蓄が目的と考えて入っていた学資保険が年末調整の控除対象になるのは嬉しいですね。
では何故、控除対象になるのでしょうか?
- 学資保険も生命保険の一種のために生命保険料控除が適用される
- 契約者が妻の名義であっても夫の所得から控除することができる
学資保険には契約者や被保険者の保障もついていますので生命保険であるからです。
また契約者が妻の場合でも夫の所得税の申告の際、控除対象とする事が出来ます。
それでは詳しく見ていきましょう。
学資保険も生命保険の一種のため生命保険料控除が適用される
学資保険は教育資金としての貯蓄だと考えている方が多いので、年末調整時、学資保険が生命保険料控除の適用を受けられる事をご存じない方もいらっしゃると思います。
しかし、学資保険は貯蓄的要素が強いですが、一方で保険料払込免除による契約者の死亡に関する保障がついています。
生命保険とは被保険者に万が一のことがあった場合に、家族の生活を保障する役割があります。
学資保険の仕組みは特殊で、この場合の被保険者=契約者の意味で該当することになりますので生命保険の一種となり、生命保険料控除が適用される事になります。
生命保険料控除とは以下の3種類があります。
- 一般生命保険料控除
- 介護医療保険料控除
- 個人年金保険料控除
生命保険料控除とは、生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料を支払っている人が年末調整時に所得控除を受けられる制度の事です。
このうち、学資保険は一般生命保険料控除に該当します。
契約者が妻の名義であっても夫の所得から控除することができる
- 保険金受取人が保険料の払い込みをする者
- 保険金受取人が保険料の払い込みをする者の配偶者・その他の親族
学資保険の年末調整で控除を受ける際の注意点
学資保険の他に生命保険や医療保険などに加入している方は、1契約ごとに証明書が送られてきますので、確定申告までになくさないようにしまっておきましょう。
学資保険を年末調整を受ける時の注意点は以下のとおりです。
- 新契約と旧契約では生命保険料控除額が異なる
- 夫の一般生命保険料控除額には上限ある
- 契約者が誰であっても保険料負担者の生命保険料控除の対象となる
- 契約者が妻の場合、受取人は妻またはその親族である事
これについてひとつずつ確認していきましょう。
新契約と旧契約では生命保険料控除額が異なる
平成23年12月31日までに契約した保険の場合で、2種類に分かれます。
- ・一般生命保険料控除
- ・個人年金保険料控除
年間保険料支払い総額 | 控除額 |
---|---|
25,000円以下 | 全額控除 |
25,001円~50,000円まで | 保険料支払総額×1/2+12,500円 |
50,001円~100,000円まで | 保険料支払総額×1/4+25,000円 |
100,001円以上 | 一律50,000円 |
控除の適用限度額は、上の表を見ていただくと一般生命保険料・個人年金保険料それぞれで最高5万円です。
一般生命保険と個人年金保険の両方に加入している人の適用限度額は、一般生命保険料控除5万円+個人年金保険料控除5万円=10万円になります。
(住民税はそれぞれで最高3万5,000円ですので、3万5000円+3万5000円=7万円が適用限度額です。)
●新契約
平成24年1月1日から契約した保険の場合で、3種類に分かれます。
- ・一般生命保険料控除
- ・介護医療保険料控除
- ・個人年金保険料控除
年間保険料支払い総額 | 控除額 |
---|---|
20,000円以下 | 全額 |
20,001円~40,000円まで | 保険料支払総額×1/2+10,000円 |
40,001円~80,000円まで | 保険料支払総額×1/4+20,000円 |
80,001円以上 | 一律40,000円 |
控除の適用限度額は、上の表を見ていただくと3種類それぞれで最高4万円となります。
一般の生命保険と介護医療保険、個人年金保険の3つに加入している人の適用限度額は
4万円+4万円+4万円=合計12万円になります。
(住民税はそれぞれ最高2万8000円ですので、2万8000円+2万8000円+2万8000円=8万4000円です。)
学資保険は、旧契約・新契約ともに「一般の生命保険料控除」の対象となります。
一般の生命保険料控除の対象となる理由は、学資保険は教育資金としての貯蓄要素と生命保険としての保険の要素の二本立ての仕組みになっているからです。
契約者に万が一の事があった時にはその後の保険料の払い込みが免除になり満期で保険金が
受け取れます。
また親や子の医療保障もついている保険もありますので、一般の生命保険料控除の対象となるのです。
一般生命保険料控除額には上限がある
一般の生命保険料控除の上限は上の表を見ていただけるとお分かりになると思いますが、旧契約で5万円、新契約で4万円を限度として対象になることが分かります。
保険料で見ますと、旧契約で1年間に払う保険料が10万1円以上、新契約では1年間に払う保険料が8万1円以上で限度額の上限に達します。
学資保険は一般生命保険料控除に該当します。
一般の生命保険料控除に当てはまる保険は、学資保険のほかには一般的な死亡保険や個人年金保険料の控除に該当しない種類の個人年金保険などが入ります。
つまり生命保険の種類の中でも一番多い保険種類になります。
ということは一般に計算しようとした時に、夫の死亡保障のついた生命保険が他にあると、その保険だけで上限である8万1円を超えてしまう場合も多くなります。(新契約の場合の限度額です。)
この8万1円を超えてしまうと、他に控除する保険がいくつあったとしても控除額の4万円が上限となってそれ以上は控除されないことになります。ご家庭の生命保険の内容を今一度確認してみることをおすすめします。
契約者が誰であっても保険料負担者の生命保険料控除の対象となる
まれに、子どもの祖父や祖母が孫のためにと掛けている場合もありますが、多くは両親どちらかが契約者になっています。
ここでは誰が契約者かではなくて、誰が保険料を支払っているかが控除対象者を決める大事なポイントとなります。
つまり、保険料を負担している人の生命保険料控除の対象となります。
契約者が妻の名義であっても保険料を負担しているのは夫の場合は何ら問題なく対象となります。
契約者が妻の場合、受取人は妻またはその親族である事
契約者と受取人を同じ人にするのは税金を多く払わないようにするためにされているケースが大半です。ですからこの点は条件を満たしている場合が多いと思われます。
学資保険の年末調整の控除は具体的にいくら戻ってくる?
それでは実際に学資保険の年末調整をした場合、還付金はいくらになるか実際の例で見ていきたいと思います。
- 30歳男性会社員
- 年収:450万円
- 家族:妻(30歳)子(0歳)妻は専業主婦
- 学資保険料:月額10,000円(新契約)
- 保険料払込期間 20年
1.給与所得から給与所得控除額を引く。
450万円ー給与所得控除(450万円✕20%+54万円=所得金額306万円…①
<給与所得控除額の計算式>
収入金額 | 給与所得控除額 |
---|---|
180万円以下 | 収入金額×40% 65万円に満たない場合には65万円 |
180万円超〜360万円以下 | 収入金額×30%+18万円 |
360万円超〜660万円以下 | 収入金額×20%+54万円 |
660万円超〜1,000万円以下 | 収入金額×10%+120万円 |
1,000万円超 | 上限220万円 |
2.①の所得金額から②の所得控除を差し引く→課税所得となる。
所得控除には、基礎控除38万円・社会保険料控除55万円・配偶者控除38万円 ・配偶者特別控除38万円があります。
所得控除額は38万円+55万円+38万円+38万円=169万…②
課税所得=①-②=306万ー169万=137万…③
3.所得税の税率は下記表より5%となります。
<所得税の税率>
課税所得額 | 税 率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超〜330万円以下 | 10% | 9万7,500円 |
330万円超〜695万円以下 | 20% | 42万7,500円 |
695万円超〜900万円以下 | 23% | 63万6,000円 |
900万円超〜1800万円以下 | 33% | 153万6,000円 |
1800万円超〜4,000万円以下 | 40% | 279万6,000円 |
4000万円超 | 45% | 479万6,000円 |
住民税は課税所得の10%が一律徴収となります。
一般生命保険料控除額は1年間の支払い保険料が8万1円以上の場合は所得税40,000円・住民税28,000円です。
④所得税40,000円✕5%=2,000円
⑤住民税28,000円✕10%=2,800円
※ 還付金は④+⑤=2,000円+2,800円=4,800円となります。
学資保険の保険料払込期間が20年なので、20年間で計算すると還付金は4,800円✕20年=96,000円となります。
長い目で見ると大きな金額が還付されることになります。
契約者が妻である場合の学資保険の生命保険料控除を受ける方法
ただし、妻が契約者になった場合、夫の所得控除を受けるための条件が下記の通り3つあります。
- 戸籍上の配偶者であること
- 生計を一にしていること
- 妻の収入が103万円以下であること
それではひとつずつ確認していきたいと思います。
1,戸籍上の配偶者であること
生命保険料控除を受けるためには戸籍上の配偶者である必要があります。
控除を受ける該当の年の12月31日現在婚姻状態であるか否かが、控除を受けるための条件となります。
例えば、12月20日に離婚が成立し戸籍上の夫婦でなくなった場合、その年の控除を受けることができなくなります。
2.生計を一にしていること
生計を一にするとは日常生活のお金を共にすることです。
所得税法の基本通達によると、
- 同居の場合は生活の財源が共通していること
- 別居の場合は生活費等の送金が行われていること
つまり家計においてお財布がひとつ、という捉まえ方でいいでしょう。
3.妻の収入が103万円以下であること
妻が専業主婦ではなくパートに出ている場合でも、妻の収入が年間103万円以下であれば控除対象となります。
これは、夫の扶養控除に入るための年収限度額になります。
なお、確定申告の方法と還付金の受け取り時期をまとめましたので参考にしてください。
●確定申告の方法
- 会社員の方は保険料控除申告書に妻の分の保険料を記入する
- 自営業者は確定申告で保険料控除の申告をする
- 会社員の方は12月~1月にかけて給料とともに戻ってくる
- 自営業者は申告してから1ヵ月~1ヵ月半程度の期間がかかるので3~4月に戻ってくる
会社員の方は生命保険料控除申告書に妻の分の保険料を記入する
この年間保険料総支払額とは、夫の生命保険と学資保険など、該当となる保険を限度額いっぱいまで記入する必要があります。
保険料支払総額については、10月下旬ころから11月中旬ころまでに保険会社から送られてくる「生命保険料控除証明書」に保険料支払総額の記載がありますので確認しながら記入してください。
「生命保険料控除証明書」は、1契約につき1通送られてきますので、すべての保険の合計額を記入する必要があります。
ただし1通、あるいは2通を書いた段階でそれぞれの控除の限度額を超えた場合はそれ以上書いても控除額が増えることはありませんので書く必要はないです。
なお、保険料控除申告書には保険会社から送られてきた生命保険料控除証明書を貼付して一緒に提出してください。
自営業者は確定申告で保険料控除を申請する
また、確定申告を受ける際、マイナンバーの番号を記入する欄が申告用紙にあります 。
必ず必要となりますので印鑑とともに忘れずに持参しましょう。
確定申告の時期は、遅れれば遅れるだけ還付金が戻る時期も遅れますので、早めに行うことをおすすめします。
学資保険の節税についてはこちらで詳しく解説していますので、ぜひ読んでみてください。
まとめ:学資保険は妻名義でも控除を受けられる
ここまで学資保険の契約者が妻名義の場合、生命保険料控除はどうなるがを見てきましたがいかがだったでしょうか。
学資保険の契約者は夫名義でも妻名義でも年末調整の控除対象になることが分かりました。
控除対象になる理由は、学資保険は教育資金としての役割がありますが、同時に生命保険の一種でもあるからです。
学資保険は3つの生命保険料控除のうちの一般生命保険料控除に該当します。
学資保険の契約者が専業主婦の妻名義でも、実際に保険料を支払っている夫の所得から控除出来ます。
ただし控除を受けるには保険金受取人に次の2つの条件があります。
- 保険料の払い込みをする者
- 保険料の払い込みをする者の配偶者・その他の親族
生命保険料控除は平成24年1月1日以前の旧契約と以降の新契約では控除額が変わりますので気をつけましょう。
新契約の方が介護医療保険料が増えて3つの控除保険料になりましたので、全体としては控除額が大きくなっています。
実際に学資保険の年末調整での還付金はいくら戻ってくるかシュミレーションしてみました。
保険料1万円、年収450万円の一般的なご家庭で計算すると、1年間で4,800円戻ってくる事が分かりました。
学資保険の年末調整での生命保険料控除申請を正しく行って還付金を受け取りましょう。
長い目で見ると大きな差が出てきます。