知っていないと損をする、介護保険申請の方法とその流れについて

介護保険のサービスを使うには、まず要介護認定の申請が必要です。でもどこで、どんな風に、どうやって申請すればよいのでしょうか。またその際に注意すべきことは?介護保険の申請方法とその流れについて、いろいろなパターンを想定して解説していきます。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

介護保険の要介護認定の申請に関して必要な情報まとめ

最近体が弱って、一人で家事をするのが大変になってきた。

突然の病気やケガで日常生活に助けが必要になった。


そんな理由で、介護保険を初めて使おうと思い立ったとき。

大抵の場合、ご本人もご家族も何から始めたらよいのか

よく分からないことがほとんどであるかと思います。


介護保険サービスを利用するときには、まずは要介護認定の申請が必要です。

申請の方法やその流れについて、更新・見直しの申請方法も含め、

「ここだけの話」も交えながら詳しくご説明していきたいと思います。

介護保険の要介護認定の手続き・申請

まずは、そもそも介護保険を申請できる資格とはどういうものなのか。

申請するときには、具体的に何をどこへ持っていけばいいのか。

スタートの部分から解説していきます。



介護保険を申請するタイミング(年齢)

介護が必要になったとき、何歳から介護保険の申請をすることができるのでしょうか。

結論から言うと、「40歳以上」です。

ただし、40歳以上なら誰でも大丈夫というわけではありません。

年齢層によっては、さまざまな条件があるのです。


まず認定を受ける大前提として

申請しようとする方が介護保険に加入している必要があります。

つまり「介護保険の被保険者」であるということですね。

では介護保険の被保険者とは、どういう方なのでしょうか。


まず、65歳以上の国民は原則全員が介護保険の被保険者となっています。

介護保険料は年金から天引きされているか、納付書が送られて来ているはずです。

ただし生活保護の方は、保護費の「生活扶助」で保険料がまかなわれています。

(サービス利用料の自己負担分は「介護扶助」でまかなわれます)


65歳以上の介護保険被保険者を「第1号被保険者」といいます。

第1号被保険者は、介護が必要となった原因疾患を問われることはありません。

「別に病気じゃないけどなんだかダルいから」でもなんでもOK。

堂々といつでも申請してください。


そして次に40歳~64歳の方について。

この年齢層の健康保険加入者は、自動的に介護保険の被保険者になっています。

介護保険料は健康保険料と一緒に徴収されています(一部の被扶養者は免除)。

この方々を、第1号被保険者に対し「第2号被保険者」といいます。


では、医療保険に加入していない生活保護の方は?

こちらは介護保険料を払っていないので、介護保険の被保険者ではありません。

よって、介護保険は使えません。

でも安心してください、「同じサービス」は問題なく使えます。

ただその利用料が介護保険からは支払われず、 全額「介護扶助」でまかなわれるだけです。


とはいえ介護扶助も使い放題というわけにはいきませんから、

第2号被保険者と同じ基準で認定を受け、同じ基準でケアプランが作成されます。

こういった方々を「みなし2号」と呼んでいます。


そして第2号被保険者は第1号被保険者とは異なリ、

なぜ介護が必要になったのかという原因疾病が限定されているのです。


介護保険では、老化が原因とされる以下の「特定16疾病」が定められています。


がん末期

関節リウマチ

筋萎縮性側索硬化症

後縦靱帯骨化症骨折を伴う骨粗鬆症

初老期における認知症

進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病

脊髄小脳変性症

脊柱管狭窄症

早老症

多系統萎縮症

糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症

脳血管疾患

閉塞性動脈硬化症

慢性閉塞性肺疾患

両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症


どんなに重い症状でも、これら以外の病気では介護保険を利用することができません。


ただ、ここだけの話ですが…

私が認定調査員をしていた頃、患者さんが介護保険を使えるようにと

別の原因疾患を特定疾病に書き換えている意見書に何度か出会いました。

例えば、多発性筋炎→関節リウマチ(どちらも膠原病の一種ではあるが別疾患)

というような改変です。

もちろん正しい行為ではないので、医師に求めるわけにはいきませんが。

介護保険の要介護認定を申請する流れ

申請の流れから、まずは要介護認定の申請場所について。

介護保険の申請場所は、各自治体の介護保険担当窓口です。


自治体により「介護保険課」「高齢者福祉課」「健康長寿課」など、名称は異なります。

必要なものを本人または家族が窓口に持参しましょう。

介護保険の認定申請の必要書類

認定申請に必要な書類や物品は以下のものです。


マイナンバーカード

申請書にマイナンバー記入欄があります。


身分証明書(本人・代理人両方)

本人はマイナンバーカードが身分証明書にもなりますね。

代理人は免許証などでも良いでしょう。


介護保険被保険者証

65歳になると送られてきます。

新規申請の第2号被保険者は持っていないはずなので不要です。

それ以外の方でも紛失している場合は、窓口にその旨を伝えましょう。


健康保険被保険者証(第2号被保険者のみ)

コピーでもOKです。


印鑑

特に代理申請の場合、申請書に押印が必要になる場合があります。

本人・代理人両方の印鑑を用意しておきましょう。


委任状

自治体により、本人以外が申請する場合に委任状が必要となることもあります。


続いて申請までに調べておくことです。


・本人の住民票上の住所

・認定調査を受ける場所の詳細(施設や病院の名称・郵便番号・所在地・電話番号)

・主治医の氏名・診療科・医療機関の名称・郵便番号・所在地・電話番号・最終診察日

・過去6ヶ月以内の入院歴・施設入所歴

・特定疾病名(第2号被保険者のみ)

・申請の動機など


申請書を自治体のホームページでダウンロード・プリントアウトして記入し、

郵送で申請することも可能です。

ただし記入もれや記入ミスに気をつけましょう。


ちなみに認定審査に必要な主治医意見書は自治体から直接主治医に依頼しますので、

申請者が用意する必要はありません。

ただ事前に、介護保険を申請する予定であることを伝えておいた方がベターでしょう。

介護保険の要介護申請の申請期間

更新申請の方は、有効期限日の前日から数えて60日前から申請をすることができます

しかし特に郵送で更新申請する場合は、 期間前に届いてしまうと

返送されてしまう場合もあるのでご注意ください。


要介護認定は本来は申請から1ヶ月の間に結果を通知されることになっているのですが、

特に人口が多い自治体では遅延が常態化していることも少なくありません。


したがって、ケアマネジャーは60日前ぴったりにに窓口に申請に来ることが多いのです。

少しでも早い時期に認定調査の予約を取りたいですからね。

そして介護保険の認定期間は、ほぼ全て「~○月31日まで」と月末に設定されています。


つまりどういうことかというと、月初は介護保険担当窓口は大変混雑します。

新規申請の方は、なるべくこの時期を外した方が待たされることは少ないでしょう。


ところで、もしも更新申請することを忘れていたら?

認定期限までに申請しなかった場合には認定のない時期が発生してしまうため、

その間に受けたサービスは全額自己負担となってしまいます。


しかし申請さえしておけば、認定結果は前回有効期限の翌日から適用されます。

急いで申請だけでもしておきましょう。

ただしその結果介護度が下がってしまった場合は、

限度単位以上の利用については全額自己負担となってしまいます。

だから皆、早めの更新申請を心がけているわけですね。


ちなみに新規申請は、認定結果は申請日にさかのぼって適用されます。

骨折などで突然介護が必要になった場合、結果が出るまで1ヶ月も待てませんからね。

その場合は限度単位をオーバーしないよう、控えめな利用となるでしょう。

介護保険の申請代行の方法

介護保険の申請は、次の機関に代行してもらうこともできます。

代行を依頼するときの持ち物も、市区町村窓口に申請する場合と同じです。


  • 地域包括支援センター
  • 居宅介護支援事業所
  • 介護保険施設


役所が遠くて本人だけでは行かせられない、

家族も忙しくて行けないということもあるかと思います。


そんなとき利用したいのが、お住まいの地区にある「地域包括支援センター」です。

地域包括支援センターは、地域高齢者の健康と福祉の増進を図ることを目的として

市区町村をいくつかのエリアに分けて設置された機関。

設置主体は市区町村ですが、全国で直営のセンターは3割に過ぎず

7割は社会福祉法人・社会福祉協議会・医療法人などに委託されています。


ご自宅のエリアを担当する地域包括支援センターは当然近隣にありますので、

申請と相談に出向いてはいかがでしょうか。


ただ地域包括支援センターは多忙ですので、事前連絡して行くことをおすすめします。

最近では利用する方ののニーズに応えて、土日開所しているセンターもあります。


居宅介護支援事業所」は、言うなれば「ケアマネジャー屋さん」。

介護保険利用には、申請だけではなくサービスの計画書であるケアプランを作り、

さまざまな手続きや連絡・調整を行う必要があります。

それをやってくれるのがケアマネジャーであリ、

ケアマネジャーが所属するのが居宅介護支援事業所というわけです。


この居宅介護支援事業所は、あくまで民間であり公のものではありません。

申請代行を依頼しても料金はかかりませんが、一応商売でやっている業態です。

そこに新規申請の代行をお願いするということは

「認定が下りたら、お宅のケアマネジャーさんに仕事を依頼しますよ」

と言うも同義と思ってください。


実際によくあるのは

「すでに介護サービス利用している夫のケアマネジャーが、妻の新規申請を代行する」

というようなパターンでしょうか。

また、もうその事業所は利用者の受け入れ人数がいっぱいという可能性もあります。

自治体によっては、新規の受け入れが可能な居宅介護支援事業所を

ホームページで公開しているところもあります。 。


そしてもうひとつ、「介護保険施設」に代行してもらうパターンについて。

これは残念ながら、ほとんどの場合すでにその施設に入所している方や

入所が決定している方の代行申請に限ります。

おそらく新規の方が代行申請を依頼しても

「地域包括支援センターに行ってくださいね」とお断りされることでしょう。


というわけで、まったくの新規で代行申請を依頼するなら、

地域包括支援センターが現実的な選択かとと思います。

介護保険の更新申請と区分変更申請

ところで先ほどから出てくる「更新申請」とは、どういう意味なのでしょう。

介護保険の認定申請には

  • 新規申請
  • 更新申請
  • 区分変更申請

の3つがあります。


新規申請は、現在認定されていない方の申請。

更新せずに認定資格を失ってしまった方が再度申請する場合も、これにに含まれます。


更新申請は、期限が切れる前の申請です。


そしてもうひとつの区分変更申請

これは、認定期間中に状態が変わった場合に介護度の見直しを行うための申請です。

状態が重くなった場合はもちろん、軽くなった場合の区分変更もよくあります。


介護度が重いと、施設サービスや通所サービスの利用料が高く設定されてしまいます。

もちろん自己負担分も高くなってしまうため、

本人や家族が希望して下げるための区分変更申請を行うことがあるのです。


また要支援1・2の場合、1ヶ月の利用料は利用分にかかわらず定額で設定されています。

すると「デイサービス週1回のみ」など少ししかサービスを利用しない場合、

要支援2であると割高になってしまうのです。


そして、区分変更申請のもうひとつのパターン。

認定結果に納得がいかず、やり直しを求める場合」です。  

これはもちろん、本来の区分変更の趣旨とは異なっています。

しかし、正攻法である「不服申し立て」をすると

再度結果が出るのに3ヶ月を要するなどの不都合があるため、

やむを得ず黙認されている方法なのです。 

認定有効期間について

では、要介護認定の有効期間はどれくらいなのでしょう。

有効期間は、申請の種類によって以下のように異なります。


新規申請・区分変更申請での認定結果…原則6ヶ月(状態に応じて3~12ヶ月まで設定可)

更新申請の認定結果…原則12ヶ月(状態に応じて3~24ヶ月まで設定可)


ただし、「総合事業」というプロジェクトが実施できていない自治体は、

更新申請でも上限期間が12ヶ月の場合があります。

更新申請の方法

サービス利用中の更新申請である場合、

期限が近づいたら担当ケアマネジャーから更新の話があるはずです。

もし期限が切れてしまったら、大変な思いをするのはケアマネジャーですから。


ケアマネジャーが代行するのか、本人や家族が申請するのかは話し合いとなるでしょう。

本人や家族が申請する場合は、新規申請時と同じ物を窓口に持っていきましょう。

 (ただし更新の第2号被保険者は、プラスして介護保険証が必要です) 

区分変更申請の方法

区分変更を希望されるときは、すでにサービス利用中の場合がほとんどでしょうから、

まずは担当のケアマネジャーに相談してみましょう。


快く協力してくれることもあるし、場合によっては難色を示されることもあります。

「どう考えても今の介護度が適切である、ヘタすれば下がる(上がる)」

「(特に施設入所中の場合に)介護度が下がると身入りが減る」

などがその理由です。


協力が得られないときは、本人か家族が申請するしかありません。

持ち物などは更新申請と同じですが、もうひとつ用意する必要があるのは

区分変更申請の理由」です。


たとえ本当は「認定結果に納得がいかないため」であっても、

大抵は「状態悪化のため」という方便が書いてありますね。

介護保険の申請を取り下げる方法

申請を取り下げるのは、どんな状況のときなのでしょう。


もっとも多いのが申請後に本人が亡くなってしまった場合です。

がん末期の方に多いようです。

また、突然現在の市区町村外に転出してしまった場合や

医療保険適用施設への長期入院が決まった場合もあります。

中には、家族の判断で申請したけれども本人がとんでもなく嫌がったため

認定調査ができない、なんてこともあります。


いずれにせよ、自治体の窓口に

介護保険要介護(要支援)認定等申請取下げ申出書」を提出する必要があります。


自治体によってはホームページからダウンロードでき、郵送で済む場合もあります。

認定調査中止手続きなどの調整が必要となるので、

取り下げが決まったらなるべく早めに提出しましょう。

まとめ

申請の後に認定調査・介護度の決定・サービス内容の検討など、

サービス利用に至るまでの壁はまだまだ続きます。


まずはそのスタートである介護保険申請をスムーズに行うため、

今回お伝えしたことを心に留めておいていただければと思いす。

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