困っているのに、介護保険の要介護認定で非該当と判定されたら…。

介護保険を利用するために行う介護認定申請。判定される介護度により受けられるサービス種類や量が変わりますが、中には非該当と判定される場合もあります。何らかの支援を必要とされる介護保険サービスには「非該当」の高齢者を、地域で支援しようという動きが進んでいます。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

介護保険の要介護認定で非該当になってしまった場合どうなるのか

介護保険制度では、介護保険サービスを利用するためには、まず認定申請を行う必要があります。


申請を行うと、訪問して行われる認定調査が行われ、その認定調査の結果からコンピューターで導き出される「一次判定」と、「主治医意見書の記載内容」の二つを踏まえた上での、保健医療福祉の学識経験者が行う判定会議を経て、介護が必要と考えられる度合いに応じて、要介護状態の要介護1から要介護5の5区分、要支援状態の要支援1と要支援2の2区分、そして「非該当」の、合わせて8つの状態に区分されて、申請からおおよそ30日以内に、結果が通知されます。


「非該当」とは、介護を必要とする対象にならない、つまり「自立」できている状態と判定されたということになります。

非該当になると介護保険サービスを受ける事はできない

「非該当」と判定されることは、「自立できている状態」と判定されたことで、そのこと自体は、喜ばしいことではあるのですが、非該当と判定された状態では、介護保険サービスを利用することはできません。


正確に言えば、介護保険サービスを行う事業者と契約はできますが、仮にサービスを受けた場合、その「費用の全額が自己負担」になるということになり、あまり現実的ではありません。

ただし要介護認定が非該当であった場合にも利用できるサービスがある

生活する上で、何かに困ったり、心配があったりして、介護保険の認定を申請したのにも関わらず、非該当と判定されてしまった場合、介護保険サービスは利用できない(または全額自費)なんて、じゃあ、どうしたらいいの?と思われるかもしれません。


確かに、介護保険制度始まって以来なじみのある、介護保険サービスは利用できませんが、非該当と判定された方でも利用できるサービスはたくさんあります。介護に関わるそれらのサービスは、大きく分けて二つに分類され、「地域支援事業サービス」と「保健福祉サービス」と呼ばれています。

地域支援事業サービスとは

地域支援事業サービスとは、非該当と判定された人が要支援・要介護状態になる前に予防するサービスや、要支援・要介護状態になった後でも、住み慣れた地域で継続して自立した生活を続けていけるよう支援するサービスです。

保健福祉サービスとは

保健福祉サービスとは、市町村がそれぞれ独自で設定する、高齢者福祉サービスの総称で、主に一人暮らしや高齢者夫婦世帯、寝たきり高齢者などが対象となります。内容や対象者は市町村によって異なりますので、お住まいの市町村の高齢者福祉、介護の窓口での確認が必要になりますが、一般的に短期宿泊サービスや家事援助サービス、配食サービス、安否確認サービス、紙おむつ給付サービスなどが知られています。

地域支援事業サービスの3本柱

地域支援事業サービスは、大きく3つの柱からなります。

その3つの柱は、


  • 介護予防・日常生活支援総合事業
  • 包括的支援事業
  • 任意事業

と呼ばれています。

介護予防事業

介護予防・日常生活支援総合事業とは、2015年度の介護保険法改正に伴い、全国一律の基準で行われていた介護予防事業から、市町村ごとの日常生活支援総合事業にと、移行となった事業です。各地域ごとに指定基準や単価を設定できるため、多様なサービスを生み出すことが期待されています。

内容としては、介護予防・生活支援サービ事業(訪問型サービス、通所型サービス、配食、介護予防支援事業など)と一般介護予防事業(地域の実情の把握、介護予防活動の普及・啓発、地域介護予防活動支援事業、地域リハビリテーション活動支援事業など)の二つの事業に大別されます。


介護予防・生活支援サービス事業は、非該当と判定された方の中で、基本チェックリストでサービス事業対象者(生活機能に低下が見られ、要支援状態となるおそれがあるとされた高齢者)と、要支援と認定された高齢者とが利用することができ、このことにより要支援と認定されたり非該当と判定されたりを繰り返すような比較的自立度の高い方でも、認定の変更での切れ目をつくることなく、同じサービスを利用できるようになりました。

またこの事業のサービス提供の担い手として、既存の指定を受けた介ション専門職の関わりができるようになり、地域の介護予防体操教室護事業所だけでなく、NPOやボランティア団体、地域住民などのサービス提供が可能になるなど地域全体で高齢者の地域での生活を支える仕組み作りが行われています。


また一般介護予防事業に含まれる地域リハビリテーション活動支援事業により、早い段階でのリハビリテーションの視点の導入が図られ、健康体操教室などでの専門性を持った指導、地域ケア会議での助言など、以前に比べて介護予防事業全体的に、専門性の高いものが開催できるようになってきています。

包括的支援事業

包括的支援事業とは、高齢者が住み慣れた地域で自立して生活を続けていくために、地域のケアマネジメントを総合的に行う事業で、介護予防ケアマネジメント、総合相談や支援、権利擁護事業、地域ケア会議の開催、医療と介護の連携推進、認知症施策の推進などを行う事業で、市町村から、地域包括支援センターが一括して委託をうけて実施します。非該当と判定された場合の相談窓口は、まずはこの地域包括支援センターということになります。

任意事業

任意事業には、介護給付費適正化事業(介護給付の適正化を図るため、必要な介護サービスかどうかの検証、改善指導などを行う事業など)、家族介護支援事業(家族介護教室、徘徊高齢者家族支援サービス事業、在宅高齢者家族介護慰労金など)、その他の事業(成年後見制度利用支援事業、福祉用具・住宅改修支援事業など)が含まれます。

介護保険の要介護認定が非該当になっても再申請をする事ができる

「非該当」となった認定結果に納得がいかない場合には、結果の通知を受けた翌日から60日以内であれば、不服申し立てを行うことができます。また、前回の認定時と、明らかに心身の状態が変わった時には、いつでも介護保険の介護認定の再申請をすることができます。


はじめての申請でも、見直しをかけるための再申請時でも、申請を出した日から、認定がおりることを見込んで、サービスの利用をすることが可能ですが、非該当と判定されるとサービス費用の全額が自己負担になるので注意が必要となります。

まとめ

介護保険サービスを受けるための認定申請では、例えば身体のどこかがしんどいと感じていたとしても、周りの方の軽い声掛けなどのみで自立して生活できていると判断された場合、「非該当」と判定される場合があります。

要支援・要介護状態と判定された場合も、ご自身の希望される生活や、必要とするサービス内容について、地域包括支援センターの職員や、居宅介護支援事業所の介護支援専門員(ケアマネジャー)と、よく相談することが大切となりますが、非該当と判定された場合は、受けられるサービス(介護予防・日常生活支援総合事業など)が、介護保険サービスに比べてまだなじみが薄い分、よりしっかりと、ご自身の希望される生活について地域包括支援センターや市町村の高齢者介護・福祉の窓口に相談する必要があります。


介護保険サービス地域支援事業サービス保健福祉サービスも、高齢者の方が、住み慣れた地域で安心して生活できるよう創設されたサービスです。

介護するご家族も、介護される高齢者も、そしてサービスに関わる介護従事者も、みなが安心して制度を利用して生活できるよう、サービス内容や目的を理解し、節度ある利用を心がけることで、地域での生活を守るとともに、介護保険制度をも守っていくことが必要と考えられます。

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