更新日:2017/10/15
介護保険料及び延滞金の時効期間及び時効完成に伴う不利益について
介護保険料を滞納した場合には延滞金を課すことができ、それらの時効期間については2年です。介護保険料及び延滞金の支払が遅れると自己負担割合が上昇する等の不利益が生じますが、時効完成時である2年を超えると遡って払えなくなりその不利益は解消できなくなります。
目次を使って気になるところから読みましょう!
介護保険料の滞納に係る延滞金と時効制度の概要について
平成28年版高齢社会白書によると、全国の高齢化率は、26.7%に達しており、もはや4人に1人が65歳以上の高齢者という事態を迎えています。このような高齢化が進んだ社会においては、高齢者を中心とした介護ニーズへの対応を行う介護保険はますます重要な制度となりますが、この制度を維持する財源となるのが介護保険料となります。
この介護保険料の仕組み等を見ていきましょう。
介護保険料の仕組みについて
介護保険料については、65歳以上の者である第1号被保険者が支払うものと40歳から64歳までの第2号被保険者が支払うものがあり、第1号被保険者については各市町村が国の政令で定める基準に従い、条例で定めた保険料率を掛けて算出することとなっています。
この介護保険料については、平成27年度以降の全国平均が5514円となっており、年々上昇してきています。
介護保険料を滞納した場合の対応
この介護保険料については、勤務先があればその会社等が取りまとめて納付する特別徴収という方法で、そうでないならば普通徴収という払込み用紙が送られてきたものについて期日までに払い込むという方法で支払います。
この期日に遅れると督促処分が行われ、この督促が行われた場合の納期限までに納付がない場合には延滞金を徴収されることがあります。この保険料及び延滞金については介護保険法で2年で時効とされています。
介護保険料及びその滞納に係る延滞金の法的根拠と時効制度への影響
このように、介護保険料については督促処分が行われて支払わない場合には、延滞金が発生することがあることを示しましたが、この法的な根拠はどうなっているのでしょうか。
この点について介護保険法や地方自治法を確認していき、そしてその内容による時効制度への影響をみていきましょう。
介護保険料の延滞金の発生根拠について
介護保険料について滞納した場合について、介護保険法では明確に延滞金が発生するとは規定されていません。
しかし、介護保険法第144条により保険料は、地方自治法第231条の3第3項で規定する法律で定める歳入とするとされており、歳入は、地方自治法第231条の3第1項、第2項の規定により歳入に関して期限までに支払わないものについて督促し、督促した場合には条例で定めて延滞金を課せるとなっているのです。
介護保険料及び延滞金の時効制度への影響
このような延滞金及び元本となる介護保険料については、地方自治法第231条の3第3項の規定により地方税の滞納処分の例により処分することができるとされています。
これは、通常の民事債権には許されない自力執行を認めるというものであり、行政が無理やり保険料等の回収を図ることができるというものなのです。その強制力ゆえに早期に滞納が解消できるであろうとして時効については介護保険法で2年と短期にされています。
介護保険料及び延滞金の時効制度における位置づけについて
このように、介護保険料及び延滞金については、滞納処分を行うことにより自力執行が認められる強制力の強さゆえに、時効制度については短期の2年という設定となっていますが、これは時効制度の中ではどのような位置づけとなるのでしょうか。この点についても検討しておきましょう。
民事及び行政債権の時効制度について
民事債権の時効制度については、民法で原則10年という規定があり、しかも債務者が時効を援用した場合に時効が完成するとされています。
しかし、行政の債権についてはこのような不安定な取扱いは不適切なので地方自治法により5年で時効となり援用を待たずして時効が完成するという制度となっています。
行政債権中の介護保険料及び延滞金の時効
このような時効制度からすると、介護保険料等も5年の時効という制度もありえたのですが、この5年の時効の対象となる債権は先ほどの自力執行権まで認められた債権ではありません。裁判等の手続を経て債権回収を図る必要があるのです。
よって、この介護保険料及び延滞金は自力執行権を根拠とした5年の時効制度の特則という位置づけとなりやはり時効の援用は不要となるのです。
介護保険料及び延滞金の時効に関する不利益な制度
このような介護保険料及び延滞金の2年の時効という制度の下では、徴収される側からすると2年間支払を免れ続ければ時効により払わなくてよいという気持ちになりえますが、しかし、この保険料及び延滞金を時効にかからしめることで思わぬ不利益が生じる場合がありますそれを見ていきましょう。
滞納に係る不利益な制度
介護保険料を滞納して延滞金を課されている状況が長く続くと様々な不利益が生じます。まず、1年以上滞納した場合には、本来は1割の自己負担を支払えばあとの9割は支払が不要となるのに対し、10割支払い9割を償還してもらう手続きが必要となります。そして、2年滞納すると自己負担割合が1割から3割と上昇してしまう不都合が生じます。
時効完成後に不利益な制度は解消できない
このように自己負担割合が1割から3割に達したら介護サービスを利用するのに経済的にさらに苦しい状況が生じます。
これを解消するために滞納を支払えばよいと考えるのですが、時効制度が確定的に債権を消滅させるものである以上時効が完成してしまうともはや支払えないという状況になり、結果として3割負担の状況を解消できないということとなります。このような事態をさけるためにもきちんと支払うことが大事です。
まとめ
介護保険料については、介護保険法等の規定により督促手続きを経て延滞金を課することができます。この介護保険料及び延滞金については滞納処分の例により自力執行を行い強制的に徴収することが可能となります。そのような強力な徴収権ゆえに時効期間は2年と短期となります。
また、この滞納を行った場合には自己負担割合の上昇等の不利益が生じますが、時効が完成した場合には遡って支払うことでの解消は不能となるので注意しましょう。