介護保険料を滞納してしまったらどのような処分を受けるの?

超高齢化社会と今、「介護保険」とは普段の生活の中でも当たり前のように聞く言葉となってきました。国民が支払う義務のある介護保険料。この介護保険料の納付を滞納してしまったらどのような処分を受けることになるのか。実際に滞納して処分された人はいるのか。解説します!

介護保険料を滞納し続けると処分が下される

2000年に開始された介護保険制度では、40歳以上になると介護保険料の支払いが義務付けられています。

ほとんどの場合、給料からの天引きや銀行口座振り替えにて支払われていますが、納付書で支払う場合、その支払いをうっかり忘れ、滞納してしまうということもあります。また、金銭的に苦しく、保険料が支払えないまま滞納してしまうケースもあります。

そのまま介護保険料を滞納してしまうと、どのような処分を受けるのでしょうか。

介護保険料の滞納が続いている人は年々増加している!?

2014年度に介護保険料の滞納を続けている人が1万人に達したということがニュースで取り上げられるようになりました。

確かに介護保険料は健康保険料と並んで割と家計に負担になってしまい、支払えないという方もいらっしゃるかもしれません。


そして実際に滞納処分された方は年間に6000人程度いらっしゃいます。

超高齢化社会の中、介護保険料を滞納する人が増えている理由とは?

それは保険料の金額が年々上昇していることが大きな要因です。介護保険制度開始時の2000年には、全国平均で65歳以上の保険料は3000円程度でした。

ですが現在は5000円程度にまで上昇しています。

保険料は3年ごとに財政の均衡を保つために改正されているのですが、高齢者人口が増えれば保険給付額も増加しますので、介護保険料も上昇していきます。


そして、これからも高齢者の数は増え続け、高齢者人口のピーク時とされている2040年には、介護保険料は1万円近くまで上昇すると言われています。

このように、日本では高齢者の人口が増え続け、それに伴って介護保険料も上昇しています。このように年々金額が上がっていくと、支払うことが困難になる人も多くなっていきます。

第1号被保険者が介護保険料を滞納した場合の処分

第1号被保険者(65歳以上の方)への処分としては、滞納者の収入や資産の調査を行い、財産・資産の差し押さえ処分が行われます。

また、介護保険サービスの利用が必要となった場合、保険給付を制限されてしまいます。


具体的な手順としては以下のようになっています。


まず、納付期限が切れてから20日以内に督促状が送られてきます。

保険料のほかに督促手数料、延滞金がかかるようになります。特に延滞金は、納付期限の翌日から納入日までの日数に応じて算出されますので、督促状が届いてしまったら、さらなる手数料などが発生する前に速やかに支払いましょう。 


督促状が届いた後も滞納を続けた場合、介護サービスを受ける際の費用全額負担や保険給付の一部差し止めなどが行われてしまいます。

また、このタイミングで資産の差し押さえ処分を受けるケースもあります。


ですので、督促状がきたらすぐ支払うのがセオリーです。

1年以上滞納した場合利用料金の支払い方法が変わる

介護保険料を納付期限から1年以上滞納した場合、通常では介護サービスを利用すると、そのサービスの1割を負担することになります。

ですが保険料の滞納があると、まず全額を負担しなくてはなりません。その後、滞納分を納め領収書を提出し、申請をすることで先に支払っていたうちの9割が返還されます。

1年6ヶ月以上滞納した場合介護保険給付が一時差し止めとなる

納付期限から1年6カ月以上滞納した場合、介護サービス費用は全額負担となります。

そして、保険給付されるはずの全額または一部が差し止められます。差し止め額は滞納している介護保険料へ充てられることになります。

2年以上滞納した場合自己負担金額は3割に引き上げられる

納付期限から2年以上滞納した場合、介護保険料は2年以上経過すると時効になってしまい、未納が確定します。

そして介護保険サービスを受けるようになった時に、過去10年間に時効が成立していた介護保険料があると、その滞納していた期間に応じて一定期間サービス費用の自己負担額が1割から3割へと引き上げられます。


また、この期間は高額介護サービス(公的介護保険を利用して支払った自己負担額1割の合計金額が一定の上限を超えた場合、申請すると払い戻される制度)の払い戻しも受けることが出来ません。

第2号被保険者が介護保険料を滞納した場合の処分

第2号被保険者(40~64歳以上の方)への処分としては、介護保険料は医療保険の保険料とともに納めることになっています。


なので公務員や会社員の場合、介護保険料支払いは通常は給与からの天引きとなっています。


しかし、医療保険の保険料も滞納している場合は、要介護認定を受けサービスが必要になった時、利用料はいったん全額負担となります。後から申請して保険給付額の9割が返還されるという方法になります。

保険給付の差し止めが行われる

介護サービスを受けた場合、サービス料を全額自己負担で支払い、申請後に保険給付が返還されるという償還払いの方法をとりますが、この保険給付の支払いが一時差し止められることもあります。差し止められた保険給付額が滞納保険料に充てられることになります。

介護保険料の滞納から財産の処分をされるケースもある

実際、介護保険料を滞納し、財産の差し押さえなどの処分を受ける人はどれくらいいるのでしょうか。


厚生労働省が調査したところ、年に約1万人近い差し押さえ処分を受けた高齢者がいるとのことでした。しかし、預貯金などの十分な資産がない人も多く、実際に処分された人は5~6割にとどまっています。

財産の差し押さえ処分が行われる場合、原則として、滞納されている保険料の回収のための督促状が送られてきます。


それでもなお滞納し続けた場合、その滞納者の財産調査が行われます。そこで財産の発見があると、財産を差し押さえ、場合によっては公売などによりその財産を売却し、売却代金を滞納金に充てられる強制徴収手続きによる処分が行われます。

このような強制徴収手続きをされるまでには、長い期間の保険料滞納があってのことです。万が一保険料を滞納してしまったとしても、すぐにはこのような処分は行われませんので、速やかに滞納してしまった保険料を支払いましょう。

預貯金や生命保険などを差押え処分される

財産の差押さえ処分が行われる場合、財産調査が行われ、滞納者に預貯金や不動産などが発見されるとこれらを差し押さえられます。対象としては、預貯金や不動産、自動車や売掛金などです。また、生命保険等に加入している場合、それらも差押さえ処分の対象となり、解約し、その解約金が差し押さえられます。


そして滞納者本人の財産では滞納額に満たない場合には、連帯納付義務者として親や配偶者の財産も差し押さえられることもあります。

財産の差押え処分のタイミングは自治体によって違う

財産差し押さえ処分のタイミングは、数か月の猶予もあれば数年の場合もあり、自治体によって様々です。この財産の差し押さえ処分は、介護サービスの利用有無に関係なく実行されます。

まとめ

生活が苦しく、介護保険料の支払いまで手が回らない高齢者も多くなっています。また、認知症などの理由で請求書が届いても支払うことが出来ず、滞納してしまうというケースもあります。

しかし、災害などの特別な事情で保険料が支払えない場合は、各自治体の介護保険窓口まで相談してください。徴収が猶予されたり、一部または全額免除となることもあります。

滞納当時には、介護保険サービスを利用していなかったりと不便に思うことはないので気にならないかもしれません。ですが実際に介護が必要となり、公的介護サービスを利用する際には思わぬ大きな金額の支払いが発生するようになります。自分自身と家族の将来の安心のためにも、介護保険料の支払いは忘れず、どうしても収入などの面で支払いが難しい場合は滞納を続けるのではなく、必ず対策はあるので自治体などの行政に相談してください。



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