中絶は生命保険の対象となる場合とならない場合があります!

中絶によって生命保険の対象になるか、ならないかはケースにより異なります。中絶は経済的負担を軽減する生命保険金や助成金の有無に注目がいきがちですが、ご自身の身体的、精神的負担と、中絶の必要性を十分考慮した上で判断すべきです。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

中絶手術で生命保険はおりるのか

中絶は女性の身体のみならず、精神に様々な影響を与えます。中絶を望むならば、手術の内容やリスクについて知っておくべきです。

  • 中絶手術はどこの病院でもできるわけではない

中絶手術は、各都道府県の医師会が指定する「母体保護法指定医」が行うことを認められています。

手術をしてもらう病院を選ぶ場合は、この「母体保護法指定医」であることを確認し、通院に無理がかからないような通いやすい病院にしましょう。




  • 手術をする前に必要なこと

原則として中絶手術を受ける前に、ご自身と子供の父親の署名および捺印をした同意書が必要です。


ただし、子供の父親が死亡や、行方不明で意思確認のできない場合や、性的な乱暴による場合は、ご自身の同意のみで足ります。

手術の際には、同意書のほか、生理用ショーツやナプキン、入院が必要なときはパジャマや替えの下着、洗面用具等を準備します。

また、手術前のおよそ10時間ぐらいから飲料水を含めた飲食はできなくなります。



  • 中絶費用について

手術費用は病院ごとに異なりますが、保険の適用がないと妊娠初期(12週未満)の場合は10万円前後と言われています。


入院が必要な場合は、さらに入院費等がかかることになります。

この中絶手術に生命保険が適用されるか否かは、ケースにより異なります。




中絶を選択した理由によって保障されるかが決まる

中絶は、手術を受ける女性の身体や精神に影響を与えるばかりか、手術費用の支払いなど経済的な負担にもなります。

生命保険が適用されるかどうかは、中絶手術を選択した理由により決まります。

自分の都合による中絶手術の場合

生命保険はおりず、中絶手術は自己負担となる

手術費用は妊娠初期(12週未満)の場合は10万円前後と言われています。ただし、入院しなければいけない場合には入院費等もかかっていまします。


  • 自己都合による中絶の場合は生命保険は下りない

自己都合とは、経済的な理由で子供を育てられないためやむを得ず行う場合と、レイプによる妊娠の場合です。これらのケースでは生命保険は適用できません。


生命保険が適用されないのは、生命保険金が下りることを幸いとし、安易な中絶に向かうことを抑止するという理由があります。

中絶手術を行う病院の中には、ご自身が学生であるなら「学生割引」をしてくれる場合があったり、クレジットカードや分割ローンで支払いもできる病院もあります。

費用負担が気になる場合は、一度、手術を希望する病院に相談してみましょう。

ただし、中絶手術は早ければ早いほど、身体への負担が少なくなります。ご自身の負担をできるだけ軽減するためにも、支払い方法より生活圏から近く、通院もしやすい病院を選ぶことをおすすめします。



  • 性被害を受けた場合は、迅速に対応を!

レイプによる性犯罪を受けた場合の精神的ショックは計り知れないものがあります。


しかし、最善の策は何より速やかに警察へ申告し被害届を提出してください。

都道府県警では性被害に対処するため、その被害にかかる初診料、診断書費用、緊急避妊のための費用等について、公費により負担する制度を運用しています。

担当する警察官は、女性の人権に配慮し同性の方が就くことも多くなっています。

ショックではあるでしょうが、恥ずかしがらずに当時の状況を報告しましょう。

医師の判断による中絶手術の場合

生命保険の手術給付金が支給される

自己都合ではなく、このまま出産すると流産の危険はもとより、妊婦の生命も危うくなるような事態では、医師の判断で中絶手術を行う場合があります。

この場合には、生命保険の手術給付金が下りることになります。この生命保険金は生命保険各社により給付される額が異なります。

妊娠85日以後であれば、出産育児助成金が支給される

健康保険に加入している場合は、妊娠85日(4ヵ月)以上の状態で人工中絶を行った場合は、「出産育児助成金(一時金)」の対象となります。

助成金(一時金)の支給額は、出生時1人につきおよそ42万円です。

ただし、この助成金(一時金)を受け取ることができるのは「治療行為」としての手術の場合のみです。

経済的な理由での手術は対象外です。これは、生命保険金の手術給付金が下りない場合と同様です。



助成金の支給条件を満たしてから手術をしたほうが良いは嘘

中絶手術は、妊娠初期(12週未満)と妊娠中期(12週~22週未満)でそれぞれ異なる方法をとります。

妊娠初期(12週未満)は、医療器具を用いて胎児と胎盤を除去または吸引する手術を行います。

通常は10分から15分程度で手術が終了し、体調に問題がなければ手術当日に帰宅できます。

妊娠初期の手術は非常に身体への負担の少ないと言えます。

一方、妊娠中期(12週~22週未満)は、薬剤で人工的に陣痛を起こし、流産させる方法がとられます。

この方法は非常に女性の身体に負担を与え、数日の入院が必要になります。

費用も高額になり、手術費に加え入院費等も支払わなければなりません。

出産育児助成金は、この妊娠中期の中絶手術を対象とするものです。

経済的な負担が緩和されるから妊娠85日(4ヵ月)以上になるまで待つと言う安易な考え方は、手術による母体に決して軽くは無い負担や入院も考慮して妥当とはいえません。

さらに、妊娠中期の中絶の場合は、手術費、入院費の他に、様々な手続きや費用が必要になります。

妊娠85日以後から、中絶費用が一気に高くなる

前述した通り、妊娠初期(12週未満)と妊娠中期(12週~22週未満)では、手術方法が異なり、妊娠中期の手術は人工的に流産させるという、母体にかなりの負担を及ぼす方法をとります。

中絶費用は手術・入院におよそ40万円ほどかかります。妊娠初期(12週未満)の手術費用(約10万円程度)と比較しても高額です。

妊娠85日以後の中絶の場合、死産届の提出、火葬、埋葬などが必要

妊娠中期の中絶を終えた場合は、胎児の死産届を市区町村へ提出、胎児の埋葬許可証(火葬許可証)の交付手続きを行い、火葬費用、埋葬費用も支払わなくてはなりません。

火葬の費用はおよそ10万円を超え、埋葬費用はかなり差はありますが数万円以上かかるのが通常です。

手術費、入院費ばかりではなくその他の出費も考えなければなりません。

まとめ

女性の妊娠、出産では、残念ながら望まれて生まれてくる子ばかりではないケースもあります。

中絶がその解決方法の一つであることは認めざるを得ないと言えます。

妊娠自体にもリスクはあり、母体保護の目的のもと医師の判断や、医師により中絶を勧められ同意した結果の中絶には、生命保険や助成金制度が適用されるべきです。

経済的負担等が理由の場合は、生命保険の適用はありませんが、それでもなお中絶を望む場合は、中絶の是非を冷静に見極める必要があります。

中絶の方法が最良の方法であるとご自身やパートナーが判断した場合には、できるでけ迅速に中絶手術を行いましょう。

ただし、やむを得ない理由にせよ生まれてくる子の生命、将来を奪ってしまうことになることをご理解願います。

現在の法律では「特別養子縁組」制度が存在します。特別養子縁組とは、原則として6歳になるまでの子であれば、手続きにより、何らかの理由で養育ができない親との親子関係を解消し、子が養親の「戸籍上の子」となる制度です。

そして、「児童相談所」、社団法人や非営利団体等の「民間あっせん事業者」、主に産婦人科をはじめとした「医療機関」が担い手となり、特別養子縁組の成立に必要な養子と養親のあっせんを行っています。

法律的な手続きや、子がどのような過程を経て養親のもとへ行くか、前述したあっせん機関でくわしく説明を受けることができるはずです。

この制度を活用をすることは、生まれてくる子の命のみならず、ご自身にとっても、手術の身体的負担からの解放、何よりも中絶をすることで苛まれる罪悪感から解放されることにつながるはずです。



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